人狼物語 三日月国


29 【2IDソロル+ペア混合】交換日記【完全RP村】

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【人】 軍医 ルーク

[ 自分は、そのような表情を向けられる資格がある人間じゃない。
 そのことは向こうだって、分かっているはずなのに。

 父の死を切欠に、機獣の謎を解き明かしたいと望み、
 この研究所に配属になった。
 業績を重ね、医者としての腕にある程度の信を
 置かれるようになった頃。
 一つの任務が与えられた。


 “機獣とともに回収された、
  天の穴の『向こう』からやって来た子供を、
  すべての情報を引きだすまでは
  心身共に、情報収集に差し支えない
  最低限の状態に保つこと。”    ]  *
(154) 2020/05/22(Fri) 23:07:43
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a19) 2020/05/22(Fri) 23:11:27

【人】 軍医 ルーク

   ―― 
回想:第二研究所
 ――

[ 天の穴の向こうから来た人間。
 それが意味するところは、一つだった。
 機獣はただの災厄ではない、
 送り込んでくる者たちがいるということだ。
 あれが生物ではなく機械の一種であることを考えれば、
 それは当然とも言えたのだけれど、
 この世界の“上”にもう一つの世界があって、
 そこに住まう者たちが自分たちを滅ぼそうとしていることは、
 頭の中の世界がひっくり返るような衝撃ではあった。

 ――天の向こうには、世界がある。
 父の話を思い出す。
 その父は、現れた機獣に襲われて死んだ。

 彼女は、仇と呼ばれる存在であったのかもしれない。
 けれど、日々身体を切り刻まれ、
 その小さな体に傷を増やしていく子供を
 そのような目だけで見ることは、
 どうしたって出来そうもなかった。]
(176) 2020/05/23(Sat) 10:30:49

【人】 軍医 ルーク

[ 捕虜から情報を引き出そうとするのは当然のこと、
 増して自分たちが滅ぼされようとしている瀬戸際だ。
 そう思おうとしても、どうしても見過ごすことが出来なくて、
 せめてやり方を変えることは出来ないのかと訴えた。
 諭すように、けれども苛立ちを隠さず、上司はこう言った。

 “人道主義も結構だが、付き合っていられる状況ではない。
  彼女から引き出される情報は、確実に我々の有利となる。
  君の自己満足に付き合って、
  手の内にあるそれをみすみす逃し、
  何百何千という人が死ぬことになってもいいという、
  それだけの覚悟で言っているのか?
  君は汚れ役は周りに任せて、
  感謝される役回りを与えられた。
  その上で綺麗事を重ねるのは、
  虫が良すぎるというものだ。
  おままごとも程々にしておきなさい”

 どれ程食い下がっても、出来ることが何もなかった。]
(177) 2020/05/23(Sat) 10:31:46

【人】 軍医 ルーク

[  
   なかったのだろうか? ほんとうに?
   もし本気で状況を変えようと、
   死に物狂いで戦ったなら、
   結末は変わっていたのではないだろうか。
   それをせずに、状況に流されるままに甘んじて。



 恨まれて当然だった。
 自分も、彼女を傷つける者たちと変わらないというのに、
 その子供は、恨む素振りを見せなかった。
 ――少なくとも、表立っては。

 時折こっそりと持ち込む菓子を、嬉しそうに頬張る。
 食べることが大好きで、
 美味しいものを食べると何より幸せそうにする、
 そんな子供だった。]
(178) 2020/05/23(Sat) 10:34:13

【人】 軍医 ルーク

  お願いがあるの。
 

[ ある晩、彼女はそう言った。
 取り替えていた包帯の下の、治りかけの腕の傷は、
 治ろうとする端から再び抉られ、開かれて、
 無残に化膿しかけている。
 目を逸らしてはいけないと、震える指先を押さえつける。
 ――自分が抉っていると変わらない、そのような傷だ。]


  お願い、何?


