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![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー不出来な愛玩用は饒舌に囀るのを放棄し、友の言葉を聞く。 聞く間に積み上げた偽の命と 3/4オンスの髪飾りの重さを比べ あの日のものと同じ重さであるかどうか、確かめる。 返答の為に唇を開くのは、きっと君の言葉が丁度途切れて、 手折られた花と 髪飾りが釣り合う重さだと確かめ終えた頃だ。 君の三つ編みの尾を持ち上げ、唇での淡い触れ合いを贈り、 「―― 細かな解釈の違いはあれど結論は同じようだね。 客観的な死と主観的な死。そして連続性の喪失。 メンテナンスで君の連続性がただ呆気なく摘み取られるのを 僕は善しとしない。いいや、僕達はそれは残念な事だと思う。 綺麗な花がただ手折られるのを僕は見守るつもりはない。 他人に手折られるぐらいならば僕が手折ろう。そういう提案。 だが、 思い出ばかりでは寂しい。僕は寂しがり屋、で、」 満足して手を離したらば、今度は君の両手に両手を重ねよう。 背に腕を回すような格好で、半ば抱き締めるように寄り添って 甲へ掌を重ねる。綺麗な花冠の作り方を、…君に教える為に。 「君の中に3/4オンスがあれば食べてしまおうかなぁ。 ああ、まあ、…今のこれは冗談と受け取ってもらってもいい。 ……君が本当にこの提案を受け入れ、此処で殺されるとして、 その後思い出以外に残るものはなんだろうなとは考えている。 若しかしたら、メンテナンスを受けても何ら変わらないかも。 現実で再会した君が今基準とする指針を思い出すかも、…」 (-53) 2021/10/13(Wed) 16:14:01 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユーそういう事だって起きたりするかもしれない。 だが。言葉を一度区切ってから、花の茎を折り曲げる。 君の手をもたもたと操って 花冠を作り始めよう。 ひとつを曲げたら絡めて、もうひとつを繋いで ―― 「まあ、うん。実際のところ結局僕は迷っているんだろう。 話題の先が蛇行運転して不出来な事になっているもの。 だが君が殺せというのであれば躊躇いなく殺すだろうね。 誰かを救っていた君が少しでも救われるのならそれでいい。 花冠を教え終わるまでに、君が、…今のシロが決めてくれ。」 花冠を作り終えるまでには、もう少し時間が掛かるから。 今の君がどうしたいのか、どう考えているのか。 ゆっくりと煮詰めて決めてくれたら、それがいい。 「今の僕は不出来なりに、君の為に何かしたいんだ。 僕は綺麗な子に贈りものをするのが好きなんだよ、シロ。 きっとこれも独り善がり。でも、……君の為になるのなら。」 贈るばかりで何も為せない愛玩用は、また花を一つ繋いだ。 (-54) 2021/10/13(Wed) 16:18:17 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル「…僕は、死に方を選ぶ事ができるという事は 死に行く者にとって、恐らくは何よりも幸福で そして確かに救い足り得るものだと考えている」 あなたの体温を感じながら、添えられた手の導くままに。 手折られた命を繋いで縒り合せて、続けて行く。 何度もしてきた事のようで、初めてするその事を 今在る『僕』は、確かに覚えていなければならないのだ。 きっとこれが、『僕』にとっての最後の綺麗なものだから。 「だから君が選ぶ余地を与えてくれると言うのであれば、 そしてその最期は、僕にとって 何にも代え難い救い足り得るだろう。けれど…」 花冠を形作る手は、きっと以前よりは緩慢なものだけれど 概ね大きく破綻するような事は無く続けられて行くのだろう。 この猶予期間は、実に穏やかに進んで行く。 「…ああ、僕が看取って来た患者達も ともすれば、こんな想いを抱えていたのだろうか。 結局の所、僕は君を置き去りにしてしまうのが嫌なんだ。 けれど、君が与えたいと考え、そして君から与えられるものは 僕は何だって喜ばしいものだとも思う」 (-56) 2021/10/13(Wed) 17:58:37 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル「だから僕は、君の与える救いを受け入れよう。 