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【人】 食虫花 フィオレ同じ頃、近くのショッピングモールで記念セールが行われているらしい。 朝から景気よく花火も上がっていて、パレードも相まって人通りはいつもよりも少し多いくらい。 キャップを目深に被って、カジュアルなパーカー姿の女が人込みの中を歩いている。 ノーハンド通話でもしているのか、ぶつぶつと何かを呟きながら。 花火を眺める人達の間を縫っていく。 「―――」 長身の男が、視界に入る。 目を細める。口元のインカムに何事かを呟いて。 後ろから近付いていく。その匂いは、姿は、よく知っているものだったから。 殆ど至近距離。背中に近付いて、口を開く。 「―――Ciao.」 そんな声は喧騒にかき消される。 背中に突き付けた拳銃が、間違いなく右の胸に向けられて。 人差し指が、引き金を引いた。 消音器で抑えられた音は、花火にかき消えてしまうだろうか。 それでもそれは確かに、放たれたのだ。 (3) 2023/09/26(Tue) 21:53:37 |
フィオレは、拳銃を下ろした。もう、必要ない。はずだ。 (a0) 2023/09/26(Tue) 22:13:09 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、ぐ……」 地に身体が押し付けられる。 露出した肌に、転がった砂利が食い込んで眉を寄せた。 携帯には手を伸ばすものの、自由に動けるあなたにかなうわけもなく。 返して、と口では言うものの。きっとそれは聞き入れられないのだろう。 あなたの下から、女が睨みつけている。 「話すと、思ってるの……」 「何も話すことはないわ、あんたみたいな人に……!」 体重が掛けられたくらい何だ。そんなことで仲間を売ったりはしない。 気丈な態度の女は、簡単には屈しないだろう。 (-5) 2023/09/26(Tue) 23:44:27 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ「それを言うなら。」 ざり。体重をかける。度に靴底が地面と擦れて音を立てる。 「黙秘の権利があると思っているのか。」 「お前のような悪人に?」 横向いて倒れた貴方の身体を、押さえつけた膝で地面に転がした。仰向けに、急所の多い腹が自分に正対するように。 「吐け。」 「それとも吐くか?」 ぐ、と。 重みが食い込む先は、貴方の腹だ。 (-17) 2023/09/27(Wed) 16:03:40 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「あっきれた……悪人は、人間じゃないとでも言いたい、わけ?」 は、と挑発するように笑ってみせる。 警察だろうが関係ない。この男の言い分に乗ってやるつもりはない! 「っ、ぁ…く……」 背中が地に付けられて。 柔らかな女の腹に、男1人分の体重がかけられていく。 苦悶の表情を浮かべていたかと思うと、女の体が小さく跳ねた。 甘い声が漏れる。 内臓が圧迫されて苦しいのに、苦痛とは別の波が襲ってきていた。 女は、性行為をしてきた直後だった。 だから、あなたの責苦に快楽が揺り戻されている。 苦痛が上回れば、流石にそれどころでなくなるだろうけれど。 (-23) 2023/09/27(Wed) 17:23:57 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ「先にそうしたのはお前たちだろう。」 成り立たない会話の応酬。 貴方もそろそろ気づくだろう。どうやらこの男は貴方を人間扱いする気持ちがそれほどない。 けれどそれには男の中で何か理屈があるらしかった。貴方の気にすることではないが。 「お前たちは」 ぐ。 「他者を尊重するのか?」 ぐ。 「しないだろう。マフィアだからな。」 ぐ。ぐん。 一定のリズムで圧迫される内臓。 さて次の責め苦をどうしようかと考える間の手慰み。 続く暴力を予見させる行動。カウントダウン、だったはずの、それ。 対する貴方の反応に、男は怪訝な顔をして動きを止めた。 薄暗い路地。表情は伺えず顔を寄せることになる。 発作か何かを起こしているなら厄介だ。まさかこの行為が、貴方の快に繋がろうとは思うはずもなく。 (-30) 2023/09/27(Wed) 18:58:32 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオこの男が何を言っているのか、女には理解が及ばない。当たり前だ。 「バカ、ね」 「私たち、ほど、っ…繋がりを尊重、するところ…ないわよ…っ」 少なくとも、あんたよりはずっと。と口角を上げて。 