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【人】 IX『隠者』 アリア―― 随分と身勝手な神様ですね。 [ その場は静まり返っていたか、 あるいは平静を失った外野のざわめきがあっただろうか。 どちらにせよ。 全員の集められたホールに、そんな女の声が落ちた。 ] (46) 2022/12/14(Wed) 1:55:01 |
【人】 IX『隠者』 アリア [ きっと彼女は愛しているこの世界を、 あればいいと彼女は思うのだろうか。 ならば世界は滅びずこのまま在る方が良いだろう。 けれど滅びるなら、止めはしない。 私はそれでいいと思っている。 ] (47) 2022/12/14(Wed) 1:55:38 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ この声がどこまで届いたかは定かでない。 誰かに反応されるならそれはそれでいい。 怯えるアリスが誰かに抱きつく。>>@0 呆然とするシールの姿、>>@1 こんな時にだってらしい反応をするトリス。>>@2 その全てを目に、私はひとりのもとへ歩み寄った。 ] (49) 2022/12/14(Wed) 1:56:19 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ いつか。 初めて聞く声で語られた思いを>>0:234 遠く見果てぬ夢の一欠片を、 私に話してもいいとしたその信用には報いようと思った。 まあ、普段はたびたび人に店番をぶん投げて 花畑で午睡に励んでいるような人物だけれど。 (正当な休暇であることもあるとは思う、たぶん) 売店の引き出しに収められた薬は>>0:237 本人を捕まえるほどでもないと思うような瑣末事に。 証持ちには基本は無用の長物であろうが、 職員に利用されることもたびたびあると聞く。>>0:654 「どうせ暇なので」の延長線上で 仕事を果たして報酬を得る、>>0:236 そんな只人のような体験がすっかり組み込まれた日常 ] (51) 2022/12/14(Wed) 1:57:03 |
【人】 IX『隠者』 アリアこれはあなたにとって好機たりえますか? [ それは人を説得し得る材料になると。 ほんの欠片の夢を、実現する足掛かりとして 私もあなたも全てが世を去っても続く未来まで 希望をかけるほどの価値は、期待値は世界にあると思う? ] (53) 2022/12/14(Wed) 1:59:00 |
【人】 IX『隠者』 アリア明日の朝、答えを聞かせてください。 私はそれを参考にしようと思います。 [ 一日。たった一日の検討時間で、 いかな結論へと至るのかは誰にもわからない。 けれどどう転ぶことになろうとも、 その一日を共にありたいと思う存在は、 きっと他にあるはずだ。彼も、……私も。 ] (54) 2022/12/14(Wed) 1:59:25 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ それでは、とフォルから視線を外し踵を返す。 そのまま場を辞そうとして、 今度は、シトラの前でいったん足を止める。 ] シトラ、 私は上にいるから、会いたくなったら来て。 ひとりで考えたいならそれでいいし、 ひとりが不安になったら私がそばにいる。 他の人と話してみるのもいいと思うし、 お茶でも飲んで落ち着きたくなったら、 また一緒に、お茶会しよう ……私のブレンドはなんか薬っぽくなるし、 やっぱりスペシャルブレンドがいいかな [ 茶葉あったっけ、と独り言ち、意識して表情を緩める。 下手な笑顔だ。元々ちっとも慣れちゃいないけれど。 またあとでね、とやさしく言葉をかけて。 彼女の返事を聞けば今度こそ、 上りの階段を、すたすたと登っていったのだろう。 *] (55) 2022/12/14(Wed) 2:00:32 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ ちなみにこの場合の「上」とは 洋館三階に位置するタナトスの温室>>0:391 …の片隅を借りた、小さな薬草園のことである。 洋館に来た当初に本人に許可を得て 少しだけスペースを分けてもらったのだ。 メインの菜園の方に訪れるタナトスや誰それと 居合わせて会話をすることもあったのかもしれない。 **] (56) 2022/12/14(Wed) 2:01:06 |
IX『隠者』 アリアは、メモを貼った。 (a7) 2022/12/14(Wed) 2:09:00 |
【人】 IX『隠者』 アリア―― 洋館三階:薬草園 [ 先述の通り、タナトスの温室の片隅にそこはある。 趣味のために全てを融通してもらうのも骨。 この環境でも栽培できるならそれがいいと、 許可を得て場所を借り、適応するものを数種育てている。 季節によっては花を咲かせ良い香りがするらしい。 そこにいるという言葉を聞いた人は他にもいるだろう>>55 シトラでも、他の誰かでも、 薬師もどきがそこに来る者を拒むことはない。**] (63) 2022/12/14(Wed) 2:29:20 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ 特別人が嫌いということはなかった。 酷い目に遭った記憶ならばもはや彼方、 私を構成する大半は森での静穏な日々であるから。 