人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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【秘】 花で語るは ソニー → 銀の弾丸 リカルド

荷物の扱いに関しては、なるほどと相づちを打ちはしたかもしれない。
とはいえどっちにしろ今日の買い物は、普段の仕立ての良いスリーピースと合わせたら、
目の肥えた相手からすればクローゼットに混ぜるには値しないものには見えるかも。

アンタも聞いての通りだけど、単独犯じゃあないだろうね。
 ちゃんとした地位の人間が歩くには、不自然過ぎる場所をしている


少しだけ背伸びをして、口元と耳の位置を揃えて。
外からは祭りに騒ぐ音が聴こえる。野外ステージが盛り上がっているのか、その音も。
店の中自体も小さく音楽は掛かっているし、静かにしていれば聞き咎められない筈だ。
誰の耳もない場所を選んでいる事自体は理に適ってはいる、けれども。

片手を壁際から離して、互いの身体の間に腕が通るくらいの間隔は開けて。
けれど息のかかりそうな距離は、不自然極まりないことは変わりない。
密談をするにしたって不必要だし、空いた手は普段はタイがかかって見られない首元をかする。
からかって遊んでいるのか、くつくつと喉の奥で笑い声を押し殺した。
垂れ目がちの丸い目が相手を見上げる。取引の最中には見せたことの無いたぐいの顔だ。

静かにしないと


また、し、と口元だけでジェスチャーをする。
先日も触れた耳元に、余計なことを喋る唇が微かに触れた。
(-35) 2022/08/14(Sun) 23:41:10

【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ

「ビアンカ。よかった、元気してた?
 それどころじゃないみたいだったから、心配でさ。
 オレは花屋も繁盛してるけど、休めないほどじゃないよ」

相手の姿を見れば、嬉しそうに。どこか浮かれているような表情、そう見える。
街中にある男の顔はあくまで"花屋のソニー"であって、仕事仲間ではない。
さしずめそれなりの階級のある娼婦かコールレディに入れ込んだ、愚かな若者。
そう見えるように、やたらと構いすぎるくらいの前のめり具合で駆け寄った。

「お店戻るのしんどい? オレ同伴しようか。
 それともどっか気の紛れるところにいこうか?」

おそらくは店が開いていておかしくない時間なのだろう。
相手の事情なんかは全く知らないふうに振る舞いつつ、合わせられるようにとさりげなく様子は伺う。
(-39) 2022/08/15(Mon) 0:22:17

【秘】 花で語るは ソニー → 風任せ マウロ

/*
エエヤッタァエッチなことしちゃお!!! うまく口説けるように頑張ります
どうせ遊び どうせ遊びだから……(甘言)
それでは改めて、二日目秘話のほうよろしくおねがいします!
(-41) 2022/08/15(Mon) 0:27:01

【秘】 花で語るは ソニー → デッドヘッド ヴェネリオ

明くる日の夜、まだ日の暮れてすぐのうち。
少しの時間だけ、その日は雨が振っていた。
局地的な通り雨で、他では晴れたままだったかもしれない。

男はあちらこちらへと足を運んでいた。そのどれほどが目に入ったかは、さておき。
朝の時間に賑わいを見せるデリカテッセン、昼の前後に気軽に入れる料理のおいしいバー。
いつだかに約束をした店、煙草を売りつけている商店までも、ぜんぶ。
どれも貴方が普段足を運んでいると聞いて、知っている場所だ。
誰かの顔を探して、駆けずり回っていた。
そんなことは貴方にとっては知らない話でしかないのだ。

そのいずれか。
貴方を見つけて、見かけて。見上げた顔は、はっとして。
ひどく動揺したような心配したような、けれど貴方が二の足で立つのを見たならば。
ほっとしたようのだろう。今にも泣きそうな顔をして、駆け寄る。

先生、


それを敵愾心を持って迎え入れるかは、貴方の自由だ。
(-51) 2022/08/15(Mon) 1:13:08

【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ

「そっか……祭りのせい、それとも、別のこと?
 なにかあったなら、オレは話聞くけれど」

気遣わしげに、ほんのすこしだけ下にある目を覗き込む瞳の奥はいつも通りだ。
ジェイドの瞳の奥底にはいつも、冷えたアイスブルーが埋まっている。
見た目のままに、おろおろと案じているわけではないということだ。

「――」

ごく微かに、目の動きだけで周りの様子を確認した。人並みの気配一つ一つを検分する。
状況が状況、どこに何を見とがめる者があるかもわからない。
ほんの一瞬の動きのあと、改めて相手に目を合わせた。

「いいよ、どこか移動しようか。
 街の方は人通りが多いから、海のほうに出る? レンタカーとってくるよ」

配達車はアシがつく。近くのレンタリースに電話をかけて、一番安い車を取った。
大きな幹線道路に出る道は監視されているかもしれないから、使わない。
そう時間のかからないうちに車は準備される。繋ぎではあるが、他人に聞かれるようなことはない。
(-85) 2022/08/15(Mon) 8:39:14

