【人】 軍医 ルーク ―― 検査の前日:明け方の見張り台 ――[ それは医務室でうさぎの検査をして、 外壁の外に探し物に行く、前日のこと。 明け方の見張り台で、今日も『天』の大穴を見ている。 夜が白み始める。 『月』の稼働時間が終わり、 『太陽』の時間に切り替わり始めたということだ。 そんな移り変わりの中で、天の大穴は、 ただぽっかりとした巨大な虚ろとして、 遥か高く頭上にあって、 この地上を静かに見下ろしていた。 見張り台を去ろうとする。 もう一度あのタブレットを開くつもりはなかった。 誰かが記録をとるために使っているのだから。 けれど、扉を開けて中へと踏み込もうとした足が、 ひたりと止まる。] ―――… [ ただ一方的に謝りっぱなしで、それきりにするのは、 それはそれでどうか。 向こうが怒っているなら、それは読むべきだ。 日記の続きがあるなら、読まないように気を付ければいい。 そんな風に考え、踵を返す。 もしこれ以上読まれることを厭うなら、 置き場所かパスワードが変わっているだろう。 むしろ、そうなっているに違いないと思っていたのに。] (167) 2020/05/19(Tue) 20:10:58 |