人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 幕の中で イレネオ

――治療。と。
聞いて女がまず感じたのは、今まさに感じる自分の肩の痛みだった。

「……。」

ざわと粟立つような思考を鎮める。
笑って。隠して。悟られず。ずっとそうしてきたように。
あは、と声。
笑っている間は堪えられる。だから女は、まだ囀る。
女にはそれしかないだけで、決して余裕を誇示するつもりはなかったが。きっと、それは、皮肉と呼べる。


「ふふ。いいえぇ。」
「気になっただけですけどお。」

「それにしても」
「決めつけるんですねえ、庇い合い…。」
「取締法、そんなに信用できますかあ?おもしろおい。」
「あたしが自首するまで、あたしのことも捕まえられなかったくせにい」

「こんなことなら、自首なんかしないでもっと引っ掻き回せばよかったあ。」

くす。
きっと女の目論見は、大半にして成功していた。
聞かれたくないことには答えず、この法案がどれだけ
悪用
しやすいかを説く。
あとはこの笑顔を絶やさず堪えるだけ。頭のおかしな愉快犯が、単独でこれを行ったのだ。



女は笑う。笑う。笑い続ける。
何があろうと、仮令――その大事なマリーゴールドが、摘み取られようと。
(-36) 2023/09/27(Wed) 21:00:23

【独】 摘まれた花 ダニエラ

果てなどないと思えるほど長い長い尋問の時間が、終わり。
ようやく牢獄に戻された女は、著しく消耗していた。

殴打の痕目立つ腫れた頬。
きっと衣服の下、見えない部分にもいくらもの痕がある。
外れた肩も治療こそされたもののまだ鈍く痛んだ。
ただ横たわることすら苦痛の中、女の頭の中はひとつのことでいっぱいだ。
それでも、考えないようにしているつもりだったのに。
大切な、ふたりの約束の証。


「……ぅ…」

熱くなった目頭から零れるものを堪えようとしたがそう上手くはいかなかった。
ひとつふたつと目尻から流れ落ちて髪を濡らす。
だけど我が身可愛さにただ黙っていることだけはできなかった。
こんな腐った法案なんかさっさと壊れてしまえ。
…あの様子では、その一助にすらなれたかすら怪しいものだ。
しかしその尋問のさなかだったこともあり、法案の出資者とされる人物の正体を今の女が知らないことは、不幸中の幸いといえた。


もうひとつ幸いがあるとするなら、
1番守りたい情報たちだけは守り抜くことができたことだ。
あとは多少騒々しさのある署内の様子に、
『祭り』の成功を感じとることができたなら、それも。
それにしたってやっぱり気分は最悪で、
その中でも見つけられる小さな安心に縋っているだけだ。こんなのは。
(-100) 2023/09/28(Thu) 18:20:54

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-102

頬つけた床を通して、足音が聞こえる。
その足音が牢の前で止まった時、女はその視線だけをそちらへ向けた。

乱視の眼鏡は歪んでしまっては掛けるだけ無駄で。
ぼやけた視界で茶色の髪を一瞥すれば、
その視界でその瞳の色まで判別なんてできるはずもなく
またぼんやりと視線を虚空に移していく。
…もしかして、またあそこに戻されるのだろうか。
ほんの一瞬そう過ったのは否めない。それだけ好き勝手いったしな、という納得だってそこにはあった。

だから、少しの間無音が続いたのには些か不審を抱いた。
もう一度、視線を向ける。こちらの方から声をかけてやろうかとすら思った頃だ。

視線だけでなく、顔ごとそちらへ向く。
言葉の中身自体は、本当に何一つ頭の中に入ってこなかった。
ただ聞き間違えるはずはないって。それだけ。


「……っ」

がばと起こそうとした身体は軋んであまりいうことを聞かなかった。
それでもその努力くらいはしようとして。

「…………ミネぇ…」

その言葉で決壊した。涙が流れたあとにじんと沁みる。

――迎えに来てくれた。本当に。
だけど、それがどういう意味を含んでいるか過ぎらない女でもなかった。
ただ、今この瞬間はそれより安堵の方がずっとずっと上回っただけで。
(-104) 2023/09/28(Thu) 20:02:17

