45 【R18】雲を泳ぐラッコ
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[見えぬものを
慮る能力は著しく劣るが
目に映るものを観察する能力は低くない。
脳裏に焼き付けるように見つめていると
哀しげに顰められた眉が
俺の返答に解けていくように感じられ
けど、それもすぐに
気怠そうな雰囲気に飲み込まれていく。]
… ああ 勿論、
…………おやすみ
[眠りに就く許しを求める声に
こくりと頷いて
不慣れな挨拶を付け足すと
伸ばした手で、軽く頭を撫ぜた。]
[胸中には大きな波紋が広がっていた。
眠気に抗いながら
念を押すように残された呟きが、
凝り固まった懐疑心を
さざなみのように洗い侵食して
じわりじわり…と崩していく。
(まさか… 全て、本心だった…?)
無防備な姿をさらけ出し
寝息を立てる様子は
俺に身を委ねているように思えて、
見えぬ気持ちを代わりに伝えてくれているようだ。]
[信じてしまって良いのか
揺り起こして問い質してしまいたい、が
ぐっ、と我慢した。
無性に守ってやりたくなる
庇護欲を掻き立てられる様子の彼の
その両胸には
自身が打ち込んだ針が鈍く光る。
紅色の繊細な文様に彩られた
ふたつの突起は
腫れ上がっていて
まだ相当に痛むに違いない。
その痛みでも引き止められぬほどに
いや、むしろ痛みのせいで
疲労が増して
休息を欲しているのだ。
自然に目覚めるまで待つことくらい
俺もすべきだろう。]
[そうは思うのに
胸中のざわめきは強くなるばかり。]
…… 本当に、 いいのか?
[留めて置けなくて
溢れてしまった小さな呟きに
返るのは寝息だけ。
長椅子の前に両膝を着き
起こさぬように
そっと髪を漉きながら、
これまでの彼の言動を思い返して
その中に答えを探そうとする。]
|
太郎は、少年と友だちになって、 自分は少年から金の輪を一つ分けてもらって、 往来の上を二人でどこまでも 走ってゆく夢を見ました。 そして、いつしか二人は、 赤い夕焼け空の中に 入ってしまった夢を見ました。
明くる日から、太郎はまた熱が出しました。 そして、二、三日めに七つで亡くなりました。
─────『金の輪』 小川 未明
(0) 2020/10/05(Mon) 14:26:00 |
| 「ともちゃん、本当に大丈夫?」
[そう青柳が尋ねてきたのは また図書館に行こうとした矢先のこと。 いつもみたいに話しかけるだけじゃなく 後ろから俺の肩を強く引いて、 青柳は真っ直ぐ俺を見つめている。
今更なんだと言うのだろう。 そんな嫌そうな感情が表に出ていたのか 青柳の手に力が篭もる。]
「何かあるなら、話して欲しい。 クラスメイトとして、友達として」
……何も無いって。 俺は、青柳がどうしてそんなふうに思うのか 全然分かんないよ。
「だってともちゃん、前なら俺に そんな風に言い返したりしなかった」
[なるほど。さすが周りに目を配れる男。]
(1) 2020/10/05(Mon) 14:26:28 |
| [強硬な青柳に促されるように 人気のない教室の空いた席へ腰を下ろすと、 青柳も俺の隣の席を引く。 じっと覗き込むような目線から逃げるように 机からはみ出たプリントの切れ端に 視線を落として、俺は息をついた。
何から話せばいい? 目に見えない女の子と、放課後の図書館で 便箋越しにメッセージやり取りしてます、 俺はその子のところに行きます邪魔しないで? 信じるわけない。こんなこと。
時間をただ沈黙のために費やしていると 青柳がそっと口を開いた。]
(2) 2020/10/05(Mon) 14:26:49 |
|
「俺のね、中学の時のクラスメイト。 ひとり自殺した子がいるんだ。
ひとりでいてもなんとも思わなかったし そいつが昼休みとかに逃げるように 図書館とか保健室とか、行くの 仲間と笑いながら見てた。」
