人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

入院して1周間くらい経った頃だろうか。
流石に寝るのにも飽きた男は、こっそり点滴を抜いて外に出た。
片腕が全く動かない上、肩から胴までギブスでガチガチに固められた状態では、着替えるのがほぼほぼ不可能なため、入院着にカーディガンを羽織っただけだ。
担当のナースに見つかれば間違いなく、青い顔をされた上で怒られるに違いない。

夢の中で名前を呼ばれた気がずっとしていたし、
悪夢を見続けるのにも飽きてしまって、外の空気に触れたいと……そう、思ったから。
病院の庭を散歩するくらいは許されたい。

「いたた……でも流石に早かったかな……」

点滴には痛み止めも含まれてるのだから、抜けば痛みが戻ってくるのは当然の話しだろう。
(-124) 2023/09/28(Thu) 22:38:37

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-133

「お土産?」

話を逸らすように聞き返せば、差し出されたのはテントウムシ。……の、キーホルダー。
聖母マリアの使い。幸運を呼び込み、病や災いごとなどの不幸を運び去ってくれるそれは、愛らしいデザインで確かに男性向けのものではない。
それでも、そこから伝わってくるのは気遣いと祈りが込められてるのがわかるから悪い気はしなかった。

「ありがとう。ごめん、もう少しこっち来て」

右手が動かないから、左手をそちらに伸ばして受け取った。
逆手では届かなくて、あなたにこっちに来て貰う形になっただろう。

「可愛いね、これ。
 あぁ……今はまだ殆たべられないからね……本は助かるな。
 毎日寝てるだけだと暇だし……ページがめくれるようになったら読みたいな。
 推理小説が好きなんだけど……、……ブックスタンドも欲しいかもしれない」

両手が使えぬと本も読めなかった。
(-138) 2023/09/28(Thu) 23:53:55

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-173

流石に歩くのがつらくなってきた散歩の最中。
中庭のベンチにでも座ろうかと視線を投げれば、何故か見知った男がベンチに寝ている。

「……いや、なんで?」

浮かんだ疑問は言葉になって呟かれ、きょとん、と小首を傾げた。
あの日のようなあどけなさのある寝顔は、何も警戒してないようにも見える。
部屋やホテルとは違うのに、なんとも無用心だ。

「誰かの見舞いにでも来たのかな……」

あの強制的な逮捕の裏で拷問などもあったらしいから、怪我人もきっと多いだろう。
部下を沢山もつマフィアは大変だな、なんて思いながら、連なる隣のベンチに腰を下ろした。
そろりと、動く方の左手を伸ばして。
柔らかな髪に触れてみる。

いつも気持ちよさそうに眠るから、起きないだろうなんて思いながら、その頭をゆっくり撫でて表情を緩めた。
暫く休憩したら、そっと立ち去ろうと思いながら。
(-174) 2023/09/29(Fri) 8:38:24

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-176

「うわ、起きた」

少し驚いたものだから、呻くような言葉が、思わず口をついてでてしまった。

「ごめん、気持ちよさそうに眠ってたからつい……」
「あー……えっと……」

あの騒動を引き起こしたのは、何もあなたのためだけではなかった。
まさかギリギリになってあなたまで捕まると思っていなかったし、自分に出来ることを友との約束を果たすためにやったことで。
彼らを釈放させるためにやったことで。
でも……、あなたが捕まったことでその必死さに拍車がかかったことまた、事実で。

騒動のことくらい情報通のあなたなら知ってそうなことなのにと、言い倦ねて、それからぽつり。

「…………代理逮捕の時の騒動の首謀者だったから…………かな……」

事実、あの時僕が死ねば、証拠を持つ問題で自体はややこしくなってたはずだ。
とはいえ、まさかあんな所にノッテのボスが潜んでいて援護射撃をしてくれるなどとは思ってもなかったのだが。

ともあれ、あなたとの約束を破って危険な行動にでたことは確かなので、申し訳無さそうに眉を下げた。
(-177) 2023/09/29(Fri) 8:57:19

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-193

「べ、つに。
 今はもう何も隠してないよ……入院したこと言わなかったのは悪いと思ってるけど……」

これは間違いなく、この人は自分に会いに来たのだと思った。
たまたまなんて反応ではなかったから、きっと、その情報網の広さでここに居ることを知ったのだろう。
でもそれなら、どうしてこんな所で寝ていたんだろう?
病室に来てくれたらいいのに、僕がここに散歩に来なければいつまでここに居たのかと、ちょっと心配になった。

