203 三月うさぎの不思議なテーブル
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いいのに。
[ それくらい。とは思うものの、
先程のドライブインでは、さらっと会計を
させてもらったし、自分で、と言うなら
それ以上の問答はしなかった。
帰りのガソリン代を払うつもりなのは、
まだ知らないが。
はた、と、ああそうかこれが当たり前
ではないのがと思い当たる。
デートであることと、自分が会計を持つが
イコールでないのだ。
一人勝手に思い当たると、ペットボトル片手に、
湖へ向かう道を進む。 ]
[ 振り返る彼に返したのは、微笑みだけだった。
言いたいことや、聞きたいこと
まだいくらもあるけれど、どうにも、
君のその、笑顔を見ると、
胸が詰まって、一つも出てこない。
君は、初めてばっかり、教えてくれる。 ]
こちらこそ、来てくれてありがとう。
[ いつもの余暇のように、なにもしないを
するつもりだった。けれど、
それはどうにも、できそうにない。
いつの日かになら、これもまた
普通になるのかもしれないが、
今はまだ、君がいるだけでこの時間は
特別で代え難いものだから。 ]
結構美味しかったでしょ
[ 寄ったドライブインで、自分はいつも
天ぷらの乗ったうどんを食べる。
エビと、紫蘇と、茄子の乗っている
シンプルなもの。
やっぱり今日も妙に美味しかったし、
カウンター越しじゃなく、
向かいの席で食事しながら、した会話もまた、
楽しかった。
温泉宿いってみたいと言われた時、
自然といいでしょ、だとか返しながら、
少し引っかかるものも、あった。
良い意味でも、悪い意味でも。 ]
[ 昼食はうどん。
いつもの食事量を思えば、
腹ごなしが必要な程ではないから
座って、君を見ていた。 ]
少し、話さない?
あ、いや、話したい、が正しいな。
これでも結構緊張しているから、
わからないことがあったら、聞いて。
[ 時折、目を合わせながら。
また居心地悪そうに視線を反らしながら
少し長い、ひとり語りが始まる。 ]
この話をするのは、それを知らないままでは
言いたいことを、言えないからなんだけれど。
常連客で、好き嫌いはほとんどなくて、
趣味はバイクで、よく食べる。
それ以外のこと、ほとんど知らないよね俺のこと。
名前、検索ボックスに入れると、
わんさかあることないこと、出てくる人種……
昔、俳優やってたんだ。
最近また、そちらの仕事を請け負ったんだけど
7年ぶりくらいに。
離れた理由は、怪我で
今日、通ってきたとこなんだけど。
下り坂で、スピード殺しきれなかった
トラックが衝突してきて、運悪くて炎上しちゃって。
このあたり、から膝のあたりまで
大きく痕、残ってて。
[ 左脇腹を指差して、笑う ]
バイク乗ってりゃそんなこともあるし、
生きてるし、俺自身はあんまり気にしてなかったんだけど
その瞬間、俳優高野景斗の席はなくなって
今は細々と、所属してた事務所の
雑用とか、養成所の研究生に、
指導とか、してるんだ。
あとは、ラジオ聞いてるって言ってたから
言いにくかったんだけど、ラジオ番組を二つ持ってる。
[ 何か聞かれるようなことがあれば、都度
答えつつ、話はまだもう少し続く。 ]
そういう生活、結構気に入っているし、
自分を不幸と思ったことはないんだ。
バイクも変わらず大好きだし……
ってそれは今日、伝わったかな
ここまでの通り道も、そういやここで
転がったな、とか思うくらい。
でも、君のことを意識しはじめて
少し、考えたんだ。
――俺は、俺はね
好きな人が幸せなら別に隣にいるのは
自分じゃなくてもいいってずっと思ってた
[ ペットボトルの蓋を空ける音。
静寂の中では、大きく聞こえる気がする。
ひとくち、冷えた水を流し込んで ]
これからもそうなんだろって思ってた。
けど、どうもそうじゃないみたいだ。
君がもし、好きな人がいるんだと
そう言ったら、俺はきっと、それを
応援することも、祝福することも、
できないと思う。
誰かの幸せより、自分の欲を優先する
っていうのかな、今ちょっと実感してる。
なので、こういうことも込みで
[ 跳ね除けられることがなければ、
