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【人】 トト生を受けたのは、長女であり長子として。 下に弟妹が生まれることはなく、 結果的に私はひとりっ子となった。 ひとりである故に子供へと費やすリソースは 全て私ひとりのものだった。 買い与えられるものは全て新品。 親戚や友人知人からのおさがりすら1つもなかった。 それだけじゃない。 与えられる全ては質の高い高級品。 当然だ。うちはお金の有り余る資産家。 周囲と比べて、自分の家族は少し違う。 察したのは、早かった。 (232) 2021/07/03(Sat) 23:42:23 |
【人】 トト私にとって勉強とはするものではなかった。 心配しなくても学士は取得できると、 幼い頃から有名大学の名前を聞かされていた。 代わりに、最低限の一般常識や高度なマナー、 そして所謂「嫁入り」に必要な教育を 嫌となるくらいに叩き込まれた。 身に纏うもの、口にするもの、友人関係、 その全てが一流であることは、 与えられているというよりも義務に近かった。 (234) 2021/07/03(Sat) 23:43:28 |
【人】 トト私に権利はないの? 人権に関する教育を受けた時に 口を滑らせそうになった。 聞いたところで、何が不満なのかという顔をされるだけ。 同じ家族でも分かり合えないことがあること、 その頃の私はもう十分に理解をしていた。 由緒正しきと言われる高校を卒業して 同じような人間が集まる大学へ進学した。 ─── 恋?─── 青春? 思春期真っ只中の10代の頃。 甘ったるい響きは庶民の娯楽だと教わった。 (235) 2021/07/03(Sat) 23:43:36 |
【人】 トト私に権利はないの? 人権に関する教育を受けた時に 口を滑らせそうになった。 聞いたところで、何が不満なのかという顔をされるだけ。 同じ家族でも分かり合えないことがあること、 その頃の私はもう十分に理解をしていた。 由緒正しきと言われる高校を卒業して 同じような人間が集まる大学へ進学した。 ─── 恋?─── 青春? 思春期真っ只中の10代の頃。 甘ったるい響きは庶民の娯楽だと教わった。 (236) 2021/07/03(Sat) 23:43:44 |
【人】 トトスマホは持っていない。 私の携帯電話は所謂ガラパゴス。 学内での所有率は半々くらい。 スマホは俗世につながる危険物。 そんな分別の分からない子供でもないけれど、 そう教えられれば私に選択肢はない。更には 特別必要性も分からないので仕方がない。 だからそのウェブサイトを開いたパソコンも メールを受け取ったメールアドレスも 大学の講義用に準備されただけの環境だった。 自分から何も求めることのない毎日。 いつもなら、馬鹿馬鹿しいとサイトを閉じ、 今日のスケジュールを考えながら、 形だけの課題をこなすだけ。 …… そうしなかったのは、 それが「いつも」ではなかったから。 (238) 2021/07/03(Sat) 23:44:43 |
【人】 トト…… 大したことことではないと。 何度もそう思い込もうとした。 未来がどこまでも約束された私の人生。 その長いレールの途中には不具合があると知った。 ─── 単に、それだけの話よ。 (239) 2021/07/03(Sat) 23:44:50 |
【人】 トトサイトを開いてから、ややしてから。 キャンパス内のティーサロン。 一定の速度でカタカタとキーボードを叩く音が響く。 ・名前……トト(仮名) ・性別……女 ・連絡先……××××××@×××××.××.×× ・願望…… 手を止めると、唇を閉じたまま 誰にも聞こえてはならない願望を、 静かに、静かに口にした。 (240) 2021/07/03(Sat) 23:45:01 |
【人】 トトやはり普段に比べて動揺していたらしい。 送信した瞬間に我に返った。 …… こんなサイト。 悪戯か個人情報を抜くために決まっているのに。 本名を晒さなかったのは唯一の幸いだと息を吐く。 それが理性的に行動したわけではなく、 自分の名を忌避した結果だとしても。 だから返信なんて来るとは思わなかった。 (363) 2021/07/05(Mon) 18:11:35 |
