人狼物語 三日月国


29 【2IDソロル+ペア混合】交換日記【完全RP村】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】 軍医 ルーク

 ―― 
明け方の見張り台
 ――

[ 通信機の解析は、順調に進んでいたようだった。
 途中までは。
 あの重みの大半は外殻である箱のものだった。
 内部が破壊されないよう頑丈に作られていたためだろう。
 中から現れた部品は、驚くほどに小さく精巧だった。
 内部に記録の痕跡を発見し、
 色めき立った技術班の解析が止まったのは、
 その通信が暗号化されていたからだ。

 機械の解析はいつの間にやら数学の時間と化し
 (何故言語学ではなくて数学なのかは、
 専門外の自分には朧げに想像するのみだ)、
 役目を終えた自分は解放されて日々の業務に戻り、
 あの見張り台を漸く訪れることが出来たのは、
 箱が発見された翌々日の明け方のこと。

 慣れた道のりを、ぺんぎんと共に歩く。
 階段を上ってゆく。 
 前回は帰りがけに引き出しを開けたけれど、
 今回は最初から見張り台の机に向かった。
 見張りが離れているのを確認し、
 引き出しの中から赤い袋を取り出す。

 机の横にぺたんと腰を下ろして、
 タブレットを取り出しロックを開く。
 指の動きは最初は躊躇いがちに、
 動き始めてからは、逸るように早かった。]
(11) 2020/05/21(Thu) 19:45:09

【人】 軍医 ルーク

[ ノートのページはまた増えていた。
 いつものように、日付から始まる日記。
 一語一句目で追いながら、
 呼吸すら忘れるように真剣に読む。
 ぺんぎんは、画面を覗きこむことはしなかったけれど、
 羽根の一枚も動かすまいとでもいうように、
 口の前で羽をバツにして、しーっと静かにしていた。

 いくつかの箇所で、表情が動いた。
 気付いたことがいくつもある。
 それはまだひどくあやふやで、
 指を伸ばせば煙のように散ってしまいそうな、
 そんなとりとめもない感覚だ。

 例えば、そう、
 この日記の主は『通信機』という言葉を避けている。
 その暫く後で『通信をする』という言葉を使っている以上、
 『何か』と書かれた箇所に入る言葉は、
 文脈からしても、別のものであること自然だ。

 けれど、それが何を意味するのか、
 今は触れることなく、一度、タブレットから視線を上げる。]
(12) 2020/05/21(Thu) 19:46:45

【人】 軍医 ルーク

[ ゆっくりと、片手を伸ばす。
 いつも、大穴に向けてそうしているように。
 目を眇め、その先にある何かを見る。
 朝の光が差し込み始めた見張り台、
 淡く室内を照らす光の筋。
 舞い上がった小さな埃が、光に照らされて、
 ゆるやかに白く光る。
 
 さらに、その向こうを見る。
 誰かの後姿が見えるような気がした。
 凍えるような寒さの中、
 何処までも続く白い景色を、
 たった一人歩いてゆく人影だ。]


  ……、


[ 言葉から思い描くことしかできない、その景色が、
 『どの場所』のものであるのか。
 自分はきっと、気づきかけている。
 その白い景色に足を踏み入れたとしても、
 この足は、きっとまともに動かない。

 ――… けれど、
 
 伸ばした手を握り込み、下ろす。]
(13) 2020/05/21(Thu) 19:48:35

【人】 軍医 ルーク

[ 傍らのぺんぎんに向けて、首を傾げた。]


  息まで止めてるような、顔してる。
  窒息するぞ?

  
[ ぺんぎんはそう言われて目をくりくりさせて、
 ぷはー、と深呼吸した。
 そういえば、此奴らは基本的には寒冷地仕様で、
 この世界のどこでも活動できるように、
 幅広く適応可能な造りになっているようだ。
 
 きっと、いくつものことに、自分は気付き始めている。
 何かの前で立ち竦んでいる。
 けれど、このタブレットを閉じて、
 何もかも見なかったことにして立ち去るのは、
 最早選択肢すら思いつかないことだった。

 ノートのページを改め、指を滑らせて行く。]*
(14) 2020/05/21(Thu) 19:50:09

【妖】 軍医 ルーク

[ 気付くことは多かった。
 夢の中の“誰か”が兵士であろうということは、
 二度目の日記で確信していた。
 抑々この見張り台に置いてあるという時点で、
 その可能性は高かったけれど、
 二度目の日記には『日々の仕事や訓練』とあったのだ。
 
 夢の中、そのひとは“左手”で白い何かに触れた。
 左利きなのだろうか、あるいは、右手に何かを持っていた?
 それとも、もっと何か他の理由。

 持っていた“何か”を口元に当て、
 誰かに報告をしたみたいだと言いながら、
 その暫く後に、遠くの誰かと『通信』をしていたり、と
 自ら書いている。
 通信をしていると知りながら、日記には“何か”と記していた。

 自分が本当に優しい人かは分からない、と語る。
 自分のことは自分では分からないものだ――
 という意味にも見える。
 けれど、“人”。
 どこか、自身を遠くに見ているような、
 まるで、もう一人の誰かを見ているかのような言い回し。]
($0) 2020/05/21(Thu) 19:51:32

【妖】 軍医 ルーク

[ そして、自分自身の話をしようとしても
 “話せることがなにもない”と。
 人に話せるような出来事がなかったと解釈するには、
 何処か、違和のある言い回し。
 
 ――…
 相手が誰かを探ろうと考えているわけではなくて、
 ただ、一語一句逃さず読もうと思えば、
 自然と目に入ってしまうことだ。
 そう、そして]


  “残した記録を誰かが見てくれるのなら”……


[ やはりこのひとは、自分の残した記録を、
 あとでゆっくりと見直すような心持で
 日記を書いているのではない。
 そのように、直感する。
 胸に手を当てる。
 騒めきが、どうしようもないほどに膨れ上がって、
 その正体も、やり過ごし方も分からない。
 血が出るほどに強く、唇を噛みしめた。]
($1) 2020/05/21(Thu) 19:52:35

【妖】 軍医 ルーク

あなたへ

 夢の話を聞かせてくれて、ありがとうございます。
 白い大地の話、何かの結晶の話。
 聞いたこともない、景色の話。
 人が住めなくなった土地を調査して歩いている――
 聞かせてくれたお話からは、そのような光景に思えました。

 その白いものはなんだろうと、考えてみて。
 以前お話ししたあの本では、
 『ほし』のある場所から落ちてくる
 『あめ』というものがあるのを思い出しました。
 食べる方の、ではなくて。
 水の雫なのだと言います。

 その夢の中では、『以前の記録よりも極寒』と
 報告されていたようですので、
 もしかしたら、落ちてくる水が、
 寒い土地では氷に近い形になるのではと。
 あまり根拠はない想像ですが。

 氷を削ると、白い小さな欠片になる。 >>0:9
 そうだ、氷菓子を思い出してみるといいかもしれません。
 細かく削った氷に、シロップをかけて食べるお菓子。
 以前見たときには白くてふわふわしていました。
 手に乗せれば、きっと溶けるでしょう。
 あれと似ては、いないでしょうか?

 (結局お菓子の話になってしまったようです、
  ごめんなさい)]
($2) 2020/05/21(Thu) 19:54:35

【妖】 軍医 ルーク

 氷の話よりも、もっとお話ししたいことがあったのに、
 直ぐに書き出す勇気が持てなくて、
 とりとめがなくなってしまいました。
 
 あなたの聞かせてくれた景色を、
 わたしなりに想像しています。
 もう誰も生きてはいない、酷く寒くてどこまでも白い、
 そんな景色の中を、歩いている自分を想像しました。

 きっとわたしは、一緒に歩くとしたら、
 ひどく足手纏いになって、迷惑をかけてしまいます。
 それでも、どうしても、
 そんな景色の中をひとりで行かせるのは、嫌です。

 残された日記を、ただ読み返しながら、
 ひとりで、ここにいるのも。
 
 だから、わたしが居ればきっと先に進む勇気が出ると、
 そう言ってくれて、わたしは嬉しかった。
 不思議な夢を見て、不安もあると思うのに、
 ごめんなさい、そんな風に、思ってしまいました。
($3) 2020/05/21(Thu) 19:56:19

【妖】 軍医 ルーク

 わたしの話も聞きたいと言ってくれて、ありがとう。
 けれど、わたしも、
 お話しできることは多くないかもしれません。
 どれも、楽しくなるような話ではないと思うから。

 でも一つだけ、お言葉に甘えて、伝えさせてください。
 わたしは以前事故に遭い、情緒面と感覚に異常があるようで、
 よく人を不快にさせてしまいます。
 元々の性格も、決して褒められたものではないのですが。
 (もし何か気に障ることをしてしまっていたら、
  ごめんなさい)
 それでも、本当に不思議なのですが、
 こうして文字を使ってお話ししていると、
 まるで昔のように、
 色々な感情を自覚できるような気がしています。
 
