人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:

全て表示


───時を戻して。

片手には綿あめ、りんご飴、(5)1d6(1)1d6飴を指に挟み、もう片手には金魚と水ヨーヨー。側頭部に狐面をつけた、フルアーマー装備の機体もかくやという状態になった卯波。

所かまわず撮った写真がカーディガンのポケットいっぱいに詰め込まれている。

「盆の最終日、そのお祭りの日。
 そんな時にする事と言えばひとつに決まってます」

盆の祭りは、生者と死者がもっとも密接な位置に近付く日。

慈姑婆ちゃんが出迎えてくれたのはそういうことだろうし、

だからもしかしたら呼子姉も着てるのかもね。


りんご飴を当社比大き目な口でかぶり付き、
祭囃子の音へと近づいていく。

世にも珍しいゴイチ飴を、器用に写真に撮った。

メモを貼った。

メモを貼った。


「今では、帰省した人たちの再会の場として、
 夏を楽しむお祭り行事にでもなっていますけど。

 盆踊りは、帰ってきた霊や、
 行き場を失くした魂を、
 安らかに踊り出すための舞、って言われてます」

十六夜の暮れ。提灯や覗く月灯り。
賑やかな人の流れ、喧騒に従って、
中心へとどんどん、距離を詰めていく。

近付くにつれ響きを増す、笛や太鼓の音。
飴を食べ切るまでは混じれないが、
それでもぽつぽつと人が踊りに集まって来る。


「貴方も寂しかったんですね、婆ちゃん」

 そう、祭囃子の端に佇んでいる
気がする

 皮肉気な笑みが素敵な彼女に声をかける。

 孫に情けない姿は見せられなくてね、
 なんて素直じゃないことばが聞こえた気がした。

メモを貼った。

彼らと花火を見終えたら、盆踊りに混ざりに行くだろう。

【置】 警部補 添木

添木には何もない。

両親の写真は、一枚もなかった。
一枚だけ祖母がとっておいたものを、見もせずにキッチンで焼いた幼いころ。

自分を捨てた大人なんかと、自分が繋がっている由縁を、一つたりともこの世に残したくなくて。

あんたは優しいけど。
ずっと前にいるのに、時折振り返って笑ってくれた。
ずっと一緒に過ごせるんじゃないかって、そう思わせてくれた。

嘘つきだ。
あんたは嘘つきだ。
本当にひどい。

でも、今度はその嘘を俺が引き継いで、誰かに背中を見せてやる。
こうしないと、きっと救われない”誰か”がいる気がすんだよ。



これでいいよな。 これでいいんだ。 きっと。
(L15) 2021/08/16(Mon) 13:22:55
公開: 2021/08/16(Mon) 13:25:00
添木は、寝たフリをした。少しだけ、泣いた痕が残っても、多分気付かれないだろうから。
(a24) 2021/08/16(Mon) 13:24:06

【見】 天狼の子 夜長

【祭り、どこかのベンチ】

 夜長は祭りの中、藍鼠の甚平姿。食べ終わった飴の棒を、行儀が悪いなと思いながらかじっている。つまようじみたいな味と、しみ込んだ飴の味。嫌いじゃなかった。

 雅也さんに、もう母さんを探さないでいいと言われた。母さん、ここに来ていないんだな、と思った。雅也さんも言い切れない何かはあるみたいで、ちゃんとは言われていないが……そうだと思えば、本当なんだろうなと。

 母さんが約束をなかったことにするなら、ちゃんとした理由があると思うから。
 

 探して探して、俺でない他の人も、本当に誰も見ていなかったから。
 

 いくらかくれんぼが上手でも、日が暮れたらみんな出てくるものだから。


 父さんに怒る理由が増えたかもしれない。母さんがここに来ていないのなら、父さんの方が嘘をついていたことになる。雪子さんはこの村に来ていない。ああ、晴くんの方が先に来てしまった。モモチと同じで、母さんは気にしないだろうが。
(@2) 2021/08/16(Mon) 16:04:24