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-109

ひらり、ぱさりと冷たい床に白い紙。
身体は痛いし指先に力は入らないしで散々だ。散々だけれど、今は全く最悪なんかじゃなかった。

「…うー。だいじょ、…」 
大丈夫じゃないけど。

「だいじょおぶう……」  
今は、大丈夫。


落ちる涙の隙間からそれだけをいう。
空気が触れるだけで痛み続ける指先だったけれど、単純にもその唇が触れたあとには少し痛みが引いたような錯覚さえした。

「…ん
。」

頷いた眼前。茶色の髪の下に咲くようなライムグリーンが映る。
約束のあかしがなくなっても、今はそれだけでよかった。
こうして本当に、傍にいてくれているんだから。

自分の手で拭えない涙をあなたが拭う。
そんな中、冷静になるのは状況の割に早かったように思う。
少しずつ、自分が本当に
警察のお姉さん
でなくなったのだという自覚も湧き始めていた。


「…ええ、と、」

追いついてくる。現実に。
まだまだ、それくらいじゃ追いつけていないことなど今の女が知る由もない。


「…護送、ですかあ。」
「わかりましたあ、よろしくお願いしますう」

そう笑う。本当の笑顔に、作り物の笑顔をかぶせて。
(-128) 2023/09/28(Thu) 22:44:26

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-131 >>-132

痛む身体を引き摺り、足取り重く。
それでも可能な限りしっかりと歩いた。
少し小柄な茶髪の後ろ姿にライムグリーンを重ねる。
それで、一瞬揺らいだ心を落ち着ける。

エリーの心などがもっと?


警察に潜入して2年。
あなたに会うのは殆どがあのモーテルだった。
だからではないが、多分女は知らなかったのだと思う。
乗り込んだ車。あなたの運転技術。
文字通りの痛い思いをした。…いやまあ、ちょっと響いたくらい。
「おー…。」なんて間の抜けた声も上がったと思う。別に怖くないわけではなかったはずだが。

「…ありがとお。」

運転手が変わり、一頻りの手当が終わるとだいぶ楽になった。
そうしてやっとへにゃと笑って、「ただいまあ。」って。

ともすればあなたの言葉を聞き終わるまでもなくやおらにその身体へとしなだれかかったかもしれない。
…決して聞いていないわけではないのだ。
ただそうしながら聞かないとまた不安な心地がしてしまっただけで。
(-140) 2023/09/29(Fri) 0:17:42

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ

>>-131 >>-132 >>-140

何度か相槌をうち、一区切りのついた頃。
少し揺れる目が甘えるようにあなたを映した。
身体をゆっくり反転させると、首筋へときゅうと抱き着いた。
手探りの右手で、茶色のウィッグを一度むしり取る。

「……。」

少し身体が震えていた。回す腕からそれは簡単に伝わっただろう。
あの夜から先、ずっと我慢をしていたのだ。
そうやって我慢するのは得意だけれど、そこにあなたがいるのに我慢する理由が今どこにもない。

「あの…ねえ。」

そう口を開くのにも少しばかり時間をかけた。

やっぱり、もお、置いてったら、やだあ……


子どもが大人の顔して背伸びして呑み込んだ、…そのはずのものを吐き出して。
身体と一緒で震えた声がそう紡ぐ。
そうやって今はすり減った分を取り戻さねばならなかった。
その先にある不安に、きっと備えようとしていたのだ。
(-141) 2023/09/29(Fri) 0:18:30

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ

>>-143

背から髪、耳、頬へ。
流れる指先に、くすぐったそうに身じろいで。
邪魔だなんて言い方は、ひと仕事した茶色髪に本当に悪いのだけれど、やっぱりこの鮮やかな色が女は好きで、好きで。

