7 【R18】鈴蘭の村:外伝6〜カフェリコリス〜【RP半再演ペア】
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[ 当時の事は覚えていない。
いや、心の奥底に封印したから記憶に無い。
記憶にあるのは、始まって間もなく
舞台の中央で意識が途切れたこと。
観客のざわめき、同僚が駆け寄ってきたこと。
怒号も聞こえた気がする。
そのまま病院に運び込まれ、全てを知ったのは数日後。
──俺のせいで舞台は中断、続行不可能となったこと。]
[ 団長は優しい人だった。
体調管理が出来なかったことに注意はしても、
責めることはしなかった。
──しばらくは受け入れられなかった。
己の犯したことの重大さを。
自ら、役者人生に泥を塗ってしまったことを。
順風満帆、失敗しらずの人生を送ってきたからこそ
現実を受け止められなかった。
己のしでかした事の大きさを。
そして、間もなく暇を貰い逃げるように姿を眩ました。
団長には事前に告げておいたが、驚く程あっさり許可は出た。
「分かった。だが、条件として連絡先を教えてくれ。
また必要があれば、呼ぶかもだからな」とだけ告げて。
思えば団長には可愛がってもらえていたのだろう。
この後も「使わなくなったから」と
様々な物品が贈りつけられてくることになる。
同封された手紙は怖くて読めなかったが、捨てることも出来ず
しばらくは棚の奥に封印することにした。
──こうして、俺の役者人生は、
一度幕を下ろすこととなった。]*
[ ピアノの音色をかき鳴らしながら
脳裏に思い浮かべるのは数多の人の顔。
この城で過ごした数十名の子供達。
その中でも一際目立つのは陽の存在。
月の名前を持つ子供の姿だった。
ふと、開きっぱなしだった部屋の中に
与えた本人の存在が増えた ]
おはよう、セレン。よく眠れたかな?
[ 挨拶は極めていつも通りに。
ピアノの手を休めれば彼に振り返った。
彼の手にあるのは知恵の実
それから棘の目立つ赤い薔薇の花だった。
彼の言葉に男は目を伏せる。
言葉を選びあぐねている様子だった ]
それは、俺が触れていいものじゃない。
それに、きっと君が持っていた方が喜ぶ。
[ 差し出された金貨一枚
久々に他者から存在を生かされる今に
男にしては少し苦い顔をしてみせる ]
部屋がいつもの調子なのは、忘れられないからだ。
いや、……忘れたくないのかもしれない。
[ ピアノに備え付けられた椅子に腰掛けた。
男は飾られた赤い薔薇一輪に視線を向ける ]
忘却は人にのみ存在するものだから。
それから、俺が触れたくないのもある。
彼らがここで生きた痕跡を、
俺如きが穢してしまいたくない。
[ 組んだ指だけが落ち着きなく動いた ]
……その思い出が、記憶が、より胸を痛ませても。
どの子供も悪い子供じゃなかった。
中には俺の願いを叶えようとする子もいた。
結局、逃げてしまったけどね。
他には父のように慕ってくれる子供もいた。
だが、みんな帰してしまった。
残酷な望みを君達に架していると分かっているから。
[ 言葉を区切り、それから少年を見遣る ]
君を特別扱いしたのは……、
その金貨をお守りと持ち歩いていた子に
君が少し似ていたからだ。
どう。少しは、殺す気になれた?
[ よく見ると日に焼けたのだろうか。
赤い頬は少し痛々しい。
冷やしてやるべきだろうと彼を見つめ ]
なんて。
……君に酷い事を願っているのも理解してる。
君と俺を違うと枠組みを取り替える癖に
君に同じ所まで堕ちろと
それと同義の言葉を口にしているのだから。
[ 男自身の矛盾を形にした。
困ったような眉はそのままにふと顔を上げ ]
色々と、知ってくれたんだね。
出来れば君が全て知った上で、
承知してくれた上で、欲しいものだから。
ありがとう。
でも多くを見て回ったのなら腹が減るだろう。
何か、用意しようか?