そのままと言われたので左手でそのまま柔らかな髪を梳くように撫でながら、浮かべる表情は困惑した表情だ。

「代理を引きずり降ろそうとした結果、肩を撃たれましたとか、格好付かないし……」
「あ、洗いざらいって……あ、ねぇ……でもそれなら」
「キミになら何知られたって良いし聞かれたら答えるけど……それなら、僕にも教えてよ」
「キミのこと」

駄目かな? と、あなたの顔を覗き込んで問う。

僕は多分、知らないことがたくさんあるんだ。
今まで知ろうとしてこなかったマフィアの話とか。
幼い頃何を考えてたのかとか。
色々だ。
(-195) 2023/09/29(Fri) 17:15:41

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-197

「ほ、本気かい?」

本気でなかったらこんなところで寝ていない。
ここで見つけなかったら。
この後もずっと連絡をしなかったら。
……その先はちょっと想像したくない。

「はぁ……これからは後ろめたくてもちゃんと言う。
 だからこんな嫌がらせ無茶はやめてほしい」

重々しく息をついて、降参の白旗を上げた。
皮肉めいた言い方だが、流石にそれは後悔するどころではない。
あなたに風邪をひかせてまで守るプライドなんて、本当はないのだ。

「今、なに思い出したの?」
「そうだな……じゃあ、なんで子供の頃の夢はどうでもよくなったの。
 おじさんとおばさんを殺した犯人をもう追わないのはどうして?」

これを知らなきゃ、僕も調べる手が止められない。
男はまだ、あなたに幸を届ける方法がわからない。
(-199) 2023/09/29(Fri) 17:45:37

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-203 >>-204

「……そっち行って良い?」

あなたが起き上がってしまうと、寝転がってた分の距離が開いた。
あなたはきっと断らないだろうから、せめて同じベンチに座ろうと隣にすとんと腰を下ろした。

「黒眼鏡と何があったのか知らないけど……その口ぶりだと彼も脱獄したんだね。
 明確に罪状がでてるあの二人黒眼鏡とヴィンセンツィオの釈放は認められないはずだったんだけど」

まぁ、どうせそうなるだろうとは思っていた。
あの二人がそう大人しく捕まったままでいるわけがない。
二人が消えたら喪失感を覚えるのかということならば、やはり、上司の死を聞かされる方が喪失感はあるだろう。
喪失感から歪んでいった事を考えると、あなたの判断は正しいものだ。

(-214) 2023/09/29(Fri) 20:05:51

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-203 >>-204 >>-214

「えっと。つまり……」

話される言葉を噛み砕いて、理解する。
ずっと仲良しで優しい家族だったと思っていたあなたの家族は、実はそうではなかった。
そんな事すら知らなかった事が、少し恥ずかしい。
ただ、それよりも。
あなたの言葉を聞いていると、どうにもうずうずしてしまっていけない。
だって。

「……それって、全部……僕のため?」

だってそうだろう。
大学よりも、両親よりも、
自分を優先してくれてるように聞こえた。
なんなら、牢屋であんなに黒眼鏡や後輩との事に怒ったのも。
――全部。

あぁ、本当に僕は馬鹿で愚か者だったのだ、今まで、ずっと。

「…………。もう、そんな事望まない。
 キミがまた、依存してしまうようなら別だけど……大好きな場所から引き離すほど、聞き分けのない子供じゃないよ」

自分だって、今いる警察が
嫌いじゃない

嫌いな上司は沢山いるけれど、それ以上に大事な同僚たちがいるし、守りたいものを守る事くらいは出来るのだから。

「でも……やっぱりね。
 キミが誰かに捕まるくらいなら、僕が捕まえに行くつもり。
 マフィアのこともちゃんと知りたいし、好きな人が好いてる人の事くらいは知りたいから……会ってもいい人くらいは紹介してね」
(-215) 2023/09/29(Fri) 20:08:15

