人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ

「なにが違えんだよ、言えよ、ほら定義してみろ、学校出てんだろ!?」

ぎりぎりと締めあげられながらも、かはは、と哄笑を続ける。

「おめー法律によって許可はされてない暴力を
 抵抗できない相手にふるってるよなァ、
 相手を脅してよォ」

「お前が一番知ってんだろ?
 ヤってんだからさぁ」

それは間違いなく侮辱であり、罵倒だ。
──そして、事実だ。


「何が違う・・か、
 何が同じ・・か、
 ちゃんと確かめろ、今、なあ!」
(-71) 2023/09/28(Thu) 9:09:38

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

──ノッテ・ファミリーのアジトは、当然ながら街中にある。
周囲の人間もそこがマフィアの根城であることは知っているから、壁によりかかったり周囲で騒ぐやつはそうそういない。
それでもそこは市中であり、人通りもあれば車や荷物が往来することも珍しくはなかった。

そんな中。アジトの一角にひっそりと置かれたその「荷物」──何の変哲もない黒いスーツケースは、ファミリーの一員である若者が置いていったこと、そして取締法失効に伴う混乱によって、見分されることもなかった。
だから、それが原因であると気が付くものはいないままで。


──パパパパパパパ 
パァン
!!


けたたましい破裂音と共にそれが「爆発」した時。
すわ襲撃かと銃を手に駆け付けた構成員たちが見たのは、内側から真っ二つに焼け焦げ吹き飛んだスーツケースの残骸に過ぎなかった。

「っンだこれ」
「……な、なんだ? テロ?」
「いや、これ…花火じゃねえか」
「イタズラ〜?」
「ウチ相手にそれやるのはバカかジェームズ・ボンドだけだろ」
「じゃあCIAだ」
「CIAがうちに何の用だよ」


構成員たちは、訝し気に顔を見合わせる。
そんな混乱と焦燥が、彼らの判断を僅かなりと鈍らせていたといえる。
…だから、気が付かなかったのだ。

「よう」

アレッサンドロ・ルカーニアが、ぽん、と肩を叩くような距離に近づいてくるまで。

#AlisonCampanello
(G0) 2023/09/28(Thu) 11:29:12

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>G0
「ぅお」
「キャ」「ギャア」「ひ!」
「マジでビビる!」
「くそばか眼鏡」
「やめてくださいよアレ!」
「……って、おいおい、お前ら、おい…」


驚いたように飛び跳ねたり文句を言ったり、めいめいの反応を見せる構成員たち。
──だが数名は警戒して距離を取り、手に持った銃を遠慮がちに向ける。

「どうした」

にやにやとしたいつの笑みに、向けられた銃口が下がる。
訝し気な顔と困惑した視線が絡みあって、緊迫した糸がぷつり、と切れた。

「い、い、いや、だって、あれ、取締法」
「裏切ったって…」
「いやそんな」「旦那がさぁ、そんな」「ね、だよね」「お前らさぁ」

「ハハハ、まあ待て、お前ら、落ち着け」

まあまあ、なんて手つきでその場を押さえる。
カポ・レジームとしてのその仕草に、構成員たちは思わずぽかん、と立ち止まって。

#AlisonCampanello
(G1) 2023/09/28(Thu) 11:31:18

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>G1

「怪しいと思ったら」
   
バ バ
ガン

「ぐ」「ギャ」「っ、あ」「っづ」

「先に拘束」

背後に隠していたソードオフ・ショットガンから一度に二発。
立てつづけに放たれた鳥撃ちバードショット用の散弾が、至近距離で密集していた構成員たちを襲った。
室内にいたことで肌の露出している服を着ていた若者たちが、あちこちに被弾してうずくまる。
直径0.2inch以下の鉛の雨が手足や顔、首の皮膚を突き破り、発砲炎マズルフラッシュに照らされた赤い飛沫が花束のように咲き乱れた。


