【神】 さよなら 御山洗>>G58 鬼走/三日目夜 河原 「大丈夫ですよ、伝わってますって。みんな、雅也さんのこと慕ってるし、大好きですよ。じゃなかったらこんなに頼りにされない。 意外だと思ったのは、雅也さんは……もっと思い切り良く行けって、いうかと思って」 自分には勇気が出なかった、10年前も今も。思い出の中にしまったものをーー三人の時間をきれいなままにしておきたかった。 踏み出すか踏み出さないか、どっちにしたって後悔するなら、閉じ込めておくのを自分は選んだから。 「……俺のことはともかくとして、やっぱり学生たちには祭りを楽しんでほしいですから。 明日くらいはせめて、ちゃんとしないと……なんて、出店の手伝いできるわけでもないですけど。 結局河原のサワガニも水道水で元気にさせてるままだし」 今はまだ振り切れず、踏み出しきれないのでも。誰かの笑顔を翳らせるようなことはしたくない。 膝についた手に力を入れて立ち上がる。ここいらのゴミを入れた袋を片手に下げて、最初に手渡してしまった分を返してもらおうと手を広げる。 鬼走に話したことで、ひとまず今は気が楽になったようだった。 「集落に戻りましょうか、雅也さん。明日もきっと早いですよ」 (G60) 2021/08/16(Mon) 12:19:41 |