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-201

「いや、これも嬉しいよ。
 キミの気持ちが籠もってるしね」

手の中のキーホルダーをみつめて、表情を緩めた。
流石に持ち歩くには可愛すぎるから、家に帰れるようになったら飾っておこうと思う。

「あぁ、ブックスタンドと本の代金は払うから頼むよ。
 ここにいる間に何冊も読めてしまいそうだから、キミのおすすめも混ぜてくれて構わないし。
 格好いいかはわからないけど……トリックとか先に解けたらよし!ってなるでしょ」
「音声か……イヤホンつければ確かにここでも聞けるからいいかもね」

料理は確かにやってると手が離せないから、音で聞けるのはいいのかもしれない。
なるほどね、なんて言いながら相槌を打った。

それはそれとして……。

「あれで皆外に出れたと思うけど……皆無事かな。
 ここにいると、外のことが何もわからないんだ」
(-216) 2023/09/29(Fri) 20:21:05
エルヴィーノは、イレネオの電話を鳴らした。
(a21) 2023/09/29(Fri) 23:38:24

エルヴィーノは、イレネオに通話が繋がる事はない。
(a22) 2023/09/29(Fri) 23:39:50

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-257 >>-258

「違うの?
 それなら勘違いした僕が悪かったかな」

知らないことはたくさんあっても、その性格位はよく知っているつもりだった。
幼馴染が照れているのも、嘘をついているのもわかったけれど、その言葉を額面通りに受け取って、表情を緩めて笑う。
怪我のない左肩にあなたの頭が置かれれば、その頭を左手で柔らかく撫でた。

「……居ないの?
 血の掟は知ってるけど……あまり守られて無くない?」

これはあなたのことを言ってるわけではない。
事実、マフィアと関係を持っている知人が周りに多いのだが、男はその事をよく知らない。
あなたとの関係を外に漏らすことがなかったのは、掟に裁かれることがないようにと、勝手に配慮していたことだった。

(-282) 2023/09/30(Sat) 7:37:13

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

「…………逃げ切ってくれなきゃ、困るよ」


呟かれた言葉が、あなたの耳に入ったかはわからない。
男は本来、正義感なんていうものはあまり持ち合わせていない。
あなたを捕まえると豪語する理由は、たった一つだけ。

あなたを警察に渡す気はない。


ただ、それだけだった。

恋愛感情なんて、とうにない。
だけどその重い鎖が切れることも絶対にない。
すでにそんな感情は超越して、重く歪んでしまっている。

それでもはっきりと、僕はキミに愛していると告げることが出来る。
何だって出来る。
死ぬことだって別に怖くないのだ。
あなたに幸を与えられれば、それだけでいい。

これはだって、僕に出来る、最大の我儘なんだから。


花浅葱の瞳が、遠い異国で知られるダンダラのようだ。
そこに『忠愛の誠』が存在しているというのなら、
その相手は決して、警察へのものではなかった。
(-283) 2023/09/30(Sat) 7:40:36

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-304 >>-305 >>_4

「……ちゃんと気づいていればよかったな」

そうしたらこんなすれ違いなんて、最初からなかったろうに。
あの頃は純粋に幼馴染を慕っていたのだと思うけれど、重い感情に不快感を示すことなどきっとなかっただろうと思うし。

今思えば、初恋はラーラではなかったのだ。
ラーラを好きになって、想いを告げた日。
「私はルチアーノが好き」だと言われ抱いたのは、ラーラに対する嫉妬心だった。
ラーラに振られることよりも、ルチアーノを取られる事が、嫌だった。
それは友情の域をゆうに超えていると指摘できるほどに。

「ふぅん。
 そういえばルチアはまだ血の掟は結んでないんだったね」

それをきちんと守って初めて上に上がれるというのなら、本当は自分たちは会わないほうが良いんだろう。
でもそんな事、出来ないよ。
もう疎遠だった頃みたいには戻れない。
あなたがずっと無事であるように手を回して、見守っていたいと思っている。
あなたの心が、悪いものに囚われてしまわないように。

(-310) 2023/09/30(Sat) 15:52:35

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-304 >>-305 >>_4 >>-310

「なにそれ、わかってるよ」

あなたがマフィアであることは、ちゃんと。

でもこの時、まだわかってなかったんだ。
あなたの愛の重さもまた、とっくに歪んでしまっていたんだって。
すれ違った重すぎる心は時に、鋭い刃になって互いを傷つけ合う。

