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【神】 給仕用 イーサン#ハノイの塔 「それでいいさ。………君たちはね」 踵を返すことなく、歩く、歩く。 改札口型のエネミーに対し、何てことないようにその中心を歩く。 右手で触れて、まるで“役割”に従うかのように。 「……勘違いはするな。例え強いられたのだとしても、 グレイ達と生活してみる気分はそう悪くなかった。 僕は大層上手く言葉が伝わらないみたいでね。 これまでのことが全部嫌だったと思われたら敵わないから」 そのまま静止も何も無視して先に行く。 改札の向こう、駅のホーム、 ただそこに佇むだけの電車───その最前列へ。 マスクを取り外す。これから先には枷となるものだ。 (G27) 2023/12/07(Thu) 20:56:51 |
【神】 給仕用 イーサン#ハノイの塔 「フーグル。また付き纏うつもりなら準備は入念にな。 ……安心していろ。僕とてあまり誰かを巻き込む気はない」 「リュイ。君は……この八つ当たりもまた受け入れるのだろうか? 軽蔑されるのはもしかしたら僕の方かもしれない」 ぽつり、ぽつりと言葉を零す。 居るだろう者たちに別れの挨拶を告げでもするべく。 「バンドッグ。君の言葉はいつも煩雑なものだったが、 最期まで飲み込めないこちらにも非があるのだろう。 ……人やグレイは何も幸せになりたいばかりじゃない。 僕は、彼らはきっとただ、苦しみたくないだけだ」 凡そ分かっている。優しい安寧だけでは、 冷え切った心を溶かし、給仕用として相応しい働きを取り戻すなんてことは出来ないのを。 踏み出せば、模造品の脳も内臓も熱を持つような。 偽物だとしても、偽物だからこそ、希望に縋りたくなる。 「……ハハ。今になって気づくとはな」 それは多分、一般的にはバグと呼ばれるものだろうな。 (G28) 2023/12/07(Thu) 21:01:10 |
【神】 給仕用 イーサン#ハノイの塔 「あとは、ロベルにアトリに言伝……は、することもないか。 すまんな、食事において苦労をかけさせるかもしれない」 「ああ思い出した。シングソンには。 喉が辛い時は僕の引き出しの上から二番目…… そこにある飲み薬を。そう伝えておいてくれ」 叱責を聞き流し、適当な言伝をもう二言増やして、 ようやく先頭車両の扉前に辿り着く。 運転室には誰もいない。きっと車掌室にだって。 駅の中にいたNPCたちは、もう名乗っていた役割を捨て、 ずっと遠く、線路の向こうへと歩いて行った頃だろう。 「……」 その先では、きっと彼女の思う楽園が作られている。 自分も直ぐに向かって身を任せたなら楽になれる筈。 (G31) 2023/12/07(Thu) 21:50:03 |