【人】 調香師見習 ノア─ 通り ─ [よく見えない眼で走るなんてこと、 今までしたことなかった。 通りの賑わいも朝と比べて遥かに増していて、 店の外に出た後一瞬足を止めて、 広場とは逆方向、いつも行っている丘へと足を早める。] 大丈夫です…ごめんなさいごめんなさい… [通りを抜けるまでは何人か声をかけてくれるひとも 居たけれど、私は俯いたまま謝罪を繰り返して、 ひたすら先を急いだ。 少しずつ少しずつ、道行くひとの声も気配も減っていく。 丘への一本道へと続く通りの終わり、 ふと硝子細工のお店の前で足を止めれば、 夕暮れのショーウィンドウに、 夜空のような藍色に滲む自分の影が映っていた。] (243) springkraut 2020/05/15(Fri) 2:20:04 |