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153 『Override Syndrome』
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![](./img/kamishino/tsugu_03.png) | 蟾蜍。
それが、自分だ。 世間がゆるすも、ゆるさぬもない。 葬むるも、葬むらぬもない。 自分は、犬よりも猫よりも劣等な動物なのだ。 蟾蜍。 のそのそ動いているだけだ。
** (81) 2022/06/13(Mon) 13:52:38 |
[ 声が聞こえた気がした。
ざざ、と、ひらがなの羅列。
自分のことを呼ばれた感覚はない。
本から視線を上げてぼんやりと周りを
見渡すけれど、そこには誰もいないから
それでようやく気づく。 ]
ささおかさん、……ああ、おれか。
─── はい、すみません。
[ なんだか今日はネクタイの結び方が
わからなくて、ノーネクタイ。
シャツにパンツ、ジャケットは手に持って
ゆっくり立ち上がる。
ウエスト部に緩く余裕がある。
今更気付いてベルトの部分に手をやった。 ]
[ 開いた扉に向かう。
背筋は伸ばして、整えた穏やかな笑みで、
真っ直ぐに足を運んでいるつもりだけれど
診察室までの数歩がやや遠い。
床がぐにゃりと歪んでいるような錯覚に
二、三度足を止めながら、
迎え入れてくれる医師の前に立つ。 ]
こんにちは。
[ あくまでにこやかに、声音も穏やかに
軽く頭を下げれば、医師の顔を見られただろうか。
ぼんやりと靄がかかる頭の中、
ちかちかと何かが瞬くのがわかる。 ]
だめだ。
おもいだしては、いけない。
─── やめて、しらない。
こんにちは。
こん、…………
[ 医師の顔を訝しげに、虚に見つめながら
挨拶を繰り返す。
無意識に手が、イヤホンを探していた。 ]**
![](./img/kamishino/mayumi_04.png) | [ 真結実を知る人間にとっては、 違和感を覚えざるを得ない状態だったようだけれど、 私自身にはそんな感覚は一切なく。 "真結実"であろうとする気概さえ、今の私にはない。 先生を見ているようで、追い求めているのは楽園の先。 その表情の色にさえ頓着せずに、 ペンが落ちて転がる音を落胆と共に拾っていた。 >>72 座るよう促されれば、言われるがまま腰を下ろす。 >>74 優しい声に、安堵することはない。 私が聞きたいのは、幸福の音。唯それだけ。 ] (82) 2022/06/13(Mon) 18:33:39 |
![](./img/kamishino/mayumi.png) | [ 病院へ行けと言った母の示す"病院"とは、 >>69 『東雲医院』のことだったのだろうか。 私の状況を鑑みれば、 素人だって内科が適任とは思わないだろう。 それでも私にとって病院とは、『東雲医院』だったから、 母の考えがどうであれ、 ここに来る他なかったのだけれど。 瞳は診察室を確かに映している筈なのに、 私が見ようとしているのは本来見えないもの。 先生も同じく、私ではない別のものを想起しているとは、 気付くはずもない。 ] (83) 2022/06/13(Mon) 18:34:30 |
![](./img/kamishino/mayumi_02.png) | [ そんな、心ここにあらずな私ではあっても、 "船越真結実"であるかどうかを確認する質問には、 >>76 流石に意識を現実に引き戻された。 ] 先生は、私が"船越真結実"ではないと? 私に"真結実"は荷が重いと、 役者不足だとそう仰るのですか? [ 柔らかい声が痛かった。 優しい声が怖かった。 その奥に嘘を糾弾する本音があると、 私は勝手に捉えていたから。 ]** (84) 2022/06/13(Mon) 18:35:41 |
| (a3) 2022/06/13(Mon) 18:37:13 |
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