【見】 天狼の子 夜長

【祭り、どこかのベンチ】

 自分ひとりで考えて、自分ひとりで決めて、ここに来た。大人になったら、全部じゃなくても、そうやって自分で決めることが増えると思って。大人になったら、出来ないことがたくさん出来るようになるとも思っていた。

 でも、けっこう出来ないことは出来なかったな。怒っているからあまり考えなかったが、父さんだったら上手く出来たのだろうということはいくつもある。

 あの人も晴くんみたいに、誰かに迷惑をかけてごめんなさいをして、助けてもらってありがとうをしていたことはあるんだろうか? 今度話してみようと思う。怒るのが先だが。
(@3) 2021/08/16(Mon) 16:04:45
夜長は、人を見ているのが好きだ。話を聞くのが好きだ。思い出に触れるのが好きだ。だから、
(t9) 2021/08/16(Mon) 16:04:55

夜長は、ひとりでもけっこう、この祭りをたのしんでいる。でも、
(t10) 2021/08/16(Mon) 16:05:04

夜長は、誰かと一緒の方がもっとたのしいだろうなと思った。
(t11) 2021/08/16(Mon) 16:05:11

【見】 天狼の子 夜長

【祭り、どこかのベンチ】

 「みんなでいて、たのしくないこともないと思う」

 だからみんなのいる所に来ていたつもりだが、みんなはそうでもないのだろうか? 今日見ていない人は、俺が見ていないだけならいいと思う。

 かくれんぼじゃないが、隠れている人はいるかもしれない。なんとなくそんな気がした。動かないでじっとしているだけじゃなくて、ひとりで歩いて鬼
-誰か-
から隠れている人も、たぶん。

 隠れている人も、隠れていない人も見つけに行こう。鬼は得意でないが、そうしたいので。それが今の俺の、祭りをたのしんでみるだと思う。
(@4) 2021/08/16(Mon) 16:05:56
夜長は、ベンチを離れて歩き出した。見つけられるだろうか。
(t12) 2021/08/16(Mon) 16:06:08

夜長は、慈姑に手を振った。
(t13) 2021/08/16(Mon) 16:09:09

夜長は、ばあちゃんは祭りをたのしんでいるのだと思った。振り返ってどこかに行く後ろ姿が、ご機嫌そうだったから。
(t14) 2021/08/16(Mon) 16:09:26

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>67 鬼走 【四日目/夏祭り】

「……あー、うん」

 頬を掻いて一度、返答のなりそこないのような声を発した。
 とはいえ何か言葉に詰まるような事があるでもなく、ただ
 そんなふうに見えているのか、という思いがあるだけで。

「うん、つまんないよ。
 …てよりは、寂しいかなあ。
 一人でご飯食べるのって味気ないじゃない?
 多分、そういうことなんだと思う」

 それが本来どんなに楽しい時間でも、一人では味気ない。
 それがあなたにとって共感に足る心情かはわからないけど
 一般論としては理解の及ぶものではあるはずだ。

 そんな例題を一つ挙げて、だから大丈夫と笑って見せた。
 だってもうすぐ、一人ではなくなるから。
(71) 2021/08/16(Mon) 16:10:43
『青嵐って悩みなさそうだよな』

これは恐らく俺が最もよく言われる言葉。

初めて言われたのはいつだったか
もう覚えてはいないけど。
確かに特に深く悩んだこともないし
何かに悩まされたこともない。

だから去年部活で県大会で負けて全国行けなかったときに、
3年にとっては最後の試合だったからどうにか先輩を励ましてやりたくて冗談言って笑わそうとしたら
「悩みないやつはお気楽でいいよな」

って言われたことも全然悩んでないし、

俺に求められてたのは表面の賑やかしだけだったってこともすぐ悟ったし、それから人の悩みとかにも深く突っ込まないようにした。
俺って立場弁えてるからね。

「……今が楽しければ、なんでもいいよ、俺は。」

皆だって、それを求めてるんだから。

【人】 影法師 宵闇

>>68 >>L14 >>69 >>70 御山洗

──瞬き。

嗚呼、軽率だったな、と男は悔いた。
目の前の友人は、海で手を引いてくれた時と同じ目をしていた。

宵闇 翔にとっての御山洗 彰良は、幼い頃からの友人だ。
清和とぶつかり合っている中に無理やり引っ張り込んで
自慢していつも困らせているような。
けれどそれでも付き合ってくれて、影で頑張ってくれるような。

