205 【身内】いちごの国の三月うさぎ
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[どちらが誘ったのか、これじゃあもう分からない。
首筋から腕を下ろして、もう一度手を握り合って。
お湯の温度と同じくらい馴染んだ彼の掌に包まれる。
逃げるつもりなど毛頭ない。
もとより、逃がす気がないことも知っている。
そこで逃がすような彼だったなら、
今、こうして一緒に過ごしてはいないだろう。
耳朶に近づいた声が甘く、誘う。
湯を割って腹部に腕が回って身体を引き寄せられ。]
…… ッ、……
は
[ここがどこか分からせるみたいな台詞に、
薄く唇を噛んで、零れそうになった声を殺して。]
[抱き寄せられた腰の下、臀部の辺りに。
膨らみ始めた彼のものが、つん、と当たる。]
……ん、 当た、ってる 、……
[囁き合って、手を絡めただけ。
直接的な刺激はまだ、互いに与えあってもいないのに。
自身の身体で、また反応を示してくれているのかと思えば、
背徳感に、ぞくぞくと震えが走る。
ぽたり、とまた雫が落ちる。
それが、きっかけだったみたいに。
振り向かせるようとする声に、
おず、と俯きがちに首を傾けていった。]
[伏せた眼で覗き込むみたいに、見上げたら。
それを待ち望んでいたみたいに細められて、
瞼が降りていくのに、自然。
こちらも、再び眼が伏せられていく。]
……、
は、
ン、ぅ ……
[ちゅ、と啄むだけのキスを何度か交わして。
じわりと熱を高めていくみたい。
そのうち、触れ合わせるだけじゃ足りなくなって、
薄っすらと眼を開き、唇を開いて、舌を差し出して。*]
[ つけてしまった、という側からの
水掛けをもろに食らっても、機嫌は少しも
損なわれない。
その痕がどうして出来たのか
を考えれば答えは明白なので。
縋らなければ耐えられないほど。
その先は今は考えるまい。
濡れた前髪を掻き上げたそばから
もう一発、喰らいかねないので。 ]
[ 握って離して。湯の中で
遊ばせるようにすると、水面が波打って ]
じゃ、つけて、今度。
[ 今、でも勿論いいんだけれど。
今つけられたらまず間違いなく、明日の朝
見せつけてしまう気がしたので。堂々と。自分から。
――見えないような所になら?
大歓迎では在るけれど、それより。 ]
[ 掠める唇の感触を覚えている体が
ゆるく反応してくれるので、自分に
付けられる痕の話は、のちほど。
振り返られる瞳に淡い欲のいろ。
自身の指でなぞる首筋が、より
"そう"しやすいように、逸らされる。 ]
ほしいくせに、
[ 目視で確認できるかぎりでは、
まっさらになった白い肌が温まって
上気して、今はほんのり桜の色。 ]
さっきは素直に言ってくれたのにな?
[ せっかく綺麗になったのに。
伺うような視線と絡んだなら。
互いの 望み通り。まずひとつ、
シャツを着れば隠れてしまう場所に赤を散らして。 ]
[ 本当に逃がすつもりがあるならば、
わざわざ両手両足を駆使して、捕まえようとは
しないだろう。
これがただの、戯れであることは
互い知れている。
声を漏らすまいとしている姿に、
ふ、と笑ってしまったから、その息がまた
耳を触って。 ]
ん、また勃っちゃってる。
[ 聞こえてしまうかも、その背徳感が
更に煽ったことは認めるけど。
温まりながら手を取り合って、
なんでも無いことで笑っていても
白い背中を、染まる耳を、
見ていたら、つい。
熱くなってる君もまた、見たくなって。 ]
[ 受け入れるように、瞳を伏せるその瞬間が
たまらなく、すきで。
唇を合わせたときに、僅かに口角は
あがって。 ]
…… ン 、
ふふ
[ 啄み離れて、また吸い付いて。
合間に、笑い声を滲ませて。
