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【人】 純真アンサンブル リッコ私はうっすらと意識を取り戻していた。でも、動けない。 啓介が話してくれてるけど、酸素マスクをつけて意識がまだ朦朧としていたから、エスポワがきた時はまた眠りについていたのだろう。 啓介には言ったよ。ちゃんと終わったからって。 あんたは悪くないって。 戦いのプロでもないのに力を託して、守ってもらおうとした私の判断ミス。 そこまでは口にしなかったけど、そう思ったから。 ああ、私は本当な出来損ないだ。* (13) 2023/10/28(Sat) 10:16:01 |
【人】 純真アンサンブル リッコエスポワとなったサアヤたちが去って、数時間後。 もう翌朝になってしまったのかな。 わたしは胸元に虹色の宝石を置かれたままで懇々と眠りについていた。 瞼を震わせ、そっと瞳を開ける。 全身が痛い。体に力が入らない。 視線をだけで辺りを探ると、啓介の姿が見えた。良かった、生きてた。 「啓介…。」 良かった。生きていてくれた。 それが嬉しくて涙を滲ませてしまう。 その後、生きての再会はどうなったのかな? 虹色の宝石はイーリスのようで、少し違う。 それを握りしめながら、わたしは診察を受けることになるだろう。 わたしは詳しいことはわからないけれど全身が失血したような症状を起こしていて、今後歩くことは難しいかもしれないと診断された。 診断されたその時、啓介は横にいたのかな。 それとも、わたしから伝えることになったのかな。 確かに両脚の感覚がない。 ──死ぬかと思っていたから、生きているだけありがたいけれど。 (26) 2023/10/29(Sun) 8:42:59 |
【人】 純真アンサンブル リッコ「…ありがとう。それと、ごめんね。」 巻き込んでしまって。 戦わせてしまって。 好きだと言ってくれたのに、こんな状態になってしまって。 二人きりになれた時。 ベッドの上か、車椅子で何処かにいたか。 ぽつりとそんな呟きを。** (27) 2023/10/29(Sun) 8:43:19 |
【人】 純真アンサンブル リッコ目が覚めた時、圭介が駆け寄って手を握ってくれた。 そのことに目を細めて微笑んで。 でも謝罪されたことに首を微かに横に振る。 「ううん、その気持ちだけで嬉しいの。 だから謝らないで。 こうして隣に居てくれるじゃない。」 目が覚めた時、一人きりだったらきっと泣きそうになっていたと思う。 圭介がいたから微笑むことができた。笑顔は人を明るくできると知っている。 サアヤや姫様の笑顔に救われてきたのはわたしだったから。 そして今、啓介の笑顔が見たかったけれど…。 診察が始まって、その結果が出て。 (33) 2023/10/29(Sun) 18:47:02 |
【人】 純真アンサンブル リッコ「啓介。」 圭介の言葉に首を横に振ったのは、そんなこと願っちゃダメと思ったから。 経緯はよくわからないけれど、私の手元にある虹色の宝石──魔力を宿すこれは、イーリスのそれによく似ていた。 だからこそ、どこまで願いを 叶えてしまうか 分からない。だから迂闊なことは言わないでほしくて。 そう。 この脚が動かないのはきっと、イーリスによる願いを叶えた代償の一つ。 人一人の命を掬い上げたのだ。本来は自分の命が代償になっておかしくないのを、機能一つで何とかなった。 本当にそうかも分からないのに。 病室に二人取り残されて。 わたしは病室──入院してる部屋、だろうか。 個人的な話をしてるから、きっと個室に戻ってたんだと思う。 (34) 2023/10/29(Sun) 18:47:23 |
【人】 純真アンサンブル リッコ「私は騎士の一人だもの。 あちらの世界に帰っても仕事はないわ。 姫様をお護りすることもできない…。」 でも。だからと言ってこちらに残るとも言えない。 あちらの世界にとって、私の存在意義が無くなったのだとしても。 「でもこちらの世界では、わたしはただ 脚の機能を失ってしまった一学生に過ぎないの。 あちらに戻る理由もないけれど こちらに止まる理由は──。」 ジッと啓介を見る。でも、そんな重荷を背負わせたくもないの。 貴方だけを理由にはできない。 それはいけないことだと思っている。 わたしのことを好きだと言ってくれた彼だからこそ──枷になりたくないの。 じわりと滲んだ涙をそっと手で拭う。 (35) 2023/10/29(Sun) 18:47:42 |
【人】 純真アンサンブル リッコ「──姫様の癒しの力が残っているのなら リハビリ?の助けになるかもしれない。 だから、もし癒しの力が残っていたなら 姫様の力を借りつつ、 リハビリを頑張れれば良いと思っているわ。 もし姫様の力が喪われていたのだとしたら リハビリを…頑張るしか、無いわね。」 その結果がどうなるのかは今の自分には分からない。 魔力が関わる疾患だからこそ、こちらの医学では対応しきれないだろうし、魔法での治癒も難しいかもしれない。 ただ、リハビリをしてみる価値もあるとは思う。 私に添えられている啓介の手。 ぎゅっと握りしめて、すう…と息を深く吸った。 気持ちを落ち着けて、にこりと微笑む。 「…啓介。わたし、大丈夫だよ。」 だから手を離しても大丈夫。 だから離れても大丈夫。 そんなことを言いたかった。言いたかったけど。 結局握りしめた手をわたしは離せない。 離せないまま、顔を俯けさせてしまった。 ぽた、と二人の繋いだ手に雫が、落ちた。** (36) 2023/10/29(Sun) 18:48:00 |
【人】 純真アンサンブル リッコわたしは、日本に残ることになった。 だって、大好きな人がそこにできたから。 かけがえのない人。彼の笑顔で、わたしは救われている。 「ふふ、久しぶりね、そのクレープ。 またわたしも動物園に行きたいわ。」 一緒に行くには、動物園の坂道とかが大変だけど。 平坦な道を歩くのも良いし、わたしも車椅子に慣れてきた。 それに少しずつ、足に力も戻ってきている。 姫様の癒しの力のことは聞いたけれど…それを辞退したのは、わたしはこの世界で生きようと思ったから。 あと、単純に浮気してる気になってしまうからもある。 だからハグでほんの少しずつ。 それとリハビリで頑張る日々を過ごしている。 啓介の頬にあるクリームを指先で拭いてぺろり。 (43) 2023/10/30(Mon) 21:36:43 |
【人】 純真アンサンブル リッコ「ふふ、頼もしいわね。 ──それって私たちの結婚式の時も?」 なあんて、ね。 くすくす笑いながら二人でクレープを食べて、わたしはこの世界のことを勉強している。 今は弾き語りのシンガーソングライターとして活動を開始したりしてるんだけどね。 啓介に車椅子を押されて散歩する日常。 くい、と啓介の袖を引いて。 (44) 2023/10/30(Mon) 21:37:03 |
【秘】 純真アンサンブル リッコ → 不良少年 滝沢啓介「──いつもありがとう。」 彼と手を繋いで、立ち上がる。 そっと彼にキスをするために。 まだまだ歩くことはできないけれど。 貴方と共に立つことはできるから。 きっといつか、貴方と共に歩いていきたい。** (-2) 2023/10/30(Mon) 21:37:23 |
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