 あなたは、自分のことを
 優しい人かどうか分からないというけれど、
 わたしには、あなたの言葉は、やっぱり優しく聞こえます。
 話せることがなく、釣り合う話も出来そうにないと、
 そう言うけれど、
 もう、いくつも、貰っているものがあります。
($4) 2020/05/21(Thu) 19:58:02

【人】 軍医 ルーク

[ それは、ばらばらに砕け散った窓硝子を、
 目隠ししたままかき集めて、
 形を探ってゆくパズルのようなものだ。
 少しずつ、必死で、
 自身の中にある何かを探して結い合わせてゆく。

 ――… 時折、指が鍵盤に触れて、音を鳴らす。
 そうして、自身が感じていることを理解する。
 
 恐怖? 不安?
 けれど、違う、決してそれだけじゃない。
 しいて言うなら、これは、そう。
 “望み”。

 綴り終えた指は、少し震えて。
 タブレットを袋に戻し、大切に引き出しにしまう。
 日記の主は、このタブレットを大事にしてくれると、
 そう言っていた。
 自分も、そうしたい。
 これは、今はそのひとの物で、
 書き記した大切な記録だから。]*
(15) 2020/05/21(Thu) 20:01:39
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a3) 2020/05/21(Thu) 20:21:24

【独】 軍医 ルーク

/*
灰を書く余裕もなくわあわあ転がりまわっていた数日であった。
こう、一挙手一投足から日記の一文一文まで!
心配に! なるよね!!
もうこのうさぎさんどうしてくれよう(もふりたい(大好き

ルークの方も序盤ちょっとどのくらいの描写なのか安定しなかったけど、段々把握できて来たぞ。
こっちの日記に内容が割と中身COレベルなので、気づくかどうかはお任せしつつ…!

あと、シュゼットのロルいつもほんっと好きなんだけど、日記の所の文体とかめちゃくちゃ綺麗。すごい。
(-9) 2020/05/21(Thu) 20:47:48

【独】 軍医 ルーク

/*
鳩から見るとき、紫窓の色がきれいだなあ…
(-10) 2020/05/21(Thu) 20:48:48

【独】 軍医 ルーク

/*
進行速度的にそろそろ過去の出来事を落としたほうがいいのだけれど、目の前のロルのお返事に投球するうちに先延ばしになりつつある。
よし、ちょっと書いてから仮眠だ。
(-11) 2020/05/21(Thu) 20:49:41

【独】 軍医 ルーク

/*
というかそうだよ、折角のもふ設定なのに!
まだもふもふ出来てない!(するような奴じゃない)
それどころか結ぶとか言ってる。
そしてこっちはまだ耳尻尾すら出していない。
(-12) 2020/05/21(Thu) 20:50:43

【人】 軍医 ルーク

 ―― 
医務室
 ――

[ 叩きつけられた机の上から、
 器具が床に落ちてがしゃりと音を立てる。
 椅子を巻き込んで転び、身を起こすのに少し時間がかかった。

 頬の痣の上、広く貼られた湿布の端に、
 刃渡りの広いナイフが突きつけられる。
 刃先が白い湿布を無造作にはぎ取れば、
 下にある青黒い痣の上に、 滑った刃が薄く傷を重ね、
 一筋開いた傷口から、少し間をおいて、
 ぷっくりと赤い血が球になって流れた。]


 『なあ、状況が分かってんのか?
  いいか、もう一度聞くぞ、
  “あのときあったことを、話せ”』


[ 怒りに我を忘れる寸前といった男の声は、どこか酷く冷えて、
 返答によっては何が起こるか分からない。
 けれども、まだだ。
 ひとはそうそう“思い切れる”わけでもないし、
 最後の一線を越えたなら、どのような処分を受けるのかを
 考える理性も残っているのだろう。
 突きつけられた刃先がぴくりとも揺らがないのは、
 やはり兵士だ。]
(16) 2020/05/21(Thu) 21:29:58

【人】 軍医 ルーク

 
   前にも言っただろう?
   好きに想像すればいいって。
   君にも分かりやすく説明すると、だ、
   この基地には機密レベルというものがあり、
   皆、それに応じて、
   目やら耳やら口やらを
   上手いこと動かしているものだ。
   君は手が滑りやすいようだから、
   耳と目くらいは言うことを聞かせておけ。


[ 間をおかずに返って来たのは、
 躊躇なく振るわれ、腹にめり込んだ拳の一撃。
 重い衝撃に視界が明滅し、痛みが遅れてやって来る。
 床に崩れて身体を折り、けほ、と咳き込む。
 腹の底からせりあがる吐き気をこらえきれず、
 けれど、また暫く飲み食いを忘れていた胃からは、
 何も吐き戻すものがなかった。
 身体が痙攣するように震え、起き上がれない。

 成程、以前は腹を殴るのを教えてやろうと思ったけれど、
 少しは考える頭があったのかどうか――、
 思考だけがそんな風に冷静で、身を折って蹲る。]
(17) 2020/05/21(Thu) 21:31:30

【人】 軍医 ルーク

[ 次に衝撃があったのは、頭。
 ざり、と固い感触と衝撃。
 床に打ち付けられた頭がぐらりと揺れて痛み、
 踏みつけられたのだと知る。
 視界の片隅、横合いから飛び出してきたぺんぎんが、
 必死に男の足にしがみ付こうとする。]


  『何だ!?
   おい、邪魔するなって!』


[ 男は驚いた様子で足を振り、振りほどこうとするが、
 頑として離れない。
 ぺんぎんを蹴り飛ばすのには躊躇いを覚えるようだった。
 自分相手なら兎も角、何もしていないぺんぎんに
 暴力をふるうような、そういう性質の人間ではない――
 そういうことなのだろう、おそらく。

 それでも、逆上した相手が何をするか分からず、
 手を伸ばし、ぺんぎんを鷲掴みにして引き剥がし、
 戸口の方へ転がす。
 声は出せなかったが、
 にげろ、と、口の形だけではっきり告げた。]
(19) 2020/05/21(Thu) 21:33:20

【人】 軍医 ルーク


  『――ったく、
   いいか、これ以上手間を取らせるなら、
   こっちにも考えがある。
   最後にもう一度だけ聞くぞ、
   あのときあったことを、話せ』


[ 突き付けられた刃先が、今度は首筋に傷を作る。
 先ほどよりは明確に、意志を持って。
 何も答えず、視線だけで男を睨み上げる。

 男が刃先に再び力を籠めようとした、そのとき。
 遠くから聞こえてきた『足音』に、
 男の犬耳がぴくりと動き、
 忌々し気な舌打ちの音がした。]
(20) 2020/05/21(Thu) 21:34:16

【人】 軍医 ルーク


   『いいか、警告はこれが本当に最後だ。
    次はない』


[ 男は足早に、医務室を出てゆく。
 戸口のところに、ぺんぎんの姿はなくて。
 ああ、ちゃんと逃げられたのかな――と安堵する。
 もしかしたら仲間の端末経由で、
 何処かに通報しようとでもしたのだろうか。
 ぺんぎんはいつも医務室にいるが、
 他の連中と没交流ということもなく、
 廊下で他の連中とジェスチャーを交わしている様子も、
 稀に見ることもある。

 足音は、此方に向かってくる。
 腕に力を籠め、起き上がろうとするが、
 どうしても体に力が入らない。
 急患なら対応が必要だが、戦闘があったわけでもなし、
 可能性は低いか――と、そのまま力を抜いた。

 急を要さない要件なら、驚いて逃げ出すか、
 指差して笑って立ち去るかどちらかだろう、多分。]*
(22) 2020/05/21(Thu) 21:35:30

【人】 軍医 ルーク

  ―― 
着任の日の記憶
 ――

[ 窓の向こうから聞こえてくる喧騒は、遠く規律正しい。
 総司令の後ろ姿に失礼します、と声をかけ、
 所属と名を名乗り挨拶をする。
 黒豹の耳と黒眼鏡の背の高い男が、ゆるりと振り返る。
 人好きのする笑みを浮かべ、
 やあ、待っていたよと目を細めた。]


 『長旅ご苦労、疲れただろう。
  君の経歴は聞いている、
  今日から早速医務室と研究班の両方に
  配属になってもらうよ。
  詳しいことは、
  それぞれの部署で聞いてくれたまえ。』


[ 男は木の椅子にかける。
 華美なところ等一切ない、機能一辺倒の司令室。
 誰が飾ったか、まさか自分で摘んできたのか、
 水飲みグラスに、そのあたりで生えていそうな花が一輪、
 飾ってあった。]
(38) 2020/05/21(Thu) 23:15:23

【人】 軍医 ルーク


 『軍事基地の勤務経験はなし、か。
  確かにねえ、一昔前の開拓時代なら兎も角、
  この数十年、世界は実に平和なものだった。
  此処は最前線にして、唯一の戦場と言える』


[ 表情も変えず、押し黙って司令の話を聞く。
 フードを脱いで露にした耳も、ぴくりとも動くことはない。
 窓からまた飛び込んでくる遠い喧騒を、耳が捕らえた。
 訓練中の兵士たちの声だろう。]