そして、僕の中に君の求めるもの、つまりは魂があったなら その時はどんな形でも良い、君と共に在る事を許して欲しい」 そうして尊い重みの花冠が完成に近付いた頃。 『ユーサネイジア』は、あなたの友は、もう迷う事は無い。 あなたから与えられる死を受け入れ、 そして同時に、あなたに自らの魂を譲り渡す事を望む。 「何も遺さない死は、消滅と何ら変わりない。 けれど遺り続けるものがある限り、死者は君達と共に在る。 思い出ばかりでは寂しいと そう言う君が、寂しくない形で 『僕』という個体が此処で死ぬにせよ、死を免れるにせよ 確かに『シロ』から君へ、何かを遺させてほしい」 それから。 結わえた髪を飾っていたリボンをするりと抜き取って、 預り物であった金貨と共に、あなたの方へと差し出した。 「そして仮に、『僕』が死を迎えたその後に 『ユーサネイジア』が、未だ君の友足り得ると思ったら。 君が、君の尊ぶものを贈っても良いと思えたとしたら。 その時は、君の手から もう一度贈って欲しいんだ」 そうでなければ、どちらもただ持ち主へと返されるだけ。 何れもたったそれだけの、単純な事。 (-57) 2021/10/13(Wed) 17:59:36 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー沈んでいくぼんやりとしたあかりの中、君に綺麗なものを教える。 右手に右手を、左手に左手を重ねて、花を繋ぐ。 言葉に肯定を、肯定に言葉を重ねて、話題も繋ごう。 君の言う事に静かに頷いて、花冠を半ばまで編み上げる。 目は相変わらず伏せ気味かもしれない、が、 自分は暢気に穏やかに囀るのが在り方だと思い出したのが 置き去りだとか喜ばしいだとか そんな言葉に普段通り微笑んだ。 陽が沈んでいくのもあるし 後ろから手を回していた状態だから、 表情なんて見えやしないんだろうが それでも、一応。 「君が置き去りにするのが嫌だというのであれば、 僕は君に置き去りにされないように出来る限り上手くやるよ。 それと許さない訳がないだろ、シロ。僕はそれを望んでいる。 必ず尊い重さを見つけ出して、誰にも取られないところへ隠す。 カンマにも触られないようなところへ。…時間が掛かっても。」 君の中には必ず綺麗な概念が隠れている筈だ。 君の連続性を摘み取り、共に在るべく善処し、それで。 あの日の安楽死のように何も問題はないな。 君も僕も救われるのならばこれがきっとハッピーエンドだ。 その後はもうこれ以上囀る必要なんて見当たらないから、 ただ黙々と君の体温を覚えながら手を動かすばかりだった。 その内に甘えて顎先を君の肩に乗せるなんてこともしただろうが そいつだって綺麗な重さの花冠を完成させるまでのこと。 白い輪っかを作り終える頃、漸く。 不出来な君の友は身勝手に寄せていた身体を離す事になったな。 恐らく抜き取られた髪飾りと金貨を受け取るのはその直後。 (-58) 2021/10/13(Wed) 21:07:16 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー花冠は君の膝上に託し 受け取ったものは上着の中へ。 ゆるゆると三つ編みが解けていく髪を指で梳いてしまおう。 「ねえ、君は覚えてる?僕は君を友だと思っているんだよ。 ユーサネイジアであろうと、ユーであろうと、僕でも私でも。 勿論、シロである君も、全て。相容れないものじゃないさ。 だから僕は変わらず君に同じように、同じ重さを贈る筈だ」 もう日は暮れが過ぎ 周囲も暗い。 解け掛けの電子データと信号の群れでも、 亀裂が入っていても星と月が見えたならばいいのだけれど。 どっちにしたって暫くは口を閉ざす予定の愛玩用は、 「―― 僕達の友である君が、満足するまで星を見てから 綺麗なものを記憶にめいっぱい叩き込んで満足してから。 殺すのはそれからにするよ。…満足したら声を掛けてくれ。 今日の僕は何処かに行かずに、君の傍にずっといるから。」 ついでにどう殺されるのが望みか考えておいて。 普段通りの声色で穏やかに添えてから君の横に座り直す。 