──今でも、そうだ。

御山洗の言う好き、とは違っても。
ただ、大事な友人であることは確かだった。
何年経っても、再会できて過ごせたことは
この夏のひと時は、安らぎだった。

今の宵闇 翔は今にも夢に縫い付けられそうな
"かえりたくない" "このままでいたい"
そういう思いでいっぱいの、だめな大人だった。
その夢が崩れていく音がして、ほんの一瞬、迷子のような妙な顔をしてしまった。
いつもの余裕で取り繕うことが、できなかった。

耳に届いた掠れた音が、苦痛を堪えるように目を伏せる姿が
いつまでも焼きついていて、
気付いた時には、距離が離されていた。
男は、ただ無表情でその場に立ち尽くしている。
(72) 2021/08/16(Mon) 17:54:17

【人】 影法師 宵闇

>>68 >>L14 >>69 >>70 御山洗

「なあ、アキラ」
「……俺が、好きだって言ったな」

確かめるように、呟く声は夜の海みたいに、静かだった。
大きな体で小動物のように震える男を前にして
まるで怯えさえないように、静かに言葉を紡いでいる。

「そりゃあ、さすがに驚いたよ。
 けど、"今までありがとう"?別れの言葉に聞こえるなー……
 だから俺と付き合いたいとかじゃないのかい」

わざとらしい、いつものような調子を作る。

「俺は、切り替えのできる大人ではあるが。
 "はいそうですかさよなら"って今のやりとりで
 友人捨てられるほど、薄情でもなかったらしい……」

「来なければよかった? なぜだ? 俺が好きなのに?」

「……どうして、逃げる? 俺が好きなのにかい?」

「なんで、そんなに怖がってるんだ」
「教えてくれないのかい、俺は聞きたい」

「話がしたい」

無責任なことを言っている自覚はあった。
(73) 2021/08/16(Mon) 17:57:24

【人】 影法師 宵闇

>>68 >>L14 >>69 >>70 御山洗

「──本音を言うとお前とこのまま別れたくないだけさ。
 ……さよならするなら、納得がいってからがいい」

男は、まるで昔の諦めの悪い少年のような目をしていた。

「俺、この田舎にずっといれたらいいなって思ってるんだ。
 ここにいたら忘れてしまった大事なことを取り戻せそうで。

 ……帰りたくない、お前は、そうは思わないか?」

──そんなことは無理とは、どこかでわかっているのに。

今の宵闇 翔は今にも夢に縫い付けられそうな
"かえりたくない" "このままでいたい"
そういう思いでいっぱいの、だめな大人だった。

男はあなたが本音を言ったのと同じように、本音を返してやった。


「……祭りには一人で行くよ、それは言う通りにする。
 けど、──急に、いなくならないでくれよ。
 俺がまた海に落っこちたら、そのまま沈んじまうかも」

笑顔を作る。

「"またな"」

男は一方的にそう言い放って、背中越しに手を振った。
(74) 2021/08/16(Mon) 17:59:29

【置】 学生 涼風

拝啓

 夕涼みにほっと一息つく、晩夏のきょうこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

(中略)

 今の私は沢山の欠片を持っています。
 例えば、こうして便箋を手に取ってペンを持った時。
 例えば、どこかの街で賑わう夏の祭りを目にした時。
 やはり私は昔を思い出すのです。皆と会ったあの頃を。

 いなくなってしまった人を思う度、美しい思い出たちはガラスの破片となり、振り返ろうとする私の足に噛みついて鋭い痛みを与えてこようとする。
 痛みに泣いて、蹲って、砕けてしまった思い出をかき集めて抱きその場から動けなくなってしまったら、きっとどれほど楽だったことでしょう。

