79 【身内】初めてを溟渤の片隅に【R18】
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[ 俯いたまま、訥々と口を動かして紡ぐ本心。
応えるようにとん、とん、と背中に軽い振動。
あくまで優しい声は、形が見えるほど
凄艶でさえあった。 ]
─── 俺も、おんなじ。
けど、いまは、
[ すう、と息を吸い込んだ。
首元のシャツのボタンを、ひとつ、外して
ゆっくり、顔を上げる。 ]
[
だ、い、て、く、れ、
と、
唇だけを動かした。
笑ったつもりだったけど、
きっととても情けなく崩れた表情で。]**
[嫉妬の話がでれば、そんなものキリがない、と
いくつだって挙げることができる。
林間学校の時のキスだって───
ああもう、あれはなんか、あのあと
小っ恥ずかしいからやめよう。
彼の手が触れる、その左肩に、腕に、
残る傷をきちんと直視したことはない。
きっと、あまり見られたくないだろうと
勝手に思っていたし。
体育の授業の更衣室なんかでも、
目を逸らしていた。
ただ、今は、今からは───]
[腕の中の彼が、小さく首を横に振る。
続いていく言葉は、ただ黙って聞いて。
「ずるいのは俺だな」と一度締められたそれに、
開きかけた唇はなにも言葉にすることなく、
そのまま、背中をとんとんと叩いた。
ずるいのは、俺だよ。
だって、どうしたって聞きたい。
心の中では決まってるくせに。
どっちでもいいって言いながら、本当は
雨宮のこと、思いっきり抱いて、俺のものに
してしまいたいっておもってるくせに。
それを、隠して、それでもなお問いかけるのは、
彼が選んだと自覚して欲しいから。
逃げることの、できないように。
こんな欲を彼が知ったら引かれてしまうかも。
怖がられてしまうかもしれない。
だから、口には出さないで。
あくまで、優しいふりをしてる。
ほんとに、ずるい。]
[だまって、待っているのだ。
獲物が自らこの腕の中に入ってきてくれるのを。
いなくならないで?いなくなるわけない。
離すつもりなど毛頭ない。
促すように、あやすように、優しく叩く背中。
ゆっくりと開く唇の動きひとつ、見逃さぬよう。
取りこぼさないよう、見つめて。
晒される首筋に、こくりと唾を飲んだ。
まだだ、まだ、もうすこし。]
っ………
[示されたそれに、息をつめて、
思い切りその首筋に顔を埋めて、口付けて、
噛み付いてしまいたいのを抑える。
少しばかり不安を帯びたようなその視線に
返すのは、優しさを滲ませたそれのはずなのに
隠しきれていない獰猛さが、熱が、
瞳の奥から伝わってしまっただろう。
ぐ、と腰を寄せる。]
………好きだよ、雨宮
[そう告げて、掬い取るように口づけを。
優しく、遠慮がちに触れたそれ。
腰に回していた手を解いて、
まだ彼自身の身体を抱くその腕を取る。]
ここじゃなくて、俺に、縋ってよ
[そういって、彼の手を己の首に回させ]
ベッド、行っていい?