「う…」「ってぇ、く、…ッ」

「コラ」

被弾の少なかったソルジャーが痛みと衝撃に顔をしかめながら、
突きつけるよう向けた拳銃がバギン、と真横に弾かれる。
身を低くし、スーツの裾を翻しながら距離を詰めたアレッサンドロが、踏み込みと同時に跳ね上げた足刀。その横殴りの爪先が、中途半端に前にだされた銃身をとらえたのだ。
さらに振り抜いた足が振り下ろされて、若いその男の掌をばきばきと踏み砕く。

「、っ、あああああっ!!」

「アキッレーオ、ピストルを構える時腕伸ばしすぎ。前も言ったろ?
 室内戦なら引いて体につけんだよ。おめ〜は前からかっこつけて、銃をこう…横に構えるからさぁ、やめろってマジ」

#AlisonCampanello
(G2) 2023/09/28(Thu) 11:33:28

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>G2

くるり、と回したショットガンに弾丸が装填され、つきつけるようにもう一発。
散弾に吹き飛ばされて床に転がっていた女性のアソシエーテの右膝が、至近距離からまとめて叩き込まれた散弾でずたずたに引き裂かれる。

「ぎ、ぁッ! あ、ぁああッ!」

「ビアンカ、彼氏とうまくいってるか? 優しそうなガキだったよな、あれだ、面倒見てもらえよ。
 そんくらいやるって、やんなかったらこえ〜ぞ、うちのルチアーノがっていっとけ」

奇襲によって乱れた集団は、既に抵抗する能力を失っていた。
アレッサンドロは彼らに無造作に近づいては、次々と追撃を咥えていく。
這って逃げようとした男の頭をがつんと蹴り、銃身をこん棒のように振るってタックルをかけてきたもう一人を殴り倒す。
散弾を最も多く浴び呻いていたメイドマンの胸倉を掴んで引き起こし、その指をごきりとへし折る。

「カミッロ、親父さんの借金は払っとくから。入院代は心配するなよ」
「エルネスト、俺がやった万年筆どうした? …お、持ってんじゃん。高いから大事にしろよ」
「フェリーチェ、お前料理屋やったほうがいいって。
 俺がやった車売れよ、ちゃんと値段調べたか?」

──最初の発砲から20秒とたたないうち、五人の構成員たちが床に転がり呻く。
アレッサンドロはまるで酒の席のように、ひとりひとり言葉をかけた。
そしてその返答を聞く様子もなくショットガンを肩に担ぎ、
サテ次は、とアジトの奥に進もうとして。

「……お」

どかどかという足音。ぶつかりあう硬質な音は力強く、だが統率が取れている。
その動きを聞いた途端、アレッサンドロは足を止め──にんまりと、口元に笑みを浮かべた。

#AlisonCampanello
(G3) 2023/09/28(Thu) 11:34:51

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>G3

「もうか!
 いやあ、うちのソルジャーも捨てたもんじゃないな!」

我が子の成長を喜ぶ父親のように、誇らしげで嬉しそうに声を弾ませると、懐から取り出した使い捨て携帯電話をぱちんと開く。
ボタンを指で押し込んで、ピ、という電子音が一瞬鳴った――直後。


 
――爆音が、五つ。ド ガ ァ ン。



アジトの各所、計五か所。
アレッサンドロがあらかじめ協力者たちによって配置させていた爆薬が、一斉に封入された爆発力を解き放った。
建物全体が僅かに軋み、置かれていた観葉植物の鉢が斜め上に跳ねて砕け散る。
窓ガラスのほとんどが白い雨のように割れ砕け、甲高い音を立てて路上の上で跳ね返った。

「………、ハ、ハ」

天井からぱらぱらと落ちた建材の破片が、ばふんと顔に落ちてくる。
ぺろりと唇を舌で拭い、牙をむきだすように笑ったアレッサンドロはしかし、そこで――くるり、と踵を返した。

#AlisonCampanello
(G4) 2023/09/28(Thu) 11:36:41

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>G4

本来の『プラン』では、ここで死ぬまでカチ込むはずだったが。
そうはいかない事情があった。
喧嘩のケリをつけなければいけない相手が、もう一人残っている。


がしゃあん。

僅かに残った窓ガラスを内側から蹴り砕いて、アレッサンドロは路上に飛び出した。

「あっちだ!」
「あんクソ元ボケ上司…ッ」
「撃て、マジ殺せ!!」


上階の窓から身を乗り出したソルジャーたちが、その背に向かって発砲を繰り返す。
だがアレッサンドロはそのまま迷う様子もなく、開けっ放しにされていた近くのマンホールに身を躍らせた。

