113 【身内】頽廃のヨルムガンド【R18G】
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それは、目の前に居た厭らしい男の影であったが。
それは、気まぐれな祝福という名の呪いであったが。
影は青年に話しかけた。
―――世界の影に、闇に潜む者にならないか。
(この状況から逃れることができるのなら。)
―――見合う対価は、お前自身。
(***の?)
―――髪でも、爪でも、渡した対価は二度と戻らない。
(それならば、***の命以外の全部をあげます。)
目に入る世界の半分、片方の瞳を奪われた青年は姿を溶かす。
彼を探す慌てる声に耳も傾けず、腕を外し、
おぼつかない足取りで外へと出ればまぶしい薄暗い朝日が迎えた。
ここまでは、見事な生還劇と言えたのではないでしょうか。
青年は影を操りさえは出来ないものの、
見えない姿で悪さをしながら生き延びることが出来ました。
彼を襲った男の姿が見えたことから、
封じ込める魔術があると知り、アクセサリー、衣類を試し、最終的に帽子に影をいれることで落ち着いたそうです。
さて、そんなノアベルト、と
掃除屋を名乗るようになった彼は。
その頃からうまく表情が作れなくなっていました。
辛いと嘘でも思えず、苦しげな表情も演技すらすることができません。
そんな男にとって尋問は、
後遺症もなく過ごしたかった環境に不都合であり、結果。
見るにも耐えない姿になるまで、―――というのは嘘であり。
そういう、ことにした
噂
を流しました。
実際、オーウェンの部屋の前に、
いつかの予告通りの大量の血痕と、何故か猫じゃらし。
ノアベルトが借りていた酒場の一室の私物はなくなり、
どうしてか贈り物にしか見えない花の籠が置かれていたことから、
彼が大怪我を負い、
人前に出られない姿である噂が蔓延りました。
それは半分本当であり、半分偽りの噂でした。
男が尋問を免れたことも。
他の彼らと同じ拷問に合わなかったことも。
ほとんどの人物の耳には入らないことでしょう。
首輪を付け、傷と痣が目立つ体で酒場に駆け込んできたアンゼリカは、酒場の群衆のざわつきとどこからか聞こえてくる噂から、師匠の身によくないことがあったのではないかと予感する。彼に何があったかは、知る由もない。
「せ……せんせ……。ノアせんせ、どこ……。」
必死に辺りを見回すも、当然その姿はない。
よろよろとその場にへたり込み、誰にも聞こえないような声で呟く。
「やめて……。もうこれ以上、わたしの……
大切な人を、傷付けないで……。」
「わたし良い子にしてますから」、とお祈りをしている。その対象は神様ではないのだろう。
「その方が見やすいし、声も聞きやすいでしょう」
貴方の当たり前に自身の当たり前を突きつけて崩している気もする。それはそれで良くない事でもあるのだろう。
けれど、やっぱり見限ったり切り捨てたりなんて事はできないだろうなと思うのだ。
「私は意外と寂しがり屋なものでして。
だから隣にいて頂けると、助かります」
視線を下ろした時に誰もいないと、寂しいじゃないですか。
命令のようにもお願いのようにもとれる言葉と共に、そんな言葉を零した。
「…………。寂しがり屋。そうか……」
ふ、と笑い声のような吐息。
「貴方が、そう望むのなら、いなければ、ならないな……」
となりに。やはりどこか居心地のわるさのような、戸惑いが
なくなったわけではないけれど。そう命令されてしまっては、従うほかない。
「……ヘルの望む『より良き日々』とはなんだろうか」
ふいに浮かんだ疑問を投げかける。
「もしこの街がきらいで、壊してしまいたいと、自分の良い日々だけを願う人が革命軍にいたとしたら、どう思う?」
貴方はそれでもあちら側の味方でいようと思うのだろうか。
「そうですとも」
大真面目に頷く。
―――投げられた質問に、緩んでいた口元が微かに歪んだ。
「飢えない事。寒さに震えない事。
病に怯えない事。太陽の下で歩める事。