[ 心臓がどきりと跳ねた。
 自分に出来ることは多くない。
 彼女が望んでいるであろう、此処から逃げ出すことも、
 天の向こうにいるという、
 “おとうさんとおかあさん”のところに帰ることも、
 叶えることは、許されない。]
(179) 2020/05/23(Sat) 10:35:31

【人】 軍医 ルーク

 『おとうさんとおかあさんと、お話がしたい。
  わたしを、機獣のところに連れて行って。
  話をするための機械があるの』
   

[ 心臓が早鐘のように打つ。
 それは、どうしたって、無理な相談だった。
 彼女が機獣と共に降りてきた存在である以上、
 接触させることなど許されるはずもない。
 それがばらばらに分解された残骸であっても、だ。
 “天の向こう”と連絡を取るなど、
 ことによっては致命的な事態だ。
 それは駄目だ、と首を横に振る自分に、彼女は言った。]


 『わたしが何かおかしなことをしようとしたら、
  その銃で撃ち殺してしまって構わない。
  お願い、ひとことだけでいい。
  わたしから話すだけでもいいから、
  死ぬ前に一度だけでも、話がしたい』


[ 彼女の視線は、服の下、
 支給品の銃が隠れているその場所に定められていて、
 ああ、彼女は知っていたのかと、そう悟る。
 両親と、ひとことだけでも話がしたい。
 その望みが、杭のように胸に刺さる。]
(180) 2020/05/23(Sat) 10:36:47

【人】 軍医 ルーク

              [ ――… ]
  
[ 機獣の残骸が保管されている一画は、
 研究所の北側に増設された巨大な格納庫。
 人気もなく、見張りも少ない
 此処は軍事基地ではなく研究所だ。
 機密性は極めて高いが、
 内側から忍び込むことは不可能ではなかった。

 直ぐに頷いたわけではない。
 けれど、“両親とひとことだけでも話したい”と、
 必死に、残りの命を振り絞るようにして訴える子供から
 最後まで目を背けることが、
 どうしても、出来なかったのだ。

 伽藍とした、天井の高い格納庫に、
 整然と並べられた機獣の残骸は、
 生き物の骨のような、亡骸のような、
 酷く奇妙に捻じれた死を感じさせる光景だった。

 腕であったもの、脚であったもの、胴であったもの。
 並べられた残骸を見渡し、
 子供はその中の一つ、“箱”に駆け寄る。
 自分も、周囲を警戒しながらその後に続いた。

 もし彼女が機獣に何かする素振りを見せたら、
 通信でおかしなことを一言でも話そうものなら、
 そのときは――引き金を、引かなければいけない。]
(181) 2020/05/23(Sat) 10:38:06

【人】 軍医 ルーク


  それが、通信機?


[ 彼女は頷き、箱に手を当てて何かの操作をする。
 外殻らしき金属の箱の表面の小さな蓋を開ければ、
 黒く滑らかな板が顔を覗かせる。
 それに彼女が指をあてれば、箱が開き、
 中からさらに小さな機械が現れた。
 彼女の指先が、ボタンを操作する。
 ピッと耳慣れない甲高い音が響き、青い光が点灯した。
 
 ―― そのときのこと、
 視界の片隅で、何かがきらりと光った。
 全身が泡立つ。
 背中にぞくりと走ったそれは、本能的な警戒。
 考えるよりも先に身体が動き、
 咄嗟に、彼女を引き戻して横に飛ぶ。、
 それまで彼女がいた場所を僅かに逸らし、
 床にぴしりと、何かが突き立つ固い音がした。]
(182) 2020/05/23(Sat) 10:39:23

【人】 軍医 ルーク

[ 目の前が真っ白になる。
 格納庫に明かりが灯り、
 暗闇にいた目が明るさに慣れずにいるうちに、
 格納庫の扉が開き、なだれ込んできた兵士たちが、
 見る間に自分たちを取り囲んだ。

 銃口が突きつけられる。
 彼女に、そして自分に。]


  『泳がせておいて正解だった。
   案内ご苦労、
   “良い警官と悪い警官”というのは、
   古臭い手だが悪くない、
   君はいい仕事をしてくれた』


[ 上司はそう言って、青い光を放つ通信機に指を伸ばした。]*
(183) 2020/05/23(Sat) 10:40:03
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a22) 2020/05/23(Sat) 10:41:04