は、と熱い息を吐く。下腹部が疼いて、喘ぎ混じりの声が小さくこぼれる。 場違いのようにも思えるその反応に、あなたが顔を近付けたのなら。 そこはハニートラップを生業とする、彼女のテリトリーだ。 「っ、ふ…… 捕まえた 」自由な腕が、あなたの首に回されて。 ぐ、と彼女の方へ引き寄せられる。 あなたの唇に、女の唇が合わせられた。そのまま、抵抗の暇すら与えず 唇を舌でこじ開けてやる。 マフィアを毛嫌いしている様子のあなたなら、嫌悪から身体が離されるはずだと踏んで。 吐き気と快楽が迫り上がるのに耐えながら、あなたの口内を犯そうと舌を蠢かせた。 花の棘には毒があるの。 気安く触れると、痛い目を見るわよ。 (-41) 2023/09/27(Wed) 21:34:50 |
【人】 路地の花 フィオレ>>38 ロメオ 「……」 そうなのかもね、なんて言葉を口にしようとして。 結局は開いた口からは何も発さずに、クッションに頬を埋めている。 いやな気持ち悪さだけが、ぐるぐると頭の中を回っていた。 「分かんないわよ……」 「……もしかしたら、……ううん、」 何でもない、とやはり言葉を飲み込んだ。 私が間違えているのかも。とか。本当は、もっと確かめるべきことがあったのじゃないかとか。 全部、全部。今更だ。 「これで、子供たちの未来が救われればいい…」 「もう、誰もいなくならなければいい」 ロメオ、とあなたの名前を呼んで。 後部座席で両手を広げている。寂しい時の、合図だった。 (50) 2023/09/28(Thu) 2:27:52 |
【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡にまにまと笑いながら話を聞いている。 言いづらそうな理由なんて知らなかったから、ただあなたが珍しい顔を見せてくれるから。 楽しくなってしまって。 「そんなことがいいの! アレの腕の中、凄く安心するんだから」 「ね、約束よ。ちゃんと叶えてよねっ」 ホッとしたように息を吐いて、笑みを返す。 こういう反応はやはり、あなたに甘えているからなのだろう。 年下らしいと感じるかもしれない。 あなたとの未来を、疑問なく信じている。 「ん……ふーん、ふふっ」 「好きじゃない、それは大好きだって言うの! 嬉しいな、アレがそんなに私のこと考えてくれてたなんて」 そんな顔しなくてもいいのになんて言いながら、頬を染めて笑う。 いつもじゃれ合っているきょうだいが、いつになく褒めてくれたのだ。 可愛がられている自覚はあったけど、言葉にしてもらえるのはまた違ったうれしさがあった。 「私も、アレのこと大好きよ」 「だから、早く出てこれることを祈ってるから」 かしゃん、と牢に手を置いた音が小さく響く。 触れられない。 だから、触れられる場所に早く戻ってきてくれますように。 「じゃあ、そろそろ行くわね。 フレッドが何も怪我してないといいけど……アレも、これ以上怪我しないようにね」 (-60) 2023/09/28(Thu) 2:49:03 |
【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレくそー、なんて悪態をつきながら、 はいはい、と手を振った。 「全く、今お前を抱き寄せられないのが残念だよ」 「約束約束。叶えるから」 ――嘘。 珍しく嘘をつく自分に顔をしかめて、 けれどかつて、腕の中にあった体温は本物だった。 それを確かめるように、自分の腕をさすって、 「大好きね、……まー、そうかもな、うん」 その言葉を口にすることが、正しいのか。 自問と自戒が渦を巻いて、普段はくるくると回る口を重くする。 そうしているうちに、格子が音を立てる。 届かない手をこちらに伸ばす女に、 もう 届かない笑みを返して。「おー。俺もそう祈ってるよ。 お前も無茶すんなよ、怪我も。あーそれともし金とかないってなったら、俺の口座にはいってるから。あれ、非常用。ちゃんと使えよ!」 はよ行け行け、なんて手ぶりをしながら、あれこれつけたしで放り投げる。手が触れられないなりにあなたを気遣う言葉をいくつも取り出して、 「帰り。車気を付けな」 ──見送った。いつものように、いつものようにはできずとも。 (-64) 2023/09/28(Thu) 5:53:10 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ逮捕された人たちが解放されてから、暫く経って。 落ち着いた頃合いにメッセージがひとつ。 よく知るところとなった女からのものだ。 『Ciao,テオ』 『夜、どこかで時間取れない?ゆっくりお話したくって』 『何か飲みたいものとかあれば持って行くわ』 (-66) 2023/09/28(Thu) 7:29:00 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ口元が“N”の形を作った ────お前たちは違う。 