情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新
【赤】 温和 セナハラトントン、控えめに扉を叩く音がする。 一階のとある部屋の前に、男は立っていた。 「……メイジくん、起きてますか。準備が整いました」 普段よりも強い消毒液の匂いを隠しもせず、 ただ笑みを張り付けている。 (*0) 2021/06/30(Wed) 22:42:22 |
【赤】 温和 セナハラ「手術室ですよ。後は細かくするだけなんですが」 重い足取りを隠しながら進んでいく。 消毒液の中に、血や脂の臭いが混じっている。 「臭いが少しきついかもしれません。 三角巾がありますから、そちらを使ってください」 ……既に、食肉に見える段階までは処置を終えていた。 (*2) 2021/07/01(Thu) 0:59:12 |
【赤】 温和 セナハラ「……きっと」 職業柄慣れているのだろう、布で口元を覆うことはしなかった。 「隣村に、住んでたんでしょうね」 隣村まで足を運んでも猿はいない。 この村を知る人間に通用する嘘ではないと知っていながら、 猪や鹿ではなく、猿だと言ったのだ。 「もしもこの肉が猿ではなかったら、」 「きみはどうしますか?」 男は、自分から言い出す勇気が無かったから。 気付いてほしいと願った、情けない大人だ。 (*4) 2021/07/01(Thu) 19:40:59 |
【赤】 温和 セナハラ「御免なさい」 小さく、ただ一言呟いた。肉を薄く切り続ける。 慣れた手つきだが、こんな事の為に身に付けた技術ではなかった。 「……過食部が少ないんです、牛や豚と違って」 これは食肉の為に改良された動物ではない。 当然の事だった。 「まだ、足りません」 「……でも。 アユミさんは、こんな事許さないですから」 山口歩美は正義感が強く誠実だが、箱入り娘でもある。 飢えた事など無く、それ故飢えに対する考え方が甘かった。 だから。 邪魔になると考えて、真っ先に殺したのだ。 (*7) 2021/07/02(Fri) 8:18:56 |
【赤】 温和 セナハラ「もし疑われたら、僕に脅されたと言ってください」 手を洗い、用意していた塩や胡椒を取り出す。 調味料を塗して、糸を通して、繋げていく。 干し肉にするらしい。 「……きみ達が生きる為なら、僕は協力を惜しみません」 (*8) 2021/07/02(Fri) 8:19:33 |
【赤】 温和 セナハラその様子を、真っ暗な瞳でじっと見つめている。 嘘をついているのか、強がっているのかはわからなかった。 それを判断できる程、付き合いが長い訳ではない。 だから、 「彼が救助まで生き延びるには、 きっと全員分の食糧を掻き集める必要があるでしょう」 事実だけを述べた。 「医師を目指す立場で、こんなことを言うべきではないと分かってはいるんですが。 ……いえ、もう辞めるべきですね」 その瞳はどこか遠く、諦念を映している。 (*11) 2021/07/02(Fri) 22:35:16 |
【赤】 諦念 セナハラ糸で繋がった肉を干していく。 人を救う為の知識を使って殺し、作った糧だ。 「……もしもきみが、生きたいと強く願うなら」 「殺し方と食べ方。両方を教えます」 その為の教材として、男は自分を信頼する少年を選んだ。 (*12) 2021/07/02(Fri) 22:37:08 |
【赤】 諦念 セナハラその瞳に見覚えがある。 戦場に生きる者は、大凡がこんな瞳をしていた。 室内に吊るされた干し肉を一瞥すれば、手を洗う様に促した。 「……死にたくないと思う事は、何らおかしな事ではありません。 限りある幸いを、みんなで奪い合って生きていくんです」 自身も血と脂で汚れた手を洗っていく。 口振りから、貴方の父親が既にこの世を発ったことを察していた。 しかし、それを指摘する事はない。 (*14) 2021/07/03(Sat) 11:24:42 |
【赤】 諦念 セナハラ明言はしてこなかったが、 かつての自分の行いはもう察しがついているのだろう。 聡い子供だ。 それ故に危ういとも、思った。 「すごいかどうかは……、わからないですけれど。 あの時は死にたくないというより、 ……ただ単に飢えて、見境が無くなっていました」 裸足で逃げながら考える事は、渇きや飢えばかりだった。 生きたい、死にたくないと意識したことはあまり無かったように思う。 知性のない動物に等しく、本能のまま彷徨っていた。 「死にたくないか、と聞かれると。 それも、わかりません。 ……ただ逃げ続けた結果が今、といいますか」 (*18) 2021/07/03(Sat) 16:17:54 |
【赤】 諦念 セナハラ綺麗になった手を見つめてから、時計を見た。 「……少し休憩しましょう。 証拠の消し方も教えたいですから、また来てください」 指定された時刻は約一時間後。 誰にも見られない様に、手術室へ来るように。 共犯者は、小さく囁いた。 (*19) 2021/07/03(Sat) 16:18:23 |
セナハラは、どこか悲しそうに笑った。 (a11) 2021/07/03(Sat) 22:43:59 |
セナハラは、非科学的なものを信じない。 (a15) 2021/07/04(Sun) 0:37:55 |
セナハラは、自分が生きている事こそ、その証拠だと考えている。 (a16) 2021/07/04(Sun) 0:38:31 |
【人】 諦念 セナハラ雨粒で濡れる窓から、暗い空を見上げている。 次に、茶色く濁った川を見下ろした。 知った人間が沈んでいるかもしれないと思い至っても、 眉一つ動かない。 人は死ぬものだ。それも呆気なく、何の物語もなく。 特別なことではない。 懐かしい日常の足音が、少しずつ大きくなっていた。 (76) 2021/07/04(Sun) 14:10:25 |
諦念 セナハラは、メモを貼った。 (a22) 2021/07/04(Sun) 14:51:07 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新