人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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視点:


志隈は、メモを貼った。
(a0) 2020/10/05(Mon) 9:01:37

[幸いなことに、図書室はあれからも
 私たちを繋いでくれた。

 友君の文字をなぞる。

 本当、映画みたい。
 2020年とんでもないなって、
 改めて思う。

 今の状況だって十分映画みたいだけど。]

[続く優しい言葉を、何度も読み返す。]


 ……ありがとう


[ぽつん、と落とした言葉は届かない。
 他にももっと言葉があるはずなのに、
 どれだけ友君の言葉が沁みてるか、
 声が、表情が届けば、もっと伝えられるはずなのに。
 私にできることは、ただ友君の言葉を指でなぞるだけで。

 友君の文字がかすれなくたって、
 滲んだ視界では見えにくかった。]

[私は友君に何でも話した。

 チアの魅力、息がぴったり合って、
 会場の観客と一緒に演技を作り上げていく達成感。
 だけど、去年は銅賞になってしまったこと。
 リベンジしたくて必死に練習したのに、
 すべてのイベントが消えてしまって。]

[アキナを落としてしまったことも。]

[空気を乱さないか、興ざめじゃないか、
 そう怯えて飲み込んでいた柔らかい心も、
 友君なら受け入れてくれる気がして、
 優しさに甘えて、話してしまう。

 だけど、どれだけ心を寄せても、
 私たちの距離は遠い。]*



 ……とも、くん


[友君の影が、私に近づく。手が伸ばされて、耳を撫でた。
 耳にかけてくれた髪は、一本だって動かない。
 いくら筋肉をつけたって、輪郭までは女のままだ。
 その丸い胸と腰を、友君がなぞる。]

[友君の声も、顔も見えないのに、
 気遣うような声が、表情を、感じる気がした。

 嫌じゃなかった。
 ただ、なんの感覚も無い愛撫が悲しかった。]


 ……ふ、


[影に口づけられると、じんと唇が痺れた。
 
 無いはずの感触に戸惑って、
 ほんの少しの期待を込めて友君を見上げる。
 だけど、鼻先に指先をかざされると、
 触れられなくても痒くなることを思い出して、
 そうだよね、これ以上の奇跡は起きないよね……
 なんて、すぐに落胆した。

 友君はそうやって甘い痺れをもたらして、
 私の緊張をほぐしていく。

 だけどやっぱり足りない、
 友君に触れたい。
 友君に触れてほしい。]

[私は友君の手を取る。
その手は、空を掴む。

 そのまま、カーディガンのボタンに導いた。
 ハート形の可愛いボタンを、
 私の、
 友君の 
 指が、
 一つずつ外していく。]


 ……ともくん、見て。
 私をもっと、みて。


[衣擦れの音が図書室に響く。
 私の影は、布の厚み分、小さくなった。
 友君に知ってほしい。
 早鐘のように鳴る鼓動も、
 乱れた息遣いも、
 夕焼けの色に染まった頬も、
 何一つ触れられなくたって。

 そのほんの欠片だけでも伝えたくて、
 友君の手を、裸の心に導いた。]

[窓から吹き込む強い風が、カーテンを引いた。
風は、ヒュー、ヒュー、と
 音を立てて吹いていました。

 うっすらと開いた隙間から、月光が矢のように刺さる。
 いつのまにか、満月が近い。
 
 月明かりに照らされた私たちは、
 確かに繋がっていた。]**

[あはは、ごめんね。
 お客さんに上の子見てもらうために頑張ってたのに。
 ちょっとすねすねモードはいってた。

 そんなことを、返事に書こうかな。]

[どんなに見つめても、影は影。
 うすぼんやりとした黒い輪郭が
 目の前で揺らいでいるだけ。
 触れたはずの唇が空を切って
 微かな空気の揺らぎだけが
 すう、と湿った唇を撫でた。

 唇を離すと、影の手が俺の手を取り
 心臓の辺りへと導いてくれた。

 どく、どく、と脈打つ肉の感触もなく
 俺の手はきっと、菜月の心に触れている。
 脆くて危うい其処はきっと、
 乱暴に暴けば傷が付いてしまう。
 けれど、それを躊躇う程度には
 柔らかくて、綺麗な形をしているのだろう。]