―――うん。


殆ど音だけで頷いて、微かな距離すら埋めていく。
欲しがり屋さんのお姫様が、その瞳を見て堪えれるはずもなかったのだ。
啄むように、1度2度。…後はもう、満足いくまで深くまで。
寂しかった分。怖かった分。そして、今の不安を塗り潰す分。

既に知っていること。察したこと。
潜入任務は完全に終わりになったこと。
脱獄は自分が手を貸せずとも成功したこと。
その上でなにか良くないことが起きたのだということ。
そしてそれが、あなた若しくはアレッサンドロ・ルカーニアに関わる何かであるということ。

それかもう、それすら関係ないくらいの世界の終焉か。
これすら絶妙に間違いでないのはきっと最終的に幸いすることになる。



いづれその覚悟ができた頃。
ゆっくりと顔を離して女は訊ねることとなる。

「…ミネ。」
「何があったか。聞かせて」

含んだ緊張の分、声が強ばった。
(-170) 2023/09/29(Fri) 7:02:07

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ

最後に触れた唇と。呼ばれたその名前と。
多分それで本当に、心の準備は整ったのだと思う。
そうやって、ふしぎなくらい凪いでいた。

聞こえる言葉に背筋が粟立つ。
報告書の内容はすんなり頭へと入ってきた。

「そっか。」

無感動な声。
多分今まで聞いたことがないくらい冷ややかな。
それでいて、その口元だけは歪に
笑んでいる



「……ミネ」

しずかな声で促す。

「聞かせて。」


報告書を持つ手だけが不自然に震え。
合わせて紙がぱさぱさと揺れる音。
そうしてライムグリーンを視界に入れた女は笑い直す。
笑うのは得意だ。そしてそうしなければならないときは往々にして存在している。
今みたいに。
(-221) 2023/09/29(Fri) 20:54:24

【影】 摘まれた花 ダニエラ

…コーヒー豆の、香りがした。
ああそっか。
あの人は最初から、許してもらおうなんて思っていなかったんだ。
一番最初に腑に落ちたのはそのことだ。

――いってらっしゃい。幼子の声。
その後数日顔を合わせることもなく母は死んだ。
…同じかもしれない。ずっと同じように時が過ぎるなんてことないって知っていたつもりだったのに。
ばかだなあ。ほんとうにばか。
(&0) 2023/09/29(Fri) 20:54:48

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

「……うん」

震えた手と震えた手が重なる。
目を伏せた女はその手を持ち上げ、あなたの手に口付けた。

語る間、相槌を続ける。檻の中の言葉。預けられた荷物。
…事前に計画され準備は済んでいた。それは女の方が、きっとよく分かっていた。

「…うん」

そしてファミリーが彼を追うことだって。
面子にかけて逃がすわけにはいかないことだって。
頭の中で分かりきっていたことひとつずつ、言葉にされて形になって。

「………………うん。」

だから、そうやって。
ただ聞き分けのいい子供みたいに頷いて。

「…あたしは、」
(-244) 2023/09/29(Fri) 23:34:45

【影】 摘まれた花 ダニエラ

檻の中の言葉。渡された荷物。コーヒーの香りする紙片1枚。
…答えは出ているはずだった。
彼が自分を、どう思っていたかは知らないけれど。

…少なくとも。
(&1) 2023/09/29(Fri) 23:35:31

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

「……。」

言いかけた言葉を止めたミントブルーがあなたを映す。
それを口にする勇気のない意気地無しだった。
そうやって、やっぱり受け取ってばっかりだった。
そんな数年が、こういうときに、返ってくる。


「…言えるかな。」

そんなだから、あまり自信はなかった。
それが必要なことなのかも、全然判断できなかった。
ただ何が起きても隣にあなたがいてくれるなら。…逆にいえば、それしか確かなものはここになかった。


「…………
いく



それでも。
そうやって頷いたのは。
ずっと聞きたかったことが、ひとつだけあったのを、思い出したから。
(-245) 2023/09/29(Fri) 23:36:21