#AlisonCampanello
(G5) 2023/09/28(Thu) 11:37:36

【神】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>G5

──カポ・レジームであるアレッサンドロ・"黒眼鏡"・ルカーニアによる、『カチコミ』は、僅か3分の出来事だった。

設置された誘導用の花火、および爆薬によるけが人はなし。
だがアジトの設備や建物には少なくはない損害が出た他、
「奇襲」してきたアレッサンドロの手が5名の構成員が重軽傷を負う。
命に別状こそないものの、足や手に障害を受け今後ファミリーを続けることが難しいものもいた。

被害者の中には、アレッサンドロの配下である者も含まれている。
さらに彼が取締法への献金により、マフィアの勢力に打撃を与えようとした疑いも残ったままだ。
つまりこれは、彼本人による裏切り。
…曲がりなりにもカポ・レジームにまで上り詰めた男によって、ノッテ・ファミリーは少なくはない打撃を受けたのだ。
さらにこの上、アレッサンドロに然るべき「報復」を与えられないとなれば、
マフィアとして――暴力組織としての面子・・が立たないだろう。

こうして、アレッサンドロによる『プラン』は一定の成功を見る。
ノッテ・ファミリーに「一発かました」男は、下水道に逃げ込んだあと見事にその姿を晦ませた。
結果的に彼は、10年かけて用意した人脈、準備、調査、全てを駆使し、この一石だけを成功させたのである。

#AlisonCampanello
(G6) 2023/09/28(Thu) 11:39:12
黒眼鏡は、行方を晦ませた。 #AlisonCampanello
(a13) 2023/09/28(Thu) 11:39:29

【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

「違う」

何が? 以前もこうなった。


「違う!」

ならば否定しなければならない。
堂々と。理路整然と、正しく。これは正義なのだから。


「如何なる手段を持ってしても聞き出せと命令だ」

吠える。
自分の頭で考えた、わけではない。


「したくてしているわけじゃない」

吠える。その嘲笑を掻き消したい。
どうあれ事実は事実であるのに。


「大体」「お前たちが」
お前たちが何もしなければ・・・・・・・・・・・・
こんなことにはならなかった・・・・・・・・・・・・・!」


吠える犬は噛まないBarking dogs seldom bite.。ならこの男は犬以下である。
貴方の口に手が伸びた。せせら笑う舌に向かって。閉じないなら引き掴んでやると。

他責の正義。
調和でも融和でもない排除の正義。
白と黒の黒を徹底的に焼き尽くす愚直な暴力。
男の手の中にあるのはどこまで行ってもそれだけだ。
(-84) 2023/09/28(Thu) 11:59:27

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ

「どんな命令があったって
 誰の命令だって
 "いかなる手段も"合法になるわけねェだろ!
 法律ってのはそういうもんじゃねエんだよ、
 それが通るならマフィアだって必要悪とか言えちゃうだろ。
 そういうバカな言い訳を封じるためのモンが法律だろうが」

げらげらとした笑い声はますます大きく、
煽るように高鳴るばかり。

「何をしてどうなったかちゃんと言えよおめェ!
 ほんとにわかってやって──」

伸びた手を避けることも無く、ぐにり、と筋肉の束をひっつかまれて。

「……へ、へ、へ。」

舌を掴まれても笑えるぞ、と。
口の端をぐにい、とゆがめた。
(-85) 2023/09/28(Thu) 12:08:51

【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

「マフィアが必要悪なわけがあるか」
お前たち・・・・が必要悪なわけがあるか」


へらへらと笑う表情が嫌いだ。
楽しげに全て奪ったお前たちが嫌いだ。
それは骨の髄に染み付いた偏見からくる嫌悪だ。


「​────アルバ・・・を亡くしたのはお前たちだろうが!」


笑う度にかかる息が、挟んだ指の間で震える濡れた肉が、自分と同じ温度が、不快だ。
見縊って笑う横面に拳を叩き込みにかかる。憤怒の衝動にかまけた渾身の一撃。成功すれば貴方は音を立てて転がってくれるか。その体躯に対しこの力ではまだ足りないか。少なくとも舌を噛むくらいはするだろう。

