215 灰色うさぎと紫うさぎの雨宿り
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[下肢に触れる硬さはもう何度も奥まで受け入れたもの。
指先で触れれば、一つ一つの筋まで分かるぐらい。
背を優しく叩いて見上げる彼はまだ
余裕があるように見えて、笑う気配もしていたけど、
我慢できずに身体を擦り寄せて、自らキスを送る。
あなたで感じるようになった身体を。
あなたの形を覚え込んでしまった身体を、
満たしてほしくて。
誘う口ぶりは年の差を感じさせないように、
色を乗せて、またあなたが知らない表情を見せる。
欲しいと、思うようになったのはあなただから――。
甘くねだれば息を詰めるような音が洩れた。]
[ぬるぬると滑りをよくした入り口に先端を宛てがい、
微かに腰を揺らめかせていたのも束の間。
下から一気に突き上げれて、奥深くまで。]
[猛り狂った硬直が獰猛に襞を割り、その衝撃に
喉奥から迸るような声が溢れて、バスルームに響き渡った。
突然の挿入にグっと肩に添えていた手に力が籠もって、
彼の肩口に爪を立ててしまう。
と、同時に。
どぷ、と中に熱い飛沫が飛び散るのを感じて。]
……ぁ、っ、なか……っ、……
[舌っ足らずにお腹の中に撒かれた子種を身体で覚え、
満たされたような笑いを、不意に見せた。
……のも、数秒のことだっただろう。
収まる気配のない猛りがすぐにまた硬さを取り戻していく。]
ッ、ん、ぁんッ、あっぁッ、ぁうッ、
ンっ、ぁ、ぅん……ッ、
うごいてっ、ぁ、ッ……
ひゃう、ッ……んんッ!
[何度も送られるキスに蕩けて、突き上げられる度に
お湯が浴槽からばしゃばしゃと溢れ出していく。
気持ちよくて、どんどん何にも考えられなくなっていってしまう。]
[キスの合間に吐息と喘ぎを逃して、彼の突き上げから
ずらすみたいにして腰を揺らしていく。]
あぁ、ぁッ、ぁー……ッ、
[声を殺していたのも忘れ、だらしなく解けた唇からは
止め処なく声が、溢れ、浴室に響いて。
突き上げられる度に、彼の身体の上で踊る。
避妊用にピルを飲み始めたのは最初の旅行がきっかけだった。
体調を整える為でもあった薬は、
彼とのセックスを体験して、
直接彼の熱さを感じることを覚えてからは。
少しずつ、少しずつ、身体を開かれていくみたいに
癖になり、いつしか、継続的に飲む機会が増えていった。]
[湯に彼の吐き出した白が溶けていく。
彼を感じることを悦ぶ中を、愛でるみたいに
彼が柔く下肢を撫でるから。]
んンッ、いいッ、……のッ、
もとい、さんで……ぁっ、
……おなかっ、いっぱいに、してッ……
[きゅう、とまたお腹の下が疼いてしまって。
満たされることを想像してぞくぞくと震えてしまう。*]
[普段は復活するにしてももう少し射精後にインターバルを設けている。
それは男の生理として射精後に訪れる脱力感によるものでもあるし、
紫亜の身体を気遣うという理由もある。
あっという間の絶頂とはいえ、
「出してもまだ完全に堅いまま」というのは珍しく、
それ故に止まれない。
一瞬解けた表情で、紫亜が裡で胤を受け取ったと気づいた。
ピストンが終わらないことで混乱させているようだ。
挿入の衝撃で肩に食い込んだ爪は
立てたままなら折れてしまわないだろうか。
そう懸念する自分はどこか遠くにいて、
律動を制止する権限を持たない。]
[元からぬかるんでいた内壁は、精液によりますます滑りが良くなっている。
激しく揺さぶれば紫亜の方も理性が霧散していくのか、
遠慮のない声量がバスルームに響いた。]
はー……堪んねぇな、
俺、紫亜の声、すっげーーーー好き、
[しみじみ言う言葉は本人に届いたか。
聞こえていなくても脳内に刷り込むように耳元で。
散々舐めて浮き上がらせた乳頭を指先で強く摘む。
座位はこの「全部愛せる」感覚が良い。]
ったく、食いしん坊め。
[それは料理人が一番好きな人種だ。
彼女は本当に卯田を喜ばせるのが上手い。
全部呑めよ?