【人】 軍医 ルーク

[ それは、医務室に現れないうさぎに、
 やっぱり苦いものも飲ませてやろうか――なんて、
 ぺんぎんに話をしていた、すこし後のこと。

 勤務時間が変わり、明け方に見張り台に向かうことは
 難しくなっていた。
 今はもう、あの場所に向かう目的は、
 大穴の観察だけではなくなっていた。
 あのタブレットには、今日も日記が記されているだろうか。

 前回自分が記したことにどのようなことを思われたか、
 ざわつきのようなものはある。
 それは――おそらくは、“不安”。
 けれど、そのようなものよりも。
 日記の内容と、自分に向けて記してくれた言葉たちを
 思い出すたびに、
 心臓が鷲掴みにされたような痛みを感じる。

 “心配”
 ――そう、それと似たもの。
 そして、望み。
 胸を刺すようなそれは、
 そうだ、もしかしたら――“切望”。]

 この心は、なんだろう。
 わたしは、何を“思って”いるのだろう?
 痛みと願いが同じ場所にある。
 手を伸ばしたいと。
 その手は、何を望んでいるのか。]
(190) 2020/05/23(Sat) 12:07:58

【人】 軍医 ルーク

[ 明け方でも夜でもない、夕食時の時間帯。
 空き時間を漸く見つけ、外壁に向かう。
 いつもよりは人の目も多いだろう。
 見つからないようにと注意を払いながら、
 人の気配がなくなった隙に、いつもの机へと歩み寄り、
 タブレットを取り出す。
 ノートには、また新しいページが増えていた。
 いつもと同じ出だし、日記が書かれた日の日付。

 最初の一文を読んだとき、
 タブレットを持つ手が、震えた。

 音が遠ざかる。
 まだ静まり返ってはいない基地の、ざわめきの音、
 足元にいるぺんぎんの、心配そうに小さく立てる鳴き声。
 すべての音が遠ざかり、目の前が暗くなるようだった。]


  ……、 いやだ


[ 声が震える。
 それでも、続きを読む。
 書かれているすべてを、目に焼き付けるように。
 その先を読むことで、一文ごとに突きつけられる真実から、
 もう、目を逸らすことは出来なくなっていたとしても。]
(191) 2020/05/23(Sat) 12:09:58

【人】 軍医 ルーク

[ 前回の日記で既に、自分は気付きかけていたのだと思う。
 目の前にある真実の前に立ち竦んで、
 扉に指をかけることが、ひどく恐ろしくて。
 
   日記の主の見ている景色を、
   いつものように、想像しようとする。
   足元に空いた穴に落ちてゆくような
   自身の今の感覚と、
   ひどく、同期するような光景ではあった。
   
 そこには、書いてある。
 もう、気づかなかったことには出来ないほどに、はっきりと。]
(192) 2020/05/23(Sat) 12:10:41

【人】 軍医 ルーク

 


  『ただの暗闇を義手が掴んだところで、
    今回の夢は終わりを迎えたのだった。』


 
(193) 2020/05/23(Sat) 12:11:02

【人】 軍医 ルーク

[ 日記が終わる。
 自分に当てた返事の前に、ひどく長い空白があった。
 まるで、記したばかりの日記を、
 続きを書いている自身の目から
 遠ざけようとでもするかのように。

 息が出来ない。
 目も、耳も、手も、もう自分の物ではない脚も、
 そのすべてが言うことを聞かずに、
 ばらばらになってしまったようで。
 最後まで読みとおし、俯く。]


   ……、
   氷菓子食べ放題、か、
   ほんと、莫迦……


[ それは、もう何処にもない、
 過去の世界が残した刻の名残。
 綿のように降り積もる、白いちいさな氷の欠片。
 いまはもう、ひとが住むことすら出来なくなってしまった、
 此処ではない、どこかの世界。
 氷菓子の話を書いていたそのひとは、
 書きながら、ほんとうは、何を思っていたのだろう。]
(194) 2020/05/23(Sat) 12:12:27