 『我々が相手取るのは未知の脅威だ。
  けれど、此処の兵士たちの士気は
  中々のものだよ。
  いや実際、私は“人材に恵まれている”。
  出来るなら兵を失うことは極力抑えたい、
  そのためにも、君には期待しているよ』


[ 何処か読み切れないその笑みは、
 “それだけのものではない”。
 この基地で戦う兵士たちを誇りに思い、
 失いたくないという言葉通りの感情も、
 確かにそこに表れてはいるのだ。]
(39) 2020/05/21(Thu) 23:16:46

【人】 軍医 ルーク


 『いやあ、ところで君の武勇伝も中々のものだ。
  実際、いい読み物だった。
  壁面をよじ登って新種の鳥の巣を観察に行ったり、
  開けたら顔面から頭までピンクに染まる染料爆弾を
  学問所の教師に仕掛けたり――
  ああ、そいつ、
  所属学生にしていた陰湿な嫌がらせが発覚して、
  今は懲戒処分になったのだっけかなあ。
  
  けれど、君なら引手数多だったろうに、
  最前線に勤務することになったというのは――
  “色々と言われることもあるかもしれないけれど”
  其処は事を荒立てずにいてほしいな』


[ 男は靴音を響かせ、近づいてくる。
 黒眼鏡の奥の眼差しが、すっと冷える。]
(40) 2020/05/21(Thu) 23:17:57

【人】 軍医 ルーク




 『 まだ、皆に知らせる段階ではない。
   あの大穴の向こうに
“何”
がいるのか。
   君がいた研究所にいたのが
“誰”
なのか――…

   我々を殺そうとしている者たちの、正体を。

   物事にはタイミングというものがある。
   今はまだ、早い  』
(41) 2020/05/21(Thu) 23:18:59

【人】 軍医 ルーク

 『けれど、探りたがる手合いも多いだろうから――
  そうだなあ、彼らには、
  適当な“解答”を用意してやれば、
  一先ずは気が済むだろう。 』


[ 荒唐無稽な噂の向こうに、
 森に紛れた木のような、もう一つの噂を。
 必ずしも事実無根ではない、真実を織り交ぜたものを。
 調べれば確かな情報として、分かることだろう。
 着任した軍医は、研究所で機獣絡みの極秘任務に携わり、
 その研究所で爆発事故が起きた後に、
 最前線に送られたのだと。]


  『ああ、とはいえ、
   困ったことがあったらいつでも相談してほしいなあ。
   何せ私も、若い頃は君の父君には世話になった。
   これも縁だ』


[ 頷き、すべて受け入れる。
 そう、噂の森の向こう、見えるように隠される木は、
 そこまで的外れな代物でもないだろう。
 もし自分に何かが出来ていたなら、
 結末は、変わっていたかもしれないのだから。]*
(42) 2020/05/21(Thu) 23:21:13
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a5) 2020/05/21(Thu) 23:29:28

軍医 ルークは、メモを貼った。
(a6) 2020/05/21(Thu) 23:31:59

【人】 軍医 ルーク

[ 箱を回収してから数日と経たぬうち、
 言い渡された直近の勤務表に眉を顰めた。
 残骸の研究に携わる夜の時間が、大幅に増えている。
 それ自体は、通信機の回収の一件を考えれば
 そこまで不自然なことではない。
 けれど、その分削られていた箇所は何処かというと、
 あのうさぎの『検査』だ。
 自分が一人で検査にあたる時間はおろか、
 複数人で行う検査に参加する機会すらない。

 医療班の班長に何か間違いはないかと聞いてみても、
 研究班の方で急な人出が必要になっているらしい、
 という答えくらいしか得られない。
 それもあながち出任せではないようだったけれど、
 どうしても気になることはあった。
 生憎歯に着せる衣はもっていない性質だ。
 ずばりと、聞いてみた。]
(124) 2020/05/22(Fri) 21:41:04

【人】 軍医 ルーク

  治療の方針が合わないわたしは
  外したほうが良いということでしょうか。
  あなたも医者なら、
  これはおかしいと分かっているはずだ。


[ 問いただされた軍医はたじろぐこともなく、
 それもある、と頷いた。
 向けられた表情は、形容しづらい複雑なものだった。
 聞き分けのない子供に向ける苛立ち、僅かに滲む呵責。
 けれど、彼は何も肝心なことは口にせず、

 『君の勤務状況も見直しが必要だったからね、
  医者の不養生も程々にしておきなさい。
  行き届かない自己管理は怠慢と変わらない』

 そんな風に、口を噤んだ。
 せめて投薬の方針を――と言い募っても、
 それは参考にさせて貰うよ、と、
 明らかに口先と分かる返答を返されるばかり。]
(125) 2020/05/22(Fri) 21:41:53

【人】 軍医 ルーク

[ 検査記録を見ることは妨げられなかったため、
 日々の記録を追いながら、
 治療の建前すらかなぐり捨てたような実験めいた処置に、
 後から目を通すことしかできない。
 誰に訴えたところで、軍の方針に行きつく。

 自分には知らされていないところに理由があって、
 その理由は、最初の襲撃の顛末だけではない、
 あのうさぎ自身に関わりがあることだと、
 この頃には、もう確信し始めていた。

 “副作用ではない頭痛は、兆候。
  その前後の様子はよく見ておくように”
   
 記録されていた指示に、
 鳩尾を掴まれたような感覚を覚える。
 通信機を回収に向かった夜、
 箱を見つけたときのことを思い出す。
 頭痛の直後、まるで別人のような様子で、
 『機獣の構造を知らなければ』見つけようもなかった
 通信機を見つけ出した。]
(126) 2020/05/22(Fri) 21:45:16

【人】 軍医 ルーク

[ 本当なら、報告しなければいけないことだ。
 うさぎの記憶にまつわる手掛かりは、
 どのような細かいことでも申告するようにと
 言い渡されている。

 それなのに、口を噤んでいるのは、
 頭の中の何処かで強く鳴り響く警戒音があるからだ。
 言ってはいけない、口火を切ってはいけない。
 そうしたら、きっと、何かが始まってしまう――
 そんな、予感だ。

 出来ることが、何もない。
 手が届くようで届かないところで行われていることを、
 何もできずにただ見ているしかない。
 そんなどうしようもないもどかしさ、焦燥が、
 自身に対する怒りと自責を連れて、
 空洞の中で煮えている。

 そのような感覚は、
 そこまで時間をかけずに自覚することが出来た。
 この感覚の元になっているものが、
 あのうさぎへの『心配』だと、もう、知っていたからだ。]
(127) 2020/05/22(Fri) 21:46:43

【人】 軍医 ルーク

 
  ……しかも、
来ない



[ 昼時の医務室、椅子にかけている。
 音を立てて開いた扉にぱっと視線を向ければ、
 ひえっとすくみ上った鹿耳の若い兵士が、
 『部屋を間違えましたー!!』
 と、まっしぐらに逃げ出していった。

 ああ、いつものあれか――と、
 ぷいと顔を逸らした自分が、
 どれほど不機嫌な顔をしていたかを知っているのは、
 いかにもタイミングが悪かったその兵士と、
 机の上で溜め息をついているぺんぎんのみだろう。

 分かっている、向こうも暇じゃない。
 部隊長としての仕事や訓練に加え、検査がある。
 まともな空き時間なんてあるわけもないのだ。

 ―― 無事に、過ごせていられる状態だろうか。]
(128) 2020/05/22(Fri) 21:48:16

【人】 軍医 ルーク

[ 机の上で、ぎり、と拳を握りながら。
 顔を上げて、ぺんぎんに問う。]


  わたしは、『怒ってる』ように見える?


[ ぺんぎんは、それはもう、とばかりに頷いた。
 “また近いうちに”>>1:362
 その言葉を覚えていたぺんぎんは、
 仲間の伝手を辿って、『いいもの』を調達したようだった。
 とうもろこしから作ったお茶。
 珈琲や紅茶とは違い、苦みも渋みもない。
 戸棚のシロップの瓶の横にそっとしまい込まれたそれが、
 誰のために調達してきたものであるかは、聞くまでもない。

 やっぱりあいつが現れたら、
 最初は苦い物の一つも飲ませてやろう、そうしよう。
 決意を込めて頷けば、ぺんぎんは、
 おてやわらかに……とでもいうように、
 首を竦めたものだった。]*
(129) 2020/05/22(Fri) 21:49:23

【人】 軍医 ルーク

   ―― 
現在・医務室
 ――

[ 駆け込んできた足音は、ひどく慌てているようだった。
 耳に飛び込んできた声に、
 フードの下の白耳がぴくりと動く。]


  ――…、
   ん……


[ それが誰のものであるかを認識すれば、
 ぐらぐらと揺れていた意識が思考を結ぶ。
 最初に思ったのは、何故このような時間にということ。
 検査の時間でもない、夜の時間。>>70
 次の瞬間、思いついた可能性に、
 霞がかった思考がざっと晴れた。
 身をよじり、腕をついて身体を起こそうとする。]


  すぐ、起きるから。
  どこか、具合が悪いなら――


[ 椅子にでも座って待っていてほしい、
 そう言おうとしたのだけれど、
 痛みと吐き気にまるで身体に力が入らない。
 声だって、音になっていたか怪しい。]
(144) 2020/05/22(Fri) 22:25:18

