こっそり。

「人が多いと俺、揺れが多くて寝れないから。
　…………また人がいない時に膝貸して」

耳打ちしました。
まあ恥ずかしいのもあるけどさ！

「ぁ、あ゛あぁ…………」

それは大人しく。それは泣き叫び。それはあなたから離れない。


出来損ないの機械は拒絶の仕方を知らない。

出来損ないの機械は首を振り嗚咽を漏らす。

出来損ないの機械は震えて立ち上がれない。




「、あ゛ぁぁぁ………」

あの映像とも変わらぬ悲痛な叫びが空を揺らす。

それでも零れ溢れるモノが止まってくれないよ。

震える指先が何かに縋るように動き。

「………え゛っ」

一瞬フリーズ。

「………いいけど、俺の部屋なんもないよ？
　アンタのお茶会みたく、何か出したりとかも……できないし……」



「……まあ、来てくれるのは…………」

「別に俺、嫌とはいってない、し……」


ちょっと顔を逸らして頭を掻いた。照れ隠し。

「……アンタがいいなら、いいよ。……来なよ」

男には音で伝わってしまう。手探りの音。慣れてない音。迷いの音。優しさが向けられていると、あなたから鳴り響く全ての振動で伝わってしまう。
叩く間隔に合わせ息を取り戻そうと。肺に空気を入れて。

「、、うぅ……あ゛ぁ、ぁ……っ……」

"いい子"

"ちゃんと泣けて偉いね"

"大丈夫だよ"




背に回された手が落ちないように、震える指先で服を掴んで。
縋ってしまう。泣きじゃくるしかできない。ただの我儘な子供のように。





うわ言のように、意味のない謝罪を音にする。

「…………そんなこと、言ってない」

照れ隠し。顔は逸らしているからあなたの笑った表情は見てないけれど。
音でなんとなく分かったから。恥ずかしさがまた押し寄せた。

「………………ン、……待ってる」

男も理解している。逃げようもない。これから始まること。
理解しているから言葉は続かない。
終わる会話。空に舞う音をぼんやりと眺めた。