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

…一緒に。
うん、とまた頷いた。

でも。言って、どうするんだろう。
それで、何か変わるんだろうか。
そう湧くのは女の場合、仕方がないことだった。
突然の喪失ならばとっくに識っていた。
それだって乗り越えてがまんしてきたはずだった。


だからこの場合、信じたのはやはりあなたの言葉だったように思う。
手当のされたこの手に直接口付けが触れずとも、そこには熱がともるようではあったから、それだけをただ、頼りにしていたのだと思う。

手招きに応じて、敷かれた毛布の上へ。
ぺたりと座り込んで、あなたへ手を伸ばす。
やけに控えめな甘え方だった。それでもそうできたのは、きっと幸なことだった。
横たわって、目を閉じる。いつものようにすぐに眠れそうにはない。
瞼の裏には、ずっと同じ人の顔が流れていた。
幼子が、いつだって心の中にいる。
でもその幼子は、『 』に甘えることだけが本当に下手くそだった。
(-286) 2023/09/30(Sat) 8:49:53

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

いつかと同じ『子守歌Ninna Nanna』。
身動ぐように身体を寄せた。その身体は震えてもいなかった。
それでもやはり寝息となるには些か時間はかかっただろう。
一緒にハーモニカの音色を思い出せば、まるで、自分のやってきたことが返ってきたようですらあった。

…いづれ、女は夢に落ちる。
そのとき見た夢が幸せな夢だったのか不幸な夢だったのか、後になっても思い出すことはない。
呻くような寝言が誰かのことを呼んだ。
Madre.と。

あとはずっと静かなものだ。
あなたが女を起こすまで、女が目覚めることはなかっただろう。
(-338) 2023/09/30(Sat) 19:46:12

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-372

目覚めてから車に揺られている間も、女はあなたの傍を離れようとしなかった。
どうして港なんだろう。
アジトに置き去りにした荷物のことを思うと、余計な期待をしないでもなかった。
しかし、まあきっと違うだろうなとどこかでそう感じてもいる。だからこれは余計な期待なのだ。


一度の仮眠を経て頭はだいぶスッキリとしている。
スッキリとしたからこそ、これからの意味を考え始めていた。
こんなに慌てなくたって、案外何とかなる我慢できると思い始めている。
檻の中のあの人に、自分が向けた言葉も思い出していた。
…あの人はあの時、本当に正直だったんだなと今なら思える。
それがこんなに早く来たことに勝手に傷ついているのはきっと自分が悪いと、納得する我慢できるだけの準備すら整っていた。
多分、このときには感じていた『不安』の意味が変わっていたのだと思う。
ずっとずっと、浮かぶのは、こんなことしてどうするんだろうって逃げるみたいな思考だったから。
…それが逃げだと自覚もある分、やっぱり損をしているのかもしれないけど。


「…。」

女は静かだった。目的地に着くまで、本当に静かなものだった。
それでいてずっと、意味を考えていた。
そんなものなく博打に出たってよかったけれど、博打には最近負けたばかりだから尚更に。

聞きたいことじゃなくて、████ことにしてしまったらどうだろう。
それに至ったのはきっと、車が目的地に到着する、本当にぎりぎりのことだった。
(-374) 2023/10/01(Sun) 5:48:38