もっと、が聞こえない代わりに、
舌先で唇をつついて。
開かれた唇から、赤い舌が覗けば
おいで、という代わりに、ちう、と
やさしく吸い付いて。 ]
[ ちゃぷ、とお湯の跳ねる音が聞こえたら
絡まる舌先をそのままに、片手が腹から
そっと這い上がっていることに気づくだろう。
つん、と胸の尖りをつつき、
親指の腹で、くるりとそれの輪郭を一周。
甘やかな声が上がりそうなタイミングで
唇を解放し、抱き寄せれば、先程より顕著に
反応していることが、伝わるか。
ゆっくり、やさしくあいしたい。
から、抱き寄せたほうの手は、
撫でるように背を登り、とんとんと叩いて。* ]
[つけて、と望まれたなら、数度瞬いて。
彼と眼を見合わせた。
本当に付けてほしいらしい。
ぷ、と噴き出してくすくすと肩を揺らして笑い。]
いいですよ、上手くつけられるか、
分からないですけど。
[付け方なら知識としては知っているけれど。
本当に付けたことはないから、本番勝負になる。
痣のように広がった場所では目立たないだろうから、
付けるなら上半身だろうか。
細めた眼で少し、伺うように彼の肢体を眺めて、
意地悪く笑うのは、少し垣間見えた俺の男の性というもの。]
[その代わり彼にも、晒した肌に痕を望む。
首筋をなぞった指を辿るように、水滴が肌を滴り。
潜められた声に、温まった肌と同じくらい
頬を染めたなら、少し責めるような声に俯いて。
こくんと、喉を鳴らしてしまう。]
……つけて、
景斗さんの、しるし、
[乞われるままに、おねだりを口にして。
もじ、と腰を揺らす、微かに身体が揺れる度に。
ちゃぷんと、跳ねるお湯の音。
水滴がこんなにも卑猥に感じてしまう程。
高められているとは気づかない、まま。
ひとつ、服の下に隠れる場所に落とされたなら、
満たされたような吐息を、洩らしてしまう。]
[少し身動いでも、腰周りには彼の足が両サイドにある。
笑う気配がする度に、耳を擽られて。
ぴくん、と身が跳ねてしまう度に、
そこが弱いのだと見せつけてしまう。
腰を引いたら、彼のものが存在を訴えて。
言葉でも教えられるから、また火を灯される。]
……俺で、感じてる…… ?
[いつか、俺で感じて欲しいと言ったときみたいに。
自身の身体に反応する彼のもの。
分かっていても、何度でも確かめてしまう。
口にされる度に、必要とされていることを、
実感するみたいに。
悪い癖、だと思う。こんなこと。
でも、求められる程、自分の身体も熱くなって。
まだ反応していなかった、それが僅かに熱を持つ。]
[キスは愛を確かめ合うために交わすもの。
たくさんの愛の形があるけれど、
彼と交わすのは、親愛でもあり、情愛でもあり。
言葉にできない程の、込められた愛も。
言葉にできない分、行動で伝わればいい。
伏せた睫毛が、震えて。
彼の笑う気配に、少し首を傾げる。]
…… ッ 、
ン
、ぁ ……
[突付かれた先で開いた唇の隙間から、
覗かせた舌先を、甘く吸い上げられたら、
ひくん、と震え、閉じかけた眼を薄く開いて。
もっと、と誘うように、視線を絡め。]
[次第に深くなっていく口づけに、とろ、と瞼が落ちていく。 身体を預けるみたいに、力が抜けていって。
彼の肩口に寄りかかり、解けた手が肌をなぞって、
上に上がり、胸の頂きに優しく触れる。]
んっ、 ンぅ……ッ ぁ……、
[ぞわ、と肌が粟立つみたいに毛羽立って。
指の腹が輪郭をなぞる間に、解放された唇から、
あまい、感じ入った声が溢れて。]
……は、 ……ンッ、
………、?
[声を隠すように自身の手の甲を口元に添える。
とん、とん、と背を叩く手は。
意図が察せず、染めた目尻で見上げ。首を傾げて。*]
[ 本気にしていたなかったのか、
肩を揺らして笑うので ]
上手くつくまで、何度でもして?
