人狼物語 三日月国


74 五月うさぎのカーテンコール

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[やめないで欲しくて髪を掬い、こめかみを撫でる。]



[見上げられて、視線を感じた途端に顔を横に向けた。

見つめられたならいつでも真っ直ぐ見返そうと思っていたはずが。
ただあやすように宥めるように撫でられたのとこれは違う。
触れられて感じている顔を、どうしていいかわからない。]


……ま、まだ だいじょうぶ、


[まだ。の単語が。頬に熱が上る。
赤面してばかりだ]

ジンさん、触る方は、平気なんです?
いやじゃない?


[羞恥で逸らした顔を戻すタイミングが掴めない。視線をゆらゆらと泳がせた。*]

ま、そーね。

[触ってくれないとわからない。
 つまり、まだいい、まだ問題ないということだ。
 さて、女を愛撫するようにはできるが、それで麦に欲を齎すとは限らない。
 なら、さっきまでの麦の手付きを思い出すだけ。
 ゆるり、ゆらり、円を描くように。腰の揺らめきをイメージするように丸く撫ぜる。]

[小さく強ばる身体に手を止めようかと思うも、先を促すように麦の指先が動く。
 逸らされる視線。まったく無反応、というわけではないように思うが。]

まだ? ……ほんとうに?

[言う割に、顔はこちらを向かないが。
 自分の口元がにこりと笑うのを自覚する。]

そーね。どっちかっていうと、うれしーかな。
ちゃんと感じてくれてるな、とか、そーゆー気分。

[自らの手で乱れていくさまを見るのは、見ていて悪くないものだ。
 欲情されること自体が嫌なのではない。むしろ、悦んでほしい。

 膝を張って身体を少し離せば、シャツの中の手を前に回す隙間もできる。
 胸元から、腹の方へ。つい、と一本指でなぞった*]

んん……
ほんと、  へーき 、


[ぞわぞわ、腰の上に描かれる円環がずっと細波を生んでいる。
平気ではないかもしれない。
熱は集まる感じがあるがキツくはない。そう答えた。
ただ、今はアルコールに神経が浸かってるのと、さっきガス抜きしたばかりだからなだけかも。]


だいじょうぶ
気持ちいい…けど、まだ


[顔ごと目を逸らしておいても、とろとろに表情が崩れていくのは隠せない。
片手は彼の髪から肩へと撫でるまま、片一方の手でとりあえず、口元だけ覆った。]

触る方は平気で、
嬉しい。ですか?そーゆー気分……


[わかんない、という顔。
体が離れてまた空気の流れが変わる。咄嗟に寂しさが漏れた声は、
シャツの中で動いた手の感触に、色を変えた。
ヒュ、と喉を息が擦る。]


  っぁ、 ──


[背中を少し丸め、瞼をきつく閉じる。]


今のは……だめ かも、 です

……逆なら、良かったんですかね。
俺は、尻に触られても、へ 平気、だし。
ジンさんは俺に、こういうことしても、平気だし?

逆だったら、いっぱい触れあって、一緒にいられるのに…


[目を瞑って、境界線を探る。そこにある。見えてなくても侵せないラインが。*]

そー。嬉しいかな。
こんな俺のこと、6年も想ってくれてた麦に、麦が悦ぶことしてあげられてんのかな、って。

[これくらいの愛撫であれば、手遊びの範囲だと思う。
 こちらが狂わされているわけでもなければ、直接性欲の標的に立たされているわけでもない。
 ――というのは、場数ばかり踏んでしまった大人の言い分なのだろうか。
 喋りながら手を動かせば、息の詰まるのが聞こえる。]

……ん。そーね。今のはちょっとわざとやった。

[きつく瞑られる目を見て、シャツの中から両手を抜く。
 裾をおさえるように、そっと撫で整える。波を耐えるのを、見つめつつ。]

俺さ。
麦のこと、すきだよ。

[程度の差は、あるのだろうが。
 それでも、階段ひとつ以上は登った。一番上にいる麦のところに手は届かなくとも、今は、他の誰よりも。]

俺のこと、好きって言ってくれて。
俺のこと考えて、手を尽くしてくれて。
うまそうにメシ食って、一緒に酒飲んでくれて。
触って、抱き合って、キスして、それで俺の一挙手一投足に赤くなって。
かわいくないわけないんだよな。好きになるわそんなの。
正直別に、興奮して勃ってんのも、嫌なわけじゃない。

それがこー、俺に入んの? と思うと、ちょっとビビるけど。

[それを意識するかしないかが、境界線。]

[そっと、やさしく、宥めるように麦の髪を撫でる。
 やわらかくて気持ちいい。]

そー、ね。……逆なら、良かったかもね。
俺に抱かれたいとは、思わない?