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-403 >>-404

ことり、と。
窺うような表情に、女は首を傾ける。

「…んー。」
「……んー…。」

言葉を受けて、少しして。
えへ…と力なく笑った。
作り笑顔にしては下手くそすぎるそれは、きっと
いつもの
と少し違う。

「ミネはあ。」
「ふふ。あたしを甘やかすのがあ、じょおず」

額をこつんと、あなたに寄せて。

「…あんねえ。…あたし」
「こわいんだあ。」

甘やかな声。

「お母さんみたいに」
「アレッサンドロさん、いなくなるんだあって」
「…でも」

「ずっと、勝手な上司さんだったしい」
「今更だなあって思うのも、あってねえ」

重ねた手が僅かに、ぴくんと震えた。
(-410) 2023/10/01(Sun) 19:17:20

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-403 >>-404 >>-410

「だから」
「今1番こわいのは、そのことじゃなくて、ねえ」

ゆっくり、手を返して。握り返す。

「…聞きたいこと、あるんだけどお」
「間に合わなかったり、いやな返事きたら、いやだなあって」
「……そんだけえ。」

ゆっくりと、額を離して。
またへにゃりと。そして。

「だからあ」
「もしそおなったら、…ミーネ」

もう一度。甘えた声。

「いっぱい、いっぱい」
「慰めてねえ。」

困ったような笑顔と一緒に。
…やだなあ。逃げないのって。本当に、やだ。
(-411) 2023/10/01(Sun) 19:18:14

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-412 >>-413 >>-416

は、と短い息を吐き。
色んな物が遺っているのに、
何もなくなった
その港で。

「…ミネ……」

ぱちくりと、その大きな声に瞬いて。
あはは、と笑う。…気持ちだけなら、ものすごくよく分かって。

だけど、やっぱり。
我慢とはまた別の話で、同じような文句は出なかった。
そういう人だと分かっていたから。
それを呑み込めてしまうくらいに、聡かったから。

そんな時、ドローンの照らした地面に何か光るものを見た。
見覚えのあるものに、見慣れないものがついている。
…その見慣れないものすら見覚えがあるものだから、また笑えてしまって。

「はーあ。」
「本当に、あの人はあ……」

徐にそれを拾い上げた女は、海に向かって大きく放った。
そうして大きく、息を吸う。
(-418) 2023/10/01(Sun) 20:13:34

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-412 >>-413 >>-416 >>-418


「忘れ物、ですよおー!」


「…あげたものくらい、大事にしてくださいよお」
「……ほんとおに」



それは大きく放物線を描いて。
ぽちゃん、と。波の間に落ちて見えなくなった。

…まったく。最後の最後まで、結局文句を言わせるんだ。あの人は。
そういう人だった。知っていた。
それでも、本当に、大好きな人だっただけ。


何も見えなくなった昏い海を見守る。
へたり、と女はその場に座り込んだ。
いつの間にかその頬に、また涙が伝う。
暫くの間そうやって、いつかみたいに、その空と海を見つめていた。
(-419) 2023/10/01(Sun) 20:14:35

【人】 摘まれた花 ダニエラ

>>135

鍵を放った肩がまた思い出したように痛んだ頃。
ようやく耳に届いた音に振り返る。
小さな車。
大好きだった。
近寄って、むりやりに扉を開ける。
(136) 2023/10/01(Sun) 20:26:47

【人】 摘まれた花 ダニエラ

>>137

少しだけ、眉根を寄せた。
そうっと伸ばして、着信をとる。

「……Pronto?」

ちょこっとだけ、硬い声。
(138) 2023/10/01(Sun) 20:32:21

【人】 摘まれた花 ダニエラ

>>139

「……カップの、」

「…………。」

……あー、もう。本当に。


「ばあか……。」


潮騒に紛れるささやかな声。
既に切れた電話口へ。伝え、小さくまた鼻をすすった。
(140) 2023/10/01(Sun) 20:45:00

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-429

ぐし、と少し乱暴に涙をふいて。
くるりと女は振り返った。

「…もおやだ。」
「今日なんもしたくない。」

文句だ。…お望み通りの。
そうして変わらず、ゆるりと絡みつく。
ずび、とまた鼻をすする音だけが聞こえて。

「ん、…帰ろお、ミネ」


足音がひとつ、ふたつ。
港を離れて、車へと消えていく。
(-430) 2023/10/01(Sun) 20:56:01

【念】 摘まれた花 ダニエラ

さて、翌日。
正式な手続きを踏まず脱獄した女にどれほどの時間があるだろう。
少なくとも今ここで、自宅のアパルトメントへと立ち寄るような女ではなかった。

「…ただいまあ」

だから、最後に立ち寄ったのはそのホテルだった。
…変わらず、照明はついたまま。誰もいない室内に声をかける。
そうして真っ先にデスクへと向かい。
そこにある『大切なもの』たちを見つめ、ひとつひとつを回収してく。
冷蔵庫から、チョコレートも取り出した。
(!0) 2023/10/01(Sun) 20:56:53