君の手を取って、隙間なく、握り ]
君の隣にいる権利が欲しい。
これを言うには、どうしても
昔のこととか、知っておいてもらわないと
フェアじゃないよなって思って。
あと今少し話題になってるから、
迷惑もかかるかもしれないし。
――あと今更だけど、男の子に
そう思うのは初めて。
俺も自分で戸惑ってるんだけど。
[ じ、っと君の顔を見る。 ]
最初は、良い顔みたな得した
笑顔いいな、とかそんな普通の気持ち
だったんだけど。
あと胃袋掴まれてるからか?って
思ってた時期もある。
おいしいんだもん、那岐くんの作るご飯。
そのうち、後輩の面倒見てるの
優しいなぁとか、食べ終わったのよく
気づくなぁとか。よく目で追うようになって。
名前、教えてくれたときに確信した。
[ 繋がれたままならその手を、
そうじゃなければ自分の手を、
忙しい音を鳴らす、心臓の上に。
肉と血とそれを通しても、生きてる
音
は
伝わるだろう。 ]
もっと知りたいと思うこれが、
恋なんだなって。
今すぐ俺を好きになって欲しいとは
言わないけど、少し意識してくれないかな。
言って良いなら言うけどね
ああでも、……こないだ店いった時
帰り際、困らせたかなって少し、思った
それは本意じゃない。
俺の好き、は那岐くんの迷惑になるかな。
もしそうなら遠慮なく。
それで消えやしないけど、
役者だからね、上手に
演じて見せるよ。
[ 長い話はこれで終わり。
最後に向けたのは、
役者らしからぬ、弱々しい笑みだった。** ]
[「荒れていた」と彼女自身がまとめた時代に彼女にどんな経験があったのかは知らない。
友達はその頃からの子が多いらしいが、どういった会話をしていたのかも知らない。
恋を知らずとも、誰かと過ごす夜は、と気になった一瞬もあったけれど。
どうやらその心配はしなくて良さそうなのかなと思うことが時々ある。
「全部食べて」もそう、
「寝る時」も、純粋に何の計算もなく言っているのだろう。
これまで実は危険だったことも結構あったのでは?
これから他の人がその無防備な可愛さを知る機会は全部自分が摘み取ることにする。]
[季節それぞれにおいしいものはたくさんあるから、食べ物に紐づいた好みで言えば、好きな季節は「全部」となる。
敢えて言うなら冬には自分の誕生日があるものの知り合いから忘れられがちなところもあるので、後で気まずい空気になるくらいなら誕生日はなくても良いかなと思っているので冬はなくて良いかもしれない、くらい。
店で誕生日を祝われる人がいればいつだって周りと一緒ににこやかに歌う自分の誕生日は、彼女以外はスタッフも客も誰も知らない。
けれど彼女の誕生日も冬ならば、これからは冬がたくさん来ても良い。
祝いたい。
祝われたい。
好きな人が出来て、好きなものが増えるのが――
相手の好きなものを増やせるのが自分であることが嬉しい。]
[胸板に彼女の身体が飛び込んでくる。
眼下でポニーテールがふわり揺れ。
その身体をぎゅっと抱き締めた。]
うん、お疲れ様。
……うん。
うん。
[零された言葉は具体的な内容ではない。
「私なりに解決出来たら」という言葉に強い意思が籠る。
解決したい、
解決するために頑張りたい。]
応援してる。
[腕に力を込めた。
どういうことかよく知らないのに、頭から「自業自得じゃないよ」なんて全肯定する言葉は出さない。
彼女にとって自分が自罰感情の沼から救う存在と認識されている、その信頼が嬉しい。]
疲れたらこうしてぎゅっとして、
「大丈夫」に戻してあげる。
踏み出す足が震えそうだったら思い出して。
「マシロちゃんが好きだよ」
[頑張りたい時にも頑張れない時にも傍に居る。
話すこと、また話さないことで「壊れたりしない」。
この腕は物理的には特別強くはないけれど、
彼女にとって一番最適な止まり木だという自信がある。]
[ケトルの中で湯が湧きたつ音がし始める頃、真白が「リセット」と言葉にした。
それを合図に少し腕の力を緩めて、少し下にある彼女の顔を見る。
お願い?と小首を傾げて]
[ケトルより先に、自分の体温が沸点に達した。
ここで!
名前呼びは!!
ずるい!!!!!]
[今日だけで何度この無防備な可愛さにやられたことか。
ああもう同じ角度に首傾けちゃって!!