[及び腰の結果で選ぶ選択肢ではないのだろうし、勃つか勃たないかでいうと、まだ勃たないの方に天秤は傾く。
 けれど、吐息に、痴態に、興奮はした。尻を開く覚悟が決まるのと勃つのとでは、後者のほうが早そうな気はする。
 それ以上に麦の手練手管が上だったとしたら、わからないが*]

[腹筋に力を込めて、乱れた息を整える。
わざとと聞けば、あっさり反応した自分が生熟なようで恥ずかしい。
身体が離れたことで空いた隙間を見下ろした。そこにあるものの差を考える。

急いで大きくなっても必死に駆け登ってもこんなに違う。
麦にとってはたった一つの恋だけど、彼はほかの愛を知ってる。
段階は幾つ踏めたんだろう。ジンさんはもっとずっと上の方にいて、受け入れてくれて、試させてくれる。きっと好意をもって。
気持ちだけでは手が届かない。]


……


[そんなことを考えていたから。優しい雨みたいに落ちて二人の間に溜まった言葉に、驚いた。]



すき?  ……ほんとに…


[語られるのは”麦”の姿だ。
ジンさんが好きで、大好きで、少しでも近づきたい自分の姿。
かわいくないわけない、って。]


ほんと……


[ビビると聞いてちょっと笑った。
ほんとに?ジンさんが俺にちょっとビビってる?
小さな拒絶の、壁の意味をやわらかい言葉で教えられて、嬉しい。懐の内を明かしてもらえていると素直に信じられた。]

[それから。
髪を撫でる手に心を預ける。下腹に凝る熱はあるけれど。
もしこれが逆なら、ジンさんが触れられても大丈夫で、俺が変な欲情しないなら、もっと、って。
馬鹿げたことを言ったもしもに、返ってきたのは想像と違う「逆」だった。]


え……


[しばらく黙ったあと、
わかりません、  って途方に暮れたような声が出た。]


考えて、なかった、デス。

[抱かれても良いっていうのは、尊敬と親愛の情の形の亜種で、雄同士でも発生し得るものだって、聞いた。
それなら俺は、できると思う。]


わかりません、けど、でも。
ジンさんは…俺みたいにならないでしょ……?


[相手を抱きたいっていうのは違うはず。
だってあそこは意外と繊細だ。性的に興奮しない相手を受け入れたりできない。

一度、二度、瞬いて、テーブルに手を伸ばした。
水とウィスキー。指が迷って、水のグラスを取って飲む。
ソファから降りて、テーブルを押しやって、ジンさんの足元に膝をついて座った。
向き合う形の脚にそっと手を乗せる。]

ジンさんが俺を抱きたくなったら、俺は抱かれたい、かも。


[普段の角度とは違う、見上げる形、挑みあげるような。
脚の間に体を割り入れるように擦り寄って、口を開いた。]


これは、どうですか?試してくれますか、
俺を相手に…したくなるかどうか。


[女の子ともする行為だ。
したことはないけどされたことはある。だからきっと彼にもあるはず。ビビるようなことじゃない、はず。*]

 ……ん……、……

[小鳥の啼く声で目が覚める。
障子の向こうは太陽の明るさを伝えて、朝が来たことを教えてくれる。
眠気でとろりと落ちてくる瞼を何とか持ち上げながら、隣へと視線を移したらまだ眠っている横顔が見えて。
幸福感で胸いっぱいになりながら、伸び上がるようにして顔を覗く。
彼の身体の上に乗って、少し体重を掛ける。
寝起きで解けた髪を耳にかけて、邪魔にならないように。]


 基依さん、朝ですよ。
 起きて……?


[とは言うものの、まだ自分自身も布団から抜け出せずに彼に身体を寄せる。
寝ぼけ眼の彼の目が覚めたなら、おはようのキスをねだろうか。**]

[少し驚いた顔をするのに、ああやっぱり伝わってはいなかったんだなと思う。
 それはそうだ。勝手に自分の中で感情を作って、口に出さなかった。
 温度差の高い方から自惚れろというのは暴論だろう。]

ほんと、ほんと。
同情とか、ただ好かれてるから対応しなきゃとか、そーゆーんじゃ、ない。
一番最初からそうじゃなかったかはちょっと、何とも言えないけど……

でも今は、ちゃんと麦がかわいい。好きだから、喜んでほしい。
単純かね。

[数日。たった数日のことだ。
 6年前のことがあるとはいえ、ほとんどまっさらで、何にもない状態から始まって。
 まずは雇った。面白いやつだと思ったから。
 やたらと懐かれていると思ったのはすぐ。うまそうにメシを食うなと思ったのもその直後。
 その時点でかわいいやつだとは思っちゃいたが、好意としてその感情を示されたのはつい先日だ。
 それから今日に至るまで、何の変化があったかと言えば――自然な流れすぎて、具体的に口にするのは難しい。
 意識して見るようになった、それだけかもしれない。
 ただそれは、愛おしさとして芽を出すに充分だったということ。]