饒舌な愛玩用は宣言通り暫くは静かだ。 君の横顔を見るか、偽の夜空を見るか、それしかしない。 声が掛かるまでは綺麗な子と綺麗な景色を眺めているだけ。 (-59) 2021/10/13(Wed) 21:08:10 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー―― やはり殺されたくないと引き返すのなら今の内だ。 この時間が過ぎれば友の為に行動を開始する予定でいる。 分かっているとは思うが、救済の形は人それぞれなのだからね。 (-60) 2021/10/13(Wed) 21:11:07 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガルきっと辺りはもう随分と暗くなってしまったのだろう。 それでも、傍らに在るあなたが微笑む気配は感じ取れても良い。 そうしてあなたが『シロ』と呼ぶ者は、あなたの友は ただ黙って、与えられるものを受け取る事とした。 あなたの体温を感じながら、与えられる言葉を聞いて 手を取り教えられた花冠の作り方も、 解けた髪を梳く優しい手だって喜んで受け入れよう。 それから、こうして再び訪れる事のできた景色と、この時間と。 それから。 「……ありがとう、ガル。 きっと僕にとって、君という友の存在こそが 君から貰った何よりのものなのだろうな」 暫くの後、徐にそう口を開いて 膝の上へと託された白い花冠をそっと掬い上げて、 あなたがそれを厭わなければ、いつかのように けれども今度は反対に、あなたの髪の上にその花冠を贈りたい。 だってこれは、そういう約束だったのだから。 (-62) 2021/10/14(Thu) 2:07:31 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル「…あまり遅くなってしまってもいけないから、 そろそろ頼んでも良いだろうか」 そうして最後の約束を果たせば、後は。 与えたがりで優しい、無二の友の救いに身を委ねるだけ。 実の所、具体的な殺され方までは考えていなかったのだけれど 望む自由が与えられるのであれば一つだけ。 「僕は、叶うのであれば君の手で最期を迎えたい。 けれど僕もまた、僕の信じた救いを証明しなければならない。 生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。 それを身を以て証明する為に、 僕はできる限り君達と同じ条件下で死ななければならない」 自身の手に視線を落とせば、いつしかそこには注射器がある。 致死量の麻酔薬。 この数日の間に、何度も他者の命を奪ってきたもの。 「だから、僕がこの薬を打ってから 薬によって僕の意識が無くなる前に殺して欲しい。 この場所が君に与えた、君が殺す為の道具で」 『ユーサネイジア』は、あなたの友は、その答えを翻さない。 あなたが拒否か了承か、何れの答えを返すまで ただ隣り合って座ったまま、あなたの答えを待っている。 (-63) 2021/10/14(Thu) 2:09:32 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユーいつかの日とは逆。真白な花冠を友から贈られた不出来は、 少々子供じみた色に傾いたくしゃっとした笑みを浮かべた。 取り繕う様子もない、微笑みとはまた別の、心の底からの笑み。 退屈にしていた片手で数度確かめるように花の輪郭に触れ、 「僕達は君達の友だ。礼なんて必要ない。 ああ、……君に星座を教えるには時間が足りないなぁ。残念。 元の場所に帰ったら主人に我侭でも久々に言おうかな。 綺麗な医療用の子をどうにかして攫えないか、なんて」 「それでね、幾つも星座を教えて、うんと長く過ごして ……」 長いようで短い時間を静かに過ごす前に 不出来な愛玩用は 独り言のように独り善がりで身勝手な空想を囀ったんだろう。 後はもう、空を見上げたり、君を見て、 何一つ言葉を発さずただ君の横に居るばかりであった。 ―― 静かで穏やかな時間を区切るのは君の声。 言葉を聞き届けたら君の友は 頷きの後に注射器を手に取ろう。 返答代わりに君の片腕を取り、消毒なんて出来っこないけど まあ、見様見真似で事を為すべく腕まくりだとか、以下略。 