と囁いて、ぐっと腰を持ち上げた。
2回目が近い予感がする。*]
[いつもはもっとゆっくり、それこそ。
揶揄うみたいに笑って、可愛がってるくれる。
そんな余裕を見せている彼が、息をつく暇もないくらいに
水面を揺らして、腰を突き上げてくる。
肌がぶつかる音が聞こえない分、ばしゃばしゃと溢れる
水面が低くなって、その激しさを表していた。
体の奥に確かに届いている。
水の中だというのに、激しさを感じる揺さぶりに、
絶え間なく声が溢れて、抱きつく腕に力が籠もる。]
ふぁ、ぁんッ、ぁ、きもちっ、い、よぉ……、
すき、ぁっ、そこ、……はぁ、ぁッ
[一度外れた箍は、緩み切って快楽を追い求めていく。]
[気持ちいいことを伝えて欲しいと言った彼の通りに、
感じる場所を伝える、んッ、と声を漏らして。
身体の中の水気を意識すれば、
柔らかな内壁がきゅうと彼自身に纏わりついた。
いつもの薄膜を感じないせいか、それとも。
お湯に揺蕩っているせいか、彼自身の熱さのせいか。
刀身の形をより身近に感じて、腰が疼く。]
ぁ、っぁッ、ん、だめ、っ、よすぎて、ぁっ、
……っふゃ、ぁんッ、ぁ、あぅッ……
[突き上げられる度に声が断続的に途切れてしまう。
低く囁く声の内容まではぼうっとした頭では、
理解できないものの、すき、という単語だけは拾って
蕩けた顔をより一層蕩けさせて、微笑い。]
…ぁ、あッ、んん、ンンッ、や、らめぇッ……
[蕩けた瞬間に、弱い箇所を摘まれて背を反らし、
どうしようもない快楽に身悶え。]
[どくんと大きな脈動を中に感じたら、]
イ、っちゃ、……や、ぁッ、
イくッ、
は、ぁ、ぁぁッ、
ぁうッ……―――ッ、……!
[それを皮切りにぞくぞくと体中に震えが走って、
ガリ、と肩に爪痕を残す。爪に白い筋を残して。
彼の腿の上で、びくんっと一際背が撓る。
甘い囁きに虚ろにがくがくと頷きながら、
従順な身体が搾り取るように、きゅぅぅと収縮を繰り返して。彼をめいっぱい頬張って。*]
[時間に余裕がない訳ではない。
寧ろいつもよりも沢山ある。
今後も「いちゃいちゃ」しか予定を立てないのに、
計画的に愉しむのを先送りにして、
段々と減って温度も下がっていく湯舟の中で
紫亜の暖かさを追い求めていた。]
ん、ここ、な?
[深くまで入ると穿つ照準がずれがちだが、
散々交わってすっかり卯田の形を覚えた膣は
どの体位でも「気持ち悦い」場所に当たるように
その場所を増やしているのかもしれない。
好きだと言われた場所から外れないように
慎重に突き上げるなんて真似、今の卯田には出来ないが。
感じるままに動かすと、そこが悦いのだと返ってくる。
不感症かもしれないと思うことは
もう金輪際ないだろう。]
[感じすぎて舌足らずになるところが好きだ。
それなのに極める予感を捕まえて訴える声は明瞭で。
二人同時に達したのを、きつく収縮する内壁で知る。
肩に鋭い痛みが走るのすら、射精の勢いをブーストする効果を
付与するだけだ。]
ッ!