けれども。
その原因を作ってしまったのは、紛れもなく、何も知らなかった愚かな自分だ。

(-311) 2023/09/30(Sat) 15:53:43
エルヴィーノは、不思議そうにその紙袋を見た。
(a30) 2023/09/30(Sat) 15:54:07

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

>>-304 >>-305 >>_4 >>-310 >>-311

「見舞い……?」

冷たい風が、互いの髪を揺らした。
手渡された小さな包をしげしげと見つめて、「あけても良い?」と聞いてみる。

駄目だなんて言われることはないから、左手で苦心しながら包を開いてみれば、そこには――――――

壊れた、丸い眼鏡。
レンズが片方割れてしまっていて、それが新品の物でないことは誰にだってわかる。

ヒュ……

乾いた息を吸った。
吸ったけれど、まるで酸素が入ってきていない、気がする。

だって、脳裏に浮かんだのはあの。
ギラギラと輝いた、金の瞳で。


「な……で……。
 これ、は……っ、どうし、」


目の前に居る幼馴染は、マフィアだ。
聞かずとも何が起きたかなんて――――――
わかってしまう


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」 
(_5) 2023/09/30(Sat) 15:58:20
エルヴィーノは、が上げたその慟哭は真昼の庭に響いた。
(a31) 2023/09/30(Sat) 15:58:36

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

あなたは騒動の後、署に出向く機会がいくらかあっただろうか。
それともあなたの友から話を聞く機会があっただろうか。

いずれにせよ、あなたが教育係を務めたひとつ下の後輩が、銃に倒れ入院しているとの知らせだ。
怪我の詳細は肩関節損傷、鎖骨下動脈損傷。
噴水のように吹き上がった赤い鮮血は、その場に居合わせた警官が圧迫止血を施し命をとりとめたらしい。
あの日仰いだ協力の約束。
その仕事の最中、署長代理逮捕の大金星との引き換えにしては大きすぎる代償だ。

あなたがその病室を訪れるのはいつ頃だろう。
1週間以内の事ならば、ベッドの上の男はあなたににこやかな笑みを浮かべて迎えるはずだが―――――
(-312) 2023/09/30(Sat) 16:19:35

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-331

「……!?」

慣れぬ左手でスマホの操作をしていたときだろうか。
急に不器用に扉を開く音が部屋に響いて、びくりと肩を震わせた。

「誰かと思ったら……。
 先輩こそ、僕とそう変わらない大怪我に見えますよ」

一週間がもうすぐすぎるとはいえ、未だ何本もの点滴を受けながらベッドで過ごす身の上としては、話し相手になってくれる人が来るのは喜ばしい。
リハビリは早い方がいいというから、明日にはおそらく始まるのだろうが。
なにせ暇なのだ。
寝るだけの日々というのは。

「良いんですよ。
 先輩は先輩の仕事をしていたんでしょう?」
「それで十分です。けど、その傷は……何があったんですか」

確かにあなたが居ればこの怪我は負わなかったかもしれない。
それでもこの傷はあなたのせいではない。
自分への不幸ならば、このように考えることが出来るのに他人の不幸はそう考えることができない。
男の思考は何処か歪だ。
(-337) 2023/09/30(Sat) 19:33:49

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-339

「デート、ですか。
 まぁ良いですけどね、相手は美人でした?」

あなたが【A.C.A】の人間だったことは聞いている。
それでも男はあなたへの態度を変える気はなく、今もたったひとりの先輩だと思っていた。
そのあなたがデートだと言ってはぐらかすならば、それは詳しく聞かないほうが良いということなんだろう。

それでも怪我の方については、明らかに嘘だとわかってしまった。
そんな、笑顔で心配させまいとする下手くそな嘘だ。
デート相手よりも気になる事だったけれど、そう言われるとやっぱり、あまり追求はできない。

「それはあまりにも不用心が過ぎるでしょう……。
 言いたくないってことなら、深く聞かないことにしますけど……もう少し後輩にも心配させてくださいよ」

男は何も知らない。
あなたと同じように、自分が教育係を務めた後輩がその怪我を負わせたこと。
行方不明となって、その捜査も手打ちになってしまっていること。
その他も、全部だ。
(-341) 2023/09/30(Sat) 20:04:04