【人】 軍医 ルーク

[ 呼吸を忘れかけた喉の奥が、
 ひゅう、と泣くような音を立てる。

 そのひとは、手を伸ばし、写真を掴もうとした。
 その写真は自分の記憶の中で、
 父が最期まで身に着けていた、あの写真になる。
 在りし日の母と幼い頃の自分が写された、
 一枚の写真。>>0:60
 父が発掘した、タブレットより遥かに単純な造りの写真機が、
 写しだしたもの。

 そうだ、もし自分の想像が合っているとするのなら、
 この日記の主は。


   死んだ残骸の降り積もる、伽藍洞の身体。
   そのすべてが、叫んでいる。
   体中が内側から切り刻まれるような痛みに、
   溢れ出すような奔流に、
   その正体も分からぬままに、指が画面に触れる。]
(195) 2020/05/23(Sat) 12:14:22

【人】 軍医 ルーク

[ そこまで書いたときのこと、]


  『誰だ!?』


[ 人の気配に、はっと顔を上げる。
 そこにいたのは見張りの兵士だ。
 書くのに夢中になっていて、
 戻ってきているのに気づかなかった。
 兵士はこちらが誰か気付いたようで、
 げえっと嫌そうな顔をしたが、
 ここで何をしていたのかと尋ねてくる。]


  ……大穴の調査。
  わたしは、研究班の所属でもあるから。
  定期的に観測してる。


[ 嘘はついていないが、すべてを話してもいない。
 観測は自分の担当ではない。
 ただ、研究班の所属であることと、
 穴の調査のために赴いていたことも嘘ではない。
 手続きをとっているわけではないから、
 詳しく調べられたら咎められることもあるかもしれないが。]
(196) 2020/05/23(Sat) 12:19:46

【人】 軍医 ルーク

[ 兵士はまだどこか納得がいかないという顔をしていたが、
 調査が済んだならさっさと戻るようにと言い渡し、
 手の中のタブレットに視線を向けてきた。
 赤い袋に仕舞い、咄嗟に懐に入れる。
 観測に使用していると思ったことだろう。
 だとしたら、私物があれこれと入っている引き出しに
 入れて戻るのは不自然すぎる。

 見張り台を離れ、階段を下りる。
 ぱたぱたとついてくるぺんぎんの足音。
 分かれ道で立ち止まり、兵舎へと視線を向けた。]
(197) 2020/05/23(Sat) 12:20:35

【人】 軍医 ルーク

[ 伝えなければいけないことがある。
 最後まで書けなかった日記の続き。
 踵を返し、一度は医務室へと足を向ける。
 戸棚の中の『お返し』、
 ひっそりと鍵をかけて仕舞っておいたもの。
 それを取り出しに。
 自分に出来る限りの早足で医務室へと向かい、扉を開けて]


  『遅かったな』


[ 犬耳のその兵士が、そこに待ち受けていた。]


  へえ、わたしを待ってたんだ。
  それは実に物好きなことだなあ。


[ そんな風にへらりと笑ってみせながら、
 懐から取り出した赤い袋を、ぺんぎんに渡す。
 これから何があっても、壊されることがないように、
 どこか安全な場所に置いて、と。

 だから、医務室を訪れた者は、
 気づくことも出来るだろう。
 ぺんぎんが咄嗟に戸棚に置いた、
 赤い袋の中のタブレットの存在に。]*
(198) 2020/05/23(Sat) 12:23:52
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a23) 2020/05/23(Sat) 12:28:42

【人】 軍医 ルーク

[ 軍医なのに名前で呼ぶのはおかしいと、>>200
 その言葉に、改めて思い知らされるのは、
 日頃の『検査』での彼の扱いで。
 何もできずにいた自分自身を、
 どうしようもなく知らしめられる。

 口にしたその名前は、願いのようでもあったと思う。
 あの日記を読んでしまって、
 いくつものことに気付いてしまった自分が、
 いま、何よりも恐れていること。
 そして、何よりも――望んでいること。