[ 彼が選んできた赤い果実を見て、尋ねた ]**
[段階を踏むということまでは知っている私
段階を踏むことすら知らぬ君
尚、その段階は小説の知識で
ぼんやりとした交わりについての君の知識は
漫画のものだと知るのは果たしていつの日か
――どんな姿でも、
嗚、君ならば何でも美しいのだと
こんなにも君を、求めているのだと
私が思うことを、知れば良い
]
[漏れる声に、体の奥がずくっと疼く
触りもせぬのに、君の声に反応しそうだ
などとは、恥ずかしくて言えもせぬ
素直な子には、ストレートに言った方が良い
とは、理解はしているものの
此方も恥じらう日本人なれば
性の前戯でストレートに押せ押せは難しく
少しばかりの駆け引きとともに
触れることは許してくれまいか
君の、可愛い痴態を見るのもまた
楽しみでは、あるのだから]
[ぽいやんの雷をあれほどくろうても
戦うことを諦めなんだ雄勇は、
快楽にはあまり強くはないのだな、と
身もだえる様から、思う
だがそれも、また愛いのだと
もっと自分の手で溺れてしまって良いのだと
言葉の代わりに、彼の雄を美味しそうに舐め啜る
抑えることを忘れた声が、耳に届けば
尚囀りを聞きたいと、奉仕に一層熱が入るというものだ]
ん……
[とはいえ、絶頂も近い。と
脈打ち熱を持つ怒張から察したものの
それを口から離そうとされるのは本意ではない
だからこそ、彼の脇へと愛撫を行い、
出しても良いのだと、強く、啜って解放を促せば
熱の奔流が襲うのだ]
[クガネの絶頂は割と早めだと、学んで
叩きつけるような白濁が口内を満たす
小さく、くぐもった声をあげながら
喉に流し込もうとするが
これがなかなか、難しい
口の中に広がる雄の味
苦いし、粘つくものだと初めて知った
どちらかというと甘味の方が好きだが
愛しい彼の物だと考えれば、悪くはない
顔を覆い隠して、馬鹿と宣う彼を横目に
嚥下に四苦八苦しながらなんとか飲み干す。
少しばかり口端から白が流れるが
それも指で掬って、口の中
禁欲的に生きてきた彼を穢した、ことへの
罪悪感と高揚感をないまぜにしながら
私は小さく吐息を、零した]
[さて、これで終わりだと私は一言もいうてないのだが
……どうすべきかと思案をする
いい感じに力が抜け、くったりとしているから
慣らせば初めてでも受け入れることができそうな気もする
が。彼の本意はどうだろう
今日はこれまでとストップがかかれば生殺しだが]
……。
[手荷物をあさって香油を取り出し
指に纏わせ2,3程擦り合わせる
温度が多少移った頃に、窄まりに指を這わして―――
一度、襞に塗り込む仕草を見せた後、尋ねる]
クガネや。続きは、どうするかね。
君が疲れたなら今宵は、ここまででも良いけれど。
[我慢は常だ。慣れている
でもできれば―――できれば溶け合いたいのだと
心は殺して、常の無表情で尋ねるのだ**]
[ シロさんは「奥ゆかしき日本人」の体現者としても
違和感はない訳では、あるが
――確かにストレートは難しいだろう。
しかし、こういう駆け引きを交えた扱いをされてしまえば
ある意味直球よりもタチが悪い。
醜態晒すことを自制できず、
例え神雷の中でも突き進んでみせた精神力の高さなど
見るも無残な惨状となってしまうのだ。]
[ それは仕方のないことだ。
何から何まで初めてで、だから悔しいけど
己は翻弄されるしかないのだと。
――自らの経験の無さを免罪符に、
恥ずかしき慾の存在を無意識に肯定も、したか
]
[
人にやってもらうのが初めてだから
この速度は正確じゃない!冤罪だ!
……などと、相手の思うこと
を聞けてたら
それはもう全力で抗議したのだろう。
しかし、そんな余裕など無ければ
目伏せ必死に息を整えるのに精いっぱいだ。
――出したものを飲まれた、などという光景を見れていたなら、
己は軽い眩暈のち「状態異常:大混乱」でも付与されてたかもしれない。
目を覆い隠していたのは、幸か不幸か]
[ そして、たとえその光景を見逃したとしても
この熱帯夜が終わる訳でもないのだ ]
ひっ!?
[ 漸く息も落ち着いたかという絶妙なタイミングで
後ろの――具体的には、尻の方から
微かな、しかして確かな衝撃を感じた。 ]
( や、やるのか本当に…!? )
[ 覚悟はしていた。が、いざ目前に迫ってくると
やはり僅かながらに恐怖が出てきてしまう。
進むにしてももう少し、猶予が欲しいと
身勝手ながらに思ってしまうのだ。
――ただ、それでも ]
……オレが「ここまで」って言ったとして
シロさんは、どうなんだよ
[ 彼が此処まで来て、己に興奮してくれているかは
わからない。
わからないけど、己が逆の立場なら
これ以上なく辛いとも、思う
……今の立場の己も十分辛いのだが ]
遠慮すんなよ。オレ、そこまで軟じゃねェし
――進めて良い、から。
[ 眼隠しした腕をずらし、彼に同意の眼差しを
これを言わせるなんてある意味羞恥プレイじゃないか?と
思わなくもない。が
悔しいが、ここで中断されてしまうのは己も嫌なのだ。
――溶けて溶けて、一つになるを望む
*]
―日記 4頁目―
[ 薔薇の花が咲く場所を教えてもらったわ。
大きな庭園にあるみたいだった。
でも全然世話をしていないみたい。
仕方がないから棘の処理をしてあげた。
掃除も全然していないみたいだからしたの。
食堂があるなら使うしかないじゃない?