「黄昏抗争で何人が死んだ」
「アルバからの提案がなければ更に何人殺した?」
「お前たちの切った舵で警察との関係は悪化した」
「そうじゃなきゃこんな法案が施行される必要もなかっただろうなあ!」


椅子を立ち上がって回り込むのすら面倒で押し除ける。ぎぎぃ、摩擦で軋むような音が鳴った。
────イレネオ・デ・マリアは、
ノッテファミリー・・・・・・・・
が嫌いだ。
(-98) 2023/09/28(Thu) 17:19:17

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ

がじゃあん、と派手な音をたてて椅子ごと床に転がり、倒れる。
ぺ、と吐き出した唾には赤いものが混じっていて、舌か何かを切ったようだ──だが。

「……げほ。……はぁ?」

そんな痛みや衝撃よりも、きょとん、とした顔。

「アルバってお前…ジジイの代の話だろ。
 確かアルバの残党はノッテが吸収したらしいが、
 知らんよそんなの」
「つうか、あれなの?
 アルバならよかった・・・・・・・・・なんて、完全に『マフィアでもやってることによっちゃ必要悪』って話だろ。
 それは」
「……当時のアルバとノッテのやってることの違い、分かってる?
 時代背景との相関性とか〜……」

うーん、と考えるように転んだままで目をさ迷わせて。

「いや、そういうこっちゃないか。
 黄昏抗争なんて今時、学校で習うのか?
 それともネット・サーフィンしてて見つけたのか。
 お前あれだな。そんなに叩いていいモノが欲しかったんだなあ。そんなに殴っていいものが欲しかったのか。
 それは昔から? ママにしつけられたからか? 学生時代は殴るモノがなくてベッドの中でシコるくらいしか暴力衝動を発散できなかったのか?
 じゃ〜〜お前、俺に感謝すべきじゃねえのか。
 
法案通してやった
んだから」

わはは、と。血が混じった声で、笑った。
(-99) 2023/09/28(Thu) 17:51:51

【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

そうだよ・・・・
「ジジイの代の話だ」「俺の爺さんはアルバのソルジャーだった」
アルバこそ必要悪だったアルバなら上手くやってた
ノッテお前たちがバランスを崩した!」


不自然なまでの怒りで声は震えていた。嘲りに、侮りに、謗りに返す言葉は既になく、ただ貴方を黙らせようとするだけ。どうにかして抑えつけようとして、それが出来ずに手段だった暴力が目的化していく。起き上がらないのをいいことに胸元を蹴りつける。反撃がなされないのをいいことに腹を踏み付ける。足りない。
足りない。


秘密というほど隠す意思があるわけではない。
正体というほど裏表があるわけではない。
それでも、男の中にそう呼べるものがあるなら、そこだった。

50年の昔、この国に存在したもうひとつのマフィア。
アルバファミリーの忠犬。
その末裔。


足りない、と踏み込んだ足とともに言葉は吐き出されたのかもしれない。それなら一層、その声は大きく届いたはずだ。
肩で息をした男はそれを聞いて一際大きく吸い込み、唸るような問いを呼気に乗せる。

「法案だと?」
「裏切ったのか? お前」「ノッテ身内を?」
マフィアを名乗っておいて・・・・・・・・・・・・?」

「風上にも置けない……」
(-107) 2023/09/28(Thu) 20:18:20

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ

何度も殴りつけられながら、哄笑がやむことはない。
いや、殴りつけられれば途切れ咳き込むが、
それが収まるたびにまた吹き上がる。
押さえても抑えても溢れる泉のように、
沸騰し沸き立つ泡のように、
ぼこぼこと音を立てて。

