168 【飛び入り歓迎】Hospital of Delusion ー妄執の病院ー【R-18RP】
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| ―???― 闇が、病院を覆い尽くす。 >>0:L0どうやら、始まったらしい。 少女と、カナおねぇさん達から別れてしばらく。 現状、執着する獲物もおらず、やらねばならない事もない。 だから、『イモウト』を探して、院内をさ迷い歩いた。 もっとも見つけたからと言って、少女に知らせる気も、どうこうする気もないけれど。 「自分が、自分の目的の相手を探す事と、ついでに出来る作業」だから、それぐらいの認識。 『運よくイモウトを見つけて、運よく生きてまた会えたら、案内するのもいいか』、と。 ――要は、『イモウト』探しは割とどうでもいい事なのだ。 (3) 2022/08/11(Thu) 9:05:05 |
| それに、どうせ誰かの手に堕ちるなら、カナおねぇさんの「■■さん」になってくれるのも悪くない、とも思う。
カナおねぇさんには歌を教えて貰った恩がある。 彼女が少女と居る事で安らぎを取り戻せるなら、それでもいい。 引き換えに少女が「死ぬかも」というだけだ。 よくわからないモノに蹂躙されて、苦痛に満ちた最期を迎えるより、余程マシだ。 (4) 2022/08/11(Thu) 9:06:25 |
| 再び、地下への階段を降りていく。
最初から、『イモウト』が生きているとは考えていない。 なら、出来るだけ死んだ可能性の高い場所。 より多くの人の死に触れた場所を探す方が効率がいいだろう。 死体安置室に『イモウト』が居ないならば、残る心当たりは――。
いくつか候補を頭に描きながら、地下の闇へと消えていった。* (5) 2022/08/11(Thu) 9:12:45 |
| (a3) 2022/08/11(Thu) 9:16:39 |
[同時に、なぜかその負の感情を塗りつぶすように感じる下腹部の疼き。
もっとも、これはとある水子の霊からの贈り物ではあるのだが、それを私は知る由もなく
]
少女に贈った「モノ」。
それは、少女の「恐怖」を「別の感情」で塗りつぶすもの。
彼女を貶める為のものではなく。
彼女を堕としめる為のものでもなく。
一切の悪意を含まない。
けれど、どこまでも残酷な贈り物。
彼女がもし、恐怖に心が折れる時が来たら。
彼女がもし、逃れようのない、苦痛に満ちた死に直面したら。
彼女の心が「恐怖」に気付かないよう、心を塗りつぶしてしまう。
彼女が恐怖に折れず、生きて病院を脱出しようとするなら。
塗りつぶされた心は、元の色を取り戻し、やがて贈り物も消え去るだろう。
けれど、全ての人間がこの病院を脱出できない事も知っている。
ならば、せめて。
その最期が恐怖ではないように、と。
水子が彼女の為に、文字通り身を裂いて送ったものだ。
| (a9) 2022/08/11(Thu) 13:39:45 |
[チハヤが拒もうとしない限り、
彼の頭は胸元に押しつけられることだろう。
温度はない。鼓動もない。死の甘い匂いがする。
そして何より命を刻むはずの場所は空っぽだ。
しかしそれ以外すべて人間の形をした柔らかさが、
彼の頬や鼻をくすぐることになる。]
チハヤ、
[彼が教えてくれた名前を呼んだ。
これまで彼に対して示した態度とは一変して、
紡ぐ音は蕩けるように甘やかだ。]
何も怖ろしくないわ。
気持ち良くて、楽しくて、それだけでいい。
だから早く、いたいのなくしちゃおうね。
[言葉と同じ甘さを持つ指が彼の首筋へ伸びる。
明確な死の冷たさを持って、
少しずつ彼の体温を蝕もうとして。
蹲る彼の上に黒くて長い髪が垂れ下がって。
――夜が満ちていく。]*
君のこの、胸の方こそ
必要だろうに…
[ぼくが漏らした弱音を叶えてくれようとしているなんて、
彼女がそれほど甘いとは思っていない。
それでも自らの身体を使って、優しい仕草で、
丁寧に肌を重ねようとしてくれている仕草に
彼女を見上げてゆるい笑みを溢した。
艶やかな黒糸の流れに視界は塞がれる。
壁に背を預けたまま、彼女の冷ややかな身体を引き寄せ、
温度を混ぜ合わせるように唇を重ねた]**
[彼女の体重が預けられた机の影から伸びた何本かの影が彼女の太腿に、腕に、身体に、絡みつくように触れる。
ほんのりと湿り気を帯びたそれは太さは様々で、
彼女の身体を這うようにゆっくりと上へ上へと伝っていく。]*
[理性を失った者がぶち込まれる豚箱。
外に放ってはならない、ケダモノの巣窟。
欲望に塗れた、獰猛な姿。
嗚呼、それはいつかの──両親
そして、いつかの──自分。
相応しい場所
死ぬのならば、此処──だろうか、と]
[――それなのに。
彼の言葉に一拍、息が止まる。]
……どうして。どうして笑うの。
[それなのに先程までの憔悴した様子は掻き消え、
その笑みは初めて声をかけられた時のような
気の抜けるものだった。]
必要ない。
だって……今から、
あなたがいっぱい注いでくれるんでしょう?
