「──おれが生まれたのも、下層の掃き溜めだったらしい」
記憶は曖昧だが、物心つくより幼かった。そして、これもまた、ひとに拾われた。趣味で魔術を嗜むような、裕福な魔術師だった。
その扱いは我が子というよりは"実験体"や"奴隷"だ
魔術の実験に使われる日々を送っていた。
成長すれば、実験体に使う為の人殺しなんかもさせられた。
──だが、奇妙なことに本人はそれに疑問を抱いていなかったようだった。
寧ろ"救われたから役に立ちたい"という。
しかしそんな日々も突然終わりを告げた。
自らの手で、その魔術師を殺めることによって。
──殺したくはなかった。だが、それが
"命令"だったから。そうしたのだという。
語られたのは本人の視点。真実はどうだったのだろう?
解放されたあとのほうが、苦労したのかもしれない。
皆も知る通り。居場所のなくなった野良犬ができること
といえば、冒険者くらいだった。