人狼物語 三日月国

184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨


【人】 住職 チグサ

[不意に、足元の星空が大きく揺らぎ、波紋と共にかき消えました。
 衝撃が体を襲い、落ち葉のように吹き飛ばされました。
 一瞬意識を失っていたのでしょう。ぴちょん、ぴちょん、と雫の垂れる音が、物悲しくあたりに響き、その音ではっと気が付きました。
 体は酷く痛みましたが、まだ動きました。
 何が起こったのかと見やると、血だまりに足を取られたのでしょう。からくり車が横転していました。
 金属でできているのでしょうか。重たいからくりは先程まで私がいた場所、その壁に突っ込んでいます。
 そうです。私が一心にご冥福をお祈りしていた、お二人の仏さまがおられた場所です。
 凄惨な様相は言葉にするのも憚られるほどで、最早、生前のお知り合いが仏さまをご覧になっても、それが人であったと断じられるかすら怪しい有様です。
 私はあまりの胸の苦しさに、あの壁と車の狭間に在るのはもしや私の体ではないか、既に肉の体を失って、意識だけがあたりに霞のように浮いているのではないかとさえ感ぜられました。]
(21) 2022/11/10(Thu) 21:04:06