情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 被虐 メイジ病院に避難してから、幾度目の時が経っただろう。 ……メイジには、もうわからなかった。 雨脚も弱まり、風が落ち着いた空模様を眺める。 ふと窓にうつった自分の顔が、別人のように見えた。 (0) 2021/07/07(Wed) 22:15:02 |
メイジは、今日も生きている。 (a0) 2021/07/07(Wed) 22:16:11 |
【赤】 被虐 メイジ「……あはは……なーんちゃって……」 「…………」 「…………………」 メイジは、ひとり手術室にあった椅子に座り込み 膝を抱えて蹲った。 (*1) 2021/07/08(Thu) 3:24:12 |
【赤】 被虐 メイジメイジは、ふと顔を上げた。 それは誰かがいるような気がしてそうしたのか ただなんとなく顔を上げたのか ただ何もないところを見つめている。 「…………」 (*2) 2021/07/08(Thu) 14:45:44 |
【赤】 被虐 メイジ「オレさあ、駄菓子屋で働いてるって言ってたじゃん?」 「あれね、ウソなんだ」 「でもねーそういう、子供が喜びそうな 店に行ってみたかったのはホント」 「ほんとは、ちっさい工場でさ、雑用してるんだ。 良いか悪いかっていったらね、悪いと思う。 人使いは荒いし、電話番とかなんて一生したくない。 親父よりはマシだからなんとかやってた もしかしてオレって親父に感謝すべきかな?」 「君はあんまり外の世界を知らないみたいだったから オレのせいで夢を壊したくなかったんだ」 「ごめんね、嘘ついて」 つらつらと、懺悔のようなただの独り言だった。 (*3) 2021/07/08(Thu) 19:46:50 |
【赤】 被虐 メイジ「あと他に嘘ついたことあったかな?」 「……癖になってんだよね。嘘つくの」 「──、──……」 ぶつぶつ、つらつら、独り言を言っている。 (*4) 2021/07/08(Thu) 19:58:44 |
【赤】 被虐 メイジ刺し殺そうと思った。 ──最初は、身を守ろうと刃物を取った。 本当は、話がしたかっただけだった。 けれど、暴力に屈するばかりだった無力な少年に 確実に、急所を狙う力なんてなかった。 逃げるのに十分な傷だったことなんて、気付ける頭脳もない。 父親 ああ、脅威がまだ動いている、息をしている。 また"狼"が牙を剥いて来る。 ──次は殺されるかもしれない! ぼろぼろの壁際に寄り掛かる男 刻まれたふたりの子の名と数字。 かつては、幸福の記憶が染みついていたであろうボロ家 恐怖の感情に支配された少年は、牙を剥いた。 ……動かなくなるまで、恐怖が、消えるまで。 この手で、首を絞めて、息の根をとめてやった。 もう誰もいない空っぽの空間。 この嵐と共に沈んでいくことを、願った。 (*7) 2021/07/09(Fri) 16:55:34 |
【赤】 被虐 メイジ「…………」 だれかが、傍にいたような気がした。 以前感じた悪寒はない。根拠もない。 ただ彼のことを思い出していたから そう思い込んだだけかもしれない。 メイジは、ふいに立ち上がって 干されていた"肉"をかき集めて、その場を後にした。 (*9) 2021/07/09(Fri) 20:44:06 |
【人】 被虐 メイジ雨風が弱まろうとも、助けがすぐ来る保証もない。 メイジは調理室でなにかを焼いている。 以前、それをやっていたセナハラの代わりをするように。 調理台に並ぶは、一夜干しの肉だった。 「……あ。焦げたかも……」 前に食べた時と同じにおいが漂う。 見様見真似。火加減はよくわからなかった。 (5) 2021/07/09(Fri) 20:53:42 |