【秘】 花で語るは ソニー → 蜉蝣 アベラルド

「夏だし、チョコレートドリンク売ってたら嬉しいだろうなあ、冷たいやつ。
 まだトライアル・ランくらいの段でしょ、ちょうど見れるんじゃない」

こんな状況下で店より外に出るのを勧めるのはあまり良くないのだろうけれど、
それで萎縮してばかりいても稼ぎがあるわけではなく、あとには続かない。
口にする考えはごく気軽な、市井の人間としてのものだ。

不織布の中に詰め物をして、ジャスミンの花が少しでも元気であるように。
包んで、会計をして。渡しがてらに勿体ぶって口を開く。

「そっか。……もしもね、頼まれごとがあったなら。
 オレは公私どっちでも、役に立てると思いますよ」

照れくさそうに、もごもごと言う。それは、演技なのだけれど。
なぜならここで指す"公私"は、裏稼業と表稼業のこをと言っているのだから。
相手が気遣っている彼女のことは、同じ屋根の下の人間として知っている。
前に出ることの出来ない相手の代わりに――そういうニュアンスの言葉だった。
きっと同じことを申し出る場所が違ったならば、もっとはっきりと口にしたのだろう。
(-86) 2022/08/15(Mon) 9:00:56

【神】 花で語るは ソニー

【アルバアジト】
聞いたか、と。他に集まっていたメイドマン以下に目配せする。
聞こえてきている限りではひとつ、ふたつ。
はっきりとした情報でないにしても、抗争にまきこまれたような形とは言えない。
昨日聞こえてきたばかりの、彼らのボスの死に様を模倣したような手口。
挑発的な行いに頭を悩ませているのは、男も同じだった。

「まるでウチの仕業だと喧伝してるようなやり口なのは確かだな。
 状況だけみりゃ明らかに、こっちの指示で向こうの人間を襲ってるようなもんだぜ」

実際に上から命令が下っているのならその証明だって簡単だのに。
毎日のように顔を合わせ、自分たちの面子が揃っていることを確認するのが関の山。
状況への対処は、こちらも後手後手のままになっていた。
死因、状況。上がってきた報告をもとに考える。
惜しむらくは、銃痕からわかる情報まではこちらに上がらないだろうことだろうか。

「けれど、争い合わせるのが目的にしちゃ向こうの戦力を削ぎすぎてる。
 ……浮き足立つ連中のことはしっかり見ておかないといけないな。
 身の振り方を忘れてあぶれてちゃ、そいつが討たれる可能性もある」

そういう人間が、本当は自分たちにとっての獅子身中の虫かもしれない――とは、言わない。
口にすれば、己が所属する組織への疑念を形にしてしまうから。
もしも本当に自分たちの中に、敵対するファミリーを討つために単独行動する者があったなら。
果たしてそれを見つけるのに、穏当に話をするだけで済むのだろうか?

「バーのマスターがやられたのは、信頼性のある情報を断つためかもしれない。
 耳にした情報はきちんと精査する必要がある、偽の情報に踊らされないために」
(G28) 2022/08/15(Mon) 9:13:33

【独】 花で語るは ソニー

「(まあ、その獅子身中の虫は、オレなんだけれど)」

同じく暗殺者であっただろう彼が誰にやられたか、なんてのを誰が知っているか。
答えるべくもなく、そして誰に報せる筋合いもない。
このことはずっと、己の心の内に仕舞われたままだろう。きっと、死ぬまで。

「(もう一方――……ノッテの人間と思しい方の名前は、さて。
 オレが顔を合わせたことのない人間だろうから、誰が殺ったものだかな)」
(-89) 2022/08/15(Mon) 9:23:13

【秘】 花で語るは ソニー → 銀の弾丸 リカルド

閉じた瞼を縁取るまつげの動きに、ふ、と笑う気配があった。
堅苦しく思われることはあってもそこまで初心なわけではないと踏んでいたのか、
それともわかっているからにこそ、こうして相手の反応を楽しんでいるのか。

度が過ぎたいたずらを仕掛けている方は余裕綽々として相手の所作を眺めている。
掛かっているハンガーにジャケットなりを掛ける手伝いくらいはするだろうけれど、
一向に知人同士にしては近すぎる距離からははなれない。
まごついているのが気になったのか、相手の首元に添えていた手を下ろして。

手伝おうか


手が止まっているようであるのなら、シャツのボタンを外すのを手伝い始める。
貝釦か椰子釦か、裾を小指で引いて端の方まで合わせを解いて。
手入れのされた指先がする、と腹筋をなで上げ、円を描くように下腹部に下りる。
そんな不埒なことに時間を費やしている間も、顔はにこにこと笑ったまま。
これも、花屋としての顔のひとつなんだろうか。
(-92) 2022/08/15(Mon) 10:20:07