……皆平等にとは言いません。けれど下層市民が、もう少しマシな生き方ができればいいと思うのです」
『──ある者は、この街への憎悪から。』
誰かの言葉を思い出す。この街はそんなにも憎まれていたか。
「私、この街は意外と嫌いではないのです。
だから、壊されるのは困りますね。自分にとっての良い日々というのも、きっと破壊した上で行われるものでしょう。
……革命軍全体がそう考えるようになったなら。
私はあちらの味方ではいられなくなるでしょう」
政府側にもなれず、革命軍側にもなれず。
そんな立場でやれる事なんて高が知れている。
「まぁ、足掻いてみますよ」
それでも黙って見ている事は、きっとできないだろうから。
「…………そうか。
貴方は、この街が、きらいじゃない、と」
ガルムはこの街が好きかと言えば、わからなかったものだから、同意をすることはなかった。今日のメシも満足に選べないような男は、人の役に立ちたいのだって、それ以外の生き方を知らないから。
「おれも、下層市民が、誰かが、救われることはきっと喜ばしいことなのだろう」
「……けど、同時に、壊されようが、それで救われる誰かがいるなら、それでもいいと思っているおれは、どこか、おかしいのだろう」
政府側でもない、革命側でもない、うつろな存在。
番犬は、はじめてあなたとは明確に違う意見を言った。
「……」
「検討は、ついてきましたが。
今日は
エアハート
を調べてきます」
/*
先に占い先相談失礼します。そろそろフラグを圧し折りたいPLより
| 「詩人さん、まっさきにボコられそぉなのに無事だねぇ? 知ってる情報吐け!みたいなのはしないんだねぇ。 ロッテ政府くんの考えるコトよくわかんなぁ〜い」
カウンター席に腰掛け、つまらなそうに足を揺らす。
酒場に姿を現さない者もいれば、いかにも痛めつけられた様子の者もいる。同情はするし、誰が同じ目に遭えば良いとも思わないけれど、やり口は理解できなかった。 統治とはこのようなものでもそこそこ成り立つのか、と感心すらしなくもない。
「どんどんイキショーチンしてくし、なんかヒマぁ〜。 カニさんでも狩りに行ってこようかなぁ?」 (@2) 2021/12/14(Tue) 13:16:17 |
| 「きゃー、やらし〜い♡ 上が腐ってるならショクムタイマンとかはイミないし、 コジンテキな弱味ってヤツ? マゾとか〜 」 この話題できゃっきゃとはしゃいでも衛兵に睨まれることがないのは、少女の物々しい実績によるのだろう。 結局そんなものだ。 「あ、来るぅ〜? ケガとかしないよーにねぇ♡ シキを上げるお歌とかあったら歌ってほしいなぁー」 椅子を降りて隣の席を占有していたランスを担ぐ。 先日の新聞記事の切り抜きは更新されていた。一日で帰還できるであろう距離まで、ヒュージキャンサーは近づいているようだ。 (@4) 2021/12/14(Tue) 13:35:45 |
| 「脳みそ…会えばロッテのカンにピーンとくる…かも!? チェルちゃんのチテキコーキシン、尊重しちゃお♡ 囮は危ないからダメだよぉー、って言いたいトコだけどぉ。 じっさい気を引いてもらったら助かっちゃうんだよねぇ」 慣れた様子で馬を借りる手配をしながら、指で自分の頬をつつく。 考え事をする時の癖。あまり見られない。考えないため。 「それじゃぁ、ヒマそーな人に声掛けて てきとーにパーティ組んどこーっと。 もーちょっとしたらしゅっぱつ〜! ついて来る人はついて来ていーよぉ♡」 (@5) 2021/12/14(Tue) 14:50:17 |
「ああ……わかった。では、おれは
チェルシー
を探ろう」
さて、これもいつまでつづくのか、次は誰が連れていかれてしまうのか。せめてそれが、貴方ではないことを、祈る。
戻ってきた次の日のお昼ごろ、酒場に姿を見せました。
「ああ、問題ない。
穏便に済んだ。報告する内容も特段ない。
むしろ穏便じゃないのはお前の方だろう。
下手にお前が動いても半端になってしまいだと思うが。