あの森は、彼は、そして彼を集い訪う者は、 この腕の痣を晒してなおやさしかった。 彼自身が身寄りのない人であったし、 思えばもしかすれば、そんな彼を頼っていた人らも 私が知らないだけで、社会的弱者だったのかも…と そう思い至ったのは、わりと最近のことである。 言葉を、学を、生きる術を教えてもらった。 とんだ失礼と承知しつつも、 あの子の方がより辛い境遇だろうと思うこともある。 そう感じる程度には、 私だってきっと、比較的には恵まれていた方なのだ。 とはいえ結局のところ、 ]幸だ不幸だなんて当人の主観でしかない。 不自由ないことが幸福とは限らない。逆もまた然り。 幸せそうに見えるだとか不幸そうに見えるだとかも、 あくまで外野が勝手に見たいものを見ているだけ。 (184) 2022/12/14(Wed) 20:55:40 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ 彼は今、あの森の麓に眠っている。 身寄りはなくとも慕われていた人々の手で、 綺麗な墓所を用意されて。 彼が亡ければただの証持ちでしかない、 私にも、その所在を教えてもらえて。 三ヶ月か、半年か、一年に一度か、 そのくらいの頻度で外出許可を得て 主を失ったあの森の家に戻ることがある。 必要もなくなったのに掃除をして、森を歩いて、 二、三日を過ごして、最後に墓所へ向かうと 誰かが置いた花束がいつも先にある。 私も、傍らに花束ひとつを添えていく。 そうやって、互いの無事を確認しあっている。 そのくらいの距離できっとちょうどいい。 ] (185) 2022/12/14(Wed) 20:56:10 |
【人】 IX『隠者』 アリア―― 回想:洋館の『魔術師』 [ それは師を亡くして数日が過ぎた頃。 葬礼も終わり、そのために集まっていた人も去り、 本当に独りになって、本当に何もなくなった。 ただ生きているから徒に夜を明かした。 何度目かの朝。そんな、日のことだった。 別れを告げたばかりの相手を惜しむには早すぎて、 あるはずのない来客を訝しむ気持ちはあった。 わざわざここを訪れる者とは即ち、 そこにいるのが証持ちであることを知っている者だ。 扉を開いた先にあるのは悪意なのかもしれない。 けれどもう、どうでもよかった。 ……と思っていたから、何周も回って予想を裏切った その人の笑顔と明るい声色に私は呆然としたし、>>0:440 今でもそれが強く印象に残っている。 ] (187) 2022/12/14(Wed) 20:57:08 |
【人】 IX『隠者』 アリア―― 迎えに、ですか [ 確かに聞かされていた。そういう場所があるらしい。 本当ならきっと、そこが私のようなもののあるべき場所。 ここは私のいていい場所ではなかった? いつから、こうする算段をつけていた? 回る思考は動かない表情の向こうに溶かした。 ] (188) 2022/12/14(Wed) 20:57:36 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ それからというもの、彼は私をよく構った。>>0:442 といっても、元々彼は洋館の古株として 皆のことを考えて何となしに尽力しているようだった。 その一環に過ぎないのだろうと捉えていたけれど、 けれど、けれどそれは、 あの森にあったのとはまた違う、ひとの温もりだった。 きょうだいどころか家族らしい家族がないわけだけれど もし兄というものがいたらこういう感じだったろうか。 証持ちの面々だけではない。 職員も多数過ごしているこの洋館は、 あの森とは違って賑やかで――居心地は悪くない。>>0:633 そう思っていた。思っている。 時が流れるうちに何かが失われても。 ] (189) 2022/12/14(Wed) 20:58:31 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ 三年前。 『彼女』が現れて、私の近くにあるものはひとつ減った。 私はといえば、納得していた。 いわばあるべき場所へ戻っただけなのだ。 私の中にある何かは叫ばない。知らないから。 ただ後世に生きる、その後の『彼女』の記録を知る私が その方が当たり前なのだと腑に落ちる思いを覚えた。 だって、『魔術師』は『女教皇』の側にある存在だ。 私達とはそういうものでしょう。 そういうもの、だっていうのに。 ] (190) 2022/12/14(Wed) 20:59:17 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ 他の誰へ向けるものならばともかく、 それがこちらへ向けられるものである限り、 私には見えてしまうもの。ではないだろうか。 歪んでほどけていったもの。>>0:448 置かれた距離の向こうにいるひと。 そこで苦しそうにしているのは誰? ―― どうぞ。 ただの気休めです。 少しはほっとするんじゃないですか。 [ いつだったかばったり顔を合わせた時、 避けようとされたとしても半ば強引に持たせようとした。 からからと鳴る小さなドロップ缶。 ただの薬草飴だ。それらしい味がするけれど、 味がするだけで、少しばかり喉に効く以上の効用はない。 数もそこまで多くはない。市販のドロップスと、同程度。 普通に消費してさえいればすぐに底をつくはずの内容量。 ] (191) 2022/12/14(Wed) 21:01:29 |
