【人】 裁判官 リーベルト[潮の匂いに混じって、甘い花の香りがする。 日中の暑さは和らいで、頬を撫でる涼やかな夜風が酔いを覚ましてゆく。 食後、提案された通り見晴台へと向かうことにした。 ヴィクの手を取り、指を一本一本絡めて恋人繋ぎにして、ゆっくりと小高い丘へ向かう散策路を歩く。 足元はきちんと整備されているようだったが、何分糸目なので夜目は人並みにしか利かない。 本質に逆らったあるまじき欠陥。 一応は闇に生きる種の出身であるというのに。 それでも月と星の灯りはしっかりと、眩しく判別できる。 街灯は少なく、周辺には民家の明かりも見当たらず、 夜空を見上げれば夏の大三角を見失ってしまいそうな程数多の星々が煌めいている。 丘の上の鐘には、 " 共に鳴らした二人は一生別れない "――なんていかにも観光地らしいロマンチックな伝説があるそうだ。 デートスポットとして有名らしい。 ちらほら、カップルらしい人影も他に見えただろうか。 なだらかな坂を登りきれば、遠くに宝石を散りばめたような美しい夜景が広がっていた。]** (144) 2019/04/21(Sun) 14:53:23 |