[時々声を上ずらせ、静かに語る。]
(3) 2020/10/05(Mon) 14:27:38 |
|
「その子が死んだ理由、 はっきりしないまま終わったんだけど ……もし学校で何かあったら 力になれたかもしれない。 逃げる道があげられたかもしれない。 そう思うと、やりきれなくて。
世の中には、その子だけじゃない、 悲しいこと辛いことが山ほどあって 覚えていられないくらいだけど もう辛いことが起きないように 少しでも行動するのは、 無駄な事じゃないのかな、って。」
[青柳の言葉も、心もひどく真っ直ぐで 俺はまた何も言えずに口を噤む。
また長い沈黙の後、俺は考えながら 唇の隙間から言葉を絞り出した。]
(4) 2020/10/05(Mon) 14:28:16 |
|
─────俺には、そんな勇気、ないよ。 今傍目に死にたそうに見えてたとしても。
[それ以上、何も言えない。 気まずい沈黙が教室の中に、 澱のように溜まっていく。 「そうか」と短く切って、 青柳は足を組みかえた。
俺は何か言わなくては、と 頭の中を必死にフル回転させて……]
青柳はさ、もし好きな女の子がいて その子が、手も届かない遠くにいたら ─────どうする?
[つい、そう、尋ねてしまった。]*
(5) 2020/10/05(Mon) 14:34:58 |
[もしかしたら馬車で連れ去られたなんて見当違いもいいところだったかもしれないのに、無我夢中で足掛かりを追った。
物語として聞けば運が良かった出来事かもしれないが、
傍観者だったなら血の気が引いていたところだ。
無事見付けられたけれども、
尊厳を取り払われて、彼女はずぶ濡れだったし、怯え切っていたから。
腕っぷしが弱くとも、荒事は何度か越えて来た。
己が唯一彼女を守れる存在だと理解していたからこそ、冷静であれたんだ。
常であれば宥めたくなるだろう彼女の泣き顔に気を取られない様にして、誘拐犯たちと対峙した]
[彼女が怖がっているのに、
気遣ってやれたのはジャケットを掛ける迄だった。
義手に刃が入り込み、彼女が叫んでも、何かを思う余裕がない。彼女が教えてくれる敵の数も、情報としてしか考えられない。
背中に泣き声が聞こえたけれど、
返事をする事は出来なかった。
「後で」とも考えられなかった。
余裕もなかったけれど、
現世で伝えたい事は済んだと思ったし、
彼女を守って死ねるなら本望だったから]
[嫌な音を聞き、声を聞き、
忘れたくなる肉を切る感触は、再びナイフを振るう事ですぐに上書きされる。手と同時に脳にもこびりつく様な感触に、叫び出したくなる代わり、言霊を繰り返した。
間違ってシャーリエを襲わなかっただけ、正常だったろう。
けれど、
もうきっと大丈夫だというところ迄その場を血濡れにして、
無事を確認した彼女の行動に首を傾げる。
何でそんな大声を、はしたないですよなんて思って、
ちらっと見えた靴、あれはやっぱりお嬢様のだったんだなんて、
おぞましい記憶の刻まれた脳みそでぼんやりと思う]
なに……
[泣いているのは怖がらせたからだと思ったけれど、
何を謝られているのかわからない。
深く斬られた右手が痺れて、めちゃくちゃに振り回した腕が重くて、頭が痛くて気持ち悪くて寒くて眠ってしまいたかった。彼女の方が濡れていて、寒いだろうに。
ここで眠ってしまおうと思って、目を閉じる。
……眠るならあの庭がよかったな、と思って、
いや、今回はオレはこれ死なないわ、と、ふっと笑う。
右手にリボンを巻かれた時の事だったけれど、
質の良いそのリボンの感覚は、わからなかった]
[「痛いよね」と、聞こえた彼女の声が最後で、
何も答えられないまま、意識を手放してしまっていた。
後は時折痛みに呻いたり、処置中に何度か目は開いたが、会話や応答といった事は出来ずにまた眠った。