【人】 軍医 ルーク

[ 記憶が戻る兆候、頭痛、
 “あと少しだろう”と皆は言っていた。>>63
 通信機を回収しに行ったあの晩に感じた感覚は、
 そう、『心配』だけではなくて、
 恐怖にも近く、痛みにもひどく近い。
 何に対する恐怖であるかは、分からないけれど。

   明け方の見張り台で、
   あの日記を読むときに感じる痛みと、
   どうしてか、ひどくよく似ているのだ。
   ――… 遠ざかる何かに、
   必死に手を伸ばすような。

 
 間近に見えたのは、赤い目だ。>>72
 いつもの穏やかな様子とは
 ずいぶん違った表情をしていたけれど、
 それでも、“変わらない”、あのうさぎのものだった。]
(146) 2020/05/22(Fri) 22:28:15

【人】 軍医 ルーク



  
   ――… シュゼット、


[ はじめて、名前を呼んだ。]
(147) 2020/05/22(Fri) 22:28:49

【人】 軍医 ルーク

[ ぺんぎんは、辺りをおろおろと駆けまわっていたけれど、
 飛ばされた指示にはっと我に返り、
 鍵のかかっていない方の戸棚に大急ぎで駆け寄る。
 勝手知ったる医務室、
 必要なものをかき集め、両の羽に抱えて
 ぺたぺたと戻って来た。

 どうやら、あの頭痛があったわけでも、
 具合が悪いというわけでもないらしい――…
 そうと気づけば、力も抜ける。
 床にぐったりと横たわり、
 腹部に手を当て、痛みをやり過ごそうとする。
 内臓まではやられていないだろう、休めば問題ないかと、
 頭はそう判断するものの、
 痛みというのは思考でどうにかなるものでもなかった。

 ローブにかけられた手の感触を感じたが、
 なされるが儘に動かない。]
(148) 2020/05/22(Fri) 22:29:59

【人】 軍医 ルーク

[ はぎ取られたフードと黒いローブの下、
 白い狐耳があらわれる。
 身体を庇うようにくるりと胴に巻き付いた尻尾は、
 普段は外には出さないもの。
 白く柔らかくふわふわで、
 胴回りよりも尾の方が豊かな程だ。

  降ったばかりの新雪と同じ色――と例えるには、
  この世界にそれがない。

 
 捲れた服の裾から覗く足は、両方とも金属色の義足。
 もし、怪我を探そうとローブの下のシャツをはぎ取るなら、
 一切止めようとしないのでそれは簡単なことだろう。
 腹部の殴打には、痣は残りづらい。
 肉付きの薄い体には、目に見える傷は殆どない。]
(149) 2020/05/22(Fri) 22:31:00

【人】 軍医 ルーク


 

[ 其処に在るのは、青白く痩せた、
 “女性”の身体。 ] *
(150) 2020/05/22(Fri) 22:32:10
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a16) 2020/05/22(Fri) 22:35:56

【人】 軍医 ルーク

   ―― 
カイキリア
 ――


[           身をよじり、身体を動かそうとする。
 けれど、からり、と手元の破片が音を立てた、それだけで。
       そうだ、繋いでいた手が、あったはずだった。


                      首を傾ける。
       小さな傷だらけの手は、確かにそこにあった。
          自分の右手と、つないだままだった。]
(151) 2020/05/22(Fri) 23:00:05

【人】 軍医 ルーク

[ ――… ]

 
  『ルウのおとうさんは、
   随分…強烈なひとだったんだねえ』


[ 自分の話を聞き終えた彼女の第一声は、
 それだった。>>0:6>>0:7
 両親の話を聞かせてほしいと言うから語ったのに、
 聊かならず、引いている。
 
 じゃあ、君の親は?
 そう聞いたら、嬉しそうに色々なことを話し出した。
 “話しても良い”と、彼女が判断したことだろう。
 本当の両親ではないのだけれど、それは優しい人たちで、
 自分に色々なことを教えてくれたのだという。

 ――帰れるのだろうか、彼女は。
 胸を鷲掴みにされたような息苦しさを、
 表情に出すことは必死で抑え、“医者”の顔を作る。]
(152) 2020/05/22(Fri) 23:00:58

【人】 軍医 ルーク

[ 白い部屋だった。
 寝台も、床も、壁も、すべてが真っ白で、
 いっそ現実味を失うようなその空間には、
 あるべきものがひとつ、ない。
 窓のない部屋は、病室というよりは囚人を閉じ込める檻。
 まるで白紙の世界に放り出されたかのような、
 耳が痛くなるような静寂の底に、
 自分たちの声が吸い込まれて行く。]


  さて、傷を見せて。
  体調に変化は?
  
 『えー、もっとおしゃべりしようよ。』

  ん、何の話をするんだい?

 『ルウの尻尾の話』

  なにゆえ

 『えー、だってすごくもっふもふで、
  触り心地が良さそうなんだもの。
  ね、触らせてー!』


[ 寝台の上に胡坐をかき、屈託なく笑う子供。
 その笑顔が自分に向けられるたびに、
 胸奥がぎしりと軋む。]
(153) 2020/05/22(Fri) 23:02:18

【人】 軍医 ルーク

[ 自分は、そのような表情を向けられる資格がある人間じゃない。
 そのことは向こうだって、分かっているはずなのに。

 父の死を切欠に、機獣の謎を解き明かしたいと望み、
 この研究所に配属になった。
 業績を重ね、医者としての腕にある程度の信を
 置かれるようになった頃。
 一つの任務が与えられた。


 “機獣とともに回収された、
  天の穴の『向こう』からやって来た子供を、
  すべての情報を引きだすまでは
  心身共に、情報収集に差し支えない
  最低限の状態に保つこと。”    ]  *
(154) 2020/05/22(Fri) 23:07:43
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a19) 2020/05/22(Fri) 23:11:27

【人】 軍医 ルーク

   ―― 
回想:第二研究所
 ――

[ 天の穴の向こうから来た人間。
 それが意味するところは、一つだった。
 機獣はただの災厄ではない、
 送り込んでくる者たちがいるということだ。
 あれが生物ではなく機械の一種であることを考えれば、
 それは当然とも言えたのだけれど、
 この世界の“上”にもう一つの世界があって、
 そこに住まう者たちが自分たちを滅ぼそうとしていることは、
 頭の中の世界がひっくり返るような衝撃ではあった。

 ――天の向こうには、世界がある。
 父の話を思い出す。
 その父は、現れた機獣に襲われて死んだ。

 彼女は、仇と呼ばれる存在であったのかもしれない。
 けれど、日々身体を切り刻まれ、
 その小さな体に傷を増やしていく子供を
 そのような目だけで見ることは、
 どうしたって出来そうもなかった。]
(176) 2020/05/23(Sat) 10:30:49

【人】 軍医 ルーク

[ 捕虜から情報を引き出そうとするのは当然のこと、
 増して自分たちが滅ぼされようとしている瀬戸際だ。
 そう思おうとしても、どうしても見過ごすことが出来なくて、
 せめてやり方を変えることは出来ないのかと訴えた。
 諭すように、けれども苛立ちを隠さず、上司はこう言った。

 “人道主義も結構だが、付き合っていられる状況ではない。
  彼女から引き出される情報は、確実に我々の有利となる。
  君の自己満足に付き合って、
  手の内にあるそれをみすみす逃し、
  何百何千という人が死ぬことになってもいいという、
  それだけの覚悟で言っているのか?
  君は汚れ役は周りに任せて、
  感謝される役回りを与えられた。
  その上で綺麗事を重ねるのは、
  虫が良すぎるというものだ。
  おままごとも程々にしておきなさい”

 どれ程食い下がっても、出来ることが何もなかった。]
(177) 2020/05/23(Sat) 10:31:46

【人】 軍医 ルーク

[  
   なかったのだろうか? ほんとうに?
   もし本気で状況を変えようと、
   死に物狂いで戦ったなら、
   結末は変わっていたのではないだろうか。
   それをせずに、状況に流されるままに甘んじて。



 恨まれて当然だった。
 自分も、彼女を傷つける者たちと変わらないというのに、
 その子供は、恨む素振りを見せなかった。
 ――少なくとも、表立っては。

 時折こっそりと持ち込む菓子を、嬉しそうに頬張る。
 食べることが大好きで、
 美味しいものを食べると何より幸せそうにする、
 そんな子供だった。]
(178) 2020/05/23(Sat) 10:34:13

【人】 軍医 ルーク

  お願いがあるの。
 

[ ある晩、彼女はそう言った。
 取り替えていた包帯の下の、治りかけの腕の傷は、
 治ろうとする端から再び抉られ、開かれて、
 無残に化膿しかけている。
 目を逸らしてはいけないと、震える指先を押さえつける。
 ――自分が抉っていると変わらない、そのような傷だ。]


  お願い、何?


