【神】 影法師 宵闇>>G6 清和【2日目 ピアノ勝負時空】 「プレッシャー」 ぎゃふんの"ぎ"はもらっている。残りはくれるのだろうか。 自分の番となると、はは、と笑い声交じりに一言。 ピアノの前に座って、一音だけ鳴らして、深呼吸。 寸前のおどけたような態度はなりを潜め 瞬き一瞬、鍵盤を見つめる瞳が真剣になった。 沈黙。カチ、カチ、とメトロノームのように 時計の針が時を刻む音を何拍か聴いて──演奏が始まる。 それは、青臭くて、がむしゃらとも言える10年前の 演奏の面影は消え失せた"プロ"の演奏だった。 ひとつひとつの音を無駄にしないように丁寧に指を動かし 流れるように、けれどしっかりとビートを刻むメロディ。 愛でるように優しく、盛り上がるところは激しく。 ──この曲は、これが弾けたらかっこいいだとか一人前だとか 少年の自分が言っていた曲だ。これを完璧に弾けるようになるのが夢だった。もうあの頃の演奏、あの頃の気持ちには戻れない。 そして、夜が訪れるように、演奏は終わる。 男は余韻に浸っているのか、なにも言わない。 清和の言葉を待っている。 (G7) 2021/08/15(Sun) 17:20:24 |