148 霧の夜、惑え酒場のタランテラ
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[生きている間に、終ぞ叶えることが出来なかった。
―――
復讐
を果たすことが出来る。]
[この五年ほどの間、
憎い奴らの顔を忘れることはひと時もなかった。
全員しっかり覚えている。
……残念ながら、未だ巡り会えてはいないんだけどね。
僕が知る限りお客様たちは、基本良い人ばかり。
それが世界中の善人比率が高いということの証左なら、
それはそれで良い事だとも思うけれど。
流石に僕も良い人相手に悪さをすることはしないよ?
あんな死を遂げたからこそ、
良い人が理不尽に不幸な目に合うのは、大嫌いだし。]
[復讐は何も生まないとはよく言ったもので。
確かに生まない。
僕が悪党の魂をその身から引き抜けば、
悪党から生まれる筈だった被害者も
生まれなくなる
。
だからといって、自分の行いを正当化するつもりはない。
命を奪う事は、例え相手がどんな人間であろうと、
それが正しいなんてことは、決してあり得ないと思う。]
[運命の再会を果たし、
内心で
「ここで会ったが百年目」
なんて
ほくそ笑む日はきっと来る。
それが僕の持つ、強くて暗い願望。]
[霧の夜に惑い、一歩でもこの店に足を踏み入れたら最期。]
置いていこうとする仲間には拒絶を
俺を受け入れてくれるやつには
仲間だと言って
そしてまた俺は置いていかれることに怯える **
[一目見た瞬間に、ありもしない心臓の高鳴りを感じた。
電撃が走るように鮮烈な、運命の出会い。]
[やっと
会
いに来てくれたんだね!
ずっとずっと、僕はここで
待
ち焦がれていたんだよ。]
[そ知らぬ顔で近づいて、注文を取り料理や酒を提供する。
最初はビールを飲んでいたけれど、
「お薦めはあるか?」と聞かれたから、
オリンピックとブラッディマリーを出してやった。
その意図に気付くこともなく、美味しそうに飲んでいたよ。
滑稽だね。さてはこの人、教養がないな?]
[
子供らしい笑顔で、話を聞いた。
その裏で、賢しさと殺意を研いで。
この日は他が疎かになってしまったけれど、
どうか許して欲しい。
何年も待ちわびた、千載一遇のチャンスなんだ。
「海賊は格好良い!」「僕たち海の男の心は一つ」
そんな虫唾が走るような嘘も、平気で吐いた。
店員が、お客様に嘘を吐くわけにはいかない?
奴はお客様じゃない。憎い仇だよ?]
[ブラッディマリーでの宣言通り、
霧が晴れる前に僕は無念を晴らした。]
[一人の未練を抱えたゴーストは
そのまま、光と共に
溶けて、消えた。
その表情は、幸せそうに笑いながら───── ]
[ 命とはどれだけ鍛えたとしても
永遠になどなれない。
人はいつかこちら側へやってくる。
きっと俺は未練が多かったんだ
迎えにきて欲しかった
(亡骸を見つけて欲しかった)
死を悲しんで欲しかった
(弔って欲しかった)
みんなで力を合わせて逃げたかった
(一緒に戦って欲しかった)
逃げたアイツらを殺してやりたかった
(後悔をして欲しかった)
どれも
正解
。
そして今はどれも
。 ]
[ 魔法の使えない人の子
君のおかげで和らいだ子もいたんだったか
料理長の不在は重たいけれど、なんとかしよう。
海に持っていくには熱すぎる炎の行先
仇
は無事に見つかったようでよかったね?
幼子が背負うには大きな傷だ
もし次来る時があれば
今度こそ最果ての地を見てくるといい
今度は幼子なんて言われないよう、成長してね。 ]
[ 誰よりも不真面目なように見えて
誰よりも真面目だったのかもしれないね
次もお客さんとして来てくれる彼には
きちんと指輪は返しておくよ
一度覚えた
絶望をもう一度
目の当たりにすることになっても
選ぶと言うなら ただ祈ろうか
君が愛した人の
生
を
次は夢でなく、現実に見るといい
まだ見ぬお酒も、出会いも 幸せも
きっと君をこの世で待っているよ。 ]
[ やっぱり君は光だったと思うよ
自らを燃やし尽くしてしまう光
話していなかったけれどね
僕の道は照らされているんだ
最愛の人は ここへ居るから。
僕に君の道を照らしてあげることは出来ないけれど
そうだね、もし戻ってきても望むなら
この世から、
消
してあげようか。
…なんてね 燃え尽きてしまう前に
灯りを見つけることを願っているよ
休暇の後
見つからなければ、帰っておいで。 ]
[ 君とはまだ長い付き合いになりそうだね
この先もずっと、かな。
失う痛みを知りながら
与える痛みを知っている
君の未練が永遠に晴れる日が来ないのだということも
気づいているから、目を瞑る
終わらない時も退屈なんだ
そろそろ
互
いの話でもしてみるかい?
