【人】 小さな心臓の サルガス>>4:32 朝の食堂 ブラキウム 「……ごめん、ごめん」 貴方の声を聞くごとに。人を率いるものである姿を見るごとに。その成長と認めるごとに。 自分がやはりどれだけ愚か者であったかを知るのだ。貴方が最初に見出した通り、愚か者なのだ。 いかに貴方が自分を利用しようとしていたかを、傀儡にしようとしていたかを、どうして。 どうして、最初に理解してしまって、踏み込んで論戦することなく見ないふりをしてしまったのか。 少年を取り巻く多くのからかいと一緒くたにしてしまわなければ、今は同じ高さで戦えただろうか? いまや、貴方の前にあるのは今にも泣き出しそうなくしゃくしゃの顔ばかり。 「どうしてだろう、どうしてきみと語り合うのを、あきらめてしまっていたんだろうね。 きっとひとこと、嫌だと、いっていたなら。たがいのほんとうにほしいものを、わかっていたかな。 もっとこどもらしく、心の中の白も黒も、あかしていれば、よかったかな」 食器を持つ手が止まる。取り落とすように落ちた腕は、伸びかけて、やめてしまった。 あなたを引きずり込んでしまわないために。 大人でも、子供でも、患者でも、被害者でも、もう、なんでもなくなってしまった。 ぼろぼろと涙をこぼしながら、少年は貴方に唯一で、最後の"お願い"をする。 「ねえ、ぼくのこと、さんざんにうらんでしまってもいいよ。 きっとこれはとても残酷になるのかな。これほど、歩み寄ってくれたきみを、おこらせるかな」 → (37) 2021/05/31(Mon) 21:08:47 |