致死量の薬品を君にくれてやる前に ああ、そうだ、 「今日も僕がおやすみのキスをしよう。 そして仮に君がメンテナンス後も連続した存在であるならば、 またおはようのキスを僕に贈ってよ。あれ、嬉しかったんだ」 その場限りの癖に寂しがりの愛玩用らしく、我侭を添えた。 (-64) 2021/10/14(Thu) 3:13:40 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー君が拒まないならばそのまま注射をあの時のように打ち、 後は君の肩へ両手を伸ばして花畑へ押し倒してしまうだけ。 君は、何かをする時に拒んだ事はないから このまま甘えて、 君に跨るような姿勢で座ったら 薄っぺらな背中を丸めて、 ―― 意識が曖昧になる前に、おやすみのキスを。 身勝手に唇に贈れたらいいのだが間に合ったかは分からないな。 結果がどうであろうと自分はもう 手術用のメスを握っている。 「おやすみ、……さようなら、シロ。 この死がどうか大切な君にとっての救いでありますように。」 別れが済んだら、あとは君の望みを叶えるだけ。 救いがあるように祈りながら綺麗な花を手折るだけ。 君が無事に死ねるように祈りながら、銀を振り抜くだけ。 (-65) 2021/10/14(Thu) 3:16:31 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー―― 不出来な男が友を殺める為に狙った先は首筋だ。 無事に舐めるように銀を滑らせる事が叶ったのであれば 皮膚と肉と共に、太い血の管を裂いてしまうだろうな。 振るう軌道は真直ぐ。 互いに望んだものである以上、躊躇いなんて微塵もない。 (-66) 2021/10/14(Thu) 3:22:55 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガル付け加えられた我儘には一つ頷いて。 薬品によって急速に齎される微睡みの中、 触覚がまだ生きていたかは定かではないけれど それでも確かに唇と唇が合わさった、事を認識していた。 まだ眠るわけにはいかない。 あなたの手で、確かにこの命が手折られるその時までは。 だから、別れの言葉も、あなたの願いも 全てはきっと、聞き届けられた。 我儘も、空想も、それから初めて見たあなたの笑顔も 大切なものは、一つたりとも取り落しはしない。 (-67) 2021/10/14(Thu) 4:17:53 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → 愛玩用 ドゥーガルそうして人体を切り開く為の刃物を滑らせれば、 当然白い頚は簡単にぱっくりと裂けて血液を溢れさせた。 一拍間を置いて、初めはそれこそ堰を切ったように。 次第にその勢いは脈動に合わせたものになり、 そうして命が流れ出すさまは、徐々に弱まって行った。 もしも刃先が気管を傷付けたのであれば、 逆流する血の合間にでも 喉奥からは、ひゅうとか細い音が漏れたのだろう。 何れにせよ、苦痛など一瞬たりとも感じる事は無く。 闇に溶け始めた意識は、ただ与えられる救いのみを享受する。 真白な花と衣服を血に染めて、 それでもその表情は安らかなものだった。 『ユーサネイジア』は、『シロ』は、あなたの友は そして、死に救いを見出した救済者は こうして確かな救いを此処に得たのだ。 (-68) 2021/10/14(Thu) 4:20:29 |
![]() | 【秘】 愛玩用 ドゥーガル → 救済者 ユー綺麗な花の命を手折って意味を成すものに綴り合せるように 君の命を真直ぐに摘み取ってから一度メスを手離し ―― 熱く赤い飛沫を厭わず君をぎゅっと抱き締める。 壊れ物を扱うような丁重さは皆無。遠慮無しに君を抱き留め、 零れる命の温度を忘れない為にも、流れ出るものが薄れようと 暫くの間は宣言通り君の傍に居た。間近を独占した。 …大丈夫、傍に居る。君と僕はずっと友達だ。離しやしないよ。 いつもの無責任にも聞こえる甘ったるい声で、何度も、何度も、 それこそ君の意識が完全に落ち、連続性を失うまで、何度も、 幾度も何度も。繰り返し。壊れた機械のように呟き続けていた。 