───冗談さ 僕たちには必要のない話だ。 ]
| お会計はエアハートが奢ってくれる、 >>188 そういう話だったのは覚えてたけど…… 話を聞いてくれたゴーストさんたちのために 私も少しでも、と思ったから。 だから、余計に払った分は 心付けとして置いておきたいなと思ったけれど… ダメそうなら無理には置いていかなかった。 酒場を出た後、一度自室に戻って 故郷へと戻るための用意をしてから ギルドへとキンウに渡してもらうつもりの手紙を 持っていった。 (320) 2022/05/30(Mon) 23:48:21 |
| 酒場で聞いた彼女の話は 夜が明けてもちゃんと覚えている。 ひとつの場所に留まれない理由も 吹き矢なんて物騒なものが飛ばされる理由も。 大変だったんだ、とか月並みなことしか 言えなかった気がする。 非力だから、キンウの力にも… あんまりなれないだろうし、ね。 真名を聞いた時、私は確かこういった。 >>315 「貴女によく似合ってる名前だね。
貴女の笑顔、太陽みたいだったから。」 お酒が入った勢いはあるけど、これは本心。 そして教えてくれてありがとう、 とその時はお礼を言ったんだったかな。 (322) 2022/05/30(Mon) 23:50:06 |
| パーティを組みたい、といった 私の誘いは反故にするつもりはなかったから ギルドに残した手紙には 「暫く所用でプロテアを離れるけれど 必ず戻ってくる。 戻ってきたときは、一緒にダンジョンに行こう」
なんて、書いて。 それを見てから彼女が私を追いかけることは… タイミングがよければ、出来たかもしれないけれど。 でも、私の知らない所で隠れ家を譲ってもらったり 色々あったみたいだから……どうだろう。 (323) 2022/05/30(Mon) 23:50:53 |
| *** 故郷にある外れの森にセシリーのお墓はあった。 殺されたと、里の皆に知られたようで。 寂しい場所に、弔われていた。 セシリーが生きた証は…… もう、残っていなかった。 セシリーの死の原因は、何処からか 里の皆にも伝わってしまったらしい。 セシリーは里の恥だと、 生きていた時に好かれていたのが嘘だったみたいに、 好意の全てが反転したかのように 嫌われていて。 貴女に純粋な好き、を向けられなかった私なのに 哀しいな、と思ってしまうのはなぜ……? (325) 2022/05/30(Mon) 23:51:53 |
「セシリー……ごめんなさい。
私にとっての正解は、選べなかった。
世界にとっての正解を、選んでしまった。」
ずっと、後悔していた。
それでも、
そんな私が祈っていいのなら、届くのなら…。
「貴女にとって、どうだったのかは…
今度会えた時に、教えてよ。
恨んでくれていて構わないから…。
貴女が……セシリーが、何処かで
笑っていてくれますように。」
何処にいるか分からないセシリーに届いてほしいと。
彼女のお墓の前で、小さく呟いて。
| 「さよなら、セシリー。」 頬を伝う涙はそのままに、 里を後にした。 (326) 2022/05/30(Mon) 23:53:03 |
| そして、また霧の夜が来たのなら。 私は、またあの酒場を訪れることになるだろう。 もういない店員がいると知れたなら その人の行く末を思って。 変わらず酒場にいる人、 以前は見なかった人に対しては…… どうだろう、占いでもどう?なんて。 言って見たかもしれない。 それは、行ってみなければわからないけれど。 いつかは来るだろう霧夜の前日に 流れる噂を耳にした私は、きっとこう言う。 「私が行った中で一番素敵な酒場だった。」** (327) 2022/05/30(Mon) 23:54:09 |
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