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-345

「デートついでに病院まで連れて行ってもらったらいいんですよ、先輩は」

まさか本当にそうなってたとは、流石に思ってないが。
それでも手当をされている様子を見れば、病院に一度は行ったのだろうからとりあえずは及第点だろう。

「そういう事にしておいてあげますよ。
 僕の周りは皆すぐ無茶をする人ばかりだ……あ、そういえば先輩、イレネオ知りませんか。
 連絡が取れないんですけど……アイツ、釈放ちゃんとされてますか?」

勿論正直に答えなくて良い。
答えるべきではない質問だ。
ただそれでも、それを知らぬ愚かな男は、可愛い後輩を純粋に心配をしていただけ。

「……先輩?」

どこか遠くを見ているようなあなたに気づいて、ベッドに寝かされたまま不思議そうに、その顔を見上げた。
(-348) 2023/09/30(Sat) 20:56:00

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

>>_6

「むり。……嫌だ。行かないで」

何処にも行けないから、
頼むから、今僕をひとりにしないで。

胸にぎゅっとその眼鏡を抱いて、頭を振った。
すがるように伸ばした左手は、あなたの袖をぎゅっと掴んでいる。
事実、痛み止めが切れた肩が悲鳴を上げるかのように痛んで、顔色も青白く死にそうな顔をしている。

けれど。

「……どうして……」
「イレネオは殺されたの……?」


震える声が、それを問う。

あなたがこれを持ってきた。
それは、マフィアかそれに関係する何かによって彼は殺されたということ。
あなたはその死を見届け、正しく処理をしたということだ。
だったら、その死の原因をあなたは知っているはずで……。

僕は、それを知らなきゃいけないはずで――――
(_7) 2023/09/30(Sat) 21:13:22

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-350

「え……本当に連れて行ってもらったんですか」

埋め合わせと言うくらいだから本当にそうだということだ。
冗談のつもりだったのに。
誰だか知らないが、相手の女性に少しだけ同情してしまった。他意はない。

「そうですか……。
 携帯にかけてるんですけど、繋がらなくて。
 ……まぁ、いいです彼も忙しいんだろうし……って、ええ?
警察やめた?


どうして、という言葉はあなたの笑顔に封殺されてしまっただろうか。
なんとなくだけど、答えてくれる気がしない。
答えてくれたとしても、それもまた、はぐらかされたような答えに違いない。

「僕のは運が悪かっただけで……。
 まぁ、死にかけたのは確かですけど…………」

あなたより傷は少ないけれど、この一つの傷が致命傷になりかけた。
それは本当だ。
けれども、僕は。
僕はあなたの後輩だから。

「でも」
「それブーメランですからね」

僕だって、心配するんですよ。
ねぇ? 先輩。
(-355) 2023/09/30(Sat) 21:59:49

【人】 花浅葱 エルヴィーノ

ゆっくり、上がる。
病院の階段を、一歩ずつ。

それはまるで天国へ続く道のようで、あの屋上への扉を開いたら、あなたが居そうで。

ルチアーノと別れ病室に戻された時は満身創痍だった。
絶対安静の人間が、受けるべき点滴を受けずに外に居たのだから、ナースも医者も皆が青い顔をしていたのは仕方のない話だ。
すぐにまた点滴に繋がれ、青白い顔に生気が戻ってくるのにまた数日を要したに違いない。

歩けるようになって、リハビリを始めた。
手先はなんとなく動くようになったけれど、肘を動かそうとすると痛みが響いて動かない。
砕かれた肩はミリも動かせる気がしない。

本当は、ベッドの上にいるのが一番楽だけど、今はすごく屋上に行きたかった。
金色に輝く太陽の下、広がる青い空を見たい。

だって。

寂しいんだ。
心に空いた穴はルチアが埋めてくれるけど、ずたずたになった心臓が今も血を流しているから。

#BelColletto
(98) 2023/09/30(Sat) 23:13:14

【人】 花浅葱 エルヴィーノ

「やっとついた」

白く輝く扉を開いて外に出れば、涼しい風が男の髪を柔らかく揺らした。
ゆっくり、一歩ずつ前に進んで、
柵に手をかけたらもうだめで、ずるずるとその場に膝を折って座り込む。