小さな切り傷や打撲等はいくつかあったが、
一番深い傷は右手の手首から肘にかけての裂傷で、
見た目に酷く見えるのは義手の損傷だった。
右手は何とも言えないと医者は言ったろうが、
義手はギリギリ繋がっている箇所を保持する以上の事はできなかっただろうか。
小指と薬指は完全に取れていたので、
別に保管する事になるだろう。
その日は部屋で目覚める事はなかった]
[──唐突に、現世に引き戻された。
部屋はそう明るくはされていなかっただろうが、
目覚めた己には眩し過ぎた。
押し上げた睫毛の下の萌黄に、
彼女の寝転がった頭が映った]
………
……、………
[おじょうさま、と呟いたつもりの声は、
静かな寝息の様なか細さ。
あぁ……よかった……
彼女の銀の髪が、白い肌が変わりない様で。
安心し切った脳がまだ眠れと強制的に瞼を下ろす。
最初に目覚めたこの時は、彼女にも気付かれなかっただろう]
──ッ う………
[次に目覚めた時、瞼を開く前に感じたのは痛み。
右手に走る激痛に顔を歪めながら、ばちっと目を開く。
何日も眠っていた様な気怠さがあったが、
実際には今は翌日だっただろう。
彼女の姿はそこにあっただろうか]
お嬢様…… 無事か……?
[いなければいないでも、一番の気掛かりを部屋に独り言として呟く。
あの後どうなったかわかっていなかったものだから、
無事な姿がそこにあったって、
心に傷を負ってやしないかと心配で]
……あぁ、オレのが駄目か、これ……
何で、右手………
[包帯の巻かれた腕は焼ける様に痛むのに、
手首から先が動かない事に眉を歪める。
医師を呼んで痛み止めを打ってもらったり調子を伝えてから、「右手は動かないかもしれない」と告げられれば、「そっか」と力なく笑った。
心配はその事実故のこれからの事より、
シャーリエが気に病まないか、だった。
医師の話はシャーリエも聞く事を許されただろうが、
彼女はその場にいてくれただろうか。
痛み止めで落ち着いたのちに、
自分の話より、彼女の話を聞きたがった]
怪我ってしてませんか?
あれから、怖い事はなんもないですか?
[多分一番聞きたい事はこれだっただろう]
[それから、
勲章を頂ける事になった事も聞けるだろうか。
お嬢様はオレの事怖くはなかったかなとか、
領主様はオレが人を惨殺したのは知ってるのかなとか、
それでも「よくやった」って思ってくれてるのかなとか、
後ろめたい気持ちでもって、人を殺した感触に蓋をしたが、
辞退をする事はなかった。
寧ろ、]
光栄です。
[と、はにかんで受け取った。
己がした事というより、彼女が生存している事をこの世が肯定した証の様に思えたから]
[それからしばらくは療養で日を潰しただろうか。
右手に関しても義手に関しても、
特に自分から何か要望を訴える事はなかった。
痛みとおぞましい記憶に唇を噛みながら、
聞こえていた訳でもないのに、
彼女が寝床で呟いた事を
窓の外を眺め、考えていた。*]
| [少しの沈黙の後、]
「遠距離、的な?」
[青柳はううん、と唸って腕を組んだ。 もし、俺が「いや、異世界の子」って言ったら 今度こそ可哀想な奴扱いにされるんだろうか。 それとも、青柳はそれでも俺を 見捨てずそばに居てくれるのか。]
「俺なら、ちゃんとメッセージ送って 「逢えなくても好きだよ」って 相手がちゃんと分かるように伝える。 それでも会いたかったら…… 俺も会いに行っちゃうかなぁ。」
[少し照れくさそうに笑って。] (6) 2020/10/05(Mon) 19:01:03 |
|
「てか、遠距離の話とかだったら 恋バナ、全然聞くからさ。 ……あっ俺すごい深刻な話しちゃった? だとしたらともちゃんめっちゃゴメン!」
[謝り出す青柳を宥めて 俺は内心、今の言葉を噛み締める。
