【人】 生物学者 アマノ[遺伝子上の俺の父親は、あの星系ではそこそこ著名な政治家で。 そして遺伝子上の俺の母親は、その元秘書だった。 父親が母親を孕ませたとかで、責任取る形で産まれたのが、俺。 けれど2人の間に恋情らしきものは息子の俺から見ても伺い知れるものはなく、2人の興味はまるで別の方向に向いていた。俺の方に向くこともなかった。 欲しいものは何でも買って貰えたし、これがしたいとちらりとでも望めば、その筋の最高の教育を受けることはできた。 けれど、義務教育後、手当たり次第に色々のめりこんではみたものの、常に心のどこかは乾いたまま。 己が本当に欲しいものが何なのかわからなくなる程度には、俺は自分にも世の中全てにもうんざりしていた。 きっと、俺は、とても恵まれてはいて。 そんな己を嘆くのは贅沢極まりない我が儘でしかなく、だから俺は、自分の事について語る口を閉ざすようになった。] (25) 2022/07/13(Wed) 6:39:41 |