【人】 法の下に イレネオ>>87 ペネロペ 小柄な体躯は安心を呼ぶ。こちらを害せるわけがないという、傲慢な油断だ。 庇護や、護衛の感を無意識に誘った。それはある意味で貴方の才能なのだろう。勿論男は、そんなことを知らない。知る由もない。 「そうか。……そうなのか? 親切だな。お前も大変だろうに。」 「働きすぎじゃないか。休める時には、きちんと休んでおけよ。」 だから、ありふれた気遣いの言葉を投げて寄越す。 華奢で、明るく、いたいけで、働き者で、頑張り屋のペネロペ。それにかける言葉としてはこの上なく正しい語句を淀みなく紡いで、「どうしてそんなに頑張るのか」と聞くことはしなかった。プライベートへの配慮は、そのまま貴方への、おそらくは好都合な無理解へと繋がっていく。 「いや。」 「少し、用があって……急ぎじゃない。」 「そっちの方が、大変そうだ。手伝うか?」 刑事だと明かしたことはあっただろうか。なくとも、そんなに必死になって隠しているわけではないから、察せられる部分はあるか。 どうあれいつの間にか、誤魔化すように手帳は仕舞いこんでいた。 #共同墓地 (89) 2023/09/13(Wed) 1:21:42 |