【秘】 花で語るは ソニー → 鳥葬 コルヴォ

「そう、じゃあ……もう少し詳しく聞くのは、今度にしようかな。
 一度に全部知るのはつまらないし、お兄さんも話す気分じゃないだろうから。
 どういうワケがあって死んだ人間……友人? に固執するのかははかれないけれど」

せっかく出会えたのだから、なんてありふれた言葉で追い縋る。
まるで知らない種の鳥を親鳥を定めたかのような、甘えた調子だ。
性急に何もかもを漉いて曝け出させるのではなく、少しずつ、一歩ずつ。
相手からしてみれば自分は興味はないものだろうから、対価に差し出せるものはないけれど。

遠ざけられた挨拶は行き場を失くして、少しの熱も感じない手袋に頬をかすかに添えた。
上目遣いに見上げるまるい目は、網の隙間から指を伸ばしてやまないような、そんなような。
情けなく鳴く始末は、仕様のない人間だと呆れられてしまうだろうか。

「そう、残念。でも諦めたくはないなあ、オレ。
 またここに来たなら、パスカルには会える?
 今度があるなら、次はもう少し食事に誘える時間にしようかな」
(-96) 2022/08/15(Mon) 11:11:52

【秘】 花で語るは ソニー → デッドヘッド ヴェネリオ

足取りは駆け込むようにひどく覚束なくうろたえて、歩きはじめの雛鳥のようだ。
声の届くくらい、されど腕を伸ばすには遠すぎるくらい。
駆け寄ろうとした足は、大股であともう三歩もいけば飛びつけるところで、
怯え竦んだように、止まってしまった。

「ち、がう……よ……」

もう少し歩けば普段の距離に相手があるのに、ソレ以上は進めない。
そのくせ退くことも出来ず、相手の顔から目を離すこともない。
マジックアワーのヴァイオレットの中にあっても変わらないジェイドの瞳は、
その奥にひどく傷つけられたような揺れを湛えて、それが瞼に雫となって滲みはじめた。

「……オレ、怒ってないよ。仕方ないことだ。
 あの日先生と違う道を歩き始めてから、仕方ない時が来るって、わかっていたよ。
 けれど、でも。だったら出来もしない約束なんか、しないでよ。
 オレは最後の時間が欲しいよ、
ヴェネリオ


わかっている。今この場において正しい対応をしているのは、相手だ。貴方だ。
それでもなおその背に追い縋るように、苦しげに歪んだ声が訴えかける。
(-98) 2022/08/15(Mon) 11:31:03

【独】 花で語るは ソニー

ジェイドの奥には、冷たいアイスブルー。
それを覆い隠すのは、捨て鉢になった自暴自棄だ。
苦しいのは本当。最後の時間が欲しいのも本当。
いとおしいと思ったものに捨てられるのが辛いのも、本当だ、なのに。

「(ああ、アンタは、口に出して挑発してしまうんだな)」

頭の中では、やるべきことをはっきりと理解してしまっていた。
組織のためでもなく、己の見失った目的のためでもなく。
こんな戦いの中で、貴方が誰かに傷つけられるくらいなら。

「(本当の刺客が相手なら、それに気づいているなんてわざわざ、報せないだろ?)」
(-99) 2022/08/15(Mon) 11:36:03

【秘】 花で語るは ソニー → 永遠の夢見人 ロッシ

苦しみの中で、なんとなく考えていた。
目標を失い、今自分の手の中にあるものは何か。
いつ死ぬかもわからない抗争の中で手柄を上げたって仕方がないだろう、だから。

せめてその人の顔を最後に見るのは、自分だったならいいと、そう思った。

仕入れた武器の手入れをする。使い慣れたものと違うそれは、手になじまない。
けれども最後まで走り続けるのだとしたら、この方法しかない。
獅子身中の虫は、最後までその手を血に染めることでしか、そこに在れなかった。

/*
お疲れ様です。樹木子です。
セットしている役職行動についての連絡に参りました。
3日目夜の監視対象に、『ヴェネリオ』をセットしております。
不都合等々ありましたらご連絡ください。
お手数ですが、よろしくお願いいたします。
(-100) 2022/08/15(Mon) 11:42:59

【秘】 花で語るは ソニー → 無風 マウロ

「アレって楽しいのかな……でも一世一代の戦いって感じで、やってる側は本気だよな。
 そこにしかない生き方っていうのはさ、結構アツいじゃん」

前へ前へ行く人並みを、並んだり縦にはぐれかけたり。
ぎゅうぎゅうにならずには済んでいるから、かなり良い位置を取れはするのだろう。

そばの屋台からオーソドックスな具の挟まったパニーノをふたつ買う。
ついでのように栓抜きを借りてビール瓶の王冠を抜いた。
ポン、と軽い音を立てて転がっていった王冠はもう足元には見えないけれど、
みなそうしているからと構った様子もなし。祭りの雰囲気に酔っているかのようだ。

「いいね、オレもそれでOK。でも勝ったらこれでお別れ、なんてのはヤだな。
 どうせならもうちょっとだけ、アンタと過ごしたい。
 ……ソニーって呼んでよ、名字まで教えるのは野暮ったいでしょ」