「やっぱお前、マフィア向きだな」
「うまくやってけるぜ、なあ」

──にぃ、と笑い。

「ただ、お前の爺さんはダメ・・だな」
「あの抗争で死んでねぇし、
 ノッテに迎えいれられてもねえんだろ?」

    そりゃあどういうことだ、と。

「じゃあ、そのジジイは
最後まで戦わなかった
んだな。
 そしてその後戦うこともせず、
 ノッテの陰口を孫に吹き込み、家族と自慰オナニーするしかなかった、

 お前のジジイは情けねえ落ちこぼれだな!!
 お前が見返してやれよ、なあ!」
(-129) 2023/09/28(Thu) 22:48:52

【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

「ふふ、ここから出られた時の楽しみに取っておきましょっ」
「アレならすぐにでも出てきちゃいそうだけど」

きっと、そう時間はかからないはずだ。
あなたのことを信頼している。本当に。微塵も、約束を疑わない。

「あは」
「嬉しい、ホントに。アレ、全然言ってくれないんだもの」

珍しく素直な言葉をいくつも聞けたからか、妹分の女は心底嬉しそうに頬をほころばせて。
こんなこと今後あるかもわからないから、噛み締めるように大好きかあ〜と口にしたり。


「もー、何年ここにいるつもりでいるのよ」
「お金だって足りてるって言ってるのに……過保護よ、過保護!
 …ま、いいけどね。うん、アレが安心できるようにちゃんと守ってみせるわ」

格子に置いていた手を離して、呆れたような顔ののち。仕方ないなあと緩めて。
体温代わりに投げられた気遣いを、大事に大事に受け取った。


「うん。フレッドにもアレが元気そうだったこと伝えておくから」

それと、と一度言葉を切って。背中を向けて少し歩いたかと思えば。
振り返って、にいと笑う。

「アレ、大好き。また会いにくるから!」

ばいばい、と手を振るのだろう。また会えると信じて。
次はもっとゆっくり話せればいいなんて、叶わない願いを胸に抱くのだ。
(-151) 2023/09/29(Fri) 1:49:11

【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

がちん。

それは男が自分の歯を打ち鳴らした音。噛み締めるだけでは足りずに、威嚇でもするように強く噛み合わせた音だ。
音を立てて沸騰するのは貴方の笑いだけではない。高温でぐらぐらと煮立っているのはこれもそうだった。比にならない怒り。不快や不愉快では片付かない圧倒的な憤怒。激情。心火が理性を薪にして燃え上がる。

ばきん。


横面を蹴飛ばした。
貴方が避けないなら、の話。


だん。


心臓の上を踏みにじる。
それも避けないなら、の話。


衝動的に、酷く冷静に、机の上に放ったペンを引っ掴んだ。
それも邪魔されないなら、の話だ。


「爺さんはな」「逃げてない」
「お前たちに愛想を尽かしたんだよ」

長身が遮る室内灯。
逆光の中でも歪んだ表情はよく見える。
貴方が結局そのままでいるのなら、男はそのまま馬乗りに体重を掛けるのだ。ウェイトではそちらに分があるのだから、この行動はやはり賢いとは言えない。
(-154) 2023/09/29(Fri) 1:54:48

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ

「ああ、すぐに出るさ」

嘘は言わない。

「そう、俺は嘘は言わねえよ。
 まぁお前は特別だ」

嘘を言う。

「──そうそう、ここに来る前、ちょうど荷物送ったから。
 じき届くと思う。
 まあ、適当に受け取ってくれ」

いつものこと。

「──ああ。
 まあ、…色々、気を付けてな」

いつもでないこと。


手を振って、その背中を見送る。
はあ、と息を吐いて、


「じゃあなあ」




(1/2)
(-236) 2023/09/29(Fri) 22:39:38

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ


翌日、あなたがいない時だろうか、荷物が届く。
入っているのは、口紅が一本。
色々悩んだ結果、あなたに似合うかもわからずに選ばれたに違いない、
オレンジのシアーリップ。
どういう意図で選んだのかも何も書いていないままだ。