[ 心臓がどきりと跳ねた。
 自分に出来ることは多くない。
 彼女が望んでいるであろう、此処から逃げ出すことも、
 天の向こうにいるという、
 “おとうさんとおかあさん”のところに帰ることも、
 叶えることは、許されない。]
(179) 2020/05/23(Sat) 10:35:31

【人】 軍医 ルーク

 『おとうさんとおかあさんと、お話がしたい。
  わたしを、機獣のところに連れて行って。
  話をするための機械があるの』
   

[ 心臓が早鐘のように打つ。
 それは、どうしたって、無理な相談だった。
 彼女が機獣と共に降りてきた存在である以上、
 接触させることなど許されるはずもない。
 それがばらばらに分解された残骸であっても、だ。
 “天の向こう”と連絡を取るなど、
 ことによっては致命的な事態だ。
 それは駄目だ、と首を横に振る自分に、彼女は言った。]


 『わたしが何かおかしなことをしようとしたら、
  その銃で撃ち殺してしまって構わない。
  お願い、ひとことだけでいい。
  わたしから話すだけでもいいから、
  死ぬ前に一度だけでも、話がしたい』


[ 彼女の視線は、服の下、
 支給品の銃が隠れているその場所に定められていて、
 ああ、彼女は知っていたのかと、そう悟る。
 両親と、ひとことだけでも話がしたい。
 その望みが、杭のように胸に刺さる。]
(180) 2020/05/23(Sat) 10:36:47

【人】 軍医 ルーク

              [ ――… ]
  
[ 機獣の残骸が保管されている一画は、
 研究所の北側に増設された巨大な格納庫。
 人気もなく、見張りも少ない
 此処は軍事基地ではなく研究所だ。
 機密性は極めて高いが、
 内側から忍び込むことは不可能ではなかった。

 直ぐに頷いたわけではない。
 けれど、“両親とひとことだけでも話したい”と、
 必死に、残りの命を振り絞るようにして訴える子供から
 最後まで目を背けることが、
 どうしても、出来なかったのだ。

 伽藍とした、天井の高い格納庫に、
 整然と並べられた機獣の残骸は、
 生き物の骨のような、亡骸のような、
 酷く奇妙に捻じれた死を感じさせる光景だった。

 腕であったもの、脚であったもの、胴であったもの。
 並べられた残骸を見渡し、
 子供はその中の一つ、“箱”に駆け寄る。
 自分も、周囲を警戒しながらその後に続いた。

 もし彼女が機獣に何かする素振りを見せたら、
 通信でおかしなことを一言でも話そうものなら、
 そのときは――引き金を、引かなければいけない。]
(181) 2020/05/23(Sat) 10:38:06

【人】 軍医 ルーク


  それが、通信機?


[ 彼女は頷き、箱に手を当てて何かの操作をする。
 外殻らしき金属の箱の表面の小さな蓋を開ければ、
 黒く滑らかな板が顔を覗かせる。
 それに彼女が指をあてれば、箱が開き、
 中からさらに小さな機械が現れた。
 彼女の指先が、ボタンを操作する。
 ピッと耳慣れない甲高い音が響き、青い光が点灯した。
 
 ―― そのときのこと、
 視界の片隅で、何かがきらりと光った。
 全身が泡立つ。
 背中にぞくりと走ったそれは、本能的な警戒。
 考えるよりも先に身体が動き、
 咄嗟に、彼女を引き戻して横に飛ぶ。、
 それまで彼女がいた場所を僅かに逸らし、
 床にぴしりと、何かが突き立つ固い音がした。]
(182) 2020/05/23(Sat) 10:39:23

【人】 軍医 ルーク

[ 目の前が真っ白になる。
 格納庫に明かりが灯り、
 暗闇にいた目が明るさに慣れずにいるうちに、
 格納庫の扉が開き、なだれ込んできた兵士たちが、
 見る間に自分たちを取り囲んだ。

 銃口が突きつけられる。
 彼女に、そして自分に。]


  『泳がせておいて正解だった。
   案内ご苦労、
   “良い警官と悪い警官”というのは、
   古臭い手だが悪くない、
   君はいい仕事をしてくれた』


[ 上司はそう言って、青い光を放つ通信機に指を伸ばした。]*
(183) 2020/05/23(Sat) 10:40:03
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a22) 2020/05/23(Sat) 10:41:04

【人】 軍医 ルーク

[ それは、医務室に現れないうさぎに、
 やっぱり苦いものも飲ませてやろうか――なんて、
 ぺんぎんに話をしていた、すこし後のこと。

 勤務時間が変わり、明け方に見張り台に向かうことは
 難しくなっていた。
 今はもう、あの場所に向かう目的は、
 大穴の観察だけではなくなっていた。
 あのタブレットには、今日も日記が記されているだろうか。

 前回自分が記したことにどのようなことを思われたか、
 ざわつきのようなものはある。
 それは――おそらくは、“不安”。
 けれど、そのようなものよりも。
 日記の内容と、自分に向けて記してくれた言葉たちを
 思い出すたびに、
 心臓が鷲掴みにされたような痛みを感じる。

 “心配”
 ――そう、それと似たもの。
 そして、望み。
 胸を刺すようなそれは、
 そうだ、もしかしたら――“切望”。]

 この心は、なんだろう。
 わたしは、何を“思って”いるのだろう?
 痛みと願いが同じ場所にある。
 手を伸ばしたいと。
 その手は、何を望んでいるのか。]
(190) 2020/05/23(Sat) 12:07:58

【人】 軍医 ルーク

[ 明け方でも夜でもない、夕食時の時間帯。
 空き時間を漸く見つけ、外壁に向かう。
 いつもよりは人の目も多いだろう。
 見つからないようにと注意を払いながら、
 人の気配がなくなった隙に、いつもの机へと歩み寄り、
 タブレットを取り出す。
 ノートには、また新しいページが増えていた。
 いつもと同じ出だし、日記が書かれた日の日付。

 最初の一文を読んだとき、
 タブレットを持つ手が、震えた。

 音が遠ざかる。
 まだ静まり返ってはいない基地の、ざわめきの音、
 足元にいるぺんぎんの、心配そうに小さく立てる鳴き声。
 すべての音が遠ざかり、目の前が暗くなるようだった。]


  ……、 いやだ


[ 声が震える。
 それでも、続きを読む。
 書かれているすべてを、目に焼き付けるように。
 その先を読むことで、一文ごとに突きつけられる真実から、
 もう、目を逸らすことは出来なくなっていたとしても。]
(191) 2020/05/23(Sat) 12:09:58

【人】 軍医 ルーク

[ 前回の日記で既に、自分は気付きかけていたのだと思う。
 目の前にある真実の前に立ち竦んで、
 扉に指をかけることが、ひどく恐ろしくて。
 
   日記の主の見ている景色を、
   いつものように、想像しようとする。
   足元に空いた穴に落ちてゆくような
   自身の今の感覚と、
   ひどく、同期するような光景ではあった。
   
 そこには、書いてある。
 もう、気づかなかったことには出来ないほどに、はっきりと。]
(192) 2020/05/23(Sat) 12:10:41

【人】 軍医 ルーク

 


  『ただの暗闇を義手が掴んだところで、
    今回の夢は終わりを迎えたのだった。』


 
(193) 2020/05/23(Sat) 12:11:02

【人】 軍医 ルーク

[ 日記が終わる。
 自分に当てた返事の前に、ひどく長い空白があった。
 まるで、記したばかりの日記を、
 続きを書いている自身の目から
 遠ざけようとでもするかのように。

 息が出来ない。
 目も、耳も、手も、もう自分の物ではない脚も、
 そのすべてが言うことを聞かずに、
 ばらばらになってしまったようで。
 最後まで読みとおし、俯く。]


   ……、
   氷菓子食べ放題、か、
   ほんと、莫迦……


[ それは、もう何処にもない、
 過去の世界が残した刻の名残。
 綿のように降り積もる、白いちいさな氷の欠片。
 いまはもう、ひとが住むことすら出来なくなってしまった、
 此処ではない、どこかの世界。
 氷菓子の話を書いていたそのひとは、
 書きながら、ほんとうは、何を思っていたのだろう。]
(194) 2020/05/23(Sat) 12:12:27

【人】 軍医 ルーク

[ 呼吸を忘れかけた喉の奥が、
 ひゅう、と泣くような音を立てる。

 そのひとは、手を伸ばし、写真を掴もうとした。
 その写真は自分の記憶の中で、
 父が最期まで身に着けていた、あの写真になる。
 在りし日の母と幼い頃の自分が写された、
 一枚の写真。>>0:60
 父が発掘した、タブレットより遥かに単純な造りの写真機が、
 写しだしたもの。

 そうだ、もし自分の想像が合っているとするのなら、
 この日記の主は。


   死んだ残骸の降り積もる、伽藍洞の身体。
   そのすべてが、叫んでいる。
   体中が内側から切り刻まれるような痛みに、
   溢れ出すような奔流に、
   その正体も分からぬままに、指が画面に触れる。]
(195) 2020/05/23(Sat) 12:14:22