それはこれまでも繰り返されてきて、これからも繰り返される否定。 しかし、その唇から音が発されることはなかった。 絡め取るように回される腕。それから柔らかい感触。 しまった、と思った時にはもう遅い。内側の粘膜にまで触れられ、それが口付けであると遅れて知る。 勝ち誇ったようなターコイズが近くで細まった。のを、見て。 男は、 その首を絞めた。 何よりもまず嫌悪。背筋から項までが総毛立つような不快感。その次に焦り。何かが仕込まれてやしないかという恐怖。油断した。まずかった。マフィアとはそういう生き物だ。 舌に噛み付くなんてそれなりの高等技術は思考に及ばない。まず飛び出すのは手。片手で貴方の首を押さえつけて絞めあげ無理矢理引き剥がそうとする。これは男の腕力だ。通常なら負けることはないだろうが。 (-80) 2023/09/28(Thu) 10:56:12 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、!」 口内を堪能するような時間は与えられず、女の細い首はその手に捕えられて。再びこの地に縫い付けられる。 ギリ、と締め上げられて。首に回していた腕で、あなたの片腕を握って離させようとする。 女の腕力だ、敵いっこない。 この口付けは、咄嗟に思い付いたものだ。 故に、何かを仕込む余裕などなかったのだが。あなたを疑心暗鬼にさせたならそれで十分仕事を果たせたと言える。 打って変わって、あなたの下の彼女は苦しげに顔を歪ませている。 結局のところは引き剥がせなかったわけだから、形勢逆転とまではいかなかった。 (-81) 2023/09/28(Thu) 11:21:47 |
【秘】 新芽 テオドロ → 路地の花 フィオレ『いいですよ』 『なんでもいいです』 音声入力なんかしたことないし、かといえ細かいニュアンスを記せるほど自由な指はないから、突き放すというかもはやただただそっけない文面になってしまった。 『一度家に来ますか』 『開けています』 ベランダに飾っている花たちのことも考えなくてはならないし。 そんな気分で、軽い気持ちで家に招くのだった。 (-90) 2023/09/28(Thu) 14:11:43 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ『はいはい、じゃあ適当に持ってくわ』 手の状態は知らずとも。 まだ万全ではないのかも、ということくらいはわかる。 『元々家で済ませるつもりだったから、出かける準備はしなくていいわよ』 『買い物が終わったら向かうわね』 サングリアやワイン、カクテル用のジュースパック。 それからスプーンやフォークを不要とするご飯やデザートの類をいくつか買っていく。 せっかくだし、遅れた退所祝いみたいなものにしてしまおう。そんな魂胆で。 買い物を終えたなら、あなたの家に向かっているだろう。 メッセージが来た日の夜、あなたの部屋の扉がノックののちに開かれた。 (-91) 2023/09/28(Thu) 14:21:23 |
【秘】 新芽 テオドロ → 路地の花 フィオレ「本当は次に備えて、 もう少し整理とか準備などしてようと思ってたんですが」 「あまりにも予定のブッキングが多かったですね」 以前来た時とまるで変わらない、 どことなく寂しいシンプルの過ぎる部屋を背に出迎える。 これ以上どこを整理できる場所があるというのだろうか。 「さ、適当に置いて行ってください。 俺が手伝えることは殆どないでしょうので、あんたの勝手に。 勿論狼藉を働いたら蹴り出しますが」 出迎えも漫ろに背を向けて歩いていく。 手袋の嵌められた腕先の動きは少々ぎこちなく、室内でつけているのはまあいいとして、この季節にしては暑苦しそうに見えただろうか。 (-94) 2023/09/28(Thu) 14:44:50 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレくそ女、とは言わなかった。 それなりの自制、それなりの理性、それなりの当然の善性は、男にもあった。 この時は、まだ。 焦りで鼓動が逸る。それで思考が鈍くなり、貴方の首を押し付けるようにする力ばかり強くなる。はっと下を見れば酷く歪んだ顔があって、男はそれにも動揺した。動揺した自分に、それを催させた貴方にまた苛立ちが募った。 舌打ちがひとつ飛ぶ。ままならない思考とこの行為に対して。伴って男は貴方の上から退き、同時にその半身を蹴り飛ばした。 八つ当たりだ。 貴方の身体が再び砂利を擦って転がるだろう。壁にでもぶち当たればどこかしらが切れるかもしれない。