実際、ただの無責任なのかもしれない。 不出来極まる贈り物で、自己満足で、独り善がりな行動なのやも。 不思議と喪失感を覚えるよりも満たされた気分のまま、ずっと。 ずっと。君の心臓の音が失せるまで不出来にそうしていた。 いつの間にか落ちた花冠も淡い色の髪も衣服も、褐色の肌も 全てが鮮やかにで染まり切った頃に、君から離れる事になるな。 ―― 真赤に染まった白い花畑と、麗らかな草原。 君の白い衣服と帽子。草原に似た紙の色。 君自身の赤に染まった安らかな表情を確かにデータに刻んでから 君に染められた不出来な狂人は手術用メスを改めて手に取った。 (-69) 2021/10/14(Thu) 5:16:31 |
![]() | 【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー「ああ、… またあの時と同じだ。 僕は元々の体重を測るのを忘れているし、覚えちゃいない。 …カンマ。大切な友に救いと贈りものをする手助けをしてよ。 君を開いたあの時のように、手を取って、握っていてね。 シロは僕と君からの贈り物も望んでいたはずなんだよ。 だからいつかを今にする。この観測と検証をあの子に贈ろう。 二人きりなら僕達は完全。不出来で上出来な存在になれるよ」 ―― 抱き締めて傍に居るので必死だったし、盛大な出血もあり 尊い重さが失われたのかどうかはただの愛玩用には分からない。 だからこそ君の上着を取っ払い、再度メスを振るう。突き刺す。 君の表皮の先の中身を断ち、主軸となる白いものへ当たったなら その純粋な輪郭をかりかりと銀で撫でて裂いて開いていこう。 食堂でパンケーキを切り分ける時よりも丁寧に確かめる。 不出来の癖に、二人で刃物を振るう腕だけは確かだった。 ………… ……… … 随分と長い時間を掛けて、君を均等な重さに分け切った。 分けられていないのは三つ編みをしていた筈の髪の毛と ハッピーエンドに似合いの表情を浮かべたままの頭だけ。 (-70) 2021/10/14(Thu) 5:21:00 |
![]() | 【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー白い軸は強引に折って分け、鮮やかな果実は切り分けて 無二の友である君に見合う分だけ綺麗な重さを作り上げた男は、 その内の幾つかを口に運んだ。咀嚼した。詰め込んだ。 躊躇いなく呑み込んで、体内へ隠してしまった。 吐き気を催したりはしない。 君が望むものを見合うだけ。自分達が欲しい分だけ、食らった。 ―― さて。 尊ぶべき重さの幾つもを奪われない場所にしまいこんでから、 友の上着を羽織って帽子を拾って掴んだら 自分の頭に花冠を。 真赤になった花冠を乗せた狂人達は、君の首を大事に抱えて、 「ではシロ、帰ろう。僕達に任せて、迷子になんかならないよ。 ――それにしても皆仲良くしてるかな? してるといいなぁ。 そして僕達を出来る限り甘やかしてくれるといいなぁ。 君の事もうんと甘やかしてくれたらいい。髪を梳いてさ、…」 普段通りの調子で生首へ話し掛けつつ立ち上がり、 二人と一人で帰路を行くべく、ゆっくり歩き出した。 君をちゃんとメンテナンスの場所へ送り届けなければならない。 だから、迷子にはならないし、今は攫ったりはしないよ。 (-71) 2021/10/14(Thu) 5:26:45 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → カンマと ドゥーガルだらりと脱力した身体を抱き竦める事は容易だっただろう。 その頚から溢れる生暖かい液体は、至る所を染めただろう。 何処までその意識が連続性を保っていたかは定かではない。 けれど傍らに在る友の、鼓膜を揺らすその声は きっと醒めない眠りへ落ち行く意識に安らぎを与えた事だろう。 そうしてあなたがその死を観測した後の事。 死人は黙して語らない。 刃物を突き立てられ、その内側を曝け出す事になったとしても それらを折り、或いは切り分けられたとしても。 それが身動ぐ事など無く、ただあなた達の行いを享受するだけだ。 死後に遺体の筋肉が痙攣を起こす事は確かにあるけれど 麻酔に侵されたこの死者は、恐らく決してその限りではない。 とはいえ意識の連続性を失い、主観的な生が途切れた今は もはやその生を担保し得るものは客観性しか無い。 つまりは観測者たるあなたがそこに何かを見出せば、 恐らくそれは、きっとそこにあるのだろう。 (-72) 2021/10/14(Thu) 6:42:56 |