【赤】 被虐 メイジこれは、誰かが遺体を見る少し前の手術室── メイジは壁際に座り込んだまま動かない男と 結構な時間、寄り添っていた。 悲しみに暮れていたのか、動く気力がなかったからか。 「やっぱ起きないや」 当然だ。己の手で殺したのだから。 やがてそれにも飽きたのか、気だるそうに立ち上がり ずるずると遺体を手術室の中央まで引きずっていた。 「………重い」 持ち上げて、仰向けに手術台に寝かせた。 だらりと投げ出された手を胸の前で合わせる。 「………………重たいよ」 消え入りそうな、忌々しげな声が 腐敗臭のただよう手術室にむなしく響いた。 (*10) 2021/07/10(Sat) 16:33:54 |
被虐 メイジは、メモを貼った。 (a4) 2021/07/10(Sat) 21:40:37 |
【赤】 被虐 メイジメイジは、用事がある時以外は、ずっと手術室にいる。 手術台の上でずっと、突っ伏して 返事も帰ってこない抜け殻に話し続けていた。 少年は死後の世界があるなんて知るはずもない。 ……だからこそ、友達にも嘘を吐き続けた。 なにも知らないままでいてほしかった。 「セナさん、雨と風弱まってきたんだ ……もうすぐ帰れるかな。助けなんてくるのかな」 (*11) 2021/07/11(Sun) 0:26:31 |
【赤】 被虐 メイジ「セナさんがいなかったら ……誰がオレを助けてくれるの……?」 そうして呟く背中は、ただの小さな子供のようだった。 「……あはは……もうそんな子供みたいなこと 言ってられないよな……。 もうひとりだ、オレ。家族はみんな死んじゃったり 出ていったり、いなくなっちゃったから」 「自分でやったんだ」 実の父親も、──優しい父親がいたらと夢見た人のことも。 (*12) 2021/07/11(Sun) 13:10:40 |
【赤】 被虐 メイジ「最後、なんて言おうとしたのかな」 ふいに思い出す。考えてもわかるはずもない。 メイジには何も見えない、聞こえない。 だから、ずっと目の前の遺体だけを見つめている。 「死んだら、どこにいくのかな」 「やっぱ地獄かな? 悪いことしたもんね」 「楽になれないかもね」 「オレのこと、実はどっかで見てんのかな ……それはそれで、いやだな」 「オレも死んだらおなじとこ行けるかな 悪いことしたからさ」 思い浮かんだ言葉を脈絡もなくぽつぽつ。 (*13) 2021/07/11(Sun) 13:17:44 |
【人】 被虐 メイジ>>32 【手術室】 「……、……そう」 ぽつり。消え入りそうな声が零れた。 ロクの話を戯言と思うこともできた。 だけれど、どうしてもそう口にする 友達が容易に想像できてしまうのも事実だった。 「……バカじゃないの」 だから、八つ当たりのような言葉を吐く。 言い表せない感情を拳に込めて握る。 「どこまでイイコぶってるんだ、あいつ」 「じゃあなんだよ……素直に"オレのために食料になれ" って言えばよかってことかよ……」 皮肉なものだ。 自分は最後まで"すごくて、いい友達だった"という 夢を見させたまま、彼を殺そうと決めたのに。 メイジは自分勝手な人間だった。 (34) 2021/07/11(Sun) 18:48:20 |
【赤】 被虐 メイジ「頭から焼きついて離れないんだ」 バラバラになっていく手足や、開かれる胸、鮮血 赤黒い内臓、砕かれる骨──頭だけになった、人間の姿が。 人を刺して、肉を切る、感触が── この手で、脈打っていた鼓動を止める瞬間が。 忘れろ、と言われたことは覚えている。 忘れられる日なんて、来るだろうかと今は思う。 胸が痛い、頭が痛い、とうの昔に治ったはずの傷が疼く メイジは、よく怪我をする少年だった。 (*14) 2021/07/11(Sun) 19:23:13 |
【赤】 被虐 メイジ「……嫌いだよ。みんな、みんな」 「生きてって言い残して勝手に死んでくのも オレの心に付け込んで殺させるのも オレを許してくれるやつも」 「どうにもできないオレ自身も」 誰のせいではない。誰のせいにもできない。 だってそうしなければ生きられなかったのだから。 でも行き場のないこの感情は、何にむければいいのか。 「……でも……ありがとう」 (*15) 2021/07/11(Sun) 20:59:34 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新