[息を詰めた。
先程出し切っていなかった訳でもないのに
たっぷりと装填された胤が紫亜の蜜壺を泳いでいく。]
……っふーーーー……
[流石に今回は脱力感がすごい。
自然と後ろの壁に頭を凭れさせ、
絶頂の瞬間に背を撓ませた紫亜を抱き寄せた。
下肢はまだ繋がったまま。
だが萎えたものと拡がった紫亜の蜜口の隙間からは
白が零れていく。]
今気づいたけど、随分散らかしたな……。
風呂でしてこんな湯が減ることあるか?
[冷静な思考が戻ってくると、水位に笑ってしまう。
これでは何の為に浸かったのやら。
当然出る前にはお互いシャワーを浴び直さないといけないだろう。
そして。]
[気持ち悦いと訴えれば、もっと快感を促すように
確認しながら突き上げられていく。
ときに的確に、ときに掠めるもどかしさすらも
快楽を煽って、は、と乱れた呼吸を繰り返し、
感じ入りすぎた瞳は潤み切って目尻に涙を幾つも溜めた。
涙なのかお湯なのか、汗すらなのかも分からない。
ただただ与えられる快感に流されて、
身体中で彼を感じて、がくがくと頷いて。
迎えた絶頂は想像もできないくらい気持ち、悦くて。]
[ぐっと腰を引き寄せる手が強くなる。
と、同時にぶわりと熱が体内に広がっていく。
何度か味わ合ったその熱さに、とろんと瞳が蕩けて。]
……ぁ、……ッ、
[喉を反らしたまま、恍惚とした表情を浮かべ。
一滴も残さず胤を飲み干すみたいに、内壁が蠢く。]
[長い、長い絶頂はすぐには引かなくて。
ひくん、とまだ身を細く震わせてようやく。
ずる、と手が肩口から滑り落ちていった。
硬さを失った彼のものをまだ飲み込んだまま。
ぺたりとお尻を腿の上に落ち着かせ、
彼の胸元に寄り掛かるようにしなだれて、
少し早い心臓の音が、耳に響く。]
……はーっ、……はぁ、……
[小さく身じろげば、まだぬるりと下肢に名残があって。 溢れたお湯で移動した風呂桶と、椅子が
流されて端の方へと偏っていることに言われて気づく。]
……ふふっ、半分ぐらい減っちゃったかも。
また、温まらないと、ですね。
[笑う声につられて、くすくすと笑いだす。
もう少しじゃれあっていたいけど、ふやける前に。
互いの身体をシャワーで洗い流して、
次は彼のお腹を満たさないと。]
[感じるのも上手になった紫亜は
絶頂に抗わず全身を快楽に任せるのも上手になった。
そうなるようにずっと言葉で洗脳めいたことをした自覚はある。
その言葉を受け入れるだけの愛と信頼を寄せてもらっている自覚もある。
だから、
しあわせ、と。
声には出さずに唇を動かした。
胸に身体を預けている紫亜にはその動きは見えなかっただろうが。]
こうなったらもう元の湯とは全然別物になってるよな。
[互いの体液が溶け込んでしまっては、
一度抜いて掃除をしないといけないだろう。
身体は怠いし腹も減ってはいるが、
時間が経てば湯に浮いた自分の精液の塊や
激しい交合で抜けた毛などを見て
嫌な気持ちになることは想像に難くないから、
風呂掃除は請け負うことにした。
湯を抜いている間にシャワーで互いの身を清めた後、
着替えに出ていく紫亜を見送って
自分が責任をもって残滓を片付けよう。
視界の端に流れた風呂桶と椅子。
覚えたての10代みたいながっつき方をしたなと
その遠さに気づかされれば少し恥ずかしい。]
[音にならなかった言葉は耳に届くことはないけれど。
同じようにしあわせを感じているのは、
共に過ごした時間が少しずつ長くなっているからか。
仲の良い家族や、お互いを尊重し合うような夫婦。
良い関係性を続けていきたいと感じる者たちは、
次第に自分をお互いに似せていくという。
シンクロニーという顔や性格が似ていく現象。
それは、少しずつ彼と溶け合っていくようでしあわせだ。
いつか、そんな話を彼にもしてみようか、なんて。
心内に楽しみを一つ残して、