[ビビってる。弱さをさらけ出せば、笑みが返った。俺も笑った。
 麦が抱く感情を拒絶してのことではないと信じてもらえるなら何でもいい。]

え。

[「逆」の意味を取り違えたことに気づけずに、何度か瞬いた。
 奇妙な間が生まれる。
 欲の火は消えず、受け入れる勇気の見つけ方はわからず。
 現状はすぐに変わらないと思ったから、より現実的な方を、と思っただけなのだが。]

……はは、そーだよなあ。
あんま、抱かれる前提で恋する男いないわな。

[やや空虚に笑う。]

どーかなあ。

[実際に、繊細なそこは眠ったままだ。
 微かにちりちりと、肚の底が焦れるような感覚はあるが。]

けど、さっき俺の手に興奮してる麦がエロいなと思ったのは、ほんと。
顔必死に逸らして耐えてる麦が、やらしーと思ったのは、ほんと。

すぐに、はわかんないけど、正直勃つか勃たないかって言ったら、勃たなくなさそうだな、とは?

[種はある。愛おしい思いが芽吹いたように、その種はある。
 いざ性欲を前にして尻込みしてしまう身体では、実際問題どうなるかはわからないが。]

[テーブルは押し込まれる。
 床面に座る麦を見下ろす。
 酒精に蕩けかけた頭が、犬みたいでかわいいなと、甘えの一環として受け入れそうになったけれど。
 股の間に割り入る姿勢に、別の意図を知る。]

――お前は健気だねぇ。

[見上げてくる頭を、そっと撫でた。]

いいか悪いかで言えば、別に嫌だとは思わない、かな。
今のところは。

けど、今の俺がそれに応えてやれるかはわかんないよ。
悲しいことに身体は正直だし、酒はいってるとなかなか勃たないし、俺ももう麦ほど若くないし。

それと、今勃っても責任が取れない。
そのまま口でされてぶちまけんのも申し訳ないしなあ。

[ゴムとローションくらいは探せばあると思うが、他の諸々がいろいろと欠如している。
 せっかくのいい酒に水を差すこともあるまいと思っているが、どうだろう*]

――翌朝――

 んぁ……?

[呼ばれた気がする。
身体に感じる自分のものではない体温と柔らかさを抱き枕のようにぎゅっとしてから、左右に首を振って。]

 いま、何時……?
 朝飯は運んできてもらうんだったっけか……?

[瞼が開かないまま、紫亜の身体を完全に上に抱き上げる。
朝なので仕方がない変化はまあ何も言わないでおけば知らんふりをしてくれるかもしれない。

昨夜遅くにトイレに行ったついでに軽く入浴と歯磨きをして、酒は完全に抜けていた。
だから今ぐだぐだしているのは、二日酔いではなく、単なる堕落である。]

[朝食を食べないという選択肢はない。
この旅館の朝食はたくさんの小鉢に少しずつ入った各種のお惣菜で、もち麦ごはんにとろろもついていて、食べるのをとても楽しみにしていた。
だから、起きるという意思はある。]



 紫亜ー、 おはよ〜……


[声には出してみた。
ねだられるなら、キスも。
続けていれば頭は覚醒するだろうか。

寝ぼけ眼のまま紫亜の髪をかき混ぜて両耳を塞ぐ形で頭を固定し、少し上体を浮かせて唇を迎えに行った。*]

やらしー……


[なんとなく、シャツの裾を下に引っ張った。めくれていたわけでもないけれど。]


勃たなくはなさそう、ですか。


[どーかなあ。って。
つまり彼にもきっとわからないのだ。わからない同士。]


[ジャージの布越し、腿に乗せた手を緩慢に動かす。
撫でるというほどでもなく。
なるべく、下肢を押し開かせるような力を加えないように、指先で摩る程度。

頭を撫でられるのは好きだ。うっとりと目を細める。]


嫌じゃないなら。試してみませんか。


[応えてやれるかわかんない。そう続く言葉に頷いて、首を傾げて、と曖昧な相槌。]


もし、よしやろうって、気合入れて、
準備万端でダメだったら凹みませんか…。俺、凹みそうです。

今なら、飲んでたもんねー、急ぎすぎたねぇって。
また今度って。
落ち込まないでまた「次」の約束ができそうな気がします。


俺も、単純だし。ジンさんが好きだから、喜んで欲しい。
試してみて嫌だってわかったら諦める。

責任、ええと。
……口に出して良いです、し。
申し訳ないとか──


[責任の部分があまりピンとこなくて、そんなふうに言った。]


……あ!
もしかして、 不味い?

 




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