 でも、優しい夢に囚われ続けるのであれば。
 完璧な形でないといけない、そう思いませんか?
 いてほしい人がいない甘い夢では、いない人の事ばかり考えてしまうもの。弾き出されたその人が寂しい思いをしてしまわないかと、私は気になってしまうのです。
 だから私はここにいる。こうして貴方に手紙を出す。寂しさが少しでも埋まるように、お裾分けできるような思い出の欠片を沢山拾いながら。

 生者のエゴだと思いますか?ええ、きっとそうでしょう。葬儀とは、弔いとは、死者のために行うものは、生者が己の心の整理をする為にあると言われるほどですから。

 じゃあこの手紙も送るのをやめましょうか?なんてね。
 エゴかどうかは、生ききって私も死んだ先、貴方と合流してから答え合わせをしましょうね。
 それまでに土産話を沢山用意しておきますから。

(中略)

敬具 

  20××年 8月××日
涼風薫 
(L16) 2021/08/16(Mon) 18:42:39
公開: 2021/08/16(Mon) 19:00:00
涼風は、相手の手を優しく握り返す。
(a25) 2021/08/16(Mon) 18:46:32

涼風は、ふらりゆらりと歩き出す。からん、ころん。下駄が鳴る。からん、ころん。それは遠くへ。
(a26) 2021/08/16(Mon) 18:47:36

百千鳥は、その手を握って、喧騒に背を向けた。
(a27) 2021/08/16(Mon) 18:56:02

百千鳥は、ずっと前から、全ては夢だと知っていた。
(a28) 2021/08/16(Mon) 18:56:16

百千鳥は、見ないふりをしていただけ。
(a29) 2021/08/16(Mon) 18:57:31

涼風は、ただ寄り添う。寄り添って、二人でそっと抜け出して。
(a30) 2021/08/16(Mon) 19:00:10

涼風は、ようやくここが夢だと気づいた。それでも、何も言わずに貴方と並んで歩く。
(a31) 2021/08/16(Mon) 19:01:08


「いつかの未来。
 やがて今≠ノなる日。

 そこになって、楽しくなくなって、
 そこでやっと後悔したら遅いんですよ」

本当にそうだろうか?
編笠晶も、竹村茜も、一ノ瀬卯波も、
そうあることを望んでいるのだろうか。

聞こえてきた言葉に、
面と面を向かって言うでもなく、
遠くを見ながら、声を発している。

「俺は一度諦めた。でも後悔は絶対にしない。
 夢が叶わなくても、
 それは夢を持っちゃいけない理由になりませんから」

風を受けて色をつけた写真を覗き、
四人が枠に収まってることにうんと頷く。

何度も皆を撮りに行く。
そして、何度でもみんなと遊びたい。

「うかうかしてると、
 今度は俺が皆を置いていっちゃいますよ」

そう言って、花火のあがる方へ一歩踏み出し、
嬉しそうに振り返って、笑い続けるのだ。

時は先へ。

飴の食べ切った棒を捨て、
金魚とヨーヨーは暫く預かってもらい、

写真の詰まったカーディガンと、
祭りの淡い光で良く映える紺色の浴衣、
どこか怪し気な狐面を斜めに被って。

待ちに待った盆踊りへ、向かう。
十年前と何も変わらない懐かしい民謡が、
あまりにも懐かしすぎて笑ってしまったりして。

そういえば、失敗しないように、
こっそり練習したりもしたっけと思い出して。

首から揺れるカメラを片手で持ち、
その上から軽く手を叩いて、空へ向ける。
踊るのは久しぶりなのに、
身体が覚えているのもなんだかうれしかった。

「…置いてかれるのはやだなあ」

わかっている。
夢の中にいつまでもいられないこと。
これが現実逃避だということ。

竹村茜は知っていた。

「みんなで結婚出来たらいいね、ほんと。
 そうじゃなくっても、また違うところのお祭りとか…ううん、何もなくたって集まりたい」

 約束をした僕たち

「格好いいって言われたくて頑張ってきたのに。
 慰められちゃった、あーあ……」

ありがとう、小さな言葉で呟いて。
涼しげなあなたの髪にすり寄った。
