【人】 一匹狼 “楓”[湖のほとりを歩いていく彼は、遠くに手を振る人影があるのに気づく。>>61 視線を向けた先には、白いマントに身を包み、遠目には銀髪にも思えるような長い髪の女性がいた。 他の亡霊のような人影と違い、はっきりと目に留まる姿に意識を惹かれ、彼の歩みは止まった。 駆け寄ってくる足音とともに、彼女の姿が近づいてくる。 彼女のことは、深く被った頭巾で顔を隠した姿しか見たことがなかった。 素顔を見るのも、それどころか髪の色を知るのも今が初めてだったのだが── 彼の脳裏には瞬時に浮かんだ名があった。 そして彼女の呼びかけで確信を得る] 椿。 [彼を『楓様』などと呼ぶのは、椿と名乗った白頭巾の女性ただひとり。 彼女同様、『楓』もまた本名ではない。彼女の名乗りを受けて咄嗟に浮かんだ単語……それが『楓』だった。 それを仮の名として名乗っただけのこと] (69) 2023/03/01(Wed) 7:12:49 |