87 【身内】時数えの田舎村【R18G】
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青嵐
「今更気付いた?瞬兄のそういう、
細かいとこ気にしなかったり、
気楽に構えてるところは美徳だけど、
たま〜に苦言言われてるの、俺は知ってますから」
時任の姉さんがちょっとね〜と、
聞きようによっては思わせぶりなことを言う。
それでも見習うとこは見習うべきではあるが。
「あはは、そうだね。こんなに揃って会えるんだし、
会えないことはない。でもちょっと寂しいけど。
色んなとこ飛び回って、みんなに会いに行くって目標を立てたから本当に『会おうと思って会いに行く』ようにしますよ、俺は!」
無遠慮な手に頭を掻き撫でられ、
あ!折角髪結び直したのに!と文句ひとつ。
それでも心地よさそうに目を細めて。
「え、かけっこってそれは俺に勝ち目ないけど!
行くぞて、も〜〜、待ってってば〜〜〜」
そんなこんなでもう一人の先輩の下へ改めて向かうのだろう。
卯波だけの四角形を作り続ける。一つに固執するあなたには負けない。
受け取ったカメラを一旦手荷物に戻し、
水着へ着替えることに。人も寄ることもないだろうと、
近くの物陰で思い切って衣服に手をかける。
上着をしっかり、細腕で絞り、
肌に纏わりついて離れないシャツを、両手をクロスさせて無理矢理引っぺがした──ところで。
ふと、自分の両胸に手を当てる。
筋肉の僅かな硬さ。なだらかな、
未だ成長を感じさせるような感触。
まだ解消されてない違和感が一つだけある。
何かしっくりこないような。現実味の薄いような。
カメラによって切りとられた顔を、
勇気を出して、なんとか、見つめようとする。
(──ああ)
自分が、今まで自分のことを見つめられなかったから。
『今の自分』の外見を、他人に委ねてしまっているんだ。
少年が、段々と元の形へ戻っていく──。
ゆったりとしたラッシュガードを着た。そしてもう一度「海だ〜〜〜!!!!」
反射的に腕をあげると、ナマコをキャ〜〜〜ッチ!!!
「油断も隙もないなあホント!」
ナマコさんが可哀想でしょ!(委員長)
「あ、茜ちゃん」
そして、透けてる様子に気付いたようで、
小走りで荷物を漁り、大き目のタオルを取り出してみせつつ、自分の胸元をとんとんと叩く。
「さっきも水かけまわってたでしょ、
一旦休憩にしようよ。両手のナマコは引き受けるから」
ほんのわずかに頬を染め顔を背けて、
気付いてくれ〜と気遣いをしてみて。
「こ〜らからかうんじゃありません」
だから見ないようにしてたんでしょ〜なんて言う。
ああ、そういう方法もあるんだ、とちょっとだけ感心したりして。
「茜ちゃんは着替えちゃんと……あるよね、茜ちゃんのことだもの。いや、安心した。
十年越しに女らしさを磨いたところを目の当たりにするとは思わなかったよ〜」
御山洗
「子供、のままの関係だったら?」
どういう意味だろう、と頭で思考を巡らせている間に水が飛びかけられる。
ぱちくりと目を瞬かせて見つめれば、覗くのは無防備な脇腹。いたずら心が芽生えてその腹に手を伸ばした。
「御山兄さん余所見してると危ないよ」
くすぐってみたい衝動が起きてしまったから。
遊んでみたくなったから。
そんな無邪気な理由でいつまでもここに要られたらどれほどいいか。
しばらくしてから皆の輪に戻ろうと声をかけた。
その時一体自分は誰を見ていて。
あなたは誰を見ていたのだろう。
「お兄さんも、溜まったものがあるなら海にでもなんでも吐き出してしまってください。
田舎に忘れ物をするのは、夕凪たちだ絵で十分です。
あと、風邪は引かないように!」
そう、笑って。
一歩海に向かって飛び込む構えを見せた。
| >>125 百千鳥 向かってくるあなたに、パッと雰囲気がはなやいだ。が、秘密基地のことを聞けばどこか微妙な雰囲気になる。 「……先に、行ってしまったかもしれない?」 鬼走に連れられて、それらしい所に行ったらしい。方角もあわせての説明を聞けば、あなたが彼を案内しようとしていた場所で間違いないと思えるだろう。 「それとあっちの、洞窟の方の秘密基地にも、 ボートで連れて行ってもらって。 ……すまない、俺の方が案内してほしいと言ったのに」 纏っていた微妙な雰囲気は、申し訳なさやバツの悪さだった。 (@16) 2021/08/14(Sat) 19:52:26 |
卯波
「ああ〜次々女の子らしい単語。
メイク、……そっか、その年ごろくらいになるとするんだね」
何か思うことがあるのかうんうんと頷きながら。
大半は後輩がこんなに大人になって……という感情からくるものなのだろうが。
「俺は写真撮るひとだから、撮られる側の努力とかにも凄い興味があるんだよね。時間があったらちょっとだけでも教えてもらっちゃおうかな……俺がするわけじゃないんだけど」
宵闇に笑顔を返したとき
思い出したのは
双子でみんなのことを思い出していた数年前。
『お兄ちゃんは忙しいんだから僕たちに構ってばかりいられないさ。
だけどとっても大事にしてくれてる、夕凪もわかっているだろ』
わかっているわ。優しくて真面目な人だもの。
『涼風? 何してんだろうなぁ、まだ僕たちみたいに文章を書いてればいいけど。
それか新しい夢見つけていたりしているかもな』
それもいいと思う、もう何年も経ったんだから。
『編笠元気かなぁ〜、あいつと話すの大好きなんだ、なんか面白い仕事についたりしないかな。みんなが思いつかないような』
どんなことを好きになったのかな、とても気になるね。
『青嵐はさぁ、落ち着きが出たのか気になるよな。夕凪もあの時のこと……え、もういいって?僕が変わりに聞いてやるよ』
何をしているのか、二人で想像して。
会える日を夢見て、一緒に笑った。
『モモチは背ぇ伸びたのかな、まだまだ成長期だろうけど流石に夕凪の服はもう嫌がる歳だろ』
まだまだ可愛いわよきっと。
私の服も入るんじゃないかな。
いつまでもいつまでも夢を見るように話は続いていた。
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