[あなたのためだと優しくすれば、
彼は死の海に浸り続けてくれただろうか。
真実が必ずしも幸せを運ぶ訳じゃない。
望む噓を吐くことだって、意味があるのに。
なぜか、彼の問いに頷くことができなかった。
代わりに冷たい手が彼の頬を撫でて、
瞳孔が開いたままの瞳を大げさに細めて見せた。]
[分からないこと、言いたくないこと、
知らなくていいこと。
結局自身が彼の問いに返したのは半分くらいで、
残りのすべては己が腹の内に沈む。]
チハヤ。
[彼の顔が上を向き、黒糸を下ろす己と視線が交わる。
唯一知る名を囁いて、こちらからも身を屈めた。
サマーカーディガンを手放した彼の白いシャツが、
黒々と染まっていく。]
― 名もなき病室 ―
[闇に溶けた先は、どこかの病室だった。
20年程前には誰かが生きようと足掻いていた場所。
今となっては薄暗く、薄汚れた一室でしかない。
身体を離すことを許さず、古いベッドへ押し込む。
軋んだパイプが耳障りな音を立てた。]
……ん、
[合わせた唇もまた、生者と離れた冷たさがあった。
しかし自ら誘い込んだ腔内は温かく、
瑞々しい唾液がくちゅりと音を立てる。
明確な実体化が感覚さえも鋭敏化させるのか、
舌が顎裏に触れる度、肩を震わせ甘香を吐いた。]
ハぁ、……もっと、
[優しいだけなら現実でもいい。
彼に死の意味を刻み付けなければならなかった。
ひやりとした手が彼の両耳を塞ごうとする。
上手くできたなら、再び唇を寄せて
くちくちと口腔を舌が泳いだ。]
[そうして、触れて、重なって、
埋め込んだ種≠ゆっくりと育てていく。
痛みは彼の意識を少しずつ侵そうとするし、
彼がここから脱すれば、
種≠ヘ何の痕跡も残さず消えるだろう。
あるいは、快楽さえあれば彼の苦しみは遠のく。
痛いのはつらいけれど、
痛いのが消えてなくなるのは気持ちいいでしょう?]
……ね。この夢の中だけが、
あなたに理由を与えてくれるの。
[彼の内側に痛みと音と甘さを注ぎ込んで、
正常な現実から引き離そうとした。]*
ん、んんっ……
[悪夢はまだ続いている。
とはいえ、種類が変わったけれども]
ぁ、いゃぁ……
[妹の死体は目の前から消えた。ここで知り合った女性と男の子もいない。
暗い空間の中、体中に湿り気を帯びたナニかが這ってきている]
ぁ、ぇ……だ、れ?
[体中に絡みつくナニか。それの正体が何なのか判別はつかないけれど、良くないものなのは直感的に分かる。
現実でも、彼女の手によって影でできたナニかが絡みついているのと同期するように、夢の中の何かも同じように私の体を上っていく。
どうにか抵抗しようと体を動かそうとしても、身じろぎするばかりで振り払う事も出来ず]
| ―分娩室― 部屋全体に、強烈な死の臭いが満ちている。 「空気が重い」と形容すればいいのだろうか? 湿気とは違う、肌にまとわりついて離れない、例えようのない「嫌な空気」。 その理由が、この部屋の中央に「在る」人物の発する怨念の深さだと言う事は、同じ怨念の自分だからわかる事だが。 (60) 2022/08/11(Thu) 21:36:43 |
| 人物の様相は、あえて詳細な描写を省くなら、『酷い有様』だった。 その有様を部屋の真ん中、分娩台の上に乗せられて、これ見よがしに晒されている。 よほど、趣味の悪い相手に捕まったのだろう。 ―――少女と共に居てくれるのが、カナおねぇさんで良かったと心底思う。 一つ、溜息を吐いて「人物」に歩み寄る。 このまま、この「人物」を晒し者にしておく気はない。 同じ人ならざる者ではあるが、趣味嗜好はそれぞれだ。 少なくとも、この状態を悪趣味であると、自分は断じた。 (61) 2022/08/11(Thu) 21:37:05 |
| →地下通路 「人物」への対応を終えて、分娩室を後にする。 「人物」の背格好は、少女と似通っていた。 そして、何よりその髪色。 他人の空似かもしれない。 けれど、もしかしたらあの「人物」が『イモウト』かもしれない。 少女が、あのままカナおねぇさんと共に、この病院の一員となるなら、それもよし。 けれど、もしまだ『イモウト』を探し、『私達』を呼ぶなら、その時は分娩室に案内するとしよう。* (62) 2022/08/11(Thu) 21:37:24 |