身体の辛さよりも、今は、心の震えが止まらないのが酷くつらい。

手の中にあるたった一つだけの贈り物を見つめて、

……ぱた。
ぱたり。


静かに雨が頬を伝った。

「……忠犬は、主を待ち続けるものだろう?」

「な……んで、キミが先に、僕を置いていくの」

僕がもっと、あなたの手綱をしっかり握ってたならこんなことにはきっと、ならなかった。
僕がちゃんと、あなたがしている事を知っていたなら、あなたの頬を打ってでもそれを止めていた。
僕が撃たれてなんてなかったら、あなたを助けに行ったのに。

――知らないことは、罪だ。

だからこれは、全部僕のせい


#BelColletto
(99) 2023/09/30(Sat) 23:14:13

【人】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ

「……レオ……」


あの日約束したその名を呼ぶ。

「レオ………ッ」

何度も、何度だって、その名を呼ぶ。
天国への道を閉ざす、格子の前で。

「約束、守って……る、だろ」
「なのになんで、応えてくれない……っ」

だけどそこに、あなたは居ないのだ。
今更、その首輪を外されても、僕はもう上手く歩けそうにない。

#BelColletto
(100) 2023/09/30(Sat) 23:15:34

【魂】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ

>>_8 >>_9

「そう……だね」

僕は
確かに運がいい

ルチアーノが居なければ、遺品の一つ手に入らなかった。
死体は決して見つからず、最後は行方不明で処理されてしまうかもしれない。
死亡したという事実が知れただけ、僕にとってはきっと幸せなことなのだ。

「うん……。
 きっと間違えたんだ……」

じゃなきゃ、あの真面目な、真っ直ぐな人がこんな事になるわけがない。

心に巣食う自責の念はまだ小さい。
それはこうして抱きしめてくれる腕が、優しい声が食い止めてくれているかのようで、心地いい。
がらがらと心が崩れていく。

僕が。
僕が何も見ず、あなたの声だけ聞いてあなたの傍にある事が、あなたの幸だというのなら。
僕はもう、きっと他の誰かを見ることはない。
信じるものは、ひとつキミだけ。

「ルチア……。ルチア……!
 ごめんね。でも、ルチアが外に出れて、本当によかった……」

だからずっと、強く抱いていて。
僕はもう絶対、その心ごと、キミの傍を離れないから。
(_10) 2023/10/01(Sun) 6:54:49

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「……心配? 大丈夫、ルチアが良いって言うまでここにいるよ」

入院は思ってたよりも長期間に及んだ。
元々一人暮らしをしていた関係上、関節の損傷という怪我の具合もあったが、加えて動脈をやられていたことと、精神も病んでいると診断されたことが理由として大きかったようだ。
本人は早く退院したかったが、幼馴染が最大限病院を利用しろと言うので素直に従ったらしい。

容態が安定してからは精神的な病気の方が厄介で、男はとにかく眠らないと、病院関係者も頭を悩ませていた。
幼馴染が来てくれた時だけはぐっすり眠れているのも確認されていて、薬が効かないから助かると思われていたに違いない。
また、同期の二人や先輩も時々顔を見せてくれていたから、病院で問題行動を起こす……なんてことは起こらないから、扱いやすいおとなしい患者の一人であったことは間違いない。

ただ。
たったひとつの、行動を除いては――――――――


#VerdeMare
(_11) 2023/10/01(Sun) 19:47:07

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「ねぇ、ルチア。お願い」

首を噛んでほしい首輪をかけてほしい
そう言い出したのは、首についていた歯型の痕がなくなってしまった日のことだ。
幼馴染には勿論そんな趣味はない。
しないと自分で首を爪で傷つけるから、1・2回はそのお願いを聞いたかもしれないが、その後は犬用の首輪がついた。
病院の方々はさぞ不審がったに違いない。
診察の際に「人間関係を整理しては」と遠回しに幼馴染と別れることを勧めた医師もいたことだろう。
時間が経てばそういう発作みたいな衝動も少なくなってきて、首輪はチョーカーとなり、いつしかネックレスなりアクセサリーを首につけていれば安心できるようになっていた。
けれど最初の時の、あのルチアの悲しそうな顔が忘れられない。
悲しくなって、ごめんねと言って頭を何度も撫でたのを、よく覚えている。

