【人】 上原 隆司[予約の日、エコーにだけは付き添えなくて隆司は気が気でなかった。 診察室に戻った蛍に手を握られて、しっかりと握り返しながらいろいろな話を聞いているうちに、やっと薄かった現実感がはっきりしていった。 蛍が常々眠そうだったこともあり、聞き漏らすまいと隆司は真剣に諸々の話に耳を傾けていた] 診断書、もらっておいたらどうだ? あまり眠いんじゃ仕事にミスがあっても 大変だし。 [妊娠初期に無理はしないほうが、と思いながら彼女を見つめて提案はしたが、判断は彼女に委ねるつもりだった。 育児休暇をとる準備をしないととか、両家の両親に伝えなければとか、いろいろ考えた末] 蛍……、ありがとうな。 [自分との子を宿してくれた妻にかける言葉として隆司の頭に思い浮かんだのは、これだった]** (42) 2021/03/10(Wed) 22:24:30 |