──いつものように。

(2/2)
(-237) 2023/09/29(Fri) 22:40:04

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ

避けることも抗することもない。
がつんと肉を打つ音、骨がぶつかる音、
息が零れる音、げほ、と咳き込む音。
全てが無抵抗のまま、ただにやついた笑みが消えない。

──やってみろ、とでもいうように。

「はぁ、愛想をね。
 その程度で逃げられるんだ」

馬乗りにされたままなのに、見下ろす。
黒い瞳のひび割れた隙間から、
嘲りと怒りの炎がちろちろと漏れ出している。

「お前のジジイのやってたマフィアごっこ・・・・・・・は、
 随分お気楽・・・なんだな」

がつ。
小突くように挙げられた膝が、馬乗りになる背中を蹴った。

「オオ、だからお前もこんなにヌルいんだな」
「うちに来いよ、立派なマフィアにしてやっから。
 まずはそのくだらねえジジイのたわごとを忘れるところからだな、
 負けてグダグダ言う奴の言葉なんか聞く必要はないぜ──」

それとも、と。言葉が続く。

「──お前もジジイみたいに、ノッテから逃げ出す・・・・のが趣味なのか?」
(-238) 2023/09/29(Fri) 22:48:11

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡


「一人だけ……」

俺は浮気は嫌いだ、だが同時に甘ったれでさみしがり屋だった。
あんたと同じか違って、努力をすれば助けにはなれてしまうから
少しでも多くの者を救えるものだと勘違いばかりしてきた。

「難しいなあ」

それを貴方に向けられていたら、きっと未来は変わっていた。
そうできないと思うほど、全てを諦めきってしまったいたから。

「――でも、そうか。漸く分かった。
 俺のしたいことなんて、
知りたいこと以外何もない


半分だけ嘘をついた、それだけ聞けたら良かった。
この先の貴方のしている事など全て見通せもしないし、このときは何も分からなかったが。
手遅れでも真実が知れればそれでよかったのだ。

それは自分の親の死の真実を知ったときのような、
それでも、誰よりも大事に思った事のある恩人への、愛憎入り交じった感情に襲われるのだろう。

「言われなくとも、フィオレのことは大事にしてるよ。
 あんたに言われたからだと思うなよ」

それだけは選んだ、置いていって嘘をついている貴方とは違う。
自分はそうならないと、もう、この時点できっと気付いて居た。

貴方は自分達の前から目の前から居なくなる。
(1/2)
(-239) 2023/09/29(Fri) 23:02:52

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡


信じたかった。最後まで信じたかったのに、ここに来て嫌なほどわかってしまった。
泣きたくなりそうな程気持ちが高ぶって、それを隠そうとするように深く息を吐いた。


「アレッサンドロ、」
俺はあんたを殺したいほど好いていた。でも、もうやめだ。


「――勝てるといいなあ?」


このどら猫の祝福は可愛らしい祈りではない。
その口ぶりには『お前なんてやられてしまうさ』という本音の軽口も入っている。

だけど、それでも。
かつての貴方の下で働いていた時間が人生で一番楽しかった事は変わらない
そんな日は二度と戻らない、だから、俺はそんないつも通りの言葉で貴方を見送ることになるのだ。
(2/2)
(-240) 2023/09/29(Fri) 23:07:54

【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

小突かれれば丸めた背が更に前のめりになるだろう。
近づけた顔の位置が更に下がって、視線はずっと近くかち合った。
せせら笑う堅炭が間近に見える。嘲る漆黒が視界いっぱいに映って染めた。

「ならない」

ぐらぐらと煮える頭から考える前に声が出る。引き攣る程に震えた喉は思考より先に否定を返した。

「ならない」
「うるさい」「お前」


考える前に身体が動く。左の手が貴方の口元から鼻筋までに触れ、体重を掛けて瞼を押さえつけた。

逃げるわけがないだろう・・・・・・・・・・・
俺が・・!」


全て後手に回った理性の制止が効くはずもない。ペンを武器に握りしめた拳がついに振り上げられた。

にやついた笑みがずっと気に食わない。
見え隠れする怒りはもっと気に食わない。
お前に怒る権利なんてない・・・・・・・・・・・・

平常に戻れとどこかが言った。
これが戻れるかと言い返す声の方が強かった。
振り下ろすのは黒の中心。
貴方の左の瞳に目掛けて。
命中せずともこれだけの勢い。それなりの痛みは伴うはずだ。