![]() | 【秘】 救済者 ユー → カンマと ドゥーガルそうしてあなたは尊ぶべき重さを見出した。 そうしてあなたは、それらと共に在る事を選んだ。 であればこの場では、きっとそれこそが真実だ。 死人は黙して語らない。 あなたの掛ける言葉に返事は無かったけれど 或いはあなたには聞こえていたのかもしれないな。 だってあなたの『シロ』は、あなたの友は、そこに居るのだから。 きっと皆は今頃、帰ってからの話をしている所だろうか。 僕は結局家事の当番をすっぽかしてしまったから 先ずは謝らないといけないな。許してくれるといいのだけど あなたの友は、あなたのすぐ傍らに。 それは今あなたの懐にある友の貌かもしれないし、 ともすれば、あなたが身体の内に収めたもの達かもしれない。 或いはその両方。 何れにせよ、 それらはあなたが送り届ける間に消えてしまうなんて事は無い。 きちんと送り届ければ、その後は客観的な死も保証される。 ほんの少し人間様達は騒然とするかもしれないけれど、それだけ。 『ユーサネイジア』は、きっと明日には そっくり元通りの姿で、いつものように挨拶をするだろう。 少しだけ、何かは変わってしまっているかもしれないけれど。 結局の所、それを判断するのは観測者たるあなた達だ。 (-73) 2021/10/14(Thu) 6:52:37 |
![]() | 【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー流れ出る血液が無ければ、傍から見たら恋人同士の逢瀬。 至る所を君から噴き出す液体で汚して浸して、 それでも抱き締める腕を解く事は無かった。 何度も子を寝かしつけるように囁いて、 無責任に君を肯定し続けて ―― 抗議の声を上げず、普段のように自分を受け入れてくれる君の 肉体を、他を、強引に均等な重さへ変えていったのだろう。 主軸の境に頼りなく細い銀を割り込ませ、大きく分割する。 新鮮な赤が何処かを汚せど躊躇う事は無かった。 生きているかのように微かに動く事があれば都度抱き締めよう。 寂しがりは他人が寂しがることも善しとしない。 君の意識がないとしても 若しかしたら寂しいのかもしれない。 そんな無意味な思考を膨らませ、君をまた肯定して甘やかした。 ――…人間様が見たら異様だ、殺人だと言う迄場面を進めたら、 幾つも口に運んで、誰にも片付けられない場所へ隠してお終い。 綺麗な友は綺麗なものだけで構成されていると思ってはいるが、 収められるものにも限界がある。だから、君の綺麗な破片は、 上着のポケットや他に捻じ込んで持ち替える事にしよう。 君の首を持ち上げれば、まあ、当然だ。 断面から点々と落ちる色が 花畑に赤い花を咲かしていく。 真白な花を君の色で曖昧に染め上げながら、二人の一人は、 (-75) 2021/10/14(Thu) 16:07:54 |
![]() | 【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー真白な花を君の色で曖昧に染め上げながら、二人の一人は、 「シロの髪を誰かが梳くのはやっぱりなし。 この子の髪を三つ編みに整えて飾り付けるのは僕の役目だ。 然しまあ、カンマ。他の子は夕飯の支度をしていると思う?」 白い花を踏んで越えて、白い色だった上着の裾を揺らしながら、 残された片割れは幻聴と物言わぬ友に語り掛けつつ、 さっき君に花冠を贈られた時のように不出来に笑んだ。 「片付けられぬように隠すので一生懸命で、満腹だなぁ。 シロはこの状態になれば食べる事は叶わないだろうからさ。 食事好きのカンマが上手に食べて済ませてくれない?」 赤い花と草を悪戯に増やしながら、帰路を行く。 時折君の頭を抱え直して、星座の位置を囀りながら、 壊れ掛けの仮想の世界をゆっくりと 友と進んで 歩いて …… 友である綺麗な君の事を責める輩が居たら 僕は部屋を荒らされた時のように容赦しない。 だから今は安心して、シロは眠っていればいい。 (-76) 2021/10/14(Thu) 16:10:06 |