上手くやれる相手を見つけていると言うなら別だ。
野良猫、お前はどうだ。
正直な所、俺は少々気分がすぐれない。
それこそ穏便に終えたのを滅茶苦茶にしかねない。
……誰でも良いと言うなら動けるがな」
/*
噛みに悩む狼窓ですわ。私、凶狼なので仲間噛みもできますけど、噛む理由がまだ思いついてないので、何か提案あればそれも選択肢として使える、とお書きしておきますわ。担当者も悩みますわね。
「本音を言うと、吟遊詩人をいきたいんだけど……
奴はコネで護られてるフシがあるからにゃあ。
全く、好きに尋問もできないなんて。
中間管理職はいっつも貧乏クジばかり引くにゃ。
……接点があるところからいくならミズチでいく。
でも、それは積極的な理由じゃないにゃ。
だから誰か浮かんだらそれでいい、にゃん」
「……この後の身の振り方は、考えなければな。
ここから連鎖して、とかお話にもならない」
/*
こちらも似たようなもんです。一日延長して助かった……と思いつつ、暫定の相手は↑言っておきますね。
「このような場所でも、故郷というものなので」
ロクな場所じゃないとわかりながら残り続け、愛想を尽かして出て行くのではなく変えていけたらと願った程度には。思うところがあったようだ。
「……いいえ。おかしくはありません。
皆救われるおとぎ話なんて、現実で起こりうる事はないんですから。
どちらにも救われる者がいて、どちらにも傷つく者がいるでしょう。
私が片方を選択したように、貴方はどちらでも構わないという選択を行っただけです。
……ガルムの意見が聞けて良かった。
私の選んだ道が誤っていても、貴方を巻き込まずに済みそうだ」
| #蟹討伐―《黄金の海》近辺― ヨルムガンドは砂漠と海の境界に立つ。 豊かなる海を背に砂上船で砂漠を数刻泳げば、金色の岩肌を敷く《黄金の海》と呼ばれる地帯に辿り着く。 普段は体の大きい砂蜥蜴の類や気性の荒い大怪鳥などが闊歩し、隊商も冒険初心者も基本的には避けて通る場所である。 そのモンスター達が今はどこぞに身を潜めている。 “原因”は巨大な図体をゆっくりと――とはいえ、巨体ゆえの尺で決して油断できる速度ではないが――遠く海へと向かわせている。 砂色の発達した甲殻、ひと振りで塔でも崩しそうな鋏。 不意に見上げただけではそのフォルムの正体を掴めないだろう。 ひたすらに巨大な、蟹である。 それが、今ここには2体。 (@6) 2021/12/15(Wed) 0:22:01 |
| #蟹討伐腕に覚えのある冒険者達が砂上船を次々に降りて行く。 リーゼロッテもまた、地上に下ろされた馬に飛び乗った。 「ひゃー、でっかいねぇー! これはお鍋には入りきんないなぁー」 船上を振り返って暢気に手を振って、槍を構えて手綱を引く。 ―――さて、蟹のほうはといえば。 渡りの時期で気が立っているらしく、向けられている敵意に応じんと早くも鋏を振り上げていた。 落とされた鉄槌は地面を文字通り砕き、辺り一帯を揺らす。 流石にこれが直撃する者はいないようだったが、地割れに一人ばかり足を取られていた。 一瞥し、それがヒーラーでないことを確かめると馬を走らせる。 非常にざっくりしたものだったが、作戦は聞いていた。 「んー、やっぱ足辿って走るのはムリだねぇ」 あわよくば、と言われていた考えを捨てて足元へ。 (@7) 2021/12/15(Wed) 0:32:21 |
| #蟹討伐魔法使いの詠唱が終わり、リーゼロッテが向かう足の1本に弾丸めいて雷撃が撃ち込まれた。 凄まじい音にも動揺しない“当たり”の馬をひと撫でして、 「いっくよぉ〜〜〜、 ちゃんとひっくり返してねぇ〜〜」 ただ槍を振りかぶり、 脚の節めがけて突きを放った。 「あ」 流石の《脳刺し》にも規格外の巨体をなぎ倒す膂力は無い、 ―――筈であった。 本人もそう思っていたから、はじけるように砕け、衝撃波で開いた穴から見える景色にぱちくり目を瞬いた。 「あちゃ〜、まぁいっか?身はぶじだよねぇ?」 柱をひとつ失った形になり、頭胸部がぐらりと傾いていく。 (@8) 2021/12/15(Wed) 0:50:48 |
