【人】 灯守り 芒種[ …… うん。鬱だな 。医者でなくともわかる。原因は多いにある。患うになんら不足なく。 故になんの不思議も不安もない。自然なことだ。 放っておけばどこまでも沈みそうな気分を適当に切り上げて いやだわ、更年期かしらね。なんて 自嘲を含んだため息を零そうとして 吐く息が足りない物理的な息苦しさを思い出した。 もう、ほんとうにむり。 うえかしたからないぞうがでそう。 いっそだしてらくになりたい。 車輪に潰された蛙みたいに、ひといきに。 都合のいい言い訳を手にして漸く 踏み入れる気になった会場へと 足を踏み入れてすぐ、迷いもなく 一直線に逃げ出した。 出迎えになんと挨拶したかも朦朧としているけれど 中にいればあんなに針の筵でも、一歩外に出れば 誰からも愛され認められ支えられている風になっている位 揃いも揃って外面がよく、呼吸するように嘘を吐く そんな面の皮が厚い一族の、これでもいちおう末端だ。 だから今日も 形式通り普段通り、無意識だろうと 挨拶くらい行儀よく振舞うこともできただろう。 ] (272) 2022/01/17(Mon) 15:55:22 |