[と断りをいれて、できるならば、そのまま
抱えるように膝下に手を差し入れ、持ち上げよう。]
あ、思ったより重いかも、
[苦笑して、それでも決して落とさないように
ベッドの方へと向かって、皺一つないそこに
そっとその身体を下ろせばそのまま、
己も覆い被さる。
彼の視界が、全て満たされるように。
額をつけて覗き込み。]
……
[黙って見つめた後、ゆっくりと瞼を伏せ、
近づけていく。けして、閉じてしまわぬよう。
さっきの口づけをもう一度思い起こさせるように
優しく触れたあと、その下唇を食み、
柔く噛んで、引っ張って、離した。
じっと、見つめて。]
───優しくできるよう、努力するな
[そう告げて微笑めば、貪るような、口づけを。]*
| [ もし文字が彼のプレートに書いてあったなら 彼は死んでいたことだろう。 物理的ではなく、精神的に。 詳しく言えば、嬉しくて、悶えて、死ぬ。 だから、してくれていたなら喜ぶけれど してくれなくても安堵しかない。 彼女の次回作がどうなるのか、 ハラハラドキドキになるのが目に見えてきた。 ]
(14) 2021/06/21(Mon) 13:33:29 |
| ちょっと待っててね。 [ そう告げた彼は、冷蔵庫にいくついでに 食べ終わったお皿をシンクに持っていき、 冷蔵庫から炭酸水、あんず酒を取り出し さらに、グラスをふたつ持って 彼女が待っている場所に戻った。 軽めの一杯を作って乾杯をしたのち、 彼は先に洗い物をしにいくのだった。 ]
(15) 2021/06/21(Mon) 13:34:05 |
──────
ホント、美味しいな……
美鶴さんの顔を見ながら、
飲んでるからだろうね。
[ ふっと笑って、彼も少し彼女に近づき
体を密着させてみた。
ガリガリではなかったので、
程よくふんわりとしていたような気がする。
そんなときに、聞こえた彼女の告白。
流石に、不意打ちが過ぎたのか
彼も少しだけ顔を赤くした。 ]
なんや、美鶴さんから言ってもらえると…
心があったまる感じがあるわぁ……
[ そんなことを言って、
中身のないグラスをテーブルに置き、
彼は彼女の唇に軽く自分のそれを重ねた。
彼女の反応を見るために、
何度か、瞳を交わらせてはゆっくりと。
彼女が嫌がらなければ、
彼女のグラスをテーブルに置いて
もっと体を密着させようとした。 ]*
潤さんと一緒だからですね!
同じこと考えてたの嬉しいなあ……
[ 程よくアルコールが回って
酔っ払いというほどじゃないけど、
なんとなくいい気分で。
密着すれば温かい気持ちになる。 ]
……?潤さん顔赤い…
あ、もう酔っちゃったんですかー?
[ 嬉しそうにしてる潤さんを見てると
私まで嬉しくなって、
でも、顔が赤くなっている理由まで分からなくて
酔ったのかな?なんて。
呑気に聞いていると軽く唇が重ねられて
一瞬、潤さんと目が合う。
恥ずかしくてぎゅうっと目を閉じて
それを受け入れていた。
空になったグラスはいつの間にか
潤さんがテーブルに置いてくれた。 ]
[ くっつくのは好きだから
潤さんの意図が分かれば、彼の膝に乗って
抱きついた。重くないかな、
と一瞬心配したけれど、彼はどう思ったのかな。 ]
特等席、ですね……?
*
[ 幼な子をあやすような、とん、とん、と
優しい刺激が一定のリズムで背中に続く。
万が一、伸ばした手を拒絶された時の
恐怖にびびって、
心を守るための防御壁が欲しくて、
彼に選ばせようとした。
気持ちなんて、とっくに決まってて、
惚れてるって自覚したときから、
そうだよ、己はこんなにも臆病で。
]
[ だから、ほんとはぜんぶ、
実はお前の思惑通りで、
己が自分で選び取るように、
言い訳出来ないように、
後戻りする逃げ道を作らないように、
そう、仕向けたって言うなら。
その胸の内が、聞けたなら。
俺は、心の底から笑って、
礼を言うんだ。 ]
[ だいてくれ、と、
無音の声は、届いたみたいで
矢川が息を詰めたのがわかった。
おずおずと窺い見た己が捉えた彼の瞳は、
いつもと変わらない優しさを湛えているように
思えたけれど。 ]
─── ……、
[ 見逃すわけない。
そこにぎらりと一瞬、走った熱の塊を。
