【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>116 「ガキみてえなこと 言ってんじゃ ね ぇえぇえええエエエエエよッ!!!」 葉巻が撃鉄のように落ちて、 そらすら待たずにばねは動いた。 ほぼノーモーションで放たれた蹴りを避けられたのは、同時に動き出していたからにすぎない。 だ、だん、と鋼板をへこませる音と同時に、アレッサンドロの長身が車の天板よりも高く飛び上がる。 大きく孤を描き放たれる、横殴りの足刀。 ──だが本命は、その陰。 先ほどまでポケットに突っ込まれていた拳が緩く握りしめられて、空中に身を躍らせた直後── 蹴りとワンテンポ遅れただけの奇妙なタイミング、そして間合いで突き出される。 当たるはずも牽制になるはずもない、ばたつかせただけのような手。それがぱ、と開かれて、 ばさり 、と。握り込まれていた粉末が、 掠れた音とともにぶちまけられる。 派手な蹴撃に紛れて放たれるそれは、 アルミ片を削った金属の欠片。 粘膜を容易く傷つける無数の礫が、潮風に逆巻きながら、顔面を狙ってぶちまけられた。 (117) 2023/10/01(Sun) 10:25:28 |