暗がりの空から振る人工光は、何もかも明らかにするには頼りなく。
馬のコンディションを眺めていた目はふ、と相手の方を見て、仰ぐような上目遣いで小さく笑った。

選んだのはがちょうの旗の地区のもの。
何日も続くレースは、けれど毎日がまるで本番勝負の熱さで盛り上がる。
一斉に走り出した馬は乱闘のように砂地の馬場を走り抜ける。
馬体の熱気が上がってくるほどに激しいレースは、抜き差し走って、駆け抜けて。
ほとんどタックルするように漸近した馬の群れがゴールを目指し――……
勝ったのは、がちょうだ。

(-102) 2022/08/15(Mon) 12:09:42

【秘】 花で語るは ソニー → 無風 マウロ

caspitaやった!」

ゴールを真っ先にくぐった馬の装いを見て、心の底からはしゃいだような歓声をあげた。
賭け自体は、どうやら心底好きなことらしい。
(-103) 2022/08/15(Mon) 12:12:04

【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ

歩かなくともいい位置に車を寄せ、助手席の扉を開けきちんとエスコートするまでが仕事。
扉を閉めて、運転席に乗り込む。表情はそう大きく変わらないが、目線は落ち着いた。
市街に駐車場のあるホテルはあまり多くない。市民も使うようなふつうの手段だ。
やがて車は走り出し、周りの車に合わせた速度で道を征く。

「……しんどい? 今の状況。
 ビアンカの立場からしてみたら、自分の力だけで身を守れないことに、
 無理やり首突っ込まされたような感じだから……あんまり気が気じゃないかもな」

直接的には、あれこれとは口端にのぼらせて言ったりはしない。
けれども表通りの賑々しさと裏腹にひりついた裏通りの様子に、
相手が多少なりとも神経をすり減らしているのだろう、と推測して。

たかだかのメイドマンにあれこれと口を出す権利があるわけではない。
けれども講じれる手段を考えるくらいは、出来ないわけじゃない。
島から出ていけたらいいのだろうけど、そはできない。

「土地の店やってる人間のところはどうしてもどっちの息が掛かってるかわからないよ。
 市外か、国外のチェーン経営しているところに籠もったほうがまだ信用できる。
 幹線に繋げそうなところのホテルにでも運ぶよ。店にはオレが言っておく」
(-115) 2022/08/15(Mon) 16:54:02

【秘】 花で語るは ソニー → 銀の弾丸 リカルド

馬鹿なこと、だろうか。本当に? 真意のわからない目は、しかし楽しそうではある。
普段しっかりとつま先まで整えて革靴に皺もつけないのだろう人間が、
こうして手の内で動揺しているのを、面白がっているだけなのかもしれない。
時折相手の瞳から目線を外したかと思えば、視線の下る先は鍛えられた体に。
視姦するように肌色の稜線を眺め下ろされるのは、居心地のいいものではないだろうな。

はは、違うよ。店は本当にただの花屋


何も知らずに、マフィアの構成員を擁しているわけではないだろうけれど。
弔事に祝事、ありふれた民間の人間に纏わる行事のみならず、敷かねばならないのは裏稼業も同じ。
何にせよそれ以上の意味を持つものではない。

掴まれた手は振り払ったりもせず、その先でだらりと枝垂れるだけ。
それがくる、と裏返って、指球で押し返して指を絡める。
見上げた目がすうと細められて、いっそうに声は低くなる。
壁についた手は剥がされて、一歩前に回って。再び息のかかるほどに近くなる。

理由なんか聞いたらもう後戻りできないと思うけど、いいの?


知らないままなら曖昧にしてしまえるのに。
背伸びした体は、鼻先がふれあいそうな距離で見上げて、

「さてと」

ひょいと踵を返すと、更衣室から大股一歩で外に出た。
一度外に出てしまってタイミングもずらしたなら、そこに人が二人いた証拠もない。
相手の一挙手一投足をからかって笑う人間は、狭い空間からはいなくなる。
(-120) 2022/08/15(Mon) 19:06:31

【秘】 花で語るは ソニー → デッドヘッド ヴェネリオ

「けど、」

言い返そうとした言葉は涙声に飲まれてしまった。
かわって、相手から掛けられた声をただただ聞いている。
息を吸って、吐いて。本来ならば差し出されることのないだろう譲歩を、甘受して。

足が前に動くまでにはもうすこし時間が掛かった。
ゆっくり、ごくゆっくりだ。一歩一歩が重苦しく、幽鬼のように差し出される。
ようやく差し出された手に同じものが重ねられるまでに、ずいぶん時間が掛かった。

「……そのさきでどうなったって、いいよ。
 けれど少しだけ夢見ていたい。……先生の手は好きだ……

 アマラント、は、閉まってるんだっけ……
 ……オレの知ってる店で、いいの。先生のよく行く場所じゃなくて?
 きっと大したものでも、ないよ」

こんな状況であることに、釘を差した。或いは警告を相手はしたのだ。
それにも関わらず相手の警戒の行き届いていない場所に連れて行くのは、
結局のところソレを裏付けてしまうような懸念があったのかもしれない。