村には立ち寄れないけど
お腹が空いた旨を伝えたらお小遣いをくれたの。
足がないって伝えたら狼を紹介してくれた。
彼の背に跨って街まで辿り着いて沢山お買い物して、
荷物沢山に帰ってきた私をみてニクスは目を丸くしたの。
帰ってくると思わなかったんですって ]
[ 私の家だから当然じゃない。
言い切ってみたら困ったように眉を下げられたわ。
本当にここで暮らすつもりか尋ねられたし
そのつもりよって伝えたの。
彼は少し悩んでるそぶりを見せたけど
結局最後には諦めたように頷いたわ。
だから私も覚悟を決めたの。
ほんのり漂う血の匂いも仕方ないことだって。
夕食は二人でとったけれど
人の食事は彼には必要ないみたい。
ただこれから生活するのは困りそうだから
私が色々教えてあげないと ]*
―日記 5頁目―
[ 今日は村のみんなに手紙を書いたの。
私は元気にしているって。
元から飽き性の私でもよく日記が続いたものだと思う。
でも最近サボっちゃったから、昨日の事でも残すわ。
ここの生活にも慣れてきて、
もう一月くらいは経っていると思う。
あの日から私達はいつも通り変わる事なく生活しているわ。
ニクスも流石に人は薔薇の花を食べて
空腹を満たすなんて考えなくなったもの。
一つ驚くことがあったのなら
彼、ピアノが弾けたみたい。
彼の部屋の中にある右隣の部屋を私が覗いた時、
埃だらけのピアノを見つけたの。
私が引きたがったから二人して掃除して
それから私の部屋に運んでもらったのだけど
調律なんて出来るものだから驚いた ]
[ 昔、少し弾いていた。
そんな彼に誰かから教わったの?って聞いたの。
彼は曖昧に笑ってばかりだったわ。
この人の悪い癖。
触れられたくないことは誤魔化す人。
ただ今日は悲しそうだから黙っておいたの。
二人してピアノを弾けば気分も少し和らぐかしら。
隣で腰掛けて白鍵を鳴らしたら、
少し驚いた顔をしたけれど拒まれなかった。
そのまま二人で一緒に弾いたわ。
困ったことに楽しかったの。
化物だなんて村のみんなからは恐れられてる人は、
私が思うより普通で、同じ人で、だから ]
―日記 36頁目―
[ このまま続けばいいのに。
そう思うくらいにこの日々は楽しい。
彼は相変わらず朝は眠り続けて
昼も静かに息だけを繰り返して
夜になるといつのまにか傍らにいたわ。
曖昧に笑ってばかりの彼も少しずつ、
いろんな表情を見せてくれるようになった。
彼の知らないことを私は教えて
私の知らないことを彼は教えてくれる。
人と吸血鬼。
そんな垣根を超えても私達は変わらない。
そう思ったから伝えたら彼は悲しい顔をした。
化物は世界から嫌われているから、
神様に祝福されている私達とは違うって ]
[ 堪らなくなったから抱きしめた。
死んだ人みたいに冷たい躰。
息を吸うより簡単に溢れたわ。
私はあなたが大好きだって。
だからそんなあなたが傷つく世界なんて、
私が壊してあげるって。
本当に真剣に思ったから伝えたら
彼は本当に困った顔をしたの。
それでも抱き返してくれた。
ありがとう、って ]
んー…
ぼくにも夢が見れたくらいには。
[ あてがわれた寝台は身に余る柔らかさで、
記憶の上では初めて怯えずに眠れる夜だった。
枕も毛布も揃う寝床がなんて幸いだなんて、
この夜の怪物には想像が及ばないことだろうか。
ごく短い時間を繋ぐように眠るのに慣れる程、
他人の気配に怯えながらこれまで生きていたことも。
夢を繋ぐなど、二重の意味で許されなかった。
故に、問いかけには微かに柳眉を寄せて、
謎かけのように、けれど実際には素直にそのまま答えて ]
そう……?
でも、これは誰かに想われた子供の証だから、
ぼくが持っていていいものでは、ないかな。
[ 掌の上の金貨は受け取られずに、
落ちた言葉に白金の髪を不思議そうに揺らす。
美麗な顔立ちを顰める様子に、
思い出に浸ることすら苦痛なのだろうと察しはした。
けれど日誌に綴られた金貨の正体は己から最も遠い物で、
己の元では思い出を穢してしまうとでも言いたげに。
冷たい指を動かすのを視界の端で捉えながら、
とりあえずは金貨を楽譜台の上へと置き去りにして、
彼を未だ知らないからこそ深い溝を自覚し、苦笑する ]
あの子は太陽のようで眩しいひとだった。
あんまりはっきり思い出せないけれど、
ぼくと似てる場所なんてどこにも……
[ 男にしては細くて高い声音は少し似ているか。
自声に関しては認識が歪んでいそうで、
その想像すらも烏滸がましいと思える眩い陽の少女。
シスターに心配されてお守りを貰うだなんて、
双眸の物珍しさと年齢の都合だけで捧げられた己には、
知りたくもない現実を突きつけられたかのよう。
生贄としての立場は“おなじ”でも、
そこにすら居場所はなかったのだという現実を ]
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