【人】 IX『隠者』 アリア効くとは思いますよ。 「私」が作ったものなので。 [ ……という真実は、質されなければ闇の中。 偽薬とはそういうものであるからして。 少しでも気が安らぐきっかけにさえなればいい。 身勝手な祈りに本物の効用などあるべきでない。 では、と一方的に踵を返そうとするのは、 この時も、今も、何も変わらない。 きっと遠い前世も。 (192) 2022/12/14(Wed) 21:04:35 |
【人】 IX『隠者』 アリア 変質したことそれこそが、 かつてそこにあったのは「私」であった証明だった。 それは冷たくてさみしいのに、 ほんのすこしだけ、あたたかく感じられる。 * (194) 2022/12/14(Wed) 21:08:04 |
IX『隠者』 アリアは、メモを貼った。 (a29) 2022/12/14(Wed) 21:44:55 |
【人】 IX『隠者』 アリア―― 回想:三年前、『彼女』との出逢い [ その日。私は偶然にも出遅れて、 新しく来たというその子を迎える流れに乗り損ねた。 辿り着いた時にはもう彼女は幾人と挨拶を交わしていて 私は、……私は、その姿を目にして立ち竦んだ。 懐かしい。私もそう思った。>>0:659 けれど同時に真っ黒な感情が思考を塗り潰していった。 身に巣食う 絶望 が、いつになく燃えていた。次の瞬間には、私はもう背中を向けていた。 どうして。どうしてどうしてどうして。 らしくない感情は、ともすればあの子の時より荒れる。 けれどそもそも、「らしい」っていったい何だっけ。 目にするだけでどうにもならなくなって数回、 そのうち私は、自然とひとつの結論を導き出した。] (208) 2022/12/14(Wed) 22:10:57 |
【人】 IX『隠者』 アリア[ それこそシンが私に対して置いた距離と同じように、 私はその子に、キュリアに対して距離を置く。 時折遠くからふたりが話しているのを見かけるかもしれない。 それを羨ましく思うのが「誰」なのか、私はもうわからない。 そういう時はどうしてか懐かしさに似た感情を覚えて、 足を別のところへ向けることにしたと思う。 そんな個人の意識を超えても交差する接点が この三年の間に存在したとすれば―― その時は、それでも、 会話するくらいならば出来たはずだ。 さすがにそこまでじゃない。…たぶんだけど。 *] (210) 2022/12/14(Wed) 22:12:32 |
【人】 IX『隠者』 アリア―― 回想:うつろう月 どうしたんですか、それ。 [ それは彼にとっては不運だったに違いない。 声を向けた薬師もどきは、指先の傷に目を向けた。>>0:224 わかっている。わかっている。 証持ちの身にはその程度ないも同然であることを。 それでも見つけてしまうのは、きっと性、あるいは職業病。 ここが洋館でなくて彼が只人なら傷薬を押し付けたけれど そうされずに済んだことだけは、幸運なのかもしれない。 しかしまあ、おそらく彼にとっては 大変厄介な存在に目を付けられてしまった、と。 そういう感じではなかろうか。どうだろう。 ] (222) 2022/12/14(Wed) 22:41:52 |
【人】 IX『隠者』 アリアどうせ詰め込むなら もう少し効率的に詰め込んだらどうですか。 [ 洋館を抜け出そうが外でどう過ごしていようが そこについて文句を言うことはないけれど、 もしも傷を付けて帰ってきたり不調に陥るなら そこには文句を言った。 放っておいてくれ? 顔色悪く見えるその顔を恨むことですね、とか。 言ったかもしれないしそんな事実はないかもしれない ] (223) 2022/12/14(Wed) 22:42:08 |
【人】 IX『隠者』 アリア仕方がないひとですね。 [ たまたま袖を掴まれることがあったならば、>>109 そのたび気が済むまで放っておくだろう。 それ以上なんて必要なさそうだと思っている。 その認識に万一間違いがあるなら修正してほしいものだが。 厄介なお節介は、概ねただ目を光らせている。 *] (224) 2022/12/14(Wed) 22:42:36 |
IX『隠者』 アリアは、メモを貼った。 (a34) 2022/12/14(Wed) 22:44:40 |
【人】 IX『隠者』 アリア―― 回想:事ここに至るまで [ 遡って一週間前。 シトラの淹れてくれた紅茶と、>>148 シトラの作ってくれたテオブロマと>>151 他にもありあわせのお菓子とか、 チェレスタやヒナギクが持ってきてくれたものがあれば それも一緒にプチお茶会を彩ったことだろう。 通りがかった人がいれば巻き込まれたかもしれない。 何にせよ女子四人かしましく、 それは楽しいひとときだった。 歌の練習について、 問題はなかったように思う、>>0:217 というチェレスタの所見はきっと間違っていない。 どちらかといえば小器用に物事をこなせる方、 であるらしいことは自分でも承知していた。 見てもらおうと思ったのは念のためであったけれど、 シトラも一緒に見てもらえるなら好都合この上ない。 人に見てもらって大丈夫だと言ってもらうこと、 そういう安心は、何よりあの子にこそ必要なものだ。 多ければ多い方がきっと心強い。 だからヒナギクにもお願いした、という裏側の思考。 ] (404) 2022/12/15(Thu) 22:36:17 |
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