 ここに居るのは僕だと、
 そう告げてくれたのはきっと、
 自分を害した人間ではなくここにいるのは彼だと、
 そう知らせてくれる言葉だったのだろうけれど。

 自分には、別の意味に聞こえた。
 打たれ、切られた傷口よりも遥かに痛く、
 今も透明な血を流し続ける胸の奥の空洞に、
 そっと手を当ててくれているような。
 
 ――… 君は、君のまま、ここに居るのだと。]
(219) 2020/05/23(Sat) 20:55:21

【人】 軍医 ルーク

[ 間近に見たその赤い瞳は、変わらず彼のものだった。
 けれど、痛みに歪む視界がふっと像を結べば、
 否応なく、異変に気付く。

 数日前、通信機を探しに外出した時とは違う。
 まるで何日も寝ていないような、目の下の酷い隈。
 顔色も悪く、疲労の色を隠せずにいる。

 あの日記の、最初の一文を思い出す。
 起こりつつある何かが、どうしようもなく心臓を揺さぶり、
 全身の血が凍り付きそうな“恐怖”を感じる。
 殴られたときの方が遥かにましと思えるほどに。

 声を出そうとしても、出なかった。
 “痛み”に身体を抑えながら、蹲る。]
(220) 2020/05/23(Sat) 20:56:03

【人】 軍医 ルーク

[ 身体が床を離れる。
 抱え上げ、運ばれているようだった。
 背に当たる義手の感触は、固い金属のもので、
 検査の折に、あるいは戦闘の後に担ぎ込まれてきた時に、
 幾度となく見たことがあるものだった。

 ――… 金属の片腕を持つ彼と、金属の脚を持つ自分。
 お揃いのようだと思った言葉は、
 そのまま口にせず、飲み込んだ。

   この両脚は、彼の片腕とは違う。
   その腕がどういうものであったかが、
   いまのわたしには、朧げに分かる。
   けれど、彼がその腕を、
   この基地の者たちを“まもる”ために、
   身を削りながら使ってきたことを知っている。
   わたしのこれは、罪の証。
   何一つ出来ずに、目の前の命を死なせた。


 寝台に寝かされれば、柔らかな布の感触が身体を包み、
 呼吸がいくらか楽になる。
 無意識のうちに体に巻き付いていた尻尾に、
 優しい手の感触が触れた。
 その手に触れられているうちに、
 少しずつ、身体のこわばりがほどけてゆく。
 やがて、ふにゃりと力を抜いた白い尻尾は、
 抵抗せずにそっと脚の後ろに横たわる。]
(221) 2020/05/23(Sat) 20:57:53

【人】 軍医 ルーク

[ 治療の際に身体を見られることに、抵抗はない。
 こくりと小さく頷き、目を閉じる。
 診る前に相手を安心させる術というなら、
 患者の目の前に出る度に叫ばれる自分はどうなるという話だ。
 大人しくそのままじっと待っていたのだが。]


  ……。


[ なんだろう。
 何か、様子がおかしいような。
 てっきり打たれた腹の辺りを見られるのかと思っていたら、
 喉の辺りに触れられて、身体がぴくりと跳ねた。
 それから、胸元。
 重そうに首を傾げ、じー、と見上げてみる。
 見上げた赤いうさぎは、
 それはもう見事に赤くなっていた。]
(222) 2020/05/23(Sat) 20:58:38

【人】 軍医 ルーク

[ 何やら慌てはじめた彼の下に、ぺんぎんがやってくる。
 背伸びしてガーゼや消毒薬を差し出して、
 勢いよく褒めて撫でてもらえば、
 おてつだいできた、えらーい! と
 両手を挙げてくるくるはしゃぐ。
 必要なものを持ってこられたことを褒められたのだと、
 全く疑っていない顔だ。

 それからも、
 ボタンを嵌めようとしてもなかなか嵌らなかったり、
 (本人は気付かなかったようだが、結局一つずれていた)
 頬の消毒液がだばー、と枕の方に落ちて行ったり、
 中々に、中々のことになっている。

 手当てが終わると、ふらふらと立ち上がり、
 医務室の隅っこで丸くなってしまった。

 ……後ろを向くと尻尾が見えるなあ、と思った。]
(223) 2020/05/23(Sat) 21:01:06

【人】 軍医 ルーク

[ 彼が何に動揺しているか、この頃にはさすがに気付いている。
 間違えられることは二度三度ではないから、
 なんかもう面倒くさくなって、
 一々訂正することもやめてしまっていたのだが、
 やはり勘違いされていたか。

