【人】 陽は落ちぬ 夕凪>>25 編笠 「……大げさ。 それでも、夕凪は楽しみにしてる。 怪我してこないでよ、…急ぎすぎないで。 夕凪は、ただ。 こんな約束ができただけで、十分なんだよ」 小指を絡めただけの意味のない約束。 少年はなにに固執していたのか、今になってわかったような気がした。 編笠の"夕凪たち"に対する気持ちが聞きたかったのだ。 夕凪として聞きたかったのか。 夜凪として聞きたかったのか。 今となっては混ざってしまって明確にするのは意味をなさないだろう。 一度でも任せてしまいたくなったこの気持ちも。 一度でも隣を夢見た形にならないこの気持ちも。 あなたへの気持ちが泡沫のように消えてしまうのかは、この約束さえあれば不安じゃない。 "なれなかったこの気持ち"は、成熟する前に夢が覚めていく。 (26) 2021/08/20(Fri) 20:50:23 |