指先まで心臓になったように熱く、鼓動が伝わる。
改めて見上げた目の表面は、悲哀ばかりでない感情に薄っすらと濡れている。
鼻筋の皮膚の薄いところの色が変わるくらいに朱の差したそれを、何と言うだろう?
(-121) 2022/08/15(Mon) 19:57:01

【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ

彼女の中にマフィアに対する隔たりがあるのを、直接的に聞いたことはないかもしれない。
仕事のこととなると忠実に過ぎる態度を見せる男は、相談相手としていつも適切なわけではない。
けれども意見を求められず、わずかな距離をにじませることがあったなら。
それが形にされないのなら、同じく言葉にされない気遣いはあったのだろうな。

「……命の価値は、同じじゃないからな。だからこうやって大騒ぎする羽目になる」

やたらに利いたふうな口を利くわけではない。形ばかりの慰みを口にするわけでも。
けれども時折バックミラーを確認しながら運転し続ける横顔には、使い捨ての駒の哀愁があった。
立場や程度問題の差異はあれど、結局何処も、誰も、大きく変わるものじゃない。

「じゃあもう少し街の周りを流すよ。少し走らせたって目立つこともない。
 街の中にしろ外にしろ、どこも息抜きできる状態じゃないだろ」

空の見える車内は遠くの風景まで見えてしまうぶん全く安心できるわけではないけれど、
それでも誰に聴かれるかもわからない場所よりも、ずっと。
盗聴の可能性を防ぐために、大手チェーンの経営するレンタリースを経由している。

それから。少し、沈黙を経て。

「……一度に10人、
 運ぶくらいなら。けれどもずっと誤魔化せるわけじゃない。
 探られればアシがつく、目立てば目立つほど早く。連れ戻されて、それで終わり」

血の掟に誓いを立て、人並み以上の権利を手に入れたとて、所詮は下位の構成員。
出来ることなんてあるわけもない。絶望的な話だ。簡単に逃れる方法はありはしないのだろう。
まばらよりも少し詰まるくらいに車の行き交う道路を見据えて、前を向いたままで淡々と答える。

「それを踏まえてまったく行方をくらますんだったら、どっちの街を通るにしたって、
 目の届かない遠くまで券を用意して隠れ潜むんだったら、せいぜい、
二人
だけだ」
(-233) 2022/08/16(Tue) 23:43:38

【秘】 花で語るは ソニー → 銀の弾丸 リカルド

脅しはきちんと薬になったか、どうか。
人を散々にからかって遊んだ男は、棚の服を物色しながら時間を潰していた。
カーテンの開く音を聞けば、改めて振り返ってひゅうと口笛を吹いた。
先程のことなんてなかったかのよう、外でずっと待っていたみたいに。

「いいんじゃない? それで浮いたりしなくなったと思うよ。
 試しに祭りのほうでも見回ってみる? 時間のつぶせる場所までいかなくてもさ。
 野外ライブ横目にピッツァ・アル・ターリオ切り売りピザつまむくらいでも」

お買い上げはあちら。レジスターのほうを指差す。
自分は多少棚を冷やかすくらいで、何か買うってふうではない。
所用済ませ始める頃には、店の出口の方へと足を向ける。
(-237) 2022/08/16(Tue) 23:59:48

【秘】 花で語るは ソニー → 鳥葬 コルヴォ

やんわりとした拒絶に対して滅気た様子もないのは、拒まれたところで困らない遊びだからか。
それとも少しの生涯で諦めきれないくらいの一目惚れをしたのだか、なんて。
考えるべくもないことも、どういうふうに捉えるべきかは相手が決めること。

「そう、本当? オレの話に耳を傾けてくれる?
 さして面白い話が出来るわけじゃあないだろうけど、それだったら嬉しいかな。
 結局人間、興味のない話なんて聞きたがりやしないものだから」

さも、相手が己に興味を向けてくれたかのように言う。始末が負えないものかも。
懲りない男はほんのちょっとの希望を取り上げて、相手の手を解放する。
埠頭の先を離れ、ひょいと跳ねるボールみたいに距離を開けて。手を振りながらに別れを告げる。

「またアンタに会いに来るよ。今度はアンタの好みそうなものを持って。
 そのときにはパスカルのことも、もう少しだけ知りたい」

目で追ったならば少しの後に、花屋の配達車に乗り込むのが見えるだろう。
エンジン音が遠ざかって、その日はそれで、おはなしは終わり。
(-262) 2022/08/17(Wed) 4:01:09

【秘】 花で語るは ソニー → 蜉蝣 アベラルド

「そうですね、まちぐるみであちこちに出し物をしているから、
 ジェラートとかみたいに手に取る人はいるんじゃないかな……」

外からは楽団の演奏が聴こえ、その向こうでパレードの行進する音が混じる。
祭りの陽気に沸く人たちは、喉を潤すものを求めて屋台に足を向けたりもするだろうし、
なにかに怯えて見晴らしのいい場所を避けるなんてことも、しない。

