【人】 絶対専制君主制 コゴマ>>26 >>27 叶・深和 「謝って事態が解決するわけではないのですから、構いませんよ。 別段僕が何かしらの不利を被ったわけではないのですからね。 ただまあ、そうだな。会議室は今、がら空きのようです。態勢は整えませんと。 結木をどうするかも考えていない。まだ伊縫も奈尾も、見つかっていないわけですから――」 悠長に話してられる時間は短いものだった。 弾かれるように二人よりも前に出て、大足を踏みしめ姿勢を低くした。 此処に来てどれだけ異形を目の当たりにしたか、初めての遭遇だったかもしれない。 知っている。貴方の袖が濡れていたこと。理由は知らずとも。 そんなことさえ意識の外に置いてしまって、青年は立ち竦んだように見えた貴方を睨みつけた。 視線が通ったのは一瞬。人が自分の言うことを聞くと思っている傲慢なものの目だ。 驕り高ぶったそれは、貴方がたを庇って暗がりの方へとより一歩踏み込んでいく。 「叶も下がれ、足を止めるな!!」 恐れも知らずに踏み込んだ足は、支えも不確かな獣の足を踏み躙った。 ばきりと薄い骨の砕ける音と、勢いを殺しきれなかった腕が袖を引き裂いて、 その下の肉までも傷つけた音とが、鈍く高く交差する。 勇壮か無謀か、さておき振り抜いた腕とパイプは重心を縫い止めた獣の体を確かに横薙ぎにした。 尤もそれがどれだけの痛手を負わせられたかは、不明だ。 得体のしれない立ち姿を確かめ、ぞっとしたように唇を引き結びながら、膝で打ち上げ距離を取る。 「――早く行け!」 貴方がたを背中に庇い、貴方がたに背を向けて。 目の前にあるものから守ろうとすることに少しの躊躇いもない。 会議室は目前。そこまで至らせる訳にはいかないと、頼りない武器を握り締める。 (28) 2022/06/06(Mon) 15:37:10 |