薄着の女よりも何よりも、
貴方の笑顔と言葉の方がこの男には効く・・
(-263) 2023/09/30(Sat) 3:41:15

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 幕の中で イレネオ

ばづん、と何かを貫く音がして、
ばちゅ、と粘り気のある水音が響いた。

「が、あ、は、は、ああああああああッ!!」

獣のような咆哮が響いて、ぼだぼだとした液体をまき散らしながら男がのけ反る。
涎をまき散らしながらごろごろと床を転がり、喘ぐように息が何度か、途切れる。
それでも、過剰なほどに分泌されたアドレナリンが
哄笑を引き起こし、留まることもなくは、は、はという甲高い音がこだまする。

「い、いっで、でええ、ははははは、いってぇ、なあ、あああぁ、ははははは!!」
「おい、警っ、官としての、仕事だぞ、早くしろよ、治療・・だよ」
「ああ、痛ぇ、なあ、ははは、ほんっと、仕事できねえなぁ、お前、助かる、──――」

がなるように声をまき散らしながら。
ぼたぼた、ぼたぼた。
涎か、あるいはぐちゅりと潰れた水晶体か、その判別もつかないものが床に落ちる。
そのままぐしゃり、と男の巨体がつんのめるように倒れ込むと――

──哄笑も、言葉も止まる。
口の端から泡を吹いて、アレッサンドロは気絶・・していた。
(-307) 2023/09/30(Sat) 13:48:46

【秘】 幕の中で イレネオ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

張り詰めたものが一気に放たれる時のような衝撃。
貴方の抵抗ではなく、それは肉体の反射。弓なりに反る背中にバランスを崩し、転がる動作で男もまた振り落とされる。机の脚に鈍い音を立てて頭をぶつけると、茹だった頭はまたぐらぐらと揺れた。

ごろごろと転がる身体に手を伸ばす。捕まえられたかは知れない。振りほどかれるなら抱き竦めるようにしてしがみつこうとした。これは衝動的な執着だ。盛った犬のような荒い息を繰り返して男は貴方の身に覆い被さる。
許せない────見当違いの激情だけがそこにあって。

斃れた身体を仰向けに強いて追い打ちをかけた。


じゅぐ。
振り下ろす。

ぢゅぶ。
振り下ろす。

ずじゅ。
振り下ろす。


しまいには指を突っ込んで眼窩に残った部分を引きずり出そうとしたかもしれない。濡れて潰れた葡萄のようなそれは上手く掴めずに、もう何度目かの舌打ちが空気を裂いた。
ぐちぐちと微かになるいやな水音と男の息遣いだけが、しばらくの間狭い部屋に満ちている。


────それが終われば。
男は貴方の口元を手で拭い、それを貴方の衣服に擦り付けた。
落ちついたらしく深く息をして立ち上がり、扉を開けて人を呼ぶ。
訪れた数人はその状況に驚愕の表情を見せもしたが、
深く追求することはなかったのだろう。
(-322) 2023/09/30(Sat) 18:04:46

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>a33

店に置きざりにされていたコーヒーミルには、
「使用禁止 廃棄しろ」という張り紙がある。
どうも食品ではないものを曳いたらしい。
喫茶店の風上にもおけない所業だ。

ガレージはがらんとしていて、
けれど多くのものがそのままだ。
それはきっと、戻ってくるつもりだったからではない。

このままにする以外に、なかったのだ。
それ以外に、何を足すことも、何を引くこともしたくはなかった。

潮風だけが、その憩いを見守っていた。

#Mazzetto
(95) 2023/09/30(Sat) 18:41:27

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>-363

ぐおおおん、と。

尋問と拷問に意識の向いていた構成員たちのなかで、
壁越しに遠く響いていたエンジン音が、ぐんぐんと近づいてきたことに気が付いたものはいただろうか。

──ば がぁん。

甲高く硬質な音が、建物の中に響く。
差し込んでいた日の光が、眩く溢れ出すように強さを増した。

建材がへこみ弾ける音とともに、真っ赤なフィアット500が突っ込んできたのだ。
もうもうと車から吹きだした白煙に、ノッテの構成員たちががなり、銃を向け、あるいは混乱しヴィンセンツィオを引き倒そうとする。
めいめいに好き勝手な反応を見せるものたちは確かに、元から乏しかった統率を欠いており。