かわいい!!!!!!!!!!
]
だめなわけないでしょ。
布団くっつけて、くっついて寝よ。
――ずっと手繋いでる。
[その想定が友人同士のお泊り会の感覚だということはわかってはいるんだ。
今から食べるマンゴー杏仁タルトに、理性を強く保てる材料は入っていますか、ねえナギちゃん―――――*]
| かっこいいよ。栗栖くんは。 [どこか照れ臭そうに見える栗栖に >>160今度はちゃんと目を見て告げて。 そして先程の種明かしと、真っ赤になる彼に こちらまで被弾してしまって。 >>161拗ねた顔を揶揄う余裕もなかった。] いや、その、だ、だってさあ!不意打ちはずるいじゃん! た、食べるよ!私だって!! [恥ずかしいなあもう!! 真っ赤なまま言い返し、釣られるようにお通しを食べる。おいしいね!!! そんな中でふいに告げられた言葉に 一度、ぱちりと瞬きをして。 >>161] (176) 2023/03/10(Fri) 11:18:31 |
| ………うん。
実を言うとね、私も今日は 君に伝えたいことがあって来たんだ。
[あの泣いてしまった日から色々考えて。 前に進みたいな、と思って。 気合を入れた格好で今日は来た。
そして玲羅は別段この手の機微に鈍くはない。 だから、――さっきは一回流したけれど この雰囲気から出てくる「言いたいこと」が何かって… 考えればどうしたって期待して、浮ついてしまうけれど。
でも、それは彼の口からはっきり聞きたいことだから。]
(177) 2023/03/10(Fri) 11:28:28 |
| ……君の話。私と同じだといいな。 あとで答え合わせさせてね。 [内緒話をするように囁き返し。 まだ頬を染めたまま、微笑んで。] (178) 2023/03/10(Fri) 11:30:26 |
| うん、食べよ食べよ! [予感は一旦胸に留め。 ぱん、と軽く手を叩いて 運ばれてきた料理に手を付けようか。 良い匂いを漂わせる海老とジャガイモのオーブン焼き >>124を マヨネーズソースと共に小皿にとりわけ、栗栖に渡す。 そして炭水化物イケます!と、 シャミさんにグッと親指を立てるなどした。 海老出汁、絶対美味しいじゃん。だって。**] (179) 2023/03/10(Fri) 11:31:55 |
| (a33) 2023/03/10(Fri) 11:35:13 |
[微笑みを交わして、返ってきたのは同じ言葉。
行きたいと言ったのはこちらの方。
だから、ゆっくりと首を振り返して湖へと視線を移す。
海よりも穏やかな波。
漢字は違えど、凪とはこういうものかと感じながら。
昼食の話になれば、同意するように一度、頷いて。
彼が座れば、水際から戻って隣へ並ぶように腰を落ち着けた。
話を切り出す声に、視線を一度交えた後に、また湖へ。
隣合うから、自然と同じ方向を向いた。
聞いて欲しいという時だけは目を見合わせてまた頷きを。
ゆっくりと紡ぎ出される話に、耳を傾けていく。]
[メッセージで聞いたような
自己紹介から始まったその話は、彼の過去。
改めて彼の口から語られる職業と事故の話。
知っていたことと、初めて耳にすること。
先程、通ったばかりの道で
彼の人生を変えてしまうほどの
出来事があったと聞いた時には、
目を瞠り、思わず指を指し示した身体を見つめて
顔を見合せた。]
[バイク事故に遭った人の話を聞いたことがある。
その人は、バイクの怖さを知って、
もう二度とハンドルを握ることは無くなったけれど。
彼と同じように九死に一生を得たのだと言っていた。
今でもバイクに乗る彼は、
恐れよりも愛しさの方が勝ったのか。
幸か不幸か、まだハンドルを握っているようだけれど。
身体で感じれる風の気持ちよさを、
教えてもらったばかりだから。
否定することも危険だと伝えることもしない。
それは、彼自身が誰よりも知っていることだろう。]
[不意に、話の質が変わる。
ペットボトルの開封の音が妙に響いて、
水を嚥下する横顔を見つめて。
遅れるようにしてつられるように、缶を開けて。
コーヒーを一口。
砂糖もミルクも入っていないコーヒーは、
彼を同じブラック。
苦さを口に含んで、腹の底に押し込んで。]
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