まるで恋人のような仕草は青い夏の中では絆を確かめ合う行為だ。

「約束、しよう。涼風。
 夢も将来も、これから一緒に。
 ――あの頃みたいにいっぱい話そうね」

やっと会えたのだ、奇跡のようなこの時間。
夢を、やりたいことを後悔をしないように。
誰かが与えたチャンスだったんだ。
今だけは不思議な時間に浸りたい。
そんな気持ちで感じた温もりは、涙が出そうになるほどあったかくて。
独り立ちなんて、暫く出来そうにないって、答えを先に知ってしまった気分だった。

涼風。涼風くん。夕凪達とも遊んでよ。
射撃でもいいよ、それとも何か食べたいものでもある?
今度は三人で、ううん、もっと多いかも。
僕ら双子はみんなを連れ回しちゃうからね。
大勢誘って。また。
もっと笑える思い出を語り合おう。これからもずっと。

>>編笠

「さみ……しー……なー」

 大事な友達と再会できたのに。
 夕凪に楽しい夏を与えると決めたのに。
 やっぱり隣に誰かがいないと寂しいんだ。
 何故か心の何処かでもうすぐ終わってしまいそうな気がする。

 "あの狼の子"が寂しがっているのがわかる。
 自分と似たような感じがした、あの子。
 大事な誰かに隣に居て欲しかったあの子。

 突然傍にいなくなる寂しさや辛さを、
 思い出してしまったのが運のツキだ。
 夢ならば都合よくずっと夢のように過ごしていたかったな。

 なんだか心まで女の子になってしまうのかもしれない。
 だけど、いまこのままで聞きたいことがある。

 聞いておかないと。

「よっし。編笠を探そう」

 たとえ、この夢が終わったって。
 伝えたいことは変わらないけれど。
 動かなければ始まらないよね。

【人】 少年 編笠

>>+50 夕凪
膝までを、川の水につけて。
夕凪と、ここで初めて会った場所で空を眺めている。

まるで一秒前にはここにいなかったような、そんな心地があった。
髪の毛が少しだけ濡れていて、犬のように頭を振ると、
そのわずかな水滴が水面に輝きを零す。
裾を絞ると川の冷たい水がぼたぼたと元の流れに戻っていく。

「……夕凪の姉さん」

声を掛けると、彼女はそこにいる。
探し始めたらすぐに自分が見つかるのと同じで。
出会いたい場所に自分が存在して、出会いたい場所で出会える。

夢とは、そういうものだから。

「何か用かい」
(75) 2021/08/16(Mon) 20:14:31

【人】 さよなら 御山洗

>>72 >>73 >>74 宵闇

「……ひどいやつだな、お前は……」

喉の奥からほとんどつっかえて出てこないような涙声が、ようやく震えながら音を成す。
なぜかだなんて。克明に思い出さずに済んだなら、この想いを風化できたからだ。
どうしてかだなんて。そんな気持ちを抱いたところで叶うわけが無いのを理解してるからだ。

目の前の彼が思うよりもずっと不届でみっともない願いを抱えて、
唄うような声もはしゃいでる声もとぼけたような声も、
長い前髪から覗く目もろくに体を作れるものを食べてないような細さも、
全部どうしようもなくこの手に掻き抱いてしまいたくて、そんなのは、お前には向けるべきじゃない。
"友達"だと言うのなら、こんな不自然な気持ちは最初から持つべきじゃなかったからだ。
抑えられないくらい好きな自分が、夢に見るくらいに好きな自分が、
自分では制御できない怪物になったようで、自分から思い出を守れないのが、恐ろしかったからだ。

宵闇の思いと御山洗の想いは全く違っていて、それはどちらも両立することは出来ない。

「俺は……」

首を横に振る。同じ思いを、抱けなかった。
ここにいたら、綺麗なまま額に入れてとっておきたかった大事なことを壊してしまう。
此処には居られない。いてはいけない。思い出に触れないまま、しまっておきたいと願う。
帰ってよかったと思う気持ちより、帰ってこなければよかったと後悔する愚か者は、
永劫の花園にはいられない――帰りたくないなどと、思えない。
このままでいることにも、ここままでいられないことにも、何もかも耐えられなかった。