【人】 トト「 ザ ラピスかぁ…… 」 予想に反して再度届いたメールを一読し、 指定されていた開催場所。 そのまま流れ作業でパソコンで検索した。 宿泊したことのある一流ホテルと同じ並び。 外装も内装も手の込んだ、高級ホテル。 こんな場所では私の望む人とは出会えない。 そう直感したにも関わらず、 そこにはマッチング決定の言葉が書かれている。 騙されているのかな。 そう疑いながらも、どこか期待を止められず 指定された日時にその場所へと向かうのだ。 20歳の誕生日にと用意された、 美しい淡い紫のワンピースを纏って。** (364) 2021/07/05(Mon) 18:11:58 |
【人】 トト大学のプリンターで印刷した件のメールと地図が 握りしめた片手の先でヒラヒラと揺れる。 ホームページで見たのと同じ外観の前に立つと 辺りを2、3度見回した。 誰にも知られたくない。 見られてはいないことを確認すると覚悟を決めて 一歩踏み出した、その時だった。 (394) 2021/07/05(Mon) 22:30:47 |
【人】 トトアスファルトの地面を渡る風が、 長く伸びた髪をさぁっと通り抜けた。 一瞬、反射的に目を閉じて、 パッと風の吹く方に目を遣ると、 リボンが、ひらりと宙を舞っていた。 (395) 2021/07/05(Mon) 22:30:51 |
【人】 トト「 これ、貴方の? 」 リボンを掴もうとしていた手に、 私の手に収まったリボンを掴ませる。 それなりに質の良さそうな服を纏っているけれど、 どうもそれが馴染んでいないように思え、 不思議そうにその姿を上から下まで見つめた。 リボンはきっと、胸に結んでいたものだろう。 「 服、着方がおかしいわ。 」 ここを、こうして……っと、勝手に襟元を直し、 彼に返したリボンを一方的に抜き取ると、 首元に綺麗に巻きなおした。 (397) 2021/07/05(Mon) 22:31:01 |
トト は、メモを貼った。 (a18) 2021/07/05(Mon) 22:41:06 |
【人】 トト悪くないリボンだった。 ただ、うちの家族が身に付ける物よりは 幾分質が下だと思った。 いつからだろう、こんな風に 品定め≠行うのが当たり前になったのは。 ホテルに入ってからも同じだ。 立派そうに見える調度品、床や壁紙の素材。 そのひとつひとつに合格不合格を、付けて歩く。 (413) 2021/07/06(Tue) 1:18:49 |
【人】 トト何度メールを読み返しても胡散臭い文章だった。 俗世には人の弱みにつけ込んでお金を搾取する 悪い商売が蔓延っているって聞いたことがある。 これも、無料とは記載があったけどどうなのだろう。 本当に願いが叶うのだとしたら、 誰が何のためにこんなことをしているのだろう。 (415) 2021/07/06(Tue) 1:19:00 |
【人】 トトいけない、いけない。って首を横に振る。 だってもう覚悟は決めて来たのだから。 ここで何があってもいい。 搾取されてもいい。汚れてしまってもいい。 ない方がいいけど、最悪身の危険があってもいい。 そんな覚悟で、来たのだから …… といいつつ、小さなボストンバッグには 護身用のアイテムも念のため入っているのだけど。 (416) 2021/07/06(Tue) 1:19:12 |
【人】 トト誰かに見られているわけではないのに、 誰にも見られたくなくて、 早くエレベーターが停まればいいのにと願った。 話は部屋に入ってからにしたかった。 だけど聞き捨てならない言葉に思わず応える。 「 事件に巻き込まれる ……? そう、貴方犯罪者なのね。 」 やっぱり騙されていたんだ。 一見害の無さそうに見えて安心したのに 何て手の込んだ犯罪なのだろう。 (472) 2021/07/06(Tue) 21:37:41 |
【人】 トトマッチングの希望だとか、 ……可愛いだとか、 何て白々しいの。 少しでも何かを期待してしまった私、馬鹿みたい 「 それで、何が目的なの? お金?それとも身体? ────… 残念だけど、 身代金は期待しない方がいいわ。 私を心配するような家族なんていないもの。 」 正しくは「いた」かもしれないけれど、 それすら今の私には分からないの。 ** (473) 2021/07/06(Tue) 21:37:53 |
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