【妖】 軍医 ルーク

[ この日記の夢は、記している者の記憶だ。
 自分は以前から、そのように感じていたと思う。
 
 大穴の向こう、もう一つの世界の景色だ。
 失われた技術、
 自分たちが“最初から”手にしていたもの。
 その意味するところは、まだよく分からないけれど、
 彼が旅しているのがそのような場所であることは、
 記述を繋ぎ合わせれば、
 気づかずにいることは、もうできなかった。]
($12) 2020/05/23(Sat) 12:14:53

【妖】 軍医 ルーク


 あなたへ

 ほんとうは、いつものように、
 夢の話を詳しく考えて、
 気付いたことを記していけたらと思うのだけれど、
 どうしても、うまく書けそうにありません。

 もう少ししたら、あなたの抱えている残りのことを、
 話せるときがくるかもしれないと、
 そのように思ってくれて、
 ほんとうに、ありがとうございます。
 あなたが自分の夢に向きあえるように、
 何かの手助けになれていたなら、それ以上嬉しいことはない。

 ――それは本当だけれど、きっと、本当じゃない。
 わたしが望んでいることは、それだけじゃない。
($13) 2020/05/23(Sat) 12:15:35

【妖】 軍医 ルーク


 あなたがいなくなることが、怖い。
 怖くてたまらない。

 “あまり時間がないのかもしれない”と、あなたは言う。
 最初にこの日記を読んだ時から、
 薄々と、感じていたことがあります。
 感じていながら、認めたくなくて、
 深く考えることから逃げていた。
 あなたは、あとでゆっくりと読み返す記録にするために、
 この日記をつけているのではなくて、
 まるで、のこしておくために、書いているようだと。

 このノートのやり取りで、
 昔のように感情が分かるようだと思っていた理由が、
 今なら、わたしには分かる。
 
 “心配”でたまらないと、
 そう思っているひとがいます。
 いつも周りの事ばかり心配して、
 自分だってずっと辛い目に遭っているくせに、
 誰かのために戦って、笑っていられるような。

 いつからかは、分からないけれど。
 そのひとと話をしていると、その目を見ていると、
 わたしのなかの残骸が、音を立てる。
($14) 2020/05/23(Sat) 12:16:29

【妖】 軍医 ルーク

  
 あなたの日記を読んで、
 手を伸ばしたくなる。
 どこか遠くを歩いているような、夢の話。
 いつか、この現実に早足の夢が追いついて、
 手が届かないほど遠くに行ってしまいそうで、怖くて。
($15) 2020/05/23(Sat) 12:17:08

【妖】 軍医 ルーク

 いつからだろう。
 わたしの中で、どこまでも続く冷たい白い景色や、
 朽ち果てた建物の中を歩くあなたの姿は、
 暗い暗い穴の外へと身を躍らせて、
 宝物の写真へと手を伸ばそうとする、その姿は、
 君だった。
($16) 2020/05/23(Sat) 12:17:35

【妖】 軍医 ルーク

 本当に怖いのは、立ち向かっているのは君なのに、
 わたしのことばかり話してしまって、ごめんなさい。

 けれど、
 天の穴の向こうの世界が、
 いまはもう、人が住めない死に覆われた場所だとしても。
 いつか、君がそこにもう一度、
 足を踏み入れることがあるのだとしたら、
 ひとりでなんて、行かせたくない。

 『感情』がなかったという昔の君が、
 得たものが、気づいたものが、
 今の君を形作っているというのなら、
 離さないように、離れないように、
 その手を掴んでいたいと、そう思う。

 わたしは、
($17) 2020/05/23(Sat) 12:18:12

【人】 軍医 ルーク

[ そこまで書いたときのこと、]


  『誰だ!?』


[ 人の気配に、はっと顔を上げる。
 そこにいたのは見張りの兵士だ。
 書くのに夢中になっていて、
 戻ってきているのに気づかなかった。
 兵士はこちらが誰か気付いたようで、
 げえっと嫌そうな顔をしたが、
 ここで何をしていたのかと尋ねてくる。]


  ……大穴の調査。
  わたしは、研究班の所属でもあるから。
  定期的に観測してる。


[ 嘘はついていないが、すべてを話してもいない。
 観測は自分の担当ではない。
 ただ、研究班の所属であることと、
 穴の調査のために赴いていたことも嘘ではない。
 手続きをとっているわけではないから、
 詳しく調べられたら咎められることもあるかもしれないが。]
(196) 2020/05/23(Sat) 12:19:46

【人】 軍医 ルーク

[ 兵士はまだどこか納得がいかないという顔をしていたが、
 調査が済んだならさっさと戻るようにと言い渡し、
 手の中のタブレットに視線を向けてきた。
 赤い袋に仕舞い、咄嗟に懐に入れる。
 観測に使用していると思ったことだろう。
 だとしたら、私物があれこれと入っている引き出しに
 入れて戻るのは不自然すぎる。

 見張り台を離れ、階段を下りる。
 ぱたぱたとついてくるぺんぎんの足音。
 分かれ道で立ち止まり、兵舎へと視線を向けた。]
(197) 2020/05/23(Sat) 12:20:35

【人】 軍医 ルーク

[ 伝えなければいけないことがある。
 最後まで書けなかった日記の続き。
 踵を返し、一度は医務室へと足を向ける。
 戸棚の中の『お返し』、
 ひっそりと鍵をかけて仕舞っておいたもの。
 それを取り出しに。
 自分に出来る限りの早足で医務室へと向かい、扉を開けて]


  『遅かったな』


[ 犬耳のその兵士が、そこに待ち受けていた。]


  へえ、わたしを待ってたんだ。
  それは実に物好きなことだなあ。


[ そんな風にへらりと笑ってみせながら、
 懐から取り出した赤い袋を、ぺんぎんに渡す。
 これから何があっても、壊されることがないように、
 どこか安全な場所に置いて、と。

 だから、医務室を訪れた者は、
 気づくことも出来るだろう。
 ぺんぎんが咄嗟に戸棚に置いた、
 赤い袋の中のタブレットの存在に。]*
(198) 2020/05/23(Sat) 12:23:52
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a23) 2020/05/23(Sat) 12:28:42

【独】 軍医 ルーク

/*
何故暗闇で銃口が光るのか(自分のロルを読み直して真顔になる)
(-29) 2020/05/23(Sat) 12:48:22

【独】 軍医 ルーク

/*
日記の方、もっとたくさん返したかったのだけれど、
感情的にいっぱいいっぱいになってしまって、こう…
中の人もう泣きながら書いてるよ
(-30) 2020/05/23(Sat) 12:48:49

【独】 軍医 ルーク

/*
それでは聞いてください。

うさぎさんがかわいくて切なくてしぬ

もう本当どうしてくれようかこのうさぎさん、
よし、もふろう。
止めても聞かない絶対もふる。
(-33) 2020/05/23(Sat) 20:05:21

【人】 軍医 ルーク

[ 軍医なのに名前で呼ぶのはおかしいと、>>200
 その言葉に、改めて思い知らされるのは、
 日頃の『検査』での彼の扱いで。
 何もできずにいた自分自身を、
 どうしようもなく知らしめられる。

 口にしたその名前は、願いのようでもあったと思う。
 あの日記を読んでしまって、
 いくつものことに気付いてしまった自分が、
 いま、何よりも恐れていること。
 そして、何よりも――望んでいること。

 ここに居るのは僕だと、
 そう告げてくれたのはきっと、
 自分を害した人間ではなくここにいるのは彼だと、
 そう知らせてくれる言葉だったのだろうけれど。

 自分には、別の意味に聞こえた。
 打たれ、切られた傷口よりも遥かに痛く、
 今も透明な血を流し続ける胸の奥の空洞に、
 そっと手を当ててくれているような。
 
 ――… 君は、君のまま、ここに居るのだと。]
(219) 2020/05/23(Sat) 20:55:21

【人】 軍医 ルーク

[ 間近に見たその赤い瞳は、変わらず彼のものだった。
 けれど、痛みに歪む視界がふっと像を結べば、
 否応なく、異変に気付く。

 数日前、通信機を探しに外出した時とは違う。
 まるで何日も寝ていないような、目の下の酷い隈。
 顔色も悪く、疲労の色を隠せずにいる。

 あの日記の、最初の一文を思い出す。
 起こりつつある何かが、どうしようもなく心臓を揺さぶり、
 全身の血が凍り付きそうな“恐怖”を感じる。
 殴られたときの方が遥かにましと思えるほどに。

 声を出そうとしても、出なかった。
 “痛み”に身体を抑えながら、蹲る。]
(220) 2020/05/23(Sat) 20:56:03

【人】 軍医 ルーク

[ 身体が床を離れる。
 抱え上げ、運ばれているようだった。
 背に当たる義手の感触は、固い金属のもので、
 検査の折に、あるいは戦闘の後に担ぎ込まれてきた時に、
 幾度となく見たことがあるものだった。

 ――… 金属の片腕を持つ彼と、金属の脚を持つ自分。
 お揃いのようだと思った言葉は、
 そのまま口にせず、飲み込んだ。

   この両脚は、彼の片腕とは違う。
   その腕がどういうものであったかが、
   いまのわたしには、朧げに分かる。
   けれど、彼がその腕を、
   この基地の者たちを“まもる”ために、
   身を削りながら使ってきたことを知っている。
   わたしのこれは、罪の証。
   何一つ出来ずに、目の前の命を死なせた。