(76) 2021/08/16(Mon) 20:14:32

【人】 さよなら 御山洗

>>72 >>73 >>74 宵闇

遠ざかる足音を聞いている。
そのうちに、力が抜けてずるずると落ちていくように壁に背を凭れて崩れ落ちた。
声を抑える。息を止める。言うことを聞いてくれない瞼を指で押さえて。
出ていく宵闇に、すすり泣く声が聴こえていないようにと、蹲って祈った。
蝉の声が遠く遠くに聴こえる。
(77) 2021/08/16(Mon) 20:14:40
 編笠

「うん、探してた。どう? 浴衣似合っているかな。
 みんなに褒めてもらったから聞かなくても返事はわかってるけれど」

話しかけてくれたのは、暗い顔をした魚を見つけてくれたのはあなただったのに。
今の印象はなんだか黙ってばっかりの人だ。
本当にその口が開くのはいつなのか。
いつまでも待てる気分なのは確かだけれど。

「編笠くん、ここに来て、ここで話してくれたこと。
 ――何処まで本気にしていい?

 夕凪は、夜凪が居ないとすぐに落ち込む寂しがり屋さんで。
 夜凪は、夕凪のことになるとすぐに考え過ぎるお節介屋。

 まだ、夕凪たちのことが好きで。さ。
 代わりになってくれるっていってくれるかな。
 ううん、代わりとかじゃなくって。
 居て欲しいなって頼んだら、隣に来てくれる?」

「…誰も置いてきゃしないって。な。」

不安がるアカネにぽんぽんと頭に軽く手を置く。
こういうの、ガラじゃないって?
うっせー、ほっとけ(笑)

「…卯波には昨日言ったけどさ、今生の別れじゃないんだし
望めば会えるよ、俺は。まぁ受験やら大学で忙しくなるし、
アキラに至ってはどうなるかわからんけど…。」

でも、と続ける。

「俺は何処にも行かないし、俺たちはずっと友達だ。
8年くらいしか村には居なかったけど、
今の俺を作ってるのはその8年間だし
その中でお前たちと会えて良かったって思ってるよ。
…ありがとな。」

最後の花火が咲いて散る。
きっと俺はこの花火を忘れないのだろう。
例え、これが泡沫の夢だとしても。

あ、たまやーっていうの忘れた。

【人】 少年 編笠

>>+51 夕凪
「ああ、似合ってる。
 祭りの最中にばったり会ったら、
 思わず恋に落ちちまいそうなくらいには」

それは掛け値なしの本音だ。嘘偽りはない。
前髪から水が滴る。虚ろな魚のような目を夕凪に向けた。

「……………。
 夕凪の姉さん。
 
 多分な。
 もしここじゃなけりゃ。
 もし今じゃなけりゃ。
 もし俺が俺じゃなけりゃ。多分任せとけって言ってたと思う。
 初恋の残滓だって、火を付ければそれなりに燃えるはずだからな」
(78) 2021/08/16(Mon) 20:40:29

【人】 少年 編笠

>>78 夕凪
視界の中の風景は、過去を移す。
憧れであり、淡い思いを抱いていた相手の姿が、
憧れであり、追いかけていた背中である誰かが、
今の夕凪に重なる。

「でも、ごめん。
 俺はここで、嘘を吐くことに決めて。
 だから、その嘘に今縛られてんだ。

 ……ここにきて。
 俺のことを好きって言ってくれたやつがいるんだ。
 でも俺は、応えられなかった。
 答えすら与えてやれなかった」

それはもう実感としてあるかもしれない。
この世界が、誰かの思いで紡がれていることを。

「"夢"が"夢の中"である限り。
 俺にとっては、それは"夢のような言葉"なんだよ。
 黙ってようと、思ったんだけどな……」

そしてそれを自覚した今。
この夢の時間が綻び始めていることにも気づいている。
(79) 2021/08/16(Mon) 20:42:14

【置】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
 ここが都合の良い夢だなんてわかっていた。

 慈姑が姿を消した時に、あの人は夢に還ったのだと思った。
 姿を消しては現れる夕凪や卯波を見て、
 そういうものなのだと思った。
 夢の中で何の根拠も無く、けれど確信じみてそう思うように。