今はとくとくと心臓の音が聞こえることに、
安堵を覚え、身を擦り寄せて懐くことにして。]
[事後の象徴を思わせるような、お風呂の惨状に笑って、
それだけ夢中に抱き合っていたことに恥ずかしさを
覚えつつも、幸福感のほうが強かったけれど。]
よ、ごしちゃって、ごめんなさい……っ、
[後の掃除のことを思えば少し居た堪れない。
浮いた残滓に仄かに顔色を赤くしたり青くしたり、
そんなやりとりを重ねながら結局、
晩ご飯の用意と、支度の長さを考慮した結果、
後片付けは彼にお任せすることにした。
料理人に楽しみと言われれば、張り切るほかない。]
[お仕事でもお家でも料理で饗してくれる彼だけど、
だからといって甘え続けて彼にばかり、
台所を任せるのではなく、両立したい。]
たくさん食べると思って、
豚肉多めにしてますよ。
[既に確認済みであれば隠す必要もない。
今日も遅くまで働いた彼を癒やすべく、腕を奮う。]
[元々家族のようなものだった。
何度も織戸家にお世話になり、同じ食卓を囲んだ。
その数年間を上回る勢いで恋人になってから「似ている」と
感じることが多くなっている。
「同じ気持ち」という要素は大きいのかもしれない。
これから先、どんなところが似てくるのだろう。
楽しみなようでもあり、
自分が好きになった紫亜の良いところが
変わらないといいなという「違い」が
残ってほしいという気持ちもあり。]
いやどう考えても俺のが汚してるから。
[苦笑して、風呂場に置いてある排水溝ネットを手に取った。
そのまま湯を流せば詰まってしまう恐れがあるので、
ネットを湯の中で回してある程度湯を漉してから
流すようにしている。
情事の後片付けも卯田にとっては「いちゃいちゃ」の一環だ。
「湯冷めするなよ」と微笑んで見送った。
卯田は料理人ではあるが、
「愛する人の料理を食べたい」普通の男でもある。
紫亜が自分と食べることを考えて用意してくれることが
とても嬉しい。]
[思春期の頃からの付き合いだから。
家族のように顔をつき合わせることも度々あった。
その頃は、将来に一緒に居ることなんて考えもしなくて
「似ている」ところなんて一つもないと思っていた。
付き合ってみて知る、彼の癖や思考を、
一つ知る度に、「同じだ」と思うようになって。
その度にほんのり嬉しさを噛み締めてしまえば。
昔に頑なに敬遠していたのが勿体ないと思うくらい、
もっと早くに知っていればとも思うけれど。
昔、じゃなくて、今、好きになって欲しい。
「違い]がある箇所も「同じ」箇所も同じ分だけ。]
[汚してしまったのは二人の結果だとは、思うけど。
こういう時に責めずに買って出てくれるところも、
意識しているのかは分からないけれど、
罪悪感を抱えなくていいと思わせてくれる所以。
優しさに甘えて身支度を先に済ませながら、
彼の着替えがあるかもう一度確かめて。
もう一度覗き込んだバスルームで。
意地悪く笑う顔に、言葉が足りなかったことを自覚して、
慌てて手をぶんぶんと振って否定した。]
そう、じゃなくて!
下着、……また汚しちゃうかもだから、
聞いただけですっ、服は着ますっ!
[さすがにはだかで動き回るのは恥ずかしさにも限度がある。
もうっ!と言葉の足らない自分を棚に上げて、
バスルームのドアを閉じた。]
[
同じ気持ち、
似ていく思考、
違う得意分野、
どれも大切にして、「好き」を重ねていく。
紫亜が洗濯や服選びを面倒と思わずに楽しんでくれるように
卯田は掃除や力仕事を任されるのが嬉しい。
罪悪感を抱えないでほしい、とは思っているけれど、
そう感じさせないことを意識して気負っている訳でもない。
相手が好きだからできること、だ。]
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