【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>103 頬骨に堅いフレームが擦り合わされる感覚があった。 既に大分張られて腫れた頬に、今までの痛みを再生するように神経が痛んだ。 軽く咳き込んで血塊を吐き出す。喘鳴は荒れたものの、悲鳴はあげなかった。 衝撃に流される前に向こうを向いて金属製の扉に叩きつけられた頭は、 まず視線を貴方へと向けて、それを追うように頭そのものが前を向く。 「他人行儀に呼ばれる方が、お前はよっぽど好みじゃないだろう」 立ち上がろうともしなければ、反撃の姿勢も見せない。 ただ、大混乱のさなかにある町工場の中の景色を背景に見上げて、 叩きつけられた言葉と態度を映画のスクリーンのように眺めているだけだ。 それで満足するのなら、それで構わないだろう。 けれどもそれで腹の虫が治まらないのなら、それはきっと不満だ、そうだろう。 「一方的に殴りつけて気が済むんだったらこのまま付き合ってやる。 で? それでお前は構わないのか?」 (104) 2023/10/01(Sun) 0:02:08 |