ばがん。


──扉の隙間から滑り込んできた男が、両手に構えた拳銃と短機関銃をまき散らす間隙を与えることになる。


#BlackAndWhiteMovie

(1/2)
(96) 2023/09/30(Sat) 23:03:24

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>-363

ぱ、ぱ、ぱ、ぱぱぱぱぁん。

 発砲炎マズルフラッシュと共に破裂音が何度も瞬き、血飛沫と湿った音が響く。
 構成員たちの半数近くを奇襲で叩き、

 がしゃあん!!

 ――照明を打ち抜き。
 暗闇に閉ざされた中で殴打と落下音、銃声がさらに続いて――


「おう」


 ――あなたのそばで、足音が聞こえる。

「生きてるかあ、ヴィンセンツィオ・・・・・・・・


#BlackAndWhiteMovie
(2/2)
(97) 2023/09/30(Sat) 23:06:51

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>101

満身創痍の男の前に、黒いスーツを翻した男が立っている。
壁の隙間から差し込む燦光が、ちかちかとその輪郭を彩って。
見やれば、その体のあちこちに乱雑にまかれた包帯や布の切れ端が赤く染まり、彼もまた無傷ではないことが分かるだろう。
そいつはあなたの表情に、に、と笑顔のように口元を歪めると。

「――気安く
 呼ぶン
 じゃッ
   ね えよ、
くそヴィト・・・・
ッ!!!!」

 
――横殴りに銃身を叩きつける。


#BlackAndWhiteMovie
(103) 2023/09/30(Sat) 23:35:27

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>104
ぷ、と吐き捨てる唾は赤黒い。
ストックに張り付いてしまったような指を引きはがして、
弾切れになったらしい短機関銃ががらんと床を転がった。

「うるせェ。
 舐めやがってマジで」

乱暴に伸ばした腕で、あなたの肩を掴み引き起こす。
その振る舞いに"カポ・レジーム"としての、
あなたからすれば取り繕った、気さくな様子は欠片もない。
──ただ、まったく、見慣れた様子。

かつてソルジャーとして纏っていた、当時の顔をすっかりと取り戻した顔で。

「ここで元部下の代わりをやってやってもいいンだが──」

じろ、と目だけで横を見る。

「………」
「乗れ」

車体のひしゃげたフィアットを指さす。

「これ以上話を聞いてやる気も、解釈してやる気もねえ」
「ただ、ここにいると邪魔が入るだろ」
「──ンなことしてる時間も余裕も、暇もねえ」

だろ、と。
答えも聞かずに、車の方に向かっていく。
(105) 2023/10/01(Sun) 0:10:00

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>106

怪我を慮る様子など一切なく、力任せに腕を引き起こす。
手招きも指図も、説明も気づかいも無い。
奇妙で不格好な、それは信頼ににた形。
ここ十年ばかりお互いの間に横たわっていたさまざまなしがらみや思惑、年月や歳月。

そういったどうでもいい・・・・・・もの全て、
ばたんと乱暴に閉じられる扉の音にかき消えていくようだった。

「……カー・ラジオ代わりに流してやるから、勝手に話せよ」

分泌される脳内物質のせいか、
それとも流れ出す血のせいか。
なにもかもを走り切った直後のような、気怠さと自由の境目のような空気。
──この十年ばかしあった微妙な距離感の代わりに、そういったものがぶちまけられたような感覚。

それを形容する名前を、ふたりは持たなかった。
あるいは、必要としなかった。


「たりめーだろ。
 カポの車に乗る警部がいるかよ」

がたがたと煙と異音をあげながら、フィアットのタイヤが滑り出す。

行先は、港。
ゆっくりと沈みゆく太陽を追いかけるようにして、ひびの入ったフロントガラスが瞬いた。

#BlackAndWhiteMovie
(107) 2023/10/01(Sun) 0:35:59
 


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