しかしむしろそれを利用して、距離をとって立ち上がろうとすることは不可能ではない。かもしれない。 (-95) 2023/09/28(Thu) 14:48:28 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ「何、準備って私のために?」 「これ以上整理なんてしたら、この部屋から物なくなっちゃうわよ」 軽口を叩きつつ。 よいしょ、とまた大荷物をテーブルの上に置いて。 今すぐ食べないであろうデザートは、いくつか冷蔵庫に入れさせてもらって。 空きを聞いてなかったから、入ってよかったと思う。 「まあ警察もあんなことがあった後じゃあね」 「今時間取れてるのが奇跡なくらいじゃない。まだ全然落ち着いてないんでしょ?」 怪我人に手伝わせるわけにはいかないと、最初から自分で準備するつもり満々だったようだ。 テーブルの上に酒と食べ物を並べていく。今日は出来立てのものが多く、料理はまだ温かい。 たまにちらりとあなたの様子を見ては、手、相当ひどいのかななんて気にしたりして。 「狼藉なんて働いたことないでしょ、失礼ね」 「それより、手袋。暑くないの?外せとは言わないけど」 まだ見せたくないんでしょ、と。 物を並べながら、何でもない風に。 それでも顔を見たのなら、ちょっとだけ拗ねてるようにも見えるだろう。 (-110) 2023/09/28(Thu) 20:47:55 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ首がギリギリと、強く強く締め上げられる。 息が出来ない。視界が歪んで、腕を剥がそうと掴む手から力が抜けそうになるのを何とか気力で堪える。 舌打ち一つ、耳に入ったかと思えば。 空気が入り込んでくる。気道が塞がれ続けていたせいで、異物が入ってくるような感覚に咳き込んで。 ガッ!! それも長くは、許されない。 蹴り飛ばされた体は、砂利の散らばる石畳を勢いづけて転がっていく。 尖った石が肌を傷つけ、白い肌に小さな赤い花を咲かせる。 壁に背中をぶつけ、今度は身体を丸め大きく咳き込んだ。 痛みと、苦しみとで表情は歪んだまま。 あなたの方に、顔を向ける。 「っ、けほ……は、……」 苛立ちを見せるあなたに、女が笑みを浮かべてみせたようにみえたかもしれない。 (-117) 2023/09/28(Thu) 21:50:08 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ再び踏みつけにしようとした足はそのまま地に降ろされ土を蹴った。それは子どもの癇癪じみた仕草だった。 二度もあんな気色の悪い声を聴かされるのはごめんだ。 けれど男は子どもではないから、続く動作には悪意が込められて遊びがない。 裏路地の砂ぼこりが巻き上げられてぱらぱらと貴方の顔やら身体に降り注いだろう。荒く息をした口にも僅かに入り込んだかもしれない。浅い青の瞳に触れそうで咄嗟に瞑ったかもしれない。 男はその隙を狙う。 ざり。体重の位置を僅かに変える音。そのすぐ後。 丸まった腹を目掛けて蹴りが飛んだ。上手くいけば薄い腹に深く入るはずで。 加えて再び弾かれた身体はまりのように弾むはず。 「盛ったか?」 「何か。」 この国じゃサッカーは人気のスポーツだ。 蹴飛ばす以外に同じところはなく、全く愉快にはなれなかった。 (-146) 2023/09/29(Fri) 1:10:45 |
【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡「ふふ、ここから出られた時の楽しみに取っておきましょっ」 「アレならすぐにでも出てきちゃいそうだけど」 きっと、そう時間はかからないはずだ。 あなたのことを信頼している。本当に。微塵も、約束を疑わない。 「あは」 「嬉しい、ホントに。アレ、全然言ってくれないんだもの」 珍しく素直な言葉をいくつも聞けたからか、妹分の女は心底嬉しそうに頬をほころばせて。 こんなこと今後あるかもわからないから、噛み締めるように大好きかあ〜と口にしたり。 「もー、何年ここにいるつもりでいるのよ」 「お金だって足りてるって言ってるのに……過保護よ、過保護! …ま、いいけどね。うん、アレが安心できるようにちゃんと守ってみせるわ」 格子に置いていた手を離して、呆れたような顔ののち。仕方ないなあと緩めて。 体温代わりに投げられた気遣いを、大事に大事に受け取った。 「うん。フレッドにもアレが元気そうだったこと伝えておくから」 それと、と一度言葉を切って。背中を向けて少し歩いたかと思えば。 振り返って、にいと笑う。 「アレ、大好き。また会いにくるから!」 ばいばい、と手を振るのだろう。また会えると信じて。 次はもっとゆっくり話せればいいなんて、叶わない願いを胸に抱くのだ。 (-151) 2023/09/29(Fri) 1:49:11 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオげほ、げほ、と咳き込んでいれば。 少しだけの間を置いて、砂埃が女を襲う。 口の中がざらつき、目に入らぬよう瞑った目を両腕でかばって。 あなたの思惑通り、大きな隙が出来る。 「 が、っ! う……ぐぇ……っ」靴先が、女の腹に突き刺さる。 一瞬浮いた体は、もう一度壁に思い切りぶつけられて。 再び地に落ちた。まるでボールのような扱いだ。 膝で圧迫されていた時とは比べ物にならないくらい、抉るような衝撃が内臓を襲って。 その場に胃の中のものが吐き出される。 つんとした匂いが鼻を刺激して、口の中がきもちわるい。 その衝撃で、ポケットから 注射器 が転がり落ちる。中身こそ空になっているが、使用された形跡のあるもの。 疑心暗鬼になっているあなたは、これをどう取るだろうか。 「っ、ぐ……あ、は」 「どう、おも、う?」 青い顔で、しかし。 負けるわけには、いかなかったものだから。 (-157) 2023/09/29(Fri) 2:05:05 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレびちゃ。 きっとそういう音。濡れた音が地面に散った。 同時にすえた臭いが立ち上り、男は厭うように距離を取ったろう。誰だって汚物で衣服が汚れるのは嫌だ。 ────それでもきっと、 ここにいたのが貴方ではなく一般市民であれば、 迷いなく助け起こそうとしたはずだ。 潰れた蛙のような声を上げて身を震わせる貴方を、視線で見下して男は眺めていた。 月色の目を丸くして見ていた。そうしてひとつ、静かに息を吐いた。ぱち、ぱち。瞬きは油断の合図であり、転換の印。 一度目の暗転の後、瞳はまだ貴方を見ていた。 二度目の明転の後、瞳は転がる注射器に向いた。 男が手を伸ばす。貴方が奪い取らないのであればそれを拾い上げるだろう。しゃがみこんで、針先を見つめて。 「使ったのか?」 誰に、と言わなかった。 むしろそれは、自分ではないと確信した落ち着きだ。 逸っていた鼓動は今は収まっている。体温の上昇や低下、発汗等もない。それに針を刺された感覚はなかったし、液状なら──思い出したくもないが──口づけで仕込むのも不可能だろう。 だからこそ。 だからこそ問う。 無辜の民を犠牲にしたかと問う。答えの見えた問いだ。 見えているから、畳みかけて問い質す準備は出来ている。 (-163) 2023/09/29(Fri) 2:55:48 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ暫く、まともに声を出すことすら叶わないだろう。 身を丸めて、痛みを逃すのに精一杯で。 転がった注射器を拾う手を、止めることは出来なかった。 中身は空であるし、仮に女の体を調べたところで元の液体を持ち歩いているわけでない。それが何であるかまではここではわからないだろうが。 「……どう、かしら…使ったか、どうかくらい……見れば、わかるでしょ」 時間稼ぎにもなるか怪しい返答だ。 使用されていること自体は明白だから、否定する意味もない。 痛みを堪えながら、片手を身につけておきあがろうとしている。 もう片方の手は腹にあてて。ぐ、と力を入れる。 動きは緩慢で、簡単に妨害できてしまうだろう。 (-175) 2023/09/29(Fri) 8:45:36 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ肘の辺り目掛けてふるった。注射器を掴んだ手だった。立ち上がる仕草を妨害する。 というよりは、嬲りに偏ったような動作だ。 当たり所が悪ければ関節が非可動域に曲がり込んだかもしれない。或いは、使用済みの注射器の針が刺さったかもしれない。単にバランスを崩して、再び地面に顔から叩きつけられただけだったかもしれない。 血液の匂いはここにない。 ここにいるのは血に飢えた狂犬ではない。 「人を殺しておいてその態度か?」 「心が痛まないのか? これだからノッテってのは嫌なんだ。」 決めつけ。マフィアとはそういう生き物だ。 しかし今回はひとつだけ当たっている。貴方が人を殺したということ。 「黒眼鏡の命令か?」 問いながら自分の携帯を取り出す。 逃げない内に応援の要請。それから被害者の捜索が急務だ。相手をねじ伏せて少し落ち着いた頭は冷静な判断をしようとし、しかしそれは隙にもなる。 (-190) 2023/09/29(Fri) 13:19:31 |
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