 寝台に寝かされれば、柔らかな布の感触が身体を包み、
 呼吸がいくらか楽になる。
 無意識のうちに体に巻き付いていた尻尾に、
 優しい手の感触が触れた。
 その手に触れられているうちに、
 少しずつ、身体のこわばりがほどけてゆく。
 やがて、ふにゃりと力を抜いた白い尻尾は、
 抵抗せずにそっと脚の後ろに横たわる。]
(221) 2020/05/23(Sat) 20:57:53

【人】 軍医 ルーク

[ 治療の際に身体を見られることに、抵抗はない。
 こくりと小さく頷き、目を閉じる。
 診る前に相手を安心させる術というなら、
 患者の目の前に出る度に叫ばれる自分はどうなるという話だ。
 大人しくそのままじっと待っていたのだが。]


  ……。


[ なんだろう。
 何か、様子がおかしいような。
 てっきり打たれた腹の辺りを見られるのかと思っていたら、
 喉の辺りに触れられて、身体がぴくりと跳ねた。
 それから、胸元。
 重そうに首を傾げ、じー、と見上げてみる。
 見上げた赤いうさぎは、
 それはもう見事に赤くなっていた。]
(222) 2020/05/23(Sat) 20:58:38

【人】 軍医 ルーク

[ 何やら慌てはじめた彼の下に、ぺんぎんがやってくる。
 背伸びしてガーゼや消毒薬を差し出して、
 勢いよく褒めて撫でてもらえば、
 おてつだいできた、えらーい! と
 両手を挙げてくるくるはしゃぐ。
 必要なものを持ってこられたことを褒められたのだと、
 全く疑っていない顔だ。

 それからも、
 ボタンを嵌めようとしてもなかなか嵌らなかったり、
 (本人は気付かなかったようだが、結局一つずれていた)
 頬の消毒液がだばー、と枕の方に落ちて行ったり、
 中々に、中々のことになっている。

 手当てが終わると、ふらふらと立ち上がり、
 医務室の隅っこで丸くなってしまった。

 ……後ろを向くと尻尾が見えるなあ、と思った。]
(223) 2020/05/23(Sat) 21:01:06

【人】 軍医 ルーク

[ 彼が何に動揺しているか、この頃にはさすがに気付いている。
 間違えられることは二度三度ではないから、
 なんかもう面倒くさくなって、
 一々訂正することもやめてしまっていたのだが、
 やはり勘違いされていたか。

 先ほど触れられた胸元に、自分の手を当ててみる。
 我ながら自己主張というものが感じられない手触りだった。

 もう一度医務室の隅に視線を向けると、
 赤くふわふわした塊が、ぷるぷると震えている。
 それを見ていると、久しぶりにこう、
 擽られるものがあるというか。]


   手当をしてくれて、ありがとう。
   ところでさ、


[ 休めたのが良かったのだろう。
 先ほどよりは幾分しっかりした声で、
 その後姿に声を投げかける。]
(224) 2020/05/23(Sat) 21:02:11

【人】 軍医 ルーク

  



   触って確かめないと分からないくらい、
   “控えめ”で悪かったな



 
(225) 2020/05/23(Sat) 21:03:02

【人】 軍医 ルーク

[ まるで読心術でも心得ているかのように、
 誰かさんの先刻の内心を、ずばり、言い当ててやって。>>205
 それはもう、とてもとてもひとの悪い笑顔を浮かべる。]


  しかも、待ってたのに来ない。
  

[ 検査があったり、時間が合わなかったりしたのだろうと
 分かって入るのだけれど、
 そんな風にわざと、そう言ってやる。
 そう言った自分の声は、
 自分で想像していたよりも、色彩があった。]
(226) 2020/05/23(Sat) 21:04:08

【人】 軍医 ルーク


  そうか、合わせる顔がないのかあ。
  なら尚更、顔を見せてもらわないと?
  ああ、そうだね、それじゃあ、
  その耳、触らせてもらおうかな?
  それでお相子。
  
  
[ もし彼が振り返ったなら、
 寝台に横向きに横たわり、両手を差し出し、
 擽るように指を動かしている様子が見えるだろう。
 いつぞやの結ぶ結ばないの話を覚えているかは、
 さあ、どうだろう?

 なお、声に出すときに“きみ”と呼び続けていた自分が、
 内心では、うさぎ、と思っていたのは、
 その赤い髪から覗く、感情豊かな耳を、
 つい目で追いかけてしまっていたから。

 もし動かずにいるなら、
 此方から這い寄ってやるくらいの心算だった。]
(227) 2020/05/23(Sat) 21:05:03

【人】 軍医 ルーク

[ 彼のいる場所のすぐ近くにあのタブレットがあるのに、
 気付く余裕もないようだった。

 こんなやり取りは、
 向こうはそれどころではないかもしれないけれど――
 暫く前までの自分たちを、思い出させるものでもあった。
 それは懐かしいようで、
 けれど、沢山のことを知ってしまった自分は、
 もう何も知らずにいたあの頃には戻れない。
 戻りたいとも、思わない。
 少しずつ、正解も分からずに、
 暗闇で組み立ててきた硝子の破片のパズル。
 出鱈目につながりながら、音を奏で始めたピアノ。
  
 告げたいと思うことが、たくさんある。
 渡したいと思うものも。]
(228) 2020/05/23(Sat) 21:06:15

【人】 軍医 ルーク


  ああ、そうだ、
  どうせならもう一つ頼んでもいいかな?
  そこの戸棚に鍵がかかってるんだ、
  開けて、中を見て。
  耳を触らせるのと、鍵を開けるの、
  二つ合わせて、さっきのとお相子だ。

  
[ ぺんぎんが、ぱあっと表情を明るくする。
 机の引き出しを開けて鍵をとってきて、どうぞ、と渡した。
 その顔だけで、何があるか分かってしまいそうなものだが、
 棚を空ければそこには、
 瓶に入った薄桃色の苺シロップと、
 砂糖漬けの苺で作った小さなジャムの瓶があるだろう。
 ぺんぎんが調達してきたとうもろこしの茶の袋も。

 確認したいことがあったという、
 その話も気になっている。>>1:362
 そして、自分も。
 まだ気付かれずにいる棚のタブレットを、
 それとなく視線で確かめた。

 この先にあるものが、何であったとしても、
 踏み出したいと、強く、願っている。]*
(230) 2020/05/23(Sat) 21:11:21
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a25) 2020/05/23(Sat) 21:15:34

【独】 軍医 ルーク

/*
楽しすぎて延び延びになっててごめんー> <
最終日を総攻撃にするならもうちょっと早め会話の方が良かったかな済まない、リアル時間一日くらい後ろにずれ込むだろうか。
ただ、このタイミングで日記を渡したら温度差でグッピー死ぬ
(-45) 2020/05/23(Sat) 22:46:15

【人】 軍医 ルーク


  ふうん、そうか、
  見た目では分からない…
  君は目は良さそうなのに、
  見た目では分からない。


[ わざとらしく念押ししてやって、
 耳に触れたいという要求に、項垂れるのを見る。
 結ばれるのを想像しているのか、
 手でふにふにしている長い兎耳は、
 やはりふわふわで表情豊かだった。

 そして当人も、思い出せば、やはり表情豊かだった。
 苦い薬を飲まされそうになってぷるぷるしていた様子だとか、
 怪我をした自分をひどく心配してくれた顔とか、
 先ほどの動揺して赤くなっていた様子だとか――
 (余程びっくりしたのだろうか)
 
 ――… 最初は、感情がない機械のようだったと、
 『命令を聞くだけの機械のようだと
  夢を見ている僕が感じた、夢の中の僕が。』
 そう、日記には確かに書いてあったのだ。

 また、言い表すことが出来ない感覚が、
 胸の内にぎり、と広がる。
 自分が、そんな表情たちを、
 こんなにも覚えていることに気付いた。]
(299) 2020/05/24(Sun) 4:05:08

【人】 軍医 ルーク

[ ぺんぎんに案内されて戸棚を開くころには、
 その中にあるのがなんであるのかを、
 彼も凡そ察していたようだ。
 表情は後ろ向きでよく分からなかったけれど、
 嬉しそうな声は聞こえていたし、
 何より、尻尾が実に機嫌良さそうに揺れていたりする。
 
 シロップの瓶と、ジャムとお茶。
 眺めたり香りを確かめたりしている様子を、
 寝そべったままに見ている。
 その顔がぱっと明るく綻ぶのを見て、
 自然と、口元がゆるやかに動く感覚があった。
 ――やっぱり捨てたりしなくて、良かった。]


  味見はしてないから、
  味の保証は出来ないよ。
  なんてね、
  実は味見についてはいい助手がいた。


[ そう言って、うさぎの足元のぺんぎんを見遣れば、
 まかせて! と胸を張っていた。]
(300) 2020/05/24(Sun) 4:07:08

【人】 軍医 ルーク

  あげようと…?