獲物を狩る、獣の如き鋭い眼光を。]
[ ぐ、と寄せられる腰。
聞こえるんじゃないかと思うほど激しく打つ鼓動。
頭と顔と、下腹部は焼けるみたいに熱くて、
手足の末端は冷たくて。
嗚呼、喰われる。
─── や、違う。
[ 好きだよ、と告げてくれる唇がまた、触れる。
掬い上げるように優しく遠慮がちな口付けに、
ほんの少し、笑んだ。 ]
[ 肩に爪を立てていた腕がゆるり解かれて、
導かれた先は彼の首。]
聞かなくていい、って……
[ 母親が整えてくれたベッドに、多少の罪悪感を
感じながら答えれば、ふわと浮く己の身体。]
ッ、う、おい、待っ───
[ 所謂お姫様抱っこ、で抱え上げられて焦って、
抵抗しようとしたけれど。
長い腕。
あたたかい胸。
一層強くなる彼の匂いに、くらりと脳が揺れた。]
……当たり前だよ、誰と比べてんの。
[ 思ったより重い、と苦笑する声に。
恥ずかしいやらいたたまれないやらで、
胸元に埋めた頭をぐりぐりと押し付けた。
広くもない部屋、長い足でほんの数歩。
なんの衝撃もなく、大切なものを扱うような手つきで
ベッドに下される。
覆い被さる彼の額が、己のそれと合わさって。
視界の全てが、矢川で埋まる。
逸らすこともできない。 ]
…… 、ん、ッう、───
[ 下唇が食まれて、歯が立てられて、
びく、と背中が僅かに跳ねた。 ]
[ 優しくする、と微笑みのあと、
貪るような口付けが降る。
いつも穏やかな彼の、どこにこんな情熱が
隠れていたのだろうかと思うほど、
熱くて、激しくて、堪らない。
息ができなくて、頭がくらくらする。
求められるまま、舌を絡めて、なぞって、
吸って、口内を愛でて。]
[ 自由が利く手を動かして、彼の髪から
耳、頬、首筋と、縋るように撫で下ろしていく。
数ミリの布でさえ焦ったくて邪魔で
脱がそうとするけれど、
片手だから上手くいくだろうか。
口内を弄る舌に嬲られて、
吐息混じりの声と、飲み込めない唾液を溢れさせながら
肩、背中、脇腹と熱っぽく触れて、
拒まれないなら、その下。
布地越しの熱に触れたくて手を伸ばす。 ]
[なんだって、聞きたくなってしまう。
いちいちの反応が愛おしくて。
もっと、自覚して欲しくて。
触れているのは俺で、これから、もっと深く、
互いを愛し合うってことを。
皺一つないベッドはきっと、彼の母が
カレーを置いていったと同時に洗濯して、
綺麗に整えたのだろうとわかっている。
それを、今から彼を抱いて、汚す。
背徳感と罪悪感があって
それでいて、どうしようもなく興奮した。]
───想像の中の雨宮かな?
[誰と、なんて憎まれ口に、当たり前のように
こたえれば、くすくす笑った。
生憎、こんな状況でのお姫様抱っこで、
比べる人などいないし、比べようもない。
優しくする、と言ったのに、結局こんなふうに
貪ってしまうのは、緩急をつけなければ
往なせないような気がしたから。]
[呼吸すらすべて飲み込むくらい、深く口付けたら
彼の手が髪に触れる。そのまま身体を滑り落ちて
行くのがくすぐったくて、心地よくて。
そのまま、ベルトのバックルへとかかるのが
わかる。触れられればぴく、と反応した。
薄く開いた瞼。まつ毛の隙間から覗けば、
ふ、と鼻から息を吐いて、わざと音を立てて
ぢゅ、と吸って離す。]
──脱がしてくれんの…?
[落とした声は、自分が思っていたよりずっと
湿って、熱っぽかった。
問いかけに、返ってくる言葉に、
こくりと喉を鳴らして唾を飲む。
ぐぐ、と猛りに血液が集まるのがわかる。
熱い。下腹部から痺れるみたいに、脳が揺れる。]
っ…煽んな、
[ふーっと吐いて、溢れてしまいそうになる欲を
なんとか止めて、額に触れるだけの口づけを。]
まじで、優しくできなくなるから。
…はじめてだからさ、優しくしたいんだって。
[な?と諭すように首を傾げて、
彼の手を潰してしまわぬよう、腰を上げたまま、
背を丸めてその首筋に唇を落とす。
ふう、と吐いた息がそこにかかれば、
ぺろりと舐めて、軽く噛む。
喉仏が上下するのが見えれば、そこも舐めて。]
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