【人】 愛玩用 エマ>>16 >>17 >>18 第四階層 「他者の言葉で語るのであれば、きっとそのようになるのでしょうね。 いえ、特段否定の意があるのではなく。同じことを噛み砕くとこうも言い回しが変わるかと。 きっとそういうものなのだろうと思います。言い表すことは出来ない。 誰も、他のことを正確に計れはしない。出来ると言うなら、傲慢だ。 だからこそ安易に肯定や否定を返さず一度翻訳するというのは、好感が持てる」 貴方がこの語らいで理解し切るものなどないと思う通り、やはり、ないのだろう。 それは互いにそうだ。そして、それを互いにわかりきっている。 頷いて、銃口はゆっくりと降ろされた。周辺はエネミーが残るから、仕舞いはしないが。 此の場に対立の意志をもつものはいないのだと、了承は取れたのだから。 軽く息を吐く。短い髪が揺れた。肩を竦め、平時通りの声が言う。 「それならば良かった。私もまた、ただ己の思う平穏を過ごしたいだけです。 それが限りを持つというのならば、尚更。大事にしたいものがあるでしょう。 ……今のうちに聞きたいこと、か。 私は勿論、ええ。貴方をなんてことをするのだなんて糾弾したりはしませんけど。 今の内と言われるともう少しだけ引き止めたくなる。 そうだな。如何にしてそれを最善とするように至ったのか。 ……いや、違うかな。最初から手にしていた職務への意志はそれとして。 この塔でもそう動くに至った理由は、なんですか?」 問いは柔らかかった。もはや緊張はこの場にはいらなかった。 状況とは矛盾しているのに。人の背を撃ち、倒れ伏したままにして。 暴威を巻き起こした証左を前にして尚、平気で世間話を続ける、 その表情は終わりを見据えて、柔らかいものだった。 (19) 2021/10/11(Mon) 20:49:43 |