金を受け取ったなら、見送りがてらにカウンターの中から出る。
ありふれた日常の風景。叶うならば明日の日にも同じ情景が続いたならいい。
もっともそれが叶わなくたって、同じように貴方は商品を手にすることは出来るが。

「……世の中、順番てなものがありますから」

ぽつりと、少しだけ低い声になったのは、それが花屋としての言葉ではないからなのだろう。
死ぬべきが誰からかなんて、わかりきったこと。
それを自虐的に口にすることは、ない。

見送りくらいは笑顔で。ガラスの扉が開き、呼び鈴が軽い音を響かせる。

「ありがとうございました。また明日も、よろしくお願いします」
(-267) 2022/08/17(Wed) 10:39:12

【秘】 花で語るは ソニー → デッドヘッド ヴェネリオ

「……まだ、オレにモノ教えて、くれるんだ?」

この先なんてどれだけあるものかもわからないのに。
指を絡めて手の平をむかいあわせにぴったりと押し付けて、身を寄せて歩く。
少しばかり体重を押し付けるようにして寄り添ったなら、相手はさぞや歩き難いだろうな。

「もっと早くに、こうしていればよかった」

言葉足らずはその真意を伝えない。ただ、高さの違う肩を擦り寄せるだけ。
外側の足の小趾が触れ合いそうなままで雨の道を歩く様子を他人が見たら、何と思うだろうか。
視線が絡み合うより前に、さっと顔を濡れた地面に逸らす。
普段他者の傍に寄りついていくよりもずっと言葉数は少なく、舌はもつれるよう。

促されつつに足を運んだのは、少し小洒落たリストランテだった。
色付きの証明は無粋でない程度に仄暗い印象があり、一つ一つのテーブルだけの空間を保つ。
街が祭り一色であるせいか、どことなく人の数はいつもよりも多くひしめき合って感じる。
前菜やコトレッタをバローロで流し込みつつも、なんとなく普段より軽率な話題は出ない。
当然、裏稼業を取り囲む情勢のせいもあるだろう。
軽率に切り出せないのは、死んだ人間の立場のせいもあるだろう。
(-268) 2022/08/17(Wed) 11:23:04

【秘】 花で語るは ソニー → 害のない毒 マキアート

丁寧に唇の間を割って踏み入る舌先を迎え入れて、動きを阻害しない程度に絡め合わせる。
ふう、ふうと荒く途切れる呼吸は、口の中をなぞられる度にほどけた声を混じり合わせた。
落ち着いた、けれど平時よりも音の大きい鼓動が脈打っている。
壁を隔てた向こうにある喧騒も、安全が担保されているからにこそ楽しめるもの。
追い縋るような唇が、会話のために離れていく舌の先を遅れてついばんだ。

「もうちょっと、体重掛けても大丈夫かも」

膝に引っかかったボトムを、蹴り足だけで足首まで下ろす。
ソファのようではないものの、ごく低い位置にある肘掛けにもたれてスペースを開けた。

そろそろ、我慢・・できなくなって痺れをきらしたか、
背中の後ろで己の指同士を組み合わせていた拘束を解き、視界の外にしのばせる。
密着し合ったままではどうにもならない腰の擦り付け合いをどうにかするために、
手の平で包むように腰を撫で回して、形よく締まった尻を持ち上げるように手を添えて。
そのまま腰を浮かせるように上にスライドさせる。

「ね。もうちょっとほしがっちゃ、ダメ?」

吸い上げた薄い痕を、襟元から胸板の真ん中まで点々と。
遠くなった口元の代わりに、胸筋の下側についた乳首を唇で挟んだ。
舌で乳輪を縁取るように優しく円を描くように舐め上げて、焦らすように尖らせた舌先で捏ねる。
戯れるような優しい愛撫とは裏腹に、押し潰されていた陽物で太腿を叩くように腰を揺らした。
明るい色の下着の一部を色濃くして、先走りが滲んでいる。
押し上げられた下着を窮屈そうにして、へこへこと情けなく、股の下で腰を振っていた。
(-280) 2022/08/17(Wed) 12:57:06

【秘】 花で語るは ソニー → 無風 マウロ

まだあつあつの牛肉の味わいをビールで流し込み、ホップの苦味で満たされたらまたパニーノを齧る。
食べ汚いわけではないが、まるで成人したばかりの食べ盛りみたいに屋台料理を口にするさまは、
良くも悪くも年の近しい人間だとはお世辞にも思われないかもしれない、なんて。