この頃には、いつだったか。
僕が二人目に好きになった人
だったラーラが亡くなっていた。
薬の処方ミスがあったらしい。
不運なことだが、彼女には身よりもいなくて訴える人間も居ない。
あしながおじさんを続けていたけれど、その必要もなくなってしまった。
その知らせを聞いた時はまた精神的に危うくなったけれど、この時もまた、幼馴染が傍についててくれたから無事だった。

#VerdeMare
(_12) 2023/10/01(Sun) 19:48:07

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

月日は巡る。
リハビリを経て職場復帰を果たすころには、約2年の月日が経とうとしていて。
表面上はもう、以前と変わらなぬ笑みを浮かべ仕事に取り掛かることができていた。

だが、内面はどうだっただろうか……?


海風が薫る砂浜でひとり、遠くに輝くシーグリーンキミの瞳を見つめていた。

幼馴染ルチアは、僕を大事にしてくれる。
それはすごく、嬉しいことで、幸せなことだ。
あなたが笑ってくれるから、僕は隣で穏やかであればいい。

でも、時々すごく、寂しくなる。
ルチアは、僕を決して抱いてはくれないし、抱かせてもくれない。
愛してると告げてみても、そうだなと笑うだけ。

別に、いいのに。
僕はもう、キミだけしか見てないのに。
悲しませたくはないから、絶対に気持ちを返してほしいなんて思わないのに。
一度抱き潰された体が疼くから、沈めてほしくて。

#VerdeMare
(_13) 2023/10/01(Sun) 19:50:11

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

だけどそれならと、適当な人の腕をつかもうとしたら怒るから、それはせずに首輪をつけるんだ。
あなたが訪れてくれるのを待つ、忠実な犬のように。

僕は――――

もし死に方を選べるなら、
キミに殺されるのが一番いいよ。ルチア。
キミが我慢できなくなったなら。
キミが死んでしまうその前に。
僕を優しく抱いて殺してね。


指先からこぼれる愛を集めて、全部キミにあげるよ。

僕は最期まで、キミの笑った顔が、見たいから。

#VerdeMare
(_14) 2023/10/01(Sun) 19:50:49

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「やぁ、はじめまして、おちびさん。
 わぁ、思った通りすごく良いね、毛並みもふわふわだ」

ある日。
腕におちびさんを抱いて、嬉しそうに笑う男が一人。付き添い一人。
医師に動物を飼う事による精神治療と生活改善を更に進めてみてはどうだろうかと勧められたから、ペットを飼うことにしたのだ。
ペットはゴールデンレトリバーの子犬。
大型犬のほうが落ち着いていて気性が優しいから、おすすめ出来ると言われたのもあるが、なんとなく、この子犬に一目惚れをしたのだ。
尻尾を振って甘える仕草が、とても可愛かったから。

「キミのお陰で、部屋も随分変わったよ。
 あ、こっちのお兄さんはルチア。よく家に来る人だから覚えようね」

犬を飼うと決めてから、同期の……特にアリーチェが犬用のグッズを買っては差し入れしてくれる。
今では子犬用のグッズで部屋が彩られ、生活感のなかった寂しい部屋が嘘のように変わっていった。
いつかは庭付きの部屋に引っ越して、外でいつでも遊べるようにしてあげたいとも思っている。

#VerdeMare
(_15) 2023/10/01(Sun) 19:52:11

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「え、名前?」
「勿論決まってるよ。
 ……というより、それしか浮かばなくて」

名前を問われ、子犬に舐められくすぐったそうにしていた顔を上げて、男は頷いた。
抱いた子犬をじっと見つめ、気に入ってくれるかなと頬を緩め。
もったいぶるような間を取って、口を開く。

日に当たればきらきら輝く金の毛並みだから、それは勿論。

「キミの名前は今日から
”レオ”
だよ」

想いに想いを重ねて、僕は今日を生きる。
こぼれ落ちた愛は、全部集まったかな。

忠犬さん。
どうか僕が死ぬ殺されるその日まで、ずっと傍に居てね。

#VerdeMare
(_16) 2023/10/01(Sun) 19:52:58
 


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