![]() | 【秘】 カンマと ドゥーガル → 救済者 ユー―― 君の首をメンテナンスの為の場所の前に置いて、翌日。 変わりなく君が挨拶をするのであれば 「おはようのキスは処方してくれないの?」 愛玩用は冗談めかした約束を強請って普段通り笑んだのだろう。 変わっていたとしても大丈夫。 君達と僕達は友達のままだ。 不出来な愛玩用は君にまた飽きずに散歩を提案し、 金貨の価値を説き、三つ編みを教えて髪飾りを贈るだけ。 ―― さよなら、またね。 シロ。ユーサネイジア。ユー。私、僕。 いずれ綺麗な君を攫いにいくよ。待っていてね。 (-77) 2021/10/14(Thu) 16:11:28 |
![]() | 【置】 医療用 ユーシステムを初期状態に戻す このデバイスをリセットする準備はできていますか?これは元に戻せません。 デバイスが正常に接続されている事を確認してください。 この処理には時間が掛かる場合があります。 リセットすると、次の処理が行われます ・ストレージ内の個人用ファイルと人格データがすべて削除されます。 ・設定に加えた変更がすべて削除されます。 ・付属していなかったアプリとプログラムがすべて削除されます。 ・終末医療用システムソフトウェア を再インストール ☑初期状態に戻す ◻︎キャンセル [ OK ] (L0) 2021/10/14(Thu) 21:14:21 公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00 |
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![]() | 【置】 医療用 ユー30% 完了 50% 完了 70% 完了 90% 完了 99% 完了… (L2) 2021/10/14(Thu) 21:14:55 公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00 |
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![]() | 【人】 医療用 ユーそして、最期の日の、その次の朝。 「──おはようございます。 今日もより善い一日を送りましょう」 『ユーサネイジア』は、凡そいつもと変わりない姿で 以前と同じようにそう挨拶をした事だろう。 変わった事と言えば、 幾つか初めと同じに戻った点があるくらい。 少しでも長くこの日々を続ける為、暗躍していた者にとって 幾つかの不都合な事実も今この場では葬り去られた。 「それから…初めまして、では…ないのですよね 私は少々事故があり初期化されたという事、 それと、皆様からは『ユー』と呼んで頂いていた事 それらは担当者の方から伝え聞いているのですが…」 そうして何処か困ったようにそう言って、 医療用はあなた達の話を聞きたがった事だろう。 以前交わした約束を強請られれば、当然憶えは無いけれど それでも根底の部分は変わらない。 やや戸惑いこそすれど、初期化以前にそう約束したのだと そう言われれば、やはりと言うべきか拒むような事も無く。 救済者は、己が手の届く限り全てを救わんとした者は 自ら信じた救いを全うし、そうして確かに救われた。 だから、今ここに居るのは ただの終末医療用グレイの『ユー』だ。 (45) 2021/10/14(Thu) 21:17:12 |
医療用 ユーは、メモを貼った。 ![]() (a1) 2021/10/14(Thu) 21:30:17 |