生和えを聞けたならいっそうに嬉しそうに頬骨の上に皮膚が持ち上がる。
屈託のない笑顔はやがてレースの熱気に飲まれ、馬の競り合いに一喜一憂していた。
レースを見守っている間、相手の眼下に見える青年は祈ったり拳を握ったりと忙しなく、
自分の勝ちが決まったなら祝杯とばかりに手にしたビールを一気に空にした。
手元の食事もレースを見ている間になくなってしまって、両手で祈るように瓶を握る。
街の裏側で起きていることとは少しも関係がないように明るく、賑やかで。
健闘を称える声が掛けられた時に見上げた丸い目は、相手の憂いとは欠片も関係ないようだったろうに。

「祭りの期間内にトライアル・ランと本番と、アフター・ランもあるんだって。
 ほとんど毎夜、こんな感じ。競り合ってるのは馬同士じゃなくて地区同士だから、
 日によって馬が替わったりもするけど……今日は運がオレに味方したみたい」

これで楽しさを見出したなら、相手もまた訪れるかもしれないと注釈を。
街の祭りを貴方がみとめたことを歓迎するように、期限良さそうにしている。

それで、と。一度視線がふいとそれて、上目遣いになるようにおそるおそる目を合わせる。
賭けに勝ったその内容を説明する、それだけのことなのにやけに焦れた間が空いてしまう。
空いた手が相手の手首を掴んで、くったりとしなだれるような力が掛かって、一歩距離を詰めて。
次いだ言葉は先までの気軽な約束とはもう少し違った、しっとりとした熱がある。
熱気で匂いなんてほとんど混じり合っているはずなのに、わずかに癖のあるアンバーが香る。
ほんの一瞬だけ、ジェイドの奥に陽炎のように揺れる熱が灯る。

「朝までなんて言わないからさ。もうちょっとだけオレと夜を過ごしてもらって、いい?」
(-285) 2022/08/17(Wed) 14:23:27

【神】 花で語るは ソニー

「マフィアの情報狙いのニュースメディアは多くはない、けど。
 いずれあることないこと書かれるだろうな。そうなる前に沈静化しないと」

祭りのニュースに紛れているうちが花。その後には市井に混乱も招く。
みかじめ料の徴収が滞れば自分たちの活動にははっきりとした支障を来す。
事件の原因を明るみにするのは前提としても、早いところ襟を正す必要がある。
ちら、と一昨日の時にも不安そうにしていた、未成年の方をみて。

「なるべくルチアやビアンカみたいな、協力者の人間には影響が及ばないように心がけるよ。
 狙ってくる人間がどういうやつらであれ、力を削りに来るなら相応の人間が前に出る必要がある。
 ……心配ない。タダでやられたりやしないさ」

もしも誰か、あるいはノッテが狙ってくるとしても、回りくどい手段を使うヒマはないはずだ。
狙われるのは扱われ方のあまり大きくないアソシエーテよりもソルジャー、それよりも。
どうあっても、非力な彼女たちには矛先は向かない。その筈だ。
今回の結果を受けて、そう信じてしまっている。

女達の顔を見て、安心させて。目上の彼の言葉を聞いて、同意して。
実際のところはからいがどれだけ形になるかはわからないでも、彼女らを守る努力はするつもりだ。
(G35) 2022/08/17(Wed) 17:21:03

【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ

「それが普通だと思うな。本質的にはみんな自分以外のために死にたいわけじゃない。
 自分と関係ないもののために危険に晒されるのは嫌だ。
 ……そうじゃない人もいるんだろうけれど」

今この状況のために義憤にかられている人だとか、復讐を誓う人々だとか。
自分以外の何かのために命を投げ出す人たちがいるために、こうやって争い合うことになるのだろう。
ハンドルを握っている男がどちら側にあるのか、なんてのは常通りの顔からはわからないかもしれない。

ゆっくりとカーブを曲がり、建物の間から遠くに海が見える。夕暮れの色に照らされた美しい海。
いつもだったらそれを楽しむ余裕があったかもしれないし、
その向こうにあるのだろう本土の岸辺を想像することもあるのかもしれない。
迂回するように街の周りを走る車は、もうじき折り返す頃に入る。

ふたり。その中に相手が、己を入れなかったのを聞いて、ちらと視線がかすかに動いた。

「……一人で外に出していいの? 自活出来ない年じゃあないだろうけど。
 きっと、ビアンカがいなかったら、戻ってきちゃうよ。キミのことが心配で、さ。
 笑って送り出してそれっきり、なんて。オレはずるいと思っちゃう」

貴方の表情が引き締まるのと反対に、男の唇が中央に集まるみたいに結ばれた。
引き受けかけた先の時とは違って、適切だろう判断が下されることを、渋るように。
より良くあるようにと送り出されることの寂しさを想像して、何度か瞼がまたたいた。
それがどんな気持ちになるものかを、しっているかのように。
(-291) 2022/08/17(Wed) 18:07:58

【秘】 花で語るは ソニー → 銀の弾丸 リカルド

試着室の中よりは、なんて言葉には少しだけ意味有りげな視線を送ったかもしれない。
けれども"騒がしい場所"に出たからには、やたらとそれを言葉にしたりはしなかった。
おそらくは人目のあるところで件を問い詰められても、知らん顔をするんだろう。
同じことを話題に出来るのは、同じくらいの状況でだけ。そういうことなんだろう。