好きなとこ、どこでも。
[ 誘うような色を伴って、言うと
眺める目線に応えるように、笑うけど。
すっかり痕を付けられるのに
慣れてしまった彼の体に、先に贈ることにして ]
はぁ……かわいい
[ つけて、と口にされると、もじ、と
腰を揺らして、お湯がゆれて音を立てる。
綺麗についた、とばかりに吸い上げて赤く
色づいた箇所を人差し指でするりと撫でる。
許可を得てしまったものだから、きっと今夜も
いくつも散るだろう赤のひとつを贈って。 ]
[ 身動き一つも逃すことの出来ない距離。
笑うことを咎められることもなく、
ぴくん、と愛らしく跳ねる体に、唇が
吸い寄せられるのは、仕方のないことだと思う。 ]
もう、君でしか感じられないくらい。
感じてるよ
[ これだけ存在を主張する象徴があって尚、
先程だって熱烈に求めたために、どうなったか
知っていて尚、
問いかける言葉ごと、愛おしいから
伝えることは惜しまない。
だから何度だって問いかけて良い、
その度、蕩けた声が君を襲うし、
その声がまた、君を熱くさせるから。 ]
[ 歯列をなぞって、舌を絡ませて、
応えるように熱い舌が向こうからも
絡んできたなら、ぴちゃと水音が響く。 ]
ふ、………すき ン
[ 口付け一つで、与えられる物、
贈るもの、の良さを知ってしまったから。
口内に囁くような言葉は、受け取る前に
食べられてしまうようなもの。
視線が絡めば、あまく、目を細めて。
啄むものから、絡まるものへ、そして
奥まで食らうようなものへ自然と変わっていく。 ]
[ とろ、とまぶたが落ちて、
くたりと、体を預けるみたいにされたら ]
かわい、
[ 呟いて、焦らすようにまた、くるりと
ゆっくり、指の腹が動く。 ]
俺は聞かせてくれると嬉しいし
興奮するけど、
他の人に聞こえちゃうのは、ちょっとなぁ
[ 子供をあやすような手付き。
優しい触れ方、で思いついたのがそれ、
だったから。 ]
[ だけど、 ]
でもちょっと、意地悪したくもなっちゃって
[ 染まる目尻、傾げられる首が
愛らしいから、悪戯したがる手がつい
つぅ、と背中を辿る。
やさしくしたい、がこちらの意見。
そちらの要望はまだ、聞いていない。 ]
どうされたい?
[ 問うのが悪い癖なら、
恥ずかしいこと、言わせたいこれもきっと、悪い癖。* ]
[くつくつと笑いながら、
いつもと少し毛色の違う約束を交わして。
それが叶えられるのは今日か、先の話か。
期限が決められていないのであれば、いつでもいいだろう。
期待に満ちた目を向けられるのを、
今はさらりと受け流す代わりに、
肌に新しく咲かせる花が、ちり、と淡い火を灯す。]
……、……ぁ、
[微かな痛みと共に彼の所有印を残されることに、
僅かな興奮を覚えて、甘いため息を漏らして。
愛おしげに撫でる手が心地良い。
首筋付近では自分で見ることは今は叶わないから。
撫でる指先に、彼と眼を見合わせて。
ついた?と問うて、返される頷きに。
ふわりと、満足げな笑みを零して贈り物を授かって。]
[水滴を滴らせる肌に彼の唇が滑る。
撫でるような唇が、時折、舐め取る仕草に代わり。
ぞわ、と沸き起こる快感に打ち震え。
身じろぎしかできない彼の腕の中で、身悶える。
俺でしか。
感じられないのなら、それでいい。
そうなって欲しい。
熱を持ち硬さを示し始める下肢が押し付けられて、
その大きさを覚えている箇所が、きゅんと疼く。
先程も荒々しく暴かれた場所。
多少強引に暴かれたとしても、
その欲を向けられることが嬉しくて。
その言葉に、ふにゃりと蕩けるような顔を見せて、
擦り寄るように、濡れた髪を頬に寄せて、甘え。]
[お湯が揺蕩う音とは違う水音が、耳を擽る。
耳元により近い、顔の先。
互いにこれ以上ないくらい顔を近づけて、
空中で舌を絡めあえば、卑猥な音を立てて糸が滴る。
キスの合間に告げられる告白に、
ふる、と身を小さく震わせて。]
