【人】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ>>1:155 ロメオ 1日目 「ああ、そうだったんだね。憧れの職場、みたいなものなのかな。 目標を達成できることは、……いいことだ」 相手の風体を見る。自分よりかは当然、重ねてかなり年若くは見える。 ティーンエイジャーの残り香がやっと解けてきた頃……と思えば、よい目標だ。 嗄れたり衰えたふうには見えないまでも、男の目元には年数の積み重ねがある。 どうしたって、まるで目下のもののように見てしまうのは仕方のないことかも知れない。 「いい特技だ。客商売に向いているだろう。 叶うなら私の職場にも欲しいくらいだ、なんて言ったら店主に申し訳ないかな」 ――無為の問いかけではない。多少の、そうした意図はあった。 とはいえ、貴方だけを疑っているわけでもない。相手取っているものが相手であるから。 街に溶け込む"貴方がた"を追う以上、街の全てを疑う必要がある。 そしてそれらは、疑う相手である街を守るためでもあるのだ、だから。 この問いかけは決して敵対的なものではない。 付け加えるなら、引き抜きたいのだって少しくらいは本心だ。 「また来るよ。 次もおすすめを教えてくれたら、嬉しいな」 勘定をすませたなら、小麦の匂いのする袋を持ち上げる。 少なくともこれで男は貴方の顔を覚えたし、貴方も男の顔を覚えただろう。 いつまでも客と店員であれるのが、一番だ。 (11) 2023/09/18(Mon) 19:17:52 |