【人】 生物学者 アマノ[意外にも────と言ってはプロフェショナルに対して大変失礼な物言いになってしまうが、サダルがくれた言葉は悔しいほどに説得力があった。] …………"声をかけるべきでは、ない"。 [鸚鵡返しにぽつりと返す。] ────ああ。そうだな、俺はずっとそうしてきていた。 あいつのあの大怪我でさえ、あいつの側から理由を話さないのなら、俺側から聞くものでもないと思っていた。 [目の前に座るカウンセラーへの説明のために口にしたことじゃない。 それは単なる独り言だったが、"あいつ"が誰を指しているのか、思いのほか聡いカウンセラーはきっと気付いた事だろう。 2年前だったか。 次に帰港したら酒を飲みに行こうと約束していた奴は、病床の住人になっていて。 大丈夫なのかと問うたら、問題ないと言ってきた。 だから俺はそうかと頷いて、その時も、それからも、それだけだ。] (212) 2022/07/10(Sun) 16:13:57 |