……ぁ、ッ…… ふ、ぅ……
[溜息にも似た甘い吐息が溢れる。
言葉を送り込まれて、吹きかけられる息ごと飲み込んで。
次第に首が、後ろへと傾いていく。
飲み込みきれない唾液が、唇から溢れて頬を濡らす。
向けられる強い視線に眩しそうに目を閉じて、
あ、
と、思う頃には。]
[ぞくぞく、と背筋から震えが込み上げてくる。
悦びにも満ちた、快感。
こんなの知らない。
赤く熟れた唇を解放されて、くてんと肩口に頭を預け。
胸を喘がせるようにキスで乱れた浅い呼吸を繰り返す。
甘い声を上げてしまった場所を、
彼が喜んで、指が同じ場所をくるくると描く。]
……ん、 ……ン、ゥッ ……
[声が聞きたいと言いながら、
衝立の向こうを意識させるその口振りに、また身体が震え。
背を撫でる手すら、欲を煽って。
手の甲で唇を塞いだまま、弱く首を振る。]
[は、と息を零す頃には、また目尻に水が溜まっていた。
羞恥を煽るのが上手い人。
でも、甘やかすのも上手くて、少し意地悪い。]
……ぁ、ぅッ…… ン、ッ……
[長い指が背の窪みを添っていくのを、
声を押し殺しながら背を反らして、快感を逃して。
そっと、腰を抱き寄せる手を両手で持ち上げる。
その手を、自身の赤い尖りに触れさせれば。
とくん、とくんと、高鳴る心臓の音も聞こえるだろうか。
周囲を撫でられただけで、ぴんと立ちあがった頂き。
そこに彼の掌を押し当てて。]
[ ついた?と言う問いに ]
きれいに、ついた
[ と頷くと、満足げな笑みが溢れる。
景斗さんのもの、にして。
それを聞いて付けられた鬱血痕に、
満足そうにされると、疼いて、困る。
今日はもう一度、出したのだから
もう少し大人しくしておいてほしいが、
迫り上がるのも仕方ない、とも。
肌に触れることも快楽を得る方法の一つ
ではある、身を以て知っている。けれど。
それほど大きな波打つようなそれでは
なくとも、ぷるりと震えて身悶えるような
姿を見せられては、血流がそこに集中しても
致し方なく。 ]
[ わかるでしょ、と言葉を紡ぐことはなくとも
少しだけ体を寄せれば、そこが熱に浮かされて
膨張し、硬度をあげていることは伝わるだろう。
一度ならず何度も、それを、
飲み込んでいる身なのだから。
快楽を得るよりも、勃ち上がるそれを
見るときのほうが嬉しそうに見える、のは
欲目だろうか。
暴き立てられることを期待して
も少しはあるかもしれないが、それ以上に、
自分の姿で声で、触れ方で、口付けで
そうなるのが嬉しいと言うように、蕩けた顔を
見せるから、敵わない。 ]
[ 聞き飽きるくらいに、聞いているだろうに
今でも、その言葉を言うと、絶対に聞き逃さない
その敏感な耳も、告げられた事を自覚して
小さく震える体も、甘い吐息も。
すべからく、いとしくて。
飲みきれない唾液を追うように、
舌が頬へ沿う。
舐め取るみたいにして、もう一度唇へ
一滴残らず飲み干すようにして、
すっかり赤くぽってりとした唇を解放すれば
くてんと頭を預けられる。 ]
[ 声が聞きたい、我慢しているその姿も
見たい。耐えるようにしているの、とても
劣情を煽られるので。
それも嘘ではないけれど、
我慢しているのに、漏れてしまって
どうしようもない、そんな顔を見たい。
――潜んだ本音も、見透かされているかもしれない。
手の甲で唇を塞いで、首を振っているから。
それも、いつまで持つのかなとか
思っているから、いじわる、なのは否定できない。 ]
[ 背をしならせて、快感を逃がそうとも
逃しきれないものはいくつもあろう。
それに、 ]
うん?
[ 取られた手が向かう場所、とくとくと
心音は早い。
すっかり立ち上がって、ぴんとしているそこに
導かれた手に、どうしてほしいかなんて
わかりきっている癖にと、詰ってもいいのに。 ]
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