 居なくなった人も確かにここに居て、
 決してどこかへ消えてしまったわけではない。
 会おうと思えば会いに行けて、一緒に遊ぶ事だってできる。

 今はここに居ない人も、きっと見えないだけでここに居て
 ここで待っていればいつか、
 せめてその面影に触れる事は叶うと思っていた。

 皆に会いたいと願いながら亡くなった姉が寂しくないように。

 あの頃のままのみんなと一緒に、
 あの頃のままの村を保って、待っていてあげたかった。
 それは決して叶わないという現実に見ないふりをして。

 夢を見せるなら、最後まで騙していてくれたらよかったのに。
 
(L17) 2021/08/16(Mon) 20:46:45
公開: 2021/08/16(Mon) 20:50:00
「ふふふ、みんながついてきてくれたら、
 置いてくこともないですかね〜?」

なんて、意地悪なことも言ってみたり。

「みんなが忙しかったら俺が会いに行きます。
 幸い、漸く進路が決まったところで、
 全然時間がありますからね。

 俺もみんなと会えてよかった。
 この田舎で生まれて本当に、よかった」

自分らしくあれるのは、
この田舎の人たちの前だから。
性別とか、そういうしがらみから離れられる。

最後に咲いた花火も、四角形のなかに切り取った。

【置】 さよなら 御山洗

「――……ああ」

バカだ、と。やってしまったな、と思った。
今まで自分が大事にしてきたものは、この手で壊してしまった。
今までひた隠しにしてきたものは、この手で暴いてしまった。
思い出は浅ましい思い出塗りつぶされて、曇ってよく見えない。
これが、自分の望んでいた"夢"なんだろうか。
もしもそうなら、とんでもなく悍しい悪夢だ。
それでも俺は、翔のことが。

「……本当に、バカだ……」
(L18) 2021/08/16(Mon) 20:53:30
公開: 2021/08/16(Mon) 20:55:00
涼風は、百千鳥の手を握った。
(a32) 2021/08/16(Mon) 20:55:32

盆の暮れに、盆踊りをする。

御山洗は、恐れていた。怯えていた。今は、後悔ばかりが焼き付いている。
(a33) 2021/08/16(Mon) 20:56:40

田舎を楽しむための行事が、田舎を終わらせることに繋がることに気付いている。

それでも、この田舎のことを愛していた。それだけだ。

花守は、諦めて、諦めなかった。
(a34) 2021/08/16(Mon) 20:59:00

添木は、”遊び”を終わりにする。
(a35) 2021/08/16(Mon) 20:59:10


  編笠

「そっか、……わかった。
 じゃあ、――いまは夕凪と編笠の夢で、一夏の思い出

 難しいことを考えないで」

あなたの思い出と、夢と、夕凪が重なる。
ゆっくりとその頬に手を触れて、優しく撫でた。

「答えられなかったのは、どうしてかなって考えていた。
 はじまりすら与えられなかったのはなんでかなって考えた。
 それは、――なにも物語が紡がれていないから。
 君も夕凪も、黙ったまんまだ――……ねえ、一つだけお願い」

  編笠

「夢から覚めたら、―――本当の気持ち教えてね。
 だって君の物語は今からこれから紡がれていくんだから。

 だけど、"僕は聞いてしまった。"
 このことに関して僕から夕凪に伝えることは多分、一生ないよ」

今伝わっているだろうか、目の前に居るのは。
あなたのことがお気に入りの、ただのお節介の少年だ。

花守は、ウソをホントにする、きっと。いつか。
(a36) 2021/08/16(Mon) 20:59:57