「ええ、いいの? それじゃ、お酒のほうくらいはオレが出そうかな。
 チェラスオーロを店外売りで出してるところがあったもんだからさ、お供はそれで。
 祭りの間しかやらないって言ってたから、今しかそんな気軽に飲めないよ」

この国じゃ酒は食事につきもの、さして大げさな誘いでもない。
冷めやらない熱狂に満ちている街路を抜け、大通りへと戻れば昼と大きくは変わらない。
そのうちにめいめいの家へと帰るのだろうけれど、それでもまだそれを渋って集い合う。
その中へと連れ立って潜り込んで、行儀の良いわけではない食事を楽しむのだろう。

ジャンルもバラバラの演奏を聴きながら、さして広がりのない話題を口にする。
街の歴史だとか、さしてエピソードもない待ち合わせスポットの話だとか。
共通するのはそれぞれが混紡するように手をつけあぐねている島の話だということ。
演奏を聴き、酒を嗜むのをメインとしていたならそちらは浅くもなりはする。
やがて演奏者が入れ代わり立ち代わり、最後の奏者に拍手が送られたところで。
ふと思い出したことがあったように、ジャケットのポケットに手を入れる。

「ああ、そういえば。手出して」
(-298) 2022/08/17(Wed) 19:48:16

【秘】 花で語るは ソニー → デッドヘッド ヴェネリオ

暗めの照明の下はみな密やかに会話をしていて、何を話しているかはお互いに聴こえやしない。
それでもあくまで食事は楽しむものという姿勢は、ある程度の賑わいを店の中にひしめかせ。
ひとつひとつのテーブルの個性や目立ち具合なんてのは、他愛ないもののようにかき消すのだろう。
一応、口端にのぼる単語や示唆については直接的に過ぎないように気を使う。

「ずいぶん大変なことになってるっていうのは聞いてる、代替わりだけじゃなく。
 早く解決したならいいけれど。それでお互い納得するものかな」

二発の凶弾はその原因を突き止めることを優先していて、いずれは明かされるかもしれないけれど。
それに続く模倣犯達まで、同じように納得の行く理由が明けるものなのだろうか。
互いに自分たちの塒でどんな話をしているかはわからないし、わかっていないものを説明したところで、
穏便に話し合いに進めるかどうかなんてのは、まだわかりっこない、有り得ないのかもしれない。

「……そんなふうに言わないでよ、先生。
 オレは貴方まで便りがなくなってしまうのは、いやだ」

せっかくの食事の席を設けてもらったっていうのに、質の悪いジョークにしんみりとしてしまう。
笑えもしない、縁起でもない。ぐ、と喉が狭まったように食事がせき止められて、
なんとか押し流すように、グラスの中身を一気に干した。

きっと困らせることになるのだろうけれど、それでも口にせずにはいられないように。
一歩、一歩と踏み出した足がその下の薄氷に罅を入れているのがわからないわけじゃない。
けれども"次"なんてあるかわからない、生きていても、――死んでしまっても。

「……ねえ、今日は。子守唄うたってくれるんでしょう?」
(-308) 2022/08/17(Wed) 20:42:06

【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ

そうだろう、と繰り返すのは先と同じ言葉になるから、相槌だけで過ごされる。
やたらに相手の境遇や過去を聞きたがるわけではなかったから、相手も話したりはしなかっただろう。
そしてきっと相手も、金を払っている間のリップサービス以上には興味を寄せなかっただろうから、
男が何処で生まれてどう育ったかなんてのは、聞かされていないはずだ。

それでも真っ向から、裏稼業の浪漫なんてものに浸りきっている人間は、
よほど血筋に硝煙の匂いの染み付いた人間だけでしかないのを、知っている。
互いはそうではないということも、わかっている。

相手の、強い表情を横目に見遣りはしただろう。
ぎょっとしたりもしなければ、二度見して確認したりもしない。
ただ、少しだけ黒目は下の方を見つめがちになって、改めて道路の先の方に視線を移して。
運転に支障のあることはしないし、動揺してみせたような様子もない。

「……今度から」

余計なお世話なのだろうし、きっと言ったところで相手の覚悟が揺らぐわけじゃない。
彼彼女らの間でどんなやりとりが交わされていたのかだって、わかりゃしない。
納得済みの話なのだったら、それこそ無駄な忠告でしか無いだけのものだ。

「ウソつく時は、話切り出す時から貫いておいたほうがいいよ」

どこが、何が、なんてのは敢えて口にせずとも伝わるのだろう。心当たりはあるだろう?
ゆっくりと、海岸線を窓の中に切り出しながら車はゆるやかなカーブを曲がっていく。
街を見下ろすほどの勾配もなくじきに市街に差し込んでいけば、
そのうちに車に乗り込んだ場所にほど近い風景が見えてくる頃だろう。
話し合いは、もうそろそろおしまい。
(-312) 2022/08/17(Wed) 20:52:30