| (a18) 2022/08/11(Thu) 21:39:43 |
[実態を持ったしなやかな影は、彼女を拘束するというよりは下腹部の疼きを煽るように蠢いている。
細いものは器用にボタンを寛げ、服の隙間から入り込んでその柔肌に触れようとするだろう。
太腿に絡みついたものはやがて彼女の下着の上に到達し、布越しに上下にやわく動いて下肢に微弱な刺激を与える。
あえかな声など聞こえないかのように。
あるいはもっと声を引き出さんとするように。
身じろぐだけなのをいい事に、器用に彼女の身体に悦を植え付けようとする。]
[しなやかな影の蠢きは、私に確かな恐怖を抱かせ始めていた。
夢で妹の死体を見た時に比べたらなんてことはない恐怖。
未知のモノが私の体をまさぐるように這いまわるくらいなら、妹を失ってしまった時を思えば問題ない。
それでも私の中にいる水子は反応して、恐怖の代わりに快楽を沸き立たせていく。
それに合わせるように、影の蠢きは疼きを煽るように動いていて。
私の体をまさぐ影によって、少しずつ少しずつ、私の体は昂りを感じ始めていた。
肌に触れられれば身じろぎはすれども抵抗できず、敏感な場所に触れられればびくりと跳ねるような反応を見せる。
歌詞に微弱な刺激を与えられれば、もどかしさを感じるように腰を動かした。
もれ出る吐息も艶が出始めていき、微弱な刺激に曖昧な意識で無意識に反応していく]
| ―いつかの日 立花と― 「よく、『生きる事に価値はある』、なんて言う人がいるでしょう? 随分と、残酷な言葉だと思うんだ。」 精神病棟の一室。 あまり喋らない彼女 >>0:221の傍ら、硬く冷たい金属製のベッドの手すりに腰かけて、言葉を投げかける。 「死んでしまった人に、価値はないのかな? どんなに悪人でも、生きているなら価値があるのかな? 『俺』は?おねぇさんは? 死んでいても、意思を保っていて、生きている人に干渉もできる。 なら、生きている人たちと何が違うんだろう?」 率直な疑問を連ねていく。 生きる事の定義とは、なんであるのかと。 (73) 2022/08/11(Thu) 22:52:28 |
| 「まるで、生きる事が出来なかった『私達』に、価値が無いとでも言ってるようで、一人残らずぐちゃぐちゃに呪い殺してやりたいじゃない?」 (74) 2022/08/11(Thu) 22:52:45 |
| そっと、彼女の胸の穴へと触れる。 彼女の、欠けてしまった一部。
「おねぇさんと、『僕』は似た者同士だね。 『私』にも、お母さんって呼べる人が欠けてるんだ。」
手すりから身体を離して、硬いリノリウムの床へと降り立つ。 手すりが擦れあう金属音と、靴が床を打つ高い音が響いた。
「お互い、欠けた部分を見つけられると良いね。」
最期に一言だけ告げて、彼女の病室を後にした。 なんてことは無い、怨嗟と嘆きが響く病院での出来事だった。* (75) 2022/08/11(Thu) 22:53:03 |
| (a20) 2022/08/11(Thu) 22:55:59 |
[埋めてくれる?と問いかけたが、
拍、と息を飲んだ後に答えはなかった
名を呼ぶたびに震える事にも理由があるのだろう。
彼女が頑なに飲み込む言葉を暴きたい]
ねぇ、教えて、タチバナさん
[視界が闇に飲まれていく。
ぼくの姿もなんだか黒く染まっているような気がした。
彼女の白いパジャマと肌を、
黒のカーディガンが包んでいる。
相対的で少し笑った]
……ふふ、かわいい。
[漏れ出る艶を帯びた吐息。
もどかしそうな腰の揺れ。
影の与える刺激に反応を見せる姿に女はうっとりと目を細める。
愛おしくてたまらないというように、耳朶に口づけた後に甘噛みし。
肌理を楽しむように肌の上を動いていた影も、彼女の様子から学習して敏感な反応を示した場所に吸着しようとしたり、強弱をつけて動くようになっていく。
生き物のように服の下を動き回る姿は愉しげですらあった。]
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