| リーゼロッテは、出発前に小瓶の中身を舐めて、にが〜い!と騒いでいた。 (t1) 2021/12/15(Wed) 0:55:16 |
「流石は〈骸狩り〉……仕事が早いのね」
同じ死霊術師である〈人皮綴〉が逮捕されたことに、にべもなく。
むしろ、あんな輩はそうなってくれて清々すると言わんばかりに。
「……何があなたをそうさせるんだか、ご苦労なことだわ」
| #蟹討伐砂塵を巻き上げ、裏返される前に地上に降りてきたあたまの正面へ馬を走らせるのを見て。 盾役が退いてもう1体の方へ向かい、 魔法使いは次の詠唱を切り替えて、 先ほど地割れに巻き込まれたひとりは慌てた。 蟹の『脳味噌』がどこにあるのか。 もちろんリーゼロッテだって知らなかった。 チェルシーは見ているだろうか。 振り抜かれたたった一人の少女の槍は、 目と口のあいだ、集まる神経節を一撃で破壊した。 (@9) 2021/12/15(Wed) 1:02:35 |
レイ様
貴方に声を掛けられて、少し遅れて反応を返します。
ふわり、と笑顔にはまだ疲れが残るものの 以前のように振舞おうと努めている様子です。
「あ……は、はいなのです。
ごめんなさい、ぼーっとしてたのです。
えっと、どのようなお花をお求めなのです?」
勿論、希望がなければお任せでも構わないようです。
レイ【3日目時空】
「……ええ、舌は変わってないわ。今も」
旧知の仲には、ほんの少しだけでも皮肉気な態度もなりを潜める。
傷口に沁みるのだろう、注文された飲み物はゆっくりと口にする。
「……でしょうね。構わない、これは……少し零したくなっただけ。
けれど、騒ぎが収まるまでなんて、待っていられないわ……」
スカリオーネ
「必要だったから、ね……」
ふぅん、とその言葉の奥にあるものに想いを馳せながら、反芻する。
テーブルを指で叩く姿を一瞥してから、視線を宙に浮かせて。
「……教えたふたりは"はずれ"だったのかしら?」
「……随分、…いや…
…俺は現状無理に動く理由は無い。
後のことはあんた達に任せる事としよう。
任せきりにはなるが、新参者らしいと言えばらしい有り様だ」
「言うまでもないが、向こうにあんた達の事は吐かないさ
こっちに構わず為すべきを為すといい。
口を噤んだところで、バレる時はバレるだろうがな…」
/*
たいへんおそくなりました。
わたくしグチャグチャお嬢様、襲撃先も襲撃もお二方にお任せ致しますわ。
正直延長が無ければ終末(オワ)ってましたわ。
ギリギリでいつも生きていましてよ…
その夕方に『いる』。たしかにそこにいて鈴の音を鳴らしている。だが姿を現さない。
「そうか、……。だが、おれは、貴方の味方だ
それは今も変わっていない。
何が正しくて、何が誤っているかなど、わかりはしないが」
「──故郷、だから?」
よほど思い入れが強い場所なのか、と。
/*
時間が 時間が足りませんわ!!
暁月卿オーウェンお嬢様に噛みをお願いしてもよろしいかしら…!?
エドゥアルト
「……あ〜、エドゥアルトは目がいいですね〜……。
敵にしたくもなりたくもありません。
これでもモンスターにはほぼ見つからない奇襲100%の姿なんですよ」
気配がするから見ていただけだ、とすぐに判断すれば気が抜けたように机にへばりつく。
やってきたチキンの皿が手に当たり、おもむろに手を伸ばせば、握った手元からその肉が周りには見えなくなっていく。
あとから投げられたのはきれいにしゃぶり尽くされた骨だけだ。
カラン。
「ありがたいことに足と腕、その上首までつながっています。嬉しい温情ですね本当に……」
声が小さい。
見るからに、見えないが、元気がない。
レイに銅貨を一枚投げた。「ありがとうございます……」
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