81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】
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| ミロクの死体を、見つけて。 どれぐらい時間が経っただろう。
フジノは部屋でひとり、硬いベッドの上。 雨風の音はだいぶ、収まった。 ……それを差し引いてもここは、こんなにも静かだっただろうか? 昨日、あの部屋には何人集まったっけ?
腹の膨らみを撫でながら。 フジノはぼんやりと窓から外を見つめた。 (2) 2021/07/08(Thu) 1:14:10 |
| (a2) 2021/07/08(Thu) 1:34:58 |
| ひたひたと足音を立てながら病院の中を回る。 初日は、人がたくさんいると、思ったのに。
いつの間にか、人はどんどん消えていた。 あの嵐の中、他に行くところなんてないはずなのに。
皆どこへ行ってしまったのだろう?
「……だれか、いないの?」
ぽつりと零した言葉は雨風の音にも消されず、静かな部屋の中に響いた。 (4) 2021/07/08(Thu) 21:55:47 |
| フジノは、誰かにとても軽い返事をされた気がした。かる〜い。 (a3) 2021/07/08(Thu) 22:09:53 |
| >>6 ロク くるりと、振り返る。 ここ数日で聞き慣れた声。見慣れた姿だ。 貴方が視界の外でした行動の意味など、少女に知るすべはない。 ただ貴方がいた事、返事が来た事に安堵したような表情を浮かべただけだ。 「おはよう、ロクさん。 ……他の人は、見なかった?」 皆どこに行ったのだろうと、がらんとした病院内を見回す。 昨日、ミロクがあんな事になったばかりだというのに。 (7) 2021/07/09(Fri) 22:10:34 |
| >>8 ロク そう、と短く答えた。 ……姿が見えない人々が、どうなっているのか。 薄々想像がついているのかもしれない。 「うん。探しに……あっ」 ふと思い出したように顔を上げ、ちょっと待っていてほしいと一旦離れる。 戻ってきた時、手の中には貴方が先日フジノにかけた上着があった。 「上着、ありがとう、ございました。 ……あの時は、何もできなくて、ごめんなさい」 貴方の気後れするような雰囲気も気にせず、 気を遣ってくれてありがとうと告げ、上着を返しただろう。 (9) 2021/07/09(Fri) 23:39:38 |
| >>10 ロク 「ううん……あのままだと、ずっと、ただ見てるだけで何も、動くこともできなかった、だろうから。 ロクさんのおかげで、落ち着けたし、助かった、よ」 ぴくりと肩が一度跳ねたが、それだけだ。 反射的に身構えてしまうのはどうしようもないけれど、貴方がフジノに向かって挙げた手をそのまま振り下ろす人ではない事を、わかっているつもりだ。 「そう、かな。そうだと、いいな。 ……ひとりだと、寂しい、ものね」 腹をそっと撫でながら呟くように言う。 会話している内に、調理室から先日と同じ匂いが漂い始めただろうか。 >>5 (11) 2021/07/10(Sat) 11:22:15 |
| >>12 ロク おとなしく撫でられる。 またこの感覚には、慣れない。いつか慣れるだろうか? 「そう、だね。 ……お腹が空いたままだと、生きられないもの」 腹を軽く擦り、貴方と共に調理室へ向かっただろう。 (13) 2021/07/10(Sat) 12:32:42 |
| >>5 >>13 【調理室】 そうして、二人は調理室へやってきた。 先日と同じ匂い。焼かれている肉は余っていたものだろうか? 焼いている人間は、先日と違う。 「……今日は、メイジが焼いてるんだ、ね」 先生はどこへ行ったのだろう。 室内を見回した。姿は、見えないように思う。 (14) 2021/07/10(Sat) 12:40:25 |
| >>16 【調理室】 昨日焼いていた先生は、どこへ行ったのだろう。 ……いいや。どこ、だなんて。聞かなくても、答えてもらわなくとも、どうなっているかはなんとなく、わかってしまう。 なら、この病院で生きているのはきっとこの三人だけなのだろうと、わかってしまった。 「……そう、だね。それもある、かな」 膨れたお腹を擦り、頷く。 食べられるものは食べておかないと、いけない。 それが何の肉であるか、まだ確証を得てはいないけれど。 (18) 2021/07/10(Sat) 18:00:54 |
| >>17 【調理室】 どこにあるか知っていると、聞いて少しだけ顔を曇らせた。 ……後で、探しに行かないと。 『見つけて』あげなければと、思った。 きっと昨日見たような惨状を目にするだろう。 それでも、そのまま放っているのは気が引けた。 その惨状をメイジが抱えている状況も、嫌だと思った。 (19) 2021/07/10(Sat) 18:05:53 |
| >>20 >>21 【調理室】 「うん。大丈夫。いただく、よ」 受け取り、いただきますと呟いて口に運ぶ。 すべては食べきれないけれど、乗せられた分はしっかりと食べていく。 これが何の肉であろうと……この後、その見当がついてしまっても。 食べて生にしがみつかねばならない。 フジノが抱えるいのちは、フジノひとりのものではない。 (22) 2021/07/10(Sat) 22:16:03 |
| >>23 >>24 【調理室】→【手術室】 「ごちそう、さまでした」 食べ終えればそう言って手を合わせた。 ロクの片付けを手伝い、メイジの後に続いて歩き出す。 進むにつれ、異質な匂いが鼻をつき始めた。 それは手術室へ入ると一層強くなり……視線を奥に向ければ、変わり果てた医師を見つけた。 今日は、叫ばなかった。 ただ悲しげにその場の人々を見つめた。 (25) 2021/07/11(Sun) 2:17:27 |
| >>28 >>29 【手術室】 貴方達をじっと、黙って見つめている。 メイジが“悪いこと”をしていた事は、本人から聞いた。 ……ロクは『誰の骸』から聞いたのだろう? フジノに人外の声は聞こえない。 姿も見えない。 そこには物言わぬ肉の塊があるだけだ。 ―――あぁ。 あの『肉』達は、そういう事だったのかも。 やっと思い至って。 そっと、腹を撫でた。 (30) 2021/07/11(Sun) 13:54:46 |
| (a6) 2021/07/11(Sun) 16:30:59 |
| (a7) 2021/07/11(Sun) 16:31:17 |
| フジノは、きっと。肉の正体がわかっていても、口にしていただろう。 (a8) 2021/07/11(Sun) 16:32:25 |
| >>33 >>35 【手術室】 フジノはやはり、黙って聞いていた。 どうせ全てを知ることも聞くことも、できないのだろう。 ただ、ここで何が起こったか。 彼らが何をしたか。 自分がどう加担したか。 それらの断片を生きている間、抱えるのだ。 それが生かされたフジノに唯一できることだから。 「……メイジ」 名を呼んで、貴方の傍らにしゃがむ。 丸くなった背を優しく……少しぎこちない手つきで、撫でただろう。 貴方が落ち着くまで、大丈夫だと思うまで、何度でも。 (36) 2021/07/11(Sun) 20:57:46 |
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