 先ほど触れられた胸元に、自分の手を当ててみる。
 我ながら自己主張というものが感じられない手触りだった。

 もう一度医務室の隅に視線を向けると、
 赤くふわふわした塊が、ぷるぷると震えている。
 それを見ていると、久しぶりにこう、
 擽られるものがあるというか。]


   手当をしてくれて、ありがとう。
   ところでさ、


[ 休めたのが良かったのだろう。
 先ほどよりは幾分しっかりした声で、
 その後姿に声を投げかける。]
(224) 2020/05/23(Sat) 21:02:11

【人】 軍医 ルーク

  



   触って確かめないと分からないくらい、
   “控えめ”で悪かったな



 
(225) 2020/05/23(Sat) 21:03:02

【人】 軍医 ルーク

[ まるで読心術でも心得ているかのように、
 誰かさんの先刻の内心を、ずばり、言い当ててやって。>>205
 それはもう、とてもとてもひとの悪い笑顔を浮かべる。]


  しかも、待ってたのに来ない。
  

[ 検査があったり、時間が合わなかったりしたのだろうと
 分かって入るのだけれど、
 そんな風にわざと、そう言ってやる。
 そう言った自分の声は、
 自分で想像していたよりも、色彩があった。]
(226) 2020/05/23(Sat) 21:04:08

【人】 軍医 ルーク


  そうか、合わせる顔がないのかあ。
  なら尚更、顔を見せてもらわないと?
  ああ、そうだね、それじゃあ、
  その耳、触らせてもらおうかな?
  それでお相子。
  
  
[ もし彼が振り返ったなら、
 寝台に横向きに横たわり、両手を差し出し、
 擽るように指を動かしている様子が見えるだろう。
 いつぞやの結ぶ結ばないの話を覚えているかは、
 さあ、どうだろう?

 なお、声に出すときに“きみ”と呼び続けていた自分が、
 内心では、うさぎ、と思っていたのは、
 その赤い髪から覗く、感情豊かな耳を、
 つい目で追いかけてしまっていたから。

 もし動かずにいるなら、
 此方から這い寄ってやるくらいの心算だった。]
(227) 2020/05/23(Sat) 21:05:03

【人】 軍医 ルーク

[ 彼のいる場所のすぐ近くにあのタブレットがあるのに、
 気付く余裕もないようだった。

 こんなやり取りは、
 向こうはそれどころではないかもしれないけれど――
 暫く前までの自分たちを、思い出させるものでもあった。
 それは懐かしいようで、
 けれど、沢山のことを知ってしまった自分は、
 もう何も知らずにいたあの頃には戻れない。
 戻りたいとも、思わない。
 少しずつ、正解も分からずに、
 暗闇で組み立ててきた硝子の破片のパズル。
 出鱈目につながりながら、音を奏で始めたピアノ。
  
 告げたいと思うことが、たくさんある。
 渡したいと思うものも。]
(228) 2020/05/23(Sat) 21:06:15

【人】 軍医 ルーク


  ああ、そうだ、
  どうせならもう一つ頼んでもいいかな?
  そこの戸棚に鍵がかかってるんだ、
  開けて、中を見て。
  耳を触らせるのと、鍵を開けるの、
  二つ合わせて、さっきのとお相子だ。

  
[ ぺんぎんが、ぱあっと表情を明るくする。
 机の引き出しを開けて鍵をとってきて、どうぞ、と渡した。
 その顔だけで、何があるか分かってしまいそうなものだが、
 棚を空ければそこには、
 瓶に入った薄桃色の苺シロップと、
 砂糖漬けの苺で作った小さなジャムの瓶があるだろう。
 ぺんぎんが調達してきたとうもろこしの茶の袋も。

 確認したいことがあったという、
 その話も気になっている。>>1:362
 そして、自分も。
 まだ気付かれずにいる棚のタブレットを、
 それとなく視線で確かめた。

 この先にあるものが、何であったとしても、
 踏み出したいと、強く、願っている。]*
(230) 2020/05/23(Sat) 21:11:21
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a25) 2020/05/23(Sat) 21:15:34

 




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