[ スープなんてどこにあるのだろうと思っていたら、
 机の上にパンとスープがあった。
 僅かな違和感に、目を細める。
 気付けば、思考は早かった。
 医務室を訪れるだけなら、夕食を持ってくる理由はない。
 今にして思えば、医務室に助けに来てくれたのは、
 ぺんぎんが呼びに行ったからではないだろうか。
 だとしたら、持っているのは自分の夕食。

 それ、君のだろう。
 わたしはいいから。

 そう言いかけて、その量が彼の物としては
 あまりに少ないことに気付く。
 食堂で部下たちと一緒に食事をとっている姿を、
 幾度となく見てきた。>>0:69>>0:179
 トレイで運んでいたということは、一人で自室で?
 まるで何日も眠っていないような、ひどく消耗した顔色。

 医者の自分と、“わたし”としての自分が
 同時に口を開きかけ――… 
 噤んだ、いまは。]
(302) 2020/05/24(Sun) 4:10:44

【人】 軍医 ルーク

[ トレーの上のスープとお茶が湯気を立て、
 パンとジャムの小瓶とスプーンが添えられて。
 少しでも自分で食べてもらいたかったものだから、
 ジャムとパンを食べてみたい、という言葉には
 ほっと息を吐いた。]


  全部半分ずつじゃ駄目かな?
  せめてパンと一緒に、
  そこの茶も飲んでやるといいよ。
  ぺんぎんが君のために見つけてきたやつだから。


[ 足元で、期待に満ちた眼差しで見上げている一羽を指さす。
 いつものような、緊張のない緩い笑顔は、
 以前よりは近く感じられもする。
 そんな表情の一つ一つに、
 呼吸が楽になるのを感じている自分がいる。

 視線が合う。
 何かまた赤くなっておかしな表情をしているけれど、
 わたし、何かしただろうか、
 そう思って首を傾げるけれど、
 そんな此方の表情は、常になく穏やかなものだっただろう。]
(306) 2020/05/24(Sun) 4:12:20

【人】 軍医 ルーク

[ 耳を差し出されれば、くすりと笑う。]


  ん、じゃあ遠慮なく?


[ わあ、これ本当に結ばれると思ってる。
 本人にしてみれば、笑いごとではないに違いない、
 耳を乱暴にされる痛みは、自分にも分かる。
 痛みに強いと言っても、こればかりは別だろう。
 
 言葉通りに遠慮なく手を伸ばし、赤く長い耳に触れる。
 予想通り――というか、
 予想よりもずっと柔らかくてふわふわなその耳に、
 そっと触れて、撫でた。
 壊れやすい大切なものに、そうするように。

 きっと、自分の指は以前のように冷たいだろうけれど、
 以前よりはほんの少し、温かみが灯っているような、
 そんな気もしている。
 暫くの間、黙ってそうして手で触れて、離した。]
(307) 2020/05/24(Sun) 4:14:16

【人】 軍医 ルーク

   じゃあ、これでさっきのはもういいよ。


[ そう言って、パンを半分にして差し出した。
 自分の分から少し分けて、ぺんぎんにもご相伴だ。
 基本的に燃料補給で動いているが、
 飴を食べるくらいだから、驚くほど此奴らは雑食である。
 スープの方も、半分にさせてくれるなら良いのだけれど、
 そうでなかったとしても、
 水よりも味がしないそれをひと匙ずつ大事に貰う。

 幸せそうにジャムを付けたパンを頬張る表情が
 見えていたものだから、
 それを見ていた自分も、
 きっと美味しそうに食べているように、
 出来ていたに違いない。]
(308) 2020/05/24(Sun) 4:16:24

【人】 軍医 ルーク

[ 食事が終わり、寝台の上に身体を起こしたまま、
 ごちそうさまでした、と挨拶一つ。
 そうして、先ほどスープを温めてもらっているときに、
 こっそりぺんぎんに持ってきてもらっていたものを、
 毛布の下から取り出した。
 赤い袋に入った、タブレット。]


  今日は最後まで書けなかった。
  いつもと違う時間だったから、
  書いてる途中で見張りに見つかって、
  怪しまれそうだったから、
  一度そのまま持って来たんだ。
  だから、途中なのだけれど――…
  ここで、読んでほしい。


[ 顔を上げ、真っ直ぐに彼を見る。
 “感情”のままに書き散らした、ひどく乱雑な記述は、
 もしかしたら、見るに堪えないものかもしれないけれど、
 紛れもない自分の本心だった。
 途切れて最後まで書けなかった続きを、伝えに来た。
 袋からタブレットを取り出し、手渡す。]
(310) 2020/05/24(Sun) 4:17:29

【人】 軍医 ルーク

[ 自分が気付いているのだということを、
 知ったことを、
 言葉にして話しはしなかった。

 先が見えないほどの困難が、
 行く先にはきっと待ち構えている。
 けれど、それをどうしようもないものだとは、
 もう、思いたくない。
 
 そうして、手渡したそれを、
 彼が読んでくれたとするなら、
 わたしは、書くことが出来なかった“続き”を、
 彼の目の前で、この指先で綴るのだ。

 ひとに比べれば書くのは早い方だけれど、
 もしかしたら、まどろっこしい形かもしれなくて。
 足取りのように、遅いものだけれど。
 急ぐ性格じゃあないと、言っていたから、>>1:233
 最後まで見ていてくれるに違いないと、そう信じて。]
(311) 2020/05/24(Sun) 4:18:40

【妖】 軍医 ルーク

 



   [ 中途で途切れた記述に、続きが記されてゆく。]
($18) 2020/05/24(Sun) 4:19:24

【妖】 軍医 ルーク



  わたしは、君の傍にいて、
  立ち向かわなければいけないものがあるなら、
  苦しみがあるなら、痛むなら、
  分けてほしいと、一緒に立ち向かわせてほしいと、
  そう願ってる。

  この手の届かないところで、苦しまないでほしい。
  遠くに行かないで。

 
($19) 2020/05/24(Sun) 4:19:58

【妖】 軍医 ルーク


  君が向けてくれる、笑顔だとか、
  怖がったり、驚いたり、怒ったり、
  そんなひとつひとつの表情が、
  止まってしまったはずの、わたしの胸の中にあって、
  いつの間にか、こんなにも、
  わたしのことを動かしていた。

  これに、なんていう名前を付けたらいいか、
  わたしには、わからないけれど。
  ううん、名前なんて、付けられない。

($20) 2020/05/24(Sun) 4:20:30

【妖】 軍医 ルーク

 


  これが、わたしの願い。
  わたしの心。



($21) 2020/05/24(Sun) 4:20:55

【人】 軍医 ルーク

[ そう綴ったなら、再び顔を上げ、向き直る。
 この全身を突き動かすような、
 押し流し、溢れるような、何か。
 いつしかそれは、硝子のようだった紫の目から溢れて、
 ぼろぼろと頬を伝う。

 床に足をつき、タブレットを枕元に置いて立ち上がる。
 少しだけ、時間はかかったけれど。
 自分の足で立っている。歩み寄る。
 涙を拭うこともせず、その赤い目を見上げた。

 真っ直ぐに伸べた両の手は、
 もう、届かないことを確かめるように
 空へ翳すためのものじゃない。 ]
(312) 2020/05/24(Sun) 4:22:21

【人】 軍医 ルーク



[ その両手で、
 強く、抱きしめた。
 離さないと、繋ぎ止めようと。

 ことばだけでは伝えられない心を、
 伝えるように。]*
(313) 2020/05/24(Sun) 4:23:44

【人】 軍医 ルーク


   ―― 
同日:司令室
 ――


[ 司令室から見える窓の外の景色は、外壁と天。
 その向こうに、大穴が覗く。
 外壁を見回る兵士たちのランタンの明かりがゆらめいて、
 彼らの無事を此処まで知らせる。]


  『――さて、
   そろそろ伏せられていた賽の目も
   明かされる頃、かな?』


[ これまでの襲撃の周期からして、
 次の降下まで、もうあまり間がない。
 それまでに果たして、あの兎の記憶は間に合うか。
 自分は“人材に恵まれている”>>39
 その真意とて、一枚ではない。
 質素な木の椅子にかけ、ゆるりと思考を重ねる。]
(314) 2020/05/24(Sun) 4:24:44

【人】 軍医 ルーク

[ 夜の静寂を、ばたばたと破る足音があった。
 追って来たらしい警備兵との廊下の問答を、
 自分から扉を開けて遮る。]


 『やあ、今日も夜更かしだねえ、ジルベール。
  ああ、彼女はいいんだ、
  技術班長でね、何か変わったことがあったら、
  いつでも此処に来てくれるように頼んでいる』


[ 警備兵にそう告げながら、
 駆け込んできた彼女の顔を見て、
 その表情からすっと笑みが消える。
 彼女は、回収された通信機を手に、
 勢い込んで口を開いた。]
(315) 2020/05/24(Sun) 4:26:07

【人】 軍医 ルーク

 


   “ 奴らの総攻撃が来る ”


**
(316) 2020/05/24(Sun) 4:26:29
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a27) 2020/05/24(Sun) 4:32:18