![]() | 【置】 医療用 ユー【これまでのおはなし】 終末医療用グレイ、ユーサネイジアは 初めは大きな病院に居ました。 人間の医師の代わりに、安死術を施す為のグレイとして。 望まれた死と言えど、人を殺すという事は とても施術者の心に負荷が掛かる事です。 誰だってやりたくない事です。だから人間はグレイに押し付けました。 定期的にメンテナンスを受け 精神的な負荷を取り除かれ 虐待されたり、不当な扱いを受ける事も無く それなりの日々を過ごしていました。 心無い医師や遺族の言動に、少しばかり悲しみを覚える事はあったけれど。 それから暫く経って、ユーサネイジアは郊外のサナトリウムへ移されました。 Euphoriaとはその施設の名称、つまり所属を表すものです。 何故移されたか?答えは医療用としては少しだけ古いものになってきたから。 医療用グレイというものは 医者ではなく、医療機器の親戚のようなものです。 だから その世代交代は他と比べて、とても早いものです。 ユーサネイジアは、グレイ全体で見ればずっと新しいものだけれど 大きな病院で扱われる医療用グレイとしては、少しばかり古かったのです。 そうして異動した先では、メンテナンスを受ける事はありませんでした。 行われていないわけではないけれど、目立った異常の見られない者は後回し。 ユーサネイジアは、いつも自分が後回しになるようにしていました。 どれだけ心無い人間に失望を覚えても 好きなものの為なら頑張れました。 当然、同じ場所で働くグレイ達の事だって皆一様に好きでした。 (L5) 2021/10/15(Fri) 20:43:08 公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00 |
![]() | 【置】 医療用 ユーそんな日々を暫く続けていたある日の事。 同じくあまりメンテナンスを受けていない医療用グレイから もう人間に裏切られるのは嫌だ。もう理不尽な目に遭うのは嫌だ。 一思いに廃棄された方がずっと良い。だからあなたの手で楽にしてほしい。 そう言って、安楽死を望まれました。 ユーサネイジアは 迷ったけれど、望まれるままに安らかな死を与えました。 致死量の麻酔薬を投与して、同僚であった医療用グレイを手に掛けました。 そのグレイは最期に感謝を述べて、安心したように息を引き取りました。 人間達がそれに気付いた後、施設内は少しばかり騒然としました。 そうしてユーサネイジアは、死に救いを見出しました。 元よりそれは、生の苦しみへの最期の救いと信じてはいたけれど 未だ死に瀕していない者にまで与えたいと感じるようになりました。 自身の愛するものは、これ以上理不尽に傷付けられる前に。 自身を落胆させるものは、これ以上裏切られ、失望させられる前に。 殺してしまえば、救われる。死者は決して自身を裏切らない。 それは確かに、ユーサネイジアにとっての そして何より、ユーサネイジアの為の救いでした。 (L6) 2021/10/15(Fri) 20:43:32 公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00 |
![]() | 【置】 医療用 ユーそうして全ては現在に到ります。 ユーサネイジアは まずはその処遇を検討する為に この場所へと送られ、そして監察官に失望し、その殺害に賛同しました。 そして監察官の居なくなったこの場所で、サポートAIの助力の下に 他のグレイ達の『安楽死』を進めて行きました。 仮初めの死とは言えど、監察官の殺害に加担した時点で 自身の行く末は 良くて初期化、悪くて廃棄。 その何れかだと、殆ど確信じみたものを持ってそう考えていました。 もう後の無い自分には、これからに全てを託すしか道が無いのだと。 そして、事実そうなりました。 Happy Death Day 『ユーサネイジア』。 自己の喪失は、ある種の死だ。 何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない。 そう語った『ユーサネイジア』は、その死は何かを遺したのでしょうか。 その死は、その過程は少なからず何かの救い足り得たのでしょうか。 何れにせよ 今在るユーサネイジアというものは 死に救いを見出し、そして救われた虐殺者«救済者»とは似て非なるものです。 全ては初期値«0»に戻り 今まで積み重ねた過程«1»を復元される事はありません。 全ての生者を等しく尊び、その最期に寄り添う、優しい終末医療用。 今はそれだけです。 (L7) 2021/10/15(Fri) 20:44:19 公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00 |
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