【独】 摘まれた花 ダニエラ

ライムグリーンのウィッグをつけたテディベア。
これは大事に飾っておこう。

ブーゲンビリアの花束も。
枯れるまでは大切に、花瓶に生けて。

このチョコレートは、紅茶と一緒に食べようかな。
ミネは、チョコが大好きだし。

バスボムは、特別疲れた日に使っちゃおうか。
…今夜とか。
(-431) 2023/10/01(Sun) 20:57:11

【念】 摘まれた花 ダニエラ

片腕にそれら『大切なもの』たちを抱いて。
そのまま振り返り、部屋の隅を向く。
ちょこんと最後にひとつ残されたスーツケース。
片腕で、よいしょ。これもそこそこ重いから、怪我した腕ではひと苦労。

…この中身は、どうしようか。
それだけは、まだ決められそうにない。
自分ひとりの問題ではないからかもしれない。
でも、いづれは決める心算ではあった。
(!1) 2023/10/01(Sun) 20:57:36
ダニエラは、「ああ、でも…。」
(a57) 2023/10/01(Sun) 20:57:49

ダニエラは、この中にある、鍵だけは、どうしようかは決めていた。
(a58) 2023/10/01(Sun) 20:57:59

ダニエラは、きっと近いうち『お兄さん』に連絡を入れる。
(a59) 2023/10/01(Sun) 20:58:33

ダニエラは、彼の方が、自分よりずっとあの場所での思い出が多いと知っていたから。
(a60) 2023/10/01(Sun) 20:58:39

【念】 摘まれた花 ダニエラ

「常連さんには、結局なれませんでしたしねえ」

そうひとりでに、からころ笑う。
喜ぶべきか悲しむべきか微妙なところだ。
女はそもそもコーヒーという飲み物の味が好きではなかった。
今まで一度も、誰にも、そのことを口にしなかっただけで。

荷物に両腕を抱えて、女はホテルを後にする。
もうここを訪れることもないだろう。そうやって初めて照明を消した。
(!2) 2023/10/01(Sun) 20:58:59

【影】 摘まれた花 ダニエラ

苦い水面に砂糖を2つ。
そうやって飲める味にしても尚やっとだった。
それでもダニエラ・エーコは、日常的にコーヒーを嗜んだのだ。
でないと、喫茶店になんて足を運ぶ事も出来やしない。
そしてそのための我慢は全然苦でもなかった。

きっとこれも、石であり、星だったのだろう。
もう、そんなかいがいしい我慢もする必要はない。
だというのに、スーツケースの中、手放す気のないものがひとつだけあった。
…この香りが好きだったのは、本当だったから。
(&2) 2023/10/01(Sun) 20:59:21

【置】 摘まれた花 ダニエラ

ねえ、アレッサンドロさん。

あの日、聞くことができなかったこと。
だから、本当のことはわからないままのこと。


あたしは、――
親孝行
できていましたか?

聞けた方が良かったのか。
聞けないままで良かったのか。
その答えすら、今も出ない。――きっと、これからも出ることはない。
(L7) 2023/10/01(Sun) 20:59:40
公開: 2023/10/01(Sun) 21:00:00

【人】 摘まれた花 ダニエラ

荷物を転がし、抱えて、少しの距離を往く。
虚実不明の明るい鼻歌を奏でる。
そうやって向かう先にいるのは王子様。
あたしのひとmine。いつものように、女はその名前を呼んだ。
(141) 2023/10/01(Sun) 20:59:55
 




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ペネロペ
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ガイオ(2d)
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コバルト色を手に

黒眼鏡(3d)
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ニーノ(3d)
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ヴィンセンツィオ(4d)
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ルチアーノ(5d)
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