例えば、今図書館に向かっても いるのは菜月の影で、俺は手を繋ぐどころか 声も、顔も知らないんだ。 他のカップルが当たり前みたいに到達してる、 その出発点にすらいない。
会いに行くにはどうしたらいいんだろう。 俺はもう、そればっかり考えていて。]
(7) 2020/10/05(Mon) 19:01:32 |
| 青柳、聞いてくれてありがとう。 ごめん、俺なんかの恋、バナ……? なのかな つまんない話だったと思うけど、ホント。 [にっこり、出来る限りで微笑んでみせて 俺はカバンを手に図書館へ向かう。 今度は、青柳は咎めなかった。] (8) 2020/10/05(Mon) 19:02:00 |
|
[そうして、図書館の宵闇の中 俺は菜月と逢瀬を交わす。]*
(9) 2020/10/05(Mon) 19:02:25 |
──鈍色の球体5──
[ランドセルを背負った子供が屋敷に帰ると、
部屋の扉の前に箱が置いてあった。
毎年同じメーカーの同じ箱。
この箱を見て、子供は今日という日を思い出す。
開けば中には、栗のケーキが入っている。
メッセージは何も添えられていない。
子供は一旦箱を閉じると、電話を取り、覚えてる番号にかけ始めた。]
……今年も……誕生日ケーキ…ありがとう……ございます…。
……冬の…お母さんの誕生日には……帰って来て貰えたら…嬉しいです…。
[会社を切り盛りする立場として多忙を極める人。
物心ついた時には、もう会社の近くに部屋を借りて、
毎日屋敷に戻ってくることは無くなっていて。
用が無ければ掛けてはいけないと言い聞かされ、
今日は母の事をお願い出来る日。
生憎と、叶ったことはなくとも。
着替えて身なりを整えてから、
箱を抱えると、日課の離れへと足を向けた。
ケーキは栄養の必要なその人に箱ごと渡してしまっている。]*
[最も印象に残っているのは
思い浮かべるだけで
心揺さぶられて仕方ない、あの微笑だ。
綺麗だと心からの賛辞を送り
両手で頬に触れた後のことだった、と思う。
確か、この手で
貴方の美しさをもっと際立たせたいと
素直に伝えてしまった時も
柔らかい表情で頷いてくれていた。
(俺に触れられるのは、嫌じゃ…ない?)
そういえば、
怒りに我を忘れて
聞く耳を持っていなかったが
俺の腕や技術も買ってくれていた気がする。
自宅を訪れてくれた、あの日も。
そして、今日も。]
[
(期待して良いのだろうか?)
甘い未来に気持ちが傾けば、
バランスを取るように
今度は、泪を溜めた表情と震え声が
脳裏を過った。
何故あんなにも辛そうで
怯えた様子だったのだろう?]
…………
[分からないと言えば、もうひとつ。]
[内蔵を傷つけられたり
下手をしたら死に至る針の混入よりも
肌を傷つけられることの方を
恐れているようだった。
針で貫いた時も痛みより
醜くなった、壊したと
見目の変化に酷くショックを受けていて
あれほどまでに返さないと
言い張っていた標本すら
相応しくない、と
あっさり手放そうとしていた。
確かに、彼の美しさは
比類なき素晴らしいものだから
大事にしたい気持ちは、よく分かるけれど……
──命よりも?
じっと寝顔を見つめる。]
[命と美しさ。
どちらも尊いものだけれど
優先順位をつけろと言われるなら
命に決まっている、と
自分は思う。
けれど、貴方は違うようだ。
どうしてなのか
何故なのか
理由があったりするのだろうか?]
…………
[あの時も疑問は過ぎった。
けれど、
我儘な怒りに任せて
尋ねる機会を逸してしまっていて
俺は貴方のことを
何も知ろうとしていなかったのだと
思い知る。]
[この青く美しい瞳が
再び開いたら────…
本当に、ずっと
俺の手の届